私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ななさんの個性が判明しちゃっなぁ。
そうきたかぁ、そっちきたかぁ。
てか、最後が不穏過ぎるわ。


『大人達の友情、と』の閑話の巻き

夕陽の淡いオレンジが窓から射し込み始めた頃。

通形少年達が帰り、すっかり静かになった病室で私はそれを告げた。

ずっと言えなかった、その言葉を。

 

「すまなかった、ナイトアイ。こんな事になるまで・・・・君に会いにこれなくて」

 

私は私の意思で彼との袂を分かった。

その事に後悔はないが・・・それでも、彼と仲違いしたまま何もしなかった事に思うことはある。

 

「何を・・・・私も貴方に会いに行けなかった。お互い様というもの。それにこの間も会ったばかりだ。寿司屋でのことは私の記憶違いだったか?」

「あれは、彼女を理由にしてしまった。そうでなければきっと私はあの場に行けなかったさ」

「それなら、今日は私に会いにきてくれたという事で良いのかな」

 

そう言ってナイトアイは嬉しそうに笑顔を浮かべた。

気の利いた言葉が浮かばず「ああ」と肯定の言葉を伝えると、ナイトアイも「そうか」と一言だけ口にして静かに目を瞑る。

 

しんとした静寂の中で時を刻む音だけが響く。

お互い言葉を交わさずにいると夕陽に誘われた鳥達の鳴き声が窓からうっすらと聞こえてきて、遠くに見える電車の走る音が鼓膜を揺らしていった。

 

それは酷く穏やかで、昔の事を思い出した。

 

彼とチームを組んでいた頃。

夕陽の射し込む事務所の中で、私達はよく書類を整理していた。別に習慣だった訳ではない。コンビを組み活動していく中で自然とそうなっていった。

書類とにらめっこしている彼はよくコーヒーを差し出してくれてた。砂糖は一つ、ミルクはなし。お礼を伝えると「大した事ではない」「あなたの活躍に比べれば」と苦笑交じりに返されたものだ。・・・・私はあの時間が嫌いではなかった。それまで一人で活動していた余計にそう思ったのかも知れない。ありのままの姿で誰かと共に過ごす穏やかな時間は特別だった。面白くもない書類整理も、何処か楽しんでいた気すらする。

 

昔を懐かしんでいると、不意にナイトアイが呟いた。

「あなたの名前を呼んでいた」と。

視線を向けるとナイトアイが何処か遠い目で膝に掛かる掛け布団を眺めていた。

 

「私の名前を・・・・?」

「あぁ、あの時・・・彼女が治崎の攻撃を受け、力なく落ちていったその時、私はあなたの名前を呼んでいた。あの子とあなたとでは、背丈も、性別も、何もかも違うのにな」

「それは━━━」

 

どうしてだい?と、そう尋ねようとしたが、そんな私の言葉より早くナイトアイは答えた。

 

「重なって見えたんだ。私が見てしまった、あなたの未来の姿と」

 

その言葉に、私は何も返せなかった。

それは私達が袂を分かった理由そのものだったから。

私は彼の苦悩も痛みも気づいていながら、それでも進む事を決めたのだ。今さら何を言える。

小さな沈黙が続いた後、ナイトアイはゆっくり続けた。

 

「時折、彼女にあなたを見ていた。言動こそ違っていたが、彼女の本質はあなたと良く似ていたから・・・・だから、あの僅かな間に見た彼女の未来と、記憶の底で眠っていたあなたの未来が重なって━━━━気づけばあなたの名前を呼んでいた。良い大人が一番錯乱していたなど、恥ずかしい限りだよ」

 

そう言いながら固くなっていた表情が崩し、「ミリオが気づかなかった事が唯一の救いかな・・・・」と呆れたような表情を浮かべる。

 

「オールマイト、私は・・・・私は、自分の個性が恐ろしかった。どれだけ努力をしても、どれだけ足掻こうと、私の見た未来は何も変わらなかった。個性を使えば使う程、自由など一つもなく、私は誰かに用意されたレールの上を、ただひたすらに歩いている気分になった」

 

「誰かの死の映像を見る度、それを変えたくて何度も出来る限りの事をしてきた。だが結果はいつも変わらない。私の努力を嘲笑うように、私の眺める先で未来の光景が再現されていく。その度に、胃がひっくり返ったかと思うような吐き気に襲われた。知っていながら何も出来なかった事実に、罪悪感で胸が締め付けられた」

 

「そしていつしか思うようになった。これは私のせいではないかと。私が未来を見たせいで、この残酷な未来が決定づけられてしまってるのではないかと・・・・」

 

力なく語られた言葉に、気がついたら私は彼の肩を掴んでいた。そしてこちらを見上げた彼に、私は思考の纏まらぬまま口を開いていた。

 

「そんな事あるわけがない。君のお陰で救われた命もある。私は幾度も見てきたぞ、私は幾度も助けられた」

「違うんだ、オールマイト。それは、私の予知の中でも起きた出来事なんだ。当然の━━━━」

「違う!君が教えてくれなければ、出来なかった!君がヒーローでいてくれたから、君が誰かの為に個性を使ってくれたから分かった事だ!出来たことなんだ!それは誇るべきことだ!」

「そうだったとしても!私はっ、何人も見殺しにしてきたんだ・・・・・!オールマイト!知っていながら、何人も!何人も!見ていたのに、私は・・・・」

 

酷く歪んだ顔に言い様のない感情が滲んでいた。

それは一度として見た事のない、苦痛に満ちた顔だった。その様子に言葉に出来ない感情が沸き上がり、胸が酷く締め付けられた。

私はこんな彼を、一人おいていったのかと。

 

言葉を失っているとナイトアイは顔を俯かせ━━━

 

「だから・・・・嬉しかった。彼女が生きていてくれてっ、私はっ、救われたような気がしたんだ」

 

━━━絞り出すように話を続けた。

 

「私は見たんだ、彼女の死を。治崎から特殊弾を受ける寸前、私は治崎を通じて未来を見た。彼女は本来ならあのまま死ぬ筈だった。腹を貫かれたまま、地面に落ちていく筈だった」

 

小刻みに震える肩から、さっきまでとは違う感情が響いてきた。

 

「けれど、彼女は死を拒んでくれた。死の間際も、全力で、私の声に応えてくれた。情けない、すがり付くような、私の声に・・・彼女は・・・・笑顔で。ほんの一瞬向けられた、あの笑顔に・・・彼女が息を吹き返してくれた事に・・・・楽しそうに笑う姿に、どれほど、どれだけ救われたか・・・どれほど━━━」

 

彼は目元を拭う素振りを見せると、ゆっくりと顔をあげた。僅かに赤くなった彼の瞳には、その表情とは裏腹に力強い信念の火が宿っていた。

 

「━━━━━━オールマイト、生きてくれ。私の見た未来はっ、絶対じゃ、ない。変えられる。変えられる未来なんだ。私がっ、あなたの未来を変えて見せる。この命に代えても、必ず。・・・・だから、生きてくれ。命を少しでも大切にしてくれ。幸せになって欲しいんだ、笑っていて欲しいんだ。オールマイト」

 

想いの籠った言葉に、授業参観の日を思い出した。緑谷少女が私と同じ道を歩まぬように、私なりに指導したその日を。

知った気になって彼女に教えた。友人や家族がどれだけ彼女を想っているのか。

けれど私もまた彼女と同じように、ちゃんと分かっていなかったようだ。知らなかった物、知ろうとしなかった物。見ようともしなかった物、見ていなかった物。手離していた物、失っていた物。それら沢山の物を。

 

「・・・・あぁ、と返事を返したいのは山々だが、それでは頷けないな」

「オールマイト、どうして━━━」

「命まで掛けられたら頷けないさ。友人の犠牲の上で、私は幸せになんてなれない。君も生きていてくれなければ」

 

そう伝えるとナイトアイは言葉をつぐんだ。

 

「━━━━━私は、まだ、あなたのっ、友人で良いのか。あなたを見捨てた、私がっ・・・・」

「当然だ━━━━というより、勝手に友人を止められていたのがショックなんだが」

「すまないっ、オールマイト」

 

一言謝罪を口にすると、彼は肩を震わせながらまた下を向き、静かに嗚咽を溢し始めた。

シーツへと滴が落ちて、新しい染みを増やしていく。

 

「また一緒に、コーヒーを飲もう。書類でも整理しながら、たまにジョークでも言い合って」

「私はっ、いつも、完敗だった・・・・あなたのジョークは、私の心にっ、さ、刺さり過ぎる、から」

「君のジョークは何処か固いからね。けれど負けた事もある。何だっけ、ほら・・・・えっーと」

 

思い出そうと考え始めると、そのナイトアイが涙を拭いながら困ったような笑顔をこちらへと向けた。

 

「だから、あれはジョークのつもりで言った訳じゃないと言ってるんだ。真面目だったんだぞ」

「けれど面白かった。私はしっかり笑わせて貰ったよ。何だっけな?ほら、君なら覚えているだろ?意地悪しないで教えてくれよ」

「勘弁してくれ。思い出すだけでも恥ずかしいんだ。あんな不本意な笑いは一度だけで良い」

「HAHAHA、それは残念だ。そうだ、聞いてくれ。実は生徒達の教育の事で少し相談があったんだ。良いかな?」

「あぁ、勿論だ━━━━━」

 

それから私は彼と話し続けた。

数年のブランクなど感じないくらい自然に。

お互い話したい事は幾らでもあって、語り尽くせぬそれを交わしあった。

 

どれくらい話していたのか。

気がついたら面会時間は終わっていて、私は急かされるように病室を後にした。

 

去り際、ナイトアイから掛けられた「また」という言葉を頭の中で反芻しながら、私も先に行った彼女達と同じように帰路についた。

 

いつもより軽い足取りで。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

『ヴィラン連合、襲撃』、『混沌と化した裏社会抗争』、『暴走するヴィラン連合』、『警察、ヒーロー為すすべなしか』。

 

そんな見出しがデカデカと載った新聞を手にした私は眉間に寄るシワをほぐしながら、抑えきれなかった溜息を口から溢した。ただでさえ数日前の怪我のせいで頭が痛いというのに、こうも問題が立て続けに起こると何とも言い難いものがある。頭痛が痛い、みたいな気持ちだ。

確認した所、殆どの新聞は警察の発表を元にしているようだが、会社によってはいい加減な情報で不安を煽るような物もあり・・・それに影響されて悪化するだろう治安を思うと余計に頭が痛くなってくる。

 

「随分な書かれようだわな。人の気も知らねぇでよ」

 

そう呆れたように呟いたのは同じ病室に入院するグラントリノ。彼の怪我は私より軽い。本来ならとっくに退院しているのだが・・・・年齢が年齢なので一応検査入院させられている状態だ。

そんなグラントリノは渋い顔で紙パックのお茶を音を立てながら飲むと、ベッドへとふんぞり返った。

 

「かぁぁぁーーー!暇だぁな、ったくよぉ。何もしねぇと心臓止まっちまうぜ。塚内、俺ぁ今日退院すっからな」

「無茶言わないで下さい。検査結果次第で明日には出れますし、それまでは大人しく寝てて下さいよ。良い仕事をする為には休みも必要ですから」

「けっ、無駄に長生きさせようとすんじゃねぇや。こちとらもう働き過ぎるほど働いたっつうんだよ。今更、良い仕事も糞もあるか。後はやることやったらさぱっと死んで、棺ん中でお寝んねするだけの人生よ」

「またそういう事を・・・・ほら、爆豪くんの晴れ姿とか見たくありませんか?」

 

その言葉にグラントリノは眉をピクピクと反応させる。まったく気にならない訳でもないらしい。

それから少し考えた様子だったが、直ぐにフンと荒い鼻息を漏らした。

 

「興味もねぇな。ありゃほっといてもどーとでもなる。まぁ、まず間違いなくプロにはなんだろ。その後はあいつ次第だがぁな」

「それはそうでしょうけど・・・ほら、結婚式とか呼ばれるかも知れませんよ」

 

ふと思い付いたそれを口にすれば、グラントリノは凄く難しい顔をして唸った。どうしたのかと思ってると溜息をつきながら話し出す。

 

「・・・・結婚、結婚かぁ。下手したらヒーローになるよか難関だろうな。まぁ、取り敢えずあいつには当分出来ねぇだろうなぁ」

「ははは、それはまだ学生ですからね。けれど時間の問題だと思いますよ。随分と仲が良いですし」

「はぁ、分かってねぇな。塚内。だからてめぇは独身なんだ。女ってのはなぁ、一の行動より十の言葉が必要なんだよ。その点あいつは行動はともかく、言動は死ぬほど素直じゃねぇからなぁ・・・・・鳶に油揚げかっさらわれるような事にならねぇと良いが」

 

染々とそう言うとグラントリノは遠い目で窓の外を眺めた。何処か寂しい背中にカラスの鳴き声が掛かる。

何とも言えない空気の中、お互い沈黙していると病室がノックされた。どうぞと声を掛ければ扉が開き、若い警官が敬礼して見せる。

 

「塚内警部、報告にあがりました。お時間大丈夫でしょうか」

「ああ、ありがとう。頼む」

 

そうして説明された事実は喜ばしいものではなかった。

何とか身柄を確保したヴィラン連合の黒霧は刑務所内で未だに口を割らず、私達を襲撃したヴィラン『ギガントマキア』は行方を晦ませているそうだ。

現場ではエンデヴァーを中心に捜索が続いてるそうだが、もうじきその捜索も打ち切りになりそうだと。

 

報告を済ませた若い警官を下がらせた後、私は改めて新聞へと視線を落とした。

警察の包囲を破りオーバーホールを拐い、何処かへと行方を晦ませたヴィラン連合について書かれた、その記事に。

 

「何を考えている、お前達は」

 

黒霧という貴重な存在を捕らえられた一方、ヴィラン連合にはオーバーホールという存在に加えて例の特殊弾が渡った。未確認だが、行方を晦ませている構成員の一人がヴィラン連合に加入したという話もある。・・・・救い、と言っていいかどうか悩む所だが、捕らえた幹部の話からヴィラン連合と治崎の関係は良いものでなく、今後協力する可能性が低い事が分かったが・・・・どちらにせよ、黒霧を逮捕したとはいえ喜べる状況ではない。

 

「足を奪ったつもりだったが・・・・まだ荒れるな」

「そうですね。今後ご協力お願いします」

「はっ、言われるまでもねぇやな」

 

部屋の雰囲気が少し重くなり、私は気分を変える為に病室に備え付けられているテレビの電源を入れた。何かやっていないかチャンネルを回していると、グラントリノは一つあくびをかいて「寝る」と一言。

空気を変えるまでもなかったかと、心の中で苦笑しているとそれが耳についた。

 

 

『お楽しみ頂けただろうか!本日のジェントル・クリミナルの━━━━』

 

 

何処で聞いたことのある名前に視線を向けると、渋い顔で手を組むコメンテーターの姿があった。コメンテーターの背後には分割された多くの映像が静止して映されている。

 

『一部抜粋した映像ではありましたが見て頂けましたでしょうか。最近ではこうして悪戯に犯罪行為を配信する者までもいる始末。オールマイトの活動休止以来、こういった事は増える一方。警察とヒーローの責任問題であることもそうですが、政府の適切な対応こそ求められることで━━━━』

 

配信という言葉に思い出した。

保須警察署の知り合いから、犯罪行為を映した映像を定期的に配信サイトにアップロードする。そんな特殊なヴィランがいる、と愚痴で聞いた事だ。

 

やることやることがしょっぱい上、基本的に一般人に被害らしい被害を与えないので、上司から後回しにするように言われ・・・・市民から怒りと共に被害届けを叩きつけられ受付の連中からは「はよどうにかしろよ」と無言の圧力を掛けられ「どうせぇば良いんじゃこらぁ!!」と泣きつかれたのはつい最近。騒ぎを重く見た署長から本格的に捜査するよう指示があったみたいだが、それもどうなっているのか。

 

「はぁ、問題は山積みだな」

 

私は退院後の苦労を考えながら、またチャンネルを回した。




おまけ・塚内と合流時のエンデヴァーはおじさん。


おハゲ「なっ、何ぃ!?見失った、だとぉ!?ふざけているのかぁ!!態々こちらを優先して来た私の立場はどうする!!こんな事なら、あの場に残って馬鹿が馬鹿出来ぬよう躾の一つでもつけてやったものを!!ぬぐぅぅぅぅぅ!!」

つかっちー「何に荒れてるんでしょうか、グラントリノ」
ボケおじじ「さぁなぁ、こいつも昔から分けわっかんねぇ奴だからな」
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