私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
すまん!皆っ、俺はここまでっ、だ・・・・・・。
(´・ω・`).;:…
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(´・;::: .:.;: サラサラ..
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右よし、左よし、前方よし、後方よし・・・・んじゃ、遥か銀河の彼方に向けて発進!!えっ、まだ確認することあるの!?あっ、待って一辺に言われても無理、リストを頂戴な!の巻き
西暦YT02990年、共和国発足から五百年目のその年。
平和を享受していた共和国は新興国『チュウカテン帝国』の脅威に晒されていた。
時の皇帝、テンチョー・チュウカテン一世は共和国政府の国教シュークリーム教を異端とし、共和国政府に対してトウガラシ教への改宗を要求。共和国政府がこの要求を拒否すると神への冒涜だと帝国領二千とんで二十の惑星と共に宣戦を布告。
翌日、第二銀河アンニンにて共和国軍と帝国軍の武力衝突が起き、第三次宇宙大戦が始まった。
開戦後、共和国最大規模の艦隊を保有していた第二銀河アンニン連合艦隊を早々に破った帝国軍は、その圧倒的な辛味をもって更に進軍。その電光石火とも言える動きで、僅か一月の内に共和国の三分の一を辛味の下に降らせた。
そして我が第一銀河にも、その圧倒的な脅威が迫っていた。
YT02990年9月28日、18時30分時分。
それが私の艦と敵艦隊が接触した時間、私達の戦争が始まった時間である。
「ニコちゃん艦長、旗艦捉えたよ!!目標右舷前方、ザッケンナコラー小惑星群内!!敵艦ハッポウサイ!座標bbq0141:029:ga18n!!」
「主砲超次元爆裂ガチムチスパイラルキャノン、エネルギー充填率083,118%!!発射可能領域までカウント1800ですわ!!きゃぁ!?」
「けろっ、1800じゃ間に合わないわ。電磁ウェイシールドの損傷率67%を切ったもの。シールド消失までカウント1530」
シールドにぶつかるビーム砲の衝撃と音を肌で感じ、悲痛に満ちた皆の声を聞きながら、私は手首の腕輪を擦りつつ天才と謡われた頭脳をフル回転させる。これまで勝つ事はおろか、生き残る事すら絶望といわれた死線を潜り抜けてきた。今更何を恐れる事があるのか。
覚悟を決め集中すれば、一つの答えが脳裏を過る。
私は導き出したそれを叫んだ。
「エネルギーチャンバー1・2・3直列接続!!生命維持に必要な最低限の電力のみ残し、その他の全エネルギーを主砲へ集めろ!!シールドは主砲発射ギリギリまで維持!!発射カウントに入りしだい、シールド停止!!その分のエネルギーは主砲へ!!」
「えっ、それって、ワープドライブの燃料もって事!?帰還用の!!仮に勝っても帰れなくなるよ!ニコ艦長!」
「そうだよ、緑谷艦長!それに一辺に流したら回路が持たない!!敵に撃たれる前にこっちが吹き飛ぶ!!それに、そんだけエネルギーぶっこんで一隻でも撃ち漏らしたら終わりだよ!!」
「大丈夫大丈夫!いけるいける!なんとかなる。いけるって、多分」
「「多分!?」」
悲鳴をあげる二人を他所に「葉隠いつものやったげて!」と言ってやれば「おー見たいか私の武勇伝!」とエネルギーチャンバーの操作レバーを引いた。
直後、艦が大きく揺れる。
そして何かが軋むような音がコックピット中に響き渡った。計器が景気よく色づき、危険を報せる警告音が鳴り、何人か悲鳴をあげて泣いた。
けれど、賭けには勝った。
「エネルギー充填率121%!!緑谷艦長、いつでも発射可能です!!お茶子さん、ターゲットのロックオンは!!」
「OK、問題なし!!ニコちゃん、こっちもいつでもいけるよ!!」
景気良く上がった声に「カウント開始!」と返せば「あいさー!」とクルーの声が戻ってくる。
その様子に舵を握るあしどんが「どちくしょーがー!」と叫びながら艦を動かす。敵の猛攻をシールドで受けとめながら、艦に取り付けられた主砲がついに敵旗艦の座標へと向く。
「砲撃用意!!カウント開始!!」
私の声にカウント確認の声がコックピット中からあがる。その様子に耳郎ちゃんもとうとう観念して、主砲の発射トリガーを手にした。
「カウント10!シールド、解除!皆備えて!」
梅雨ちゃんの声が響くと同時、艦に衝撃が走り激しく揺れる。けれど致命的なダメージはなかった。ダメージ予測数値的はどれも想定内、いやそれよりずっと下回っている。どうやら前回の改修時に取り付けた切島重工のレッドライオン装甲は伊達ではなかったらしい。高い買い物だと思っていたけれど、いい買い物をしたものだ。
「エネルギー充填率139%!!最大出力です!!」
百の叫びに耳郎ちゃんが主砲の位置を調整しながらカウントを口にする。
私もカウントを口にし、最後のそれを叫んだ。
「カウント0!!トドロキオン・主砲超次元爆裂ガチムチスパイラルエンデペンデンスギャラクシーサイコメガ粒子キャノン発射!!」
「カウント0!主砲超次元爆裂ガチムチスパイ━━━言えるか!!発射!!」
悪態をつきながらトリガーが引かれ、艦主砲から巨大な黄色の閃光が走る。真っ直ぐに伸びていく光の濁流は目の前にあった有象無象の艦隊を全て撃ち破り、そのまま小惑星群へと加速していく。
それから数瞬のこと、カッと激しい光が小惑星群の中心から走った。見事なまでの十字の爆炎だ。非常電源に切り替わり少し薄暗くなったコックピット内で、クルー達から歓声があがる。
けれど、それも長く続かなかった。
「そんなっ・・・・ニコちゃん艦長!左舷より敵反応!それも宙母規模一隻!!戦艦二隻!!護衛艦まで━━━なんや、この数は!?」
コックピットのモニターの中、黒い海に浮かぶ超大型艦の姿が目に入った。帝国のエンブレムが刻まれたそれは戦艦二隻と数えきれない艦隊を引き連れ悠々とこちらへと向かってくる。
「緑谷艦長・・・・敵からのメッセージが来ました。投降せよと。私達の麻婆豆腐の準備が出来ているそうです」
「辛さは、選べるのか・・・・」
「10辛です。帝国法における最高値です」
その言葉に艦内から絶望から悲鳴があがる。
私は帽子を脱いで皆に視線を向けた。
無の境地で、である。
「はい、終わったーー!終わりました!皆ー最後の晩餐しよー!冷蔵庫にシュークリーム買ってあるから誰か持ってきてー!一人一個ねー!」
「わーい、ニコやんふとぱっらー!」
「ニコ!私のポテチも持ってくるよ!」
「あっ、それやったら餅も持ってくるわ。あんこも、きな粉も、醤油も、何であるよー」
「艦長、お紅茶もつけますか?」
「そーね!お願いするわ!あっははは!」
「けろっ・・・・少し、時間を、下さい。艦長より、と」
「辛いのやだなぁ・・・やだなぁ」
皆でわいわい楽しく晩餐しようとしてると、突然光が艦の隣を走っていった。鋭い光の渦は宙母を貫き、側に引き連れていた戦艦や護衛艦隊諸とも力強く薙ぎはらっていく。
お茶子に何が起きたか調べさせると、直ぐにそれがモニターへと映った。厳ついおっさんの顔が船首に張り付いた、荘厳という言葉がふさわしい黄金の戦艦が。
「まさか、こんなに早く!?」
「共和国最大の超大型戦艦TOSINORI・・・!」
皆でシュークリーム片手に呆然としてると通信が入った。画面を表示させれば見慣れた顔が映る。いつものしかめっ面に手を振ると怒号が飛んできた。
「てめぇ!!無茶すんじゃねぇつったろうが!!ごらぁ!!何で救援出した時点で退避しなかった!!」
「いやぁ、あはは」
「あははじゃねぇんだよ!馬鹿が!てめぇに何かあったら示しがつかねぇだろうが!!お義母さんによ!!」
「えへへ、いやぁ、それは上手くやってよ・・・・ん?お義母さん?」
ふとモニターを凝視するとかっちゃんの左手の薬指に見慣れない輪っかが見える。何となく自分の左手を見ると見慣れない、なんか今さっき見た物と同じような物が見える。
ぶわっと冷や汗が噴き上がる感覚を味わいながら、左手についたそれを皆に見せると不思議そうに首を傾げられた。それがどうしたの、みたいな感じ。
まじ、ありえってぃ。
絶世独立、一顧傾城、再顧傾国。
雄英にこの人有りと唄われる、今世紀最上にして最強美少女な私が?銀河を股に掛ける共和国第一雄英銀河群・特別機動警ら艦隊きっての美少女艦長である私が?えっ?
確認したくても怖くて出来ないでいると、モニターに指揮官帽を被ったエリちゃんが映った。
「また、おくさん・・・ふたこ艦長さんと通信ですか?だめですよ、軍の通信を私的に使っちゃ━━━━」
「待て待て待ってぇい!!それどころじゃない事起こってるからぁ!」
はっと目を開けると、教卓の所からこちらを眺める包帯先生と目があった。その瞳は少しの迷いもない、度しがたい物を見る目だった。そんな包帯先生の隣で、ヒーロー学の副担ガチムチは可哀想な目でこちらを見てる。
皆の冷えた視線もついでに突き刺さったよ。わぁお。
「・・・・良い夢は見れたか。緑谷」
静かでいてドスの利いた包帯先生の声に、私は元凶であるかっちゃんの後頭部を憎しみを込めながら見て・・・そして首をゆっくり横へと振った。
「悪夢でした」
「そうか。それは残念だったな。廊下で小一時間正座しろ。あと、お前は補習一時間プラスだ」
「えっ、え、あっ、さ、さぁー!いえっさぁーーー!!」
ビビっと肌にくる強い意思の籠った鋭すぎる眼光。
背筋にブルッときた私は全力で敬礼を返した。こういう時は抵抗しないに限る。天才の私にはわかンだ。これは抵抗したら十倍くらいになって返ってくるやつだって。泣きを見るやつだって、ね!
包帯先生はそれを見ると顎をくいっとやって廊下に促してくる。良い子ちゃんで天才な私は深く頷き、廊下へ向かって行進を始める。はい、緑谷双虎、いっきまーす!
「━━━━━アホが」
歩き出した直後、かっちゃんがぼそりと馬鹿にしてきた。この野郎ぉ!と思って文句の一つでも言ってやろうと爆発頭を見たんだけど━━━━━さっきの悪夢が頭を過って言葉が出てこない。なんか、意味もなく恥ずかしくなってくる。
だから、机に置きっぱの消しゴムをかっちゃんの頭に引き寄せる個性を使って叩きつけてやった。
へーん、ざまぁ!
あっ、すみません。今すぐ、廊下に出ます!!だから補習延長は勘弁して下さい!ちょっと考えるだけでも・・・あっ、はい、無理!成る程!ご検討ありがとう御座います!
「何してるんだい、緑谷さん」
「正座ですが」
「その理由を聞いたつもりだったんだけど・・・」
言われた通り廊下にて正座していると、暇そうな黒豆パイセンがやってきた。んで、なんか探ってきおる。言わぬあぁい、黙秘します。乙女の秘密なので。
そういうパイセンは授業中なのにふらふらほっつき歩いてるんですくぅわぁあ?と色々疑いながら聞いてみれば「ちょっとインターンの事でね」と苦笑いを浮かべた。
「インターン?三年も何かあったんですか?一年の方はなんやかんや中止になりましたよ」
あの一件からもう三日。
学校側からのお達しでインターンが中止になった私達は少し歪だった学生生活を終え、それまで通りの普通の学生生活に戻っていた。
三日前、私が帰ってきてから直ぐの事。
ヴィラン連合の出現を理由に雄英高校は急遽一年のインターンの全面中止を決定した。
私みたいにインターン先が無くなったり、元々行く場所が無かった連中は特に思うこともなかったけど、現在進行形でインターン中だった連中は猛反発した━━━━━と言いたい所だけど、実際はそうでも無かった。お茶子とか轟とかはちょっと不満を口にしてたけど状況を鑑みて仕方ないと納得してたし・・・・何より一番反発しそうなかっちゃんが「インターンなんざいかんでも、やる事は幾らでもあんだろが」と一喝すると誰も何も言わなくなった。
皆それぞれインターン先で思う事があったんだろう。
しかし、あのかっちゃんがなぁ・・・・大人になったのかな。少しは。あれ、なんだろ、なんかかっちゃんの子供の頃を思い出すとホロッとくるものがあるな。泣きそう。
そんな風に少しじーんとしてると、黒豆パイセンが何を勘違いしたのか申し訳なさそうに眉を下げた。
「聞いたよ。残念だったね。君ほどの実力者なら、他に雇いたい所が幾らでもあったろうに・・・・」
「あっ、いえ。どちらかと言えば無くなって、いやっふーーー!って感じなんで、残念とかはないですね。働かなくて良いなら、私は一生働きたくないですもん」
「ぷっ、あははは!そうだったね、君を勧誘した時のことすっかり忘れてたよ」
楽しそうに笑うパイセンの姿にあの日、七三の病室で見た暗さは残ってない。以前のアホ感満載の元気パイセンだ。
そのまま眺めてると黒豆パイセンと目が合う。
そして私の視線の意味に気づいたのか、黒豆パイセンは少し照れたような顔で頬をかいた。
「あの時は情けない姿を見せてごめんね。そして心配してくれてありがとう・・・・でも、もう大丈夫!俺はこの通り!元気っ、一杯さ!!」
ぐっと両腕をあげてマッスルポーズを取って見せた。そう、皆知ってるフロント・ダブル・バイセップスである・・・・えっ、知らない?まじで?
キレてるよ、と声を掛けると別のポーズを取ってきた。皆知ってるサイドチェストだ。凄いキレてる気がする。
いや、ボディービルとか、本当は欠片も知らんけど。全部うろ覚え知識だけど。
そうやってテキトーに褒めてると、黒豆パイセンが気を抜いたのか服を床に落とした。必然、がっつりとそれが視界に入る。
黒豆パイセンは声にならない悲鳴をあげて股間を隠し、顔を真っ青にさせながらめちゃ謝ってきた。それはそうだ。私が出るとこ出たら黒豆パイセンはセクハラどころか、猥褻物なんちゃら罪だ。お縄だ。
だけど私は女神。優しさが天元突破せし者。そこら辺の生娘とは違う、別次元の処女天使。故にそれを手で制し気にしなくて良いと伝えた。
「そんなウインナー見た所で思うこともないんで」
「許して貰えるのはありがたいんだけど、それはそれで傷つくんだけど!?」
「もっと凄いの知ってるので、なんかすみません」
「もっと、凄いのって何!?大丈夫!?それって俺が聞いて大丈夫な話!?」
何故か凄い心配されたので私が小さい頃、かっちゃんの家族と温泉にいった際、かっちゃんパパの股間に潜む魔物を見た話をすると、何とも言えない顔で納得してくれた。ついでに家の父のあれは小動物なのを教えてあげると「聞かなかった事にするよ、どっちも」と言われる。なんでや、パイセン。慰めてあげたのにぃ。
いそいそと服を着たパイセンはもう一度謝ると、忘れかけてたインターンの話を始めた。何でもパイセンは別の場所でインターンを再開するつもりらしい。それで色々と手続き等でバタバタしていたとか。
私はてっきり七三の事務所の再開を待ってインターンを始めると思っていた。なのでその事を聞いてみると、黒豆パイセンも最初そのつもりだったそうだ。
「けれどね、怒られてしまったんだ。サーに。時間が勿体ないってね。一日でも多く、一時間でも多く、一分でも多く、実戦で学ぶべきだって。俺の目指すヒーローになるなら、って」
「・・・・サーはさ、次の事を考えてくれてたんだ。俺がクヨクヨしてる間に、俺の受け入れ先や今後のトレーニングについて、ずっと考えてくれていた。自分が一番大変なのに━━━━だったら、その期待に応えない訳にはいかないよね!こんなに応援されて下を向いてたら、それこそ裏切りだ!!」
「緑谷さん、俺はヒーローになるよ!サーに誇り続けて貰えるような、一流のヒーローに!ルミリオンの名に恥じない、笑顔を守れるヒーローに!」
そう言って笑う姿は少しだけガチムチと被って見えた。
具体的に言葉にするのは難しいけれど、七三が入れ込む理由は何となく分かった気がする。
「取り敢えず、服は落とさないようにしないとですね」
「そ、その話は勘弁して・・・あはは」
話が一段落ついた頃、丁度良くチャイムの音が鳴り響いた。黒豆パイセンはそれにハッとして「それじゃ、俺も授業があるから」と慌てて自分の教室のある方へと帰っていった━━━━いったんだけど、直ぐに戻ってきた。
「そう言えばエリちゃん目が覚めたみたいだね!俺は今日にでも顔を出そうかと思って━━━━」
黒豆パイセンが言い切る前に、教室のドアが開いた。
そこにはしかめっ面の包帯先生がいる。
ジト目の包帯先生に黒豆パイセンは静かに口を閉じた。
「━━━━━・・・・・まだ、話してなかったんですね。たはははは・・・・すみません」
謝るパイセンを放っておき包帯先生を見れば、深い、それは深い溜息を溢しなすった。
「はぁ、そういう事だ。緑谷、彼女がお前らに会いたがっている。放課後予定があれば━━━━」
「OKです!超暇です!お土産見繕ってくるんで、今日は早退で良いですか!!やったぁーーー!何買おっかなぁーー!シュークリームは外せないよねー!あとはケーキでしょ?いや、洋物ばっかりは飽きるかな?それならようかん?カステラ?どら焼き?煎餅!煎餅にしよ!かっちゃん!!買い物いこーー!!お土産買いにいくよーー!」
「早退して良いとは言ってないし、爆豪を巻き込んでやるな。馬鹿たれ」
スパン、と気持ちの良い音が鳴り響いた。
普通にめっちゃ痛かった。
知能指数が4は減った気がする。