私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ヒロアカの新しいOPで耳郎ちゃんがヒロイン過ぎるのも好きだけど、投げ捨てられる激ださトレーナーと、それを手にショボくれる相澤先生も狂おしいくらいしゅき。なに、あれ。


日頃の行いが悪いからそんな事言われるんですよ。こういうものは積み重ねですからねぇ。猫好きなんてギャップだけじゃぁ人気なんて得られないんですよ!深く反省してくださいね!えっ、ブーメラン?何が?の巻き

「文化祭があります」

 

バンド名について考えようとしたLHRの時間。

日々ストレスに悩まされていた私の耳に突然響いたのは、包帯先生のそんなサプライズだった。

皆が良く分からない言葉ではしゃぐ中、私は何度か深呼吸したあと冷静に考える。包帯先生がなんと言ったかを。記憶にあるそれはたった一言。付け加えがないならそれだけの意味だ。しかし、そんな事あり得るのか?日頃苦行しか与えてこない包帯先生が?答えはノット。あり得ない。一枚だけ買った宝クジで一等当たるほどあり得ない。となれば、何かあった筈だ。あの暗号の前後、解読する為のヒントが。

 

私は学習する天才、もう騙されたりしない。

 

始まりは入学初日の突然の個性ありきの体力テストからだ。初日の最初の時間、なんの予告もなしのテスト。いきなりな上、最下位は除籍処分とか言ってくるbadサプライズつき。正直、ヤヴァイクラスに来てしまったと思ったものだ。

次に覚えてるサプライズと言えば、体育祭とかっていう矢鱈と疲れる行事の報告。しかも夏休みをたてに脅して参加を強要してくる始末。あの時ほど包帯先生の理不尽を思ったことはない。ん?あれ、喜んだ覚えがあるな。おかしい、記憶違いかな?

その次にといえば職場体験。資格もない素人なのに連続殺人犯みたいなのと戦う羽目になった。授業参観では包帯先生が止めなかったせいで母様に心配をかけ、その代償でキュウリ食わされる羽目にもなった。合宿では私だけネココス達の攻撃掻い潜ったのに崖から落としてくるし、最近だとインターンなんてのもサプライズしてきた。いや、インターンに関していえばエリちゃんと会えた訳だし、全部が全部悪かった訳ではないけど・・・・・いや、でもなそれを抜きにしても包帯先生が持ってくるサプライズは碌なもんじゃない。私にとっての今年の不幸は皆包帯先生から来てるといっても過言ではないのだ。うん。

 

故に油断せずに行こうと思う訳だ。

 

スッと手を挙げると包帯先生と目が合った。

分かりやすく嫌そうな顔をした先生だったが、周囲を軽く見渡して他に挙手してるやつがいないのを確認すると渋々「どうした、緑谷」と聞いてきた。

なので、ここはバシッと言ってやる。

 

「何を、企んでいるんですか」

「そっくりそのまま返す。緑谷、何を企んでいる」

「・・・・いや、私が聞いてるんですけど」

「分かった、俺から言おう。何も企んでない。お前も何を企んでいるのか言え。正直に今言えば特に罰したりしない」

「何も企んでませんけど」

「嘘をつくんじゃない」

 

なんだとこの野郎ぅ!人が真面目に聞けばこれだ!

なんだってんだよぉぅ!

 

「嘘前提で話さないでくれますか!傷つきましたよ!私は!ええそりゃぁもう、傷つきました!!断固抗議する所存ですとも!!それより、そっちこそ企んでる事をはいて下さい!今度は何をやるつもりですか!あれでしょう、文化祭と言いながら坂道転がるチーズ追い掛けさせたり、ぶちキレた牛の大群に追い回されたり、トマトとオレンジを投げ合ってから新幹線とか押し飛ばさせたりするつもりなんでしょう!!私知ってるんですから!」

「お前はまた無駄な知識ばかりつけて・・・・」

 

おもくそ溜息をついた包帯先生は「普通の文化祭だ」と良い放った。いけしゃぁしゃぁと。

 

「先程、切島から指摘があったように、確かに今年は色々と問題があった。それこそ文化祭を中止にするべき事が。だが、そうは言ってもだ、雄英もヒーロー科だけで回ってる訳じゃない━━━━」

 

包帯先生が言うことにゃ、体育祭がヒーロー科の晴れ舞台なら文化祭は他科にとっての晴れ舞台らしい。加えて最近のヒーロー科重視の学校対応にストレスに感じてる者も少なくなく、そういった意味でも他科の生徒の為に息抜きのイベントとしてやる事が決まったそうだ。普通の文化祭が。大事な事なので二度言います。普通の文化祭が。

 

「━━━━とまぁ、そういう訳だ。今年は例年と異なりごく一部の関係者を除き学内だけの文化祭になる。規模は縮小したが、学校をあげてのイベントだ。ヒーロー科は主役ではないがウチのクラスでも出し物を一つ出さなくてはならん。今日はそれを決めてもらう」

 

言うことは言い切ったという態度で、包帯先生は寝袋にくるまって教室の隅に腰掛けた。そしていつの間にか壇上へと上がっていた眼鏡に司会を任せて、寝た。僅かな迷いすらなく寝た。自由か。あっ、自由が売りだったな。うちの学校。成る程・・・・いや、成る程じゃないけど!

 

「えーーー、それでは相澤先生にかわり、ここからはA組委員長飯田天哉が進行をつとめさせて頂きます!スムーズにまとめられるよう頑張ります!━━━ではまず候補を挙げていこう!希望のある者は挙手を!」

 

こういうものは大体初めの意見に影響されるもの。

誰かが食べ物屋さんをやりたいといえば何の食べ物屋さんになるか考え、誰かが演劇やりたいといえば何を題目にするか考え、誰かが展示物をやりたいといえば何を展示物するのか釣られて考えてしまうのが人間。

だから、本気でおのが意見を通すならば先手必勝に限る。

 

スタート合図と同時に案の定皆が一斉に動き始める。

なので私は全員の手に引き寄せる個性を発動。挙げた掌と机を貼り付けにする。コントロールがぶれて何人かの掌は捉えられなかったけど、所詮私より後ろの席の連中。恐るるに足らず。

 

「はい!はい!眼鏡委員長!!はいッッッ!!」

「あれ、一斉に手が挙がったような、あ、緑谷くん」

「よっしゃぁ!!」

 

思わずあげた歓喜の声にブーイングがあがった。

負け犬達の遠吠えがなんとも耳に心地良い。

個性?使ってないぉ。証拠あるのぉ?ないでそ?使ってないもぉん。

 

一頻り負け犬達をディスってから、私は思い付いたそれを口にした。

 

「新感覚バンド・天上天下唯我独尊一騎当千国士無双系ハイパーギャラクシーエレガントプリンセスオブプリンセスニコWith下僕ーズの結成初ライブ!!他A組メンバーのバックダンス付き!!」

「成る程!良い意見だ!八百万くん、取り敢えず一番端っこに記入を」

「一番先頭でしょぉがぁぁぁぁぁ!!」

 

あまりの扱いに不満を爆発させたが、「相澤先生から聞いた趣旨を忘れてはいけない」と抗議をはね除けてきた。ちくしょぉー。

 

悔しさに歯軋りしてるとドンマイが呆れたような溜息を溢す。

 

「どんなものが飛び出るのかと思えば・・・私欲の塊じゃねぇーか。爆豪、こういう時だろ」

「やかぁしわ、ボケ。てめぇは自分の影の薄さでも気にしてろ、クソモブ」

「酷いっ!」

 

かっちゃん達のやり取りを他所に、意見合戦はその勢いを増していく。やれメイド喫茶やら、おもち屋さんやら、腕相撲やら、びっくりハウスやら、クレープ屋やら、ダンスやら、ふれあいどうぶつえんやら、暗黒学徒の宴やら・・・・・暗黒学徒の宴!?なにすんの、それ!気になるんですけど!トコトコ、それなんなの!詳しく!闇鍋とかすんの!?えっ?トコトコってなに?あんた事だよ、トコトコぉ!!

えっ?耳郎ちゃんがコント?バンドじゃなくて、コント?そっか、応援するよ。耳郎ちゃん頑張ってね。えっ、やるんでしょ?コント。言い出しっぺなのに、何もしないなんてないよね?ね!楽しみだなぁ!!

えっ、デスマッチ?何言ってんのかっちゃん。頭おかしいの?え?何が私には言われたくないだ、こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

そんなこんなで色々とクラスの皆から案が出たが、私の予想に反して物の見事にバラバラ。釣られると思ったのに、そんな事全然なかった。なんて自己主張の激しい自分勝手なやつらなんだ、うちのクラスメイトは。駄目だな、まったく・・・・なに、かっちゃん。その目は。

 

物言いたげなかっちゃんを気にしてると、副委員長の百が黒板を見て掌を振る。

すると百の触れた場所にあった『僕のキラメキショー』とかっていういつの間にか書かれていた文字が黒板から消えた。「あっ」という悲痛の声が外国人のアオヤーマから響く。

 

「不適切・実現不可。よく分からないものは消去させて頂きますわ」

 

次々に消されていく文字。

その度に悲痛の声が上がる。

ちょっと楽しみにしてた暗黒学徒の宴も消されてしまった。かっちゃんのデスマッチは妥当だけど。

 

なんやかんや一番先頭にして貰った私の案を見て、軽快に動いてた百の手が止まる。改めて見てその案の良さが分かったのかな?と思ってたら、その動きの流れから消そうとしてるのが分かって思わず「あっ」と声が漏れる。

 

私の声に百がチラッとこっちを見た。

じっと百の目を見つめてゆっくり首を横に振る。

すると眉を下げて申し訳なさそうな顔をして・・・・また黒板に触れようとしたので「ストッププリーズ!」と声を張り上げた。ピタッと、また手が止まる。

 

「そ、それを言ったら!郷土史研究発表とか!勉強会とか一番に消さないとでしょ!他科が大真面目におおはしゃぎで色々用意してる中、そんなのやってたらそれこそ顰蹙買うでしょ!!盛り下げ駄目、絶対!!盛り上げていかないと!私らが率先して盛り上げていかないとでしょ!!そうでしょ眼鏡ぇぇぇー!!」

「えっ、それはまぁ、一理ない訳でもないが」

「でしょぅ!そうでしょう!だからバンド!バンドなんだよぉ!皆ではしゃげて楽しめる!私は一躍人気者になる!!ついでに売り出したデビューシングルおお売れ!!有名レコード会社からお声がかかりセカンドアルバム販売!!記録的な売上から今年の紅白出演決定!!来年からはメジャーデビュー!!」

 

頑張って利点を説明してたら百によって私の案が消された。ちくしょぉぉぉぉぉぉ!!くそぉぉぉぉ!!もう発目に収録場所確保して貰ったのにぃぃぃぃ!!

 

それからも話し合いは続いた。

私はやる気か失せたのでかっちゃんの背中をキーボードに見立てて遊んでいたのだが、結局チャイムが鳴るまで何も決まる事はなかった。なんやかんや聞いてたっぽい包帯先生は会議の内容を軽くディスって「明日の朝までに決めておけ」といって扉に手を掛けた。

 

そして、もう一言残して部屋を出ていく。

 

「決まらなかった場合・・・・・公開座学にする」

 

そんなん顰蹙を買うどころやないやん。

言うと絶対になんか言われるので、私は心の中に浮かんだそれを飲み込んで包帯先生の背中を見送った。

 

「━━━━━あと、緑谷。おかしな真似は絶対にするんじゃないぞ」

「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっと待って下さい!なんでまた私だけ注意していくんですか!!差別ですか!!」

「差別というより、区別だ。良いから自重を心掛けろ。お前ら、よく見ておけよ」

「なんだとぉ!!」

 

あんまりにもあんまりな態度。

おかしくね!ってクラスメイトを見渡したら、殆んどの奴らから視線を逸らされた。なんでや!

後ろの方を見れば相変わらずのぬぼーっとした轟の顔が視界に入る。ベストフレンズな轟。きっと無条件に味方になってくれる筈。そう思って声を掛けた。

 

「轟!あんたは私の味方でしょ!親友でしょ!無礼者共になんか言ってやって!」

「ああ、駄目だと思ったら声を掛けるから、それまでは好きにやれ。心配するな」

「それは味方の台詞じゃぬぅわぃ!思いやりなんて糞食らえじゃぁぁぁい!!ばかぁぁーー!」

 

にゃんこバッグを背負って私は裏切り者達を背にクラスを駆け出した。廊下に出るなり「帰るな、お前はこれから補習だ」と包帯先生から声が掛かって、泣きながら補習室に向かって走った。

 

くそったれぇぇぇぇぇい!!


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