私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ジェントルが好きです。
ラブラバも好きです。
でもエンデヴァーおじさんの方が、もぉっと好きです。

(※尚、今後の展開次第でバーニンとミルコに鞍替えする可能性大)



バーニンねえさんかミルコねえさんヒロインで物語が書きたい。そんな事を考える今日この頃書いた『紳士淑女のクランクイン』の閑話の巻き

何もかも信じられなかったあの頃。

 

 

『初めまして諸君━━━━━』

 

 

目的もなくパソコンにかじりつく日々。

 

 

『そう!私はジェントル!!ジェントル・クリミナル!!今を嘆く者達よ、私を信じてついて来い!!』

 

 

モニタの灯りしかない暗くて狭い部屋の中で━━━━

 

 

『私が!!世界を変えてやる!!』

 

 

━━━━私はあなたという、光を見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『歴史に名を残したい、そう・・・それが私!ジェントルさ!!』

 

「キャーーーーーー!!すてき!!やっぱり素敵よ!ジェントル!!」

 

モニタから流れる彼の姿と声に、興奮から思わず椅子から転がり落ちた。お尻が少し痛いけれど、これも仕方のない事。だってこんなに素敵なのだもの。大人しく座ってなんていられる訳がない。

 

ジェントルは今日も本当に素敵!

整えられたお髭はチャーミングだし、襟の大きなコートはカッコいいし、縦じまのズボンを穿いた足は最高にスマートだし、声だって男らしさのある渋くて何処かエロスに満ちてる良い声だわ!数多くのヴィランの中でも一番に紳士でカッコいいし、おまけにユーモアまであるんだもの!

 

だと言うのに・・・・私はそのモニタに映るある部分が気に入らなくて仕方なかった。それは動画自体じゃなくて、動画の少し下にある数字欄。

そう、再生回数と評価の欄だ。

 

「なによ!!こんなに素敵なのに、なんで再生回数伸びてないのよ!!殆んど昨日と変わらないじゃない!!評価も悪い方ばっかり伸びてるし!!皆分かってないわ!!」

 

本当に世間は見る目がない。

ジェントルはこんなにも素敵なのに!Jストアの不正に対して、皆の代わりに身を挺して制裁してくれてるのに!感謝の言葉はあって然るべきなのに!その下のコメントも下品で下劣で低能な罵倒ばかりなんて、世の中おかしいわ!!何がラブラバ出せよ!!私なんか出ても面白くもなんともないのに!!寧ろジェントルもっと出せでしょ!!もっともっと、ジェントル出せでしょ!!言われなくても出すわよ!!ジェントルで埋め尽くして見せるわ!!

 

こうなったら、正しい評価に直す必要があるわね。

あまりジェントルはこういう事は好かないけれど、でも間違ってるものを直すだけだもの。きっと怒られないわ。

 

そう思ってキーボードに触れようとしたら、玄関の開く音が聞こえてきた。慌てて出迎えに行けば、お出掛けようの外套を纏った彼の姿があった。

日夜世のため人のため悪しき者達に、正義の名の下に制裁を加える天下の義賊。並いるヴィラン達の中で最も気高く高潔な心を持った、ヴィラン界の異端児。

私のパートナー、ジェントル・クリミナルの姿が。

 

ジェントルは自らの行いを世に知らしめる為、危険を省みず動画を上げている。それは立派な事なんだけれど、その代償として色んな人に顔を知られているので、用事があって出掛ける時は変装を欠かさない。今も大きめの外套や帽子、マスクといったジェントル七つ道具で身を隠している。

帽子とマスクの隙間を覗くと、メイクのない目元はいつもよりすっきりしていた。デビュー時代を思い出して胸がときめく。こっちのジェントルも素敵だわ。

 

「お帰りなさい!ジェントル!」

 

いつものように声を掛けた。

いつものように明るい返事を期待して。

 

だけど、彼は弱々しく「ああ」と声を返して帽子とマスクを取った。目元だけでは分からなかったけど、隠されていたジェントルの顔は分かりやすく青ざめていた。額に大粒の汗が滲んでいて、息がとても荒い。

 

「ど、どうしたの!?まさか、ヒーローに!?」

「違うとも。ヒーローには会わなかった・・・・いや、寧ろ厄介な者に目を付けられたかも知れないが」

 

そう言いながらジェントルは脱いだ外套を私に渡し、部屋の中へ入っていく。軽く外套の埃を払ってジェントルを追い掛けて部屋に戻れば、椅子に深く凭れ掛かって座る彼の姿があった。手帳を開いて何かを見つめてる。

 

「本当にどうしたの、ジェントル?」

「ラブラバ、雄英体育祭を覚えているかい?」

「ん?雄英体育祭?今年の?ジェントルの動画を上げてる時にサイトで何度か目にしたけれど・・・・体育祭自体は興味が無かったから見てないの。それにそんな時間があるならジェントルの動画をデビュー時代から見直すわ」

 

当たり前の事なんだけど、ジェントルはそれを聞くと笑い声をあげて笑顔を見せてくれた。

 

「ありがとう。そう言って貰えると、あの頃の私の努力が報われるよ・・・・あー、それで話を戻すのだが、その雄英体育祭の放送中、随分とカメラに映っていた子がいたのだ。雄英高校ヒーロー科一年、緑谷双虎」

「緑谷双虎・・・・?」

「ステインの事件で活躍し、散々に動画をあげられた"ニコ"と呼ばれる彼女だ」

 

その名前に漸くピンときた。

確かに一時期、その名前は動画サイトを賑わせていた。ステインの姿も映っている事から殆んど動画が削除されてしまったが、未だに編集された物が上がる事すらある。記憶してる中で最も伸びた動画は数十万回を軽く超えていた筈だ。そしてその頃、ジェントルの動画へのコメントに彼女の名前もよく見た覚えがある。

 

「あの失礼なコメントの原因でしょ!覚えてるわ!何が、ジェントルも技かけて貰えよ、よ!!ジェントルなら一撃とかもあったわね!思い出すだけでもムカつくわ!!ジェントルはヴィランだけど、皆の為に戦う義賊なんだから!それをっ、あんなただの殺人鬼と同じ扱いだなんて!!失礼しちゃうわ!!」

「私の為に怒ってくれるのは嬉しいんだが、今はそういう事ではなくてね。これを見てくれ、ラブラバ」

 

そう言ってジェントルから渡された手帳にはニコというサインが書かれていた。同じ筆跡でジェントルの本名の飛田という文字と、ジェントルと掛けてなのか紳士マンとかふざけた文字もある。

 

「警告だよ、これは」

 

どういう事なのかとジェントルを見たら、ジェントルは溜息をついてからそっと話し始める。例の計画の為に雄英高校周辺を調査しに行った事。そして調査対象となってた一つ、ゴールドティップスインペリアルを取り扱ってる喫茶店に調査へ入り━━━━そこで雄英の生徒である緑谷双虎(ニコ)と出会ったのだという。

 

「近年稀に見る過激さを見せた今年の雄英体育祭一年の部、そこで見事優勝を果たしてみせたあの爆豪くんの姿もあった。もう一人いた男子生徒に見覚えはなかったが、あの話ぶりからすれば実力は二人並み・・・・いや、恐らくはそれ以上か」

「気づかれたの・・・?」

「それはないだろう。もしそうなっていたら、流石に私も無傷で帰ってはこれなかった筈だ。だが、警戒はされてしまった可能性はある。すまない、ラブラバ。君にも手伝って貰いながら」

 

弱々しい言葉に私は首を横に振った。

ジェントルの落ち込む姿を見てるのが辛くて、私は視線を下げて気持ちを伝えた。

 

「そんな事は良いのよ。ジェントルが無事で良かったわ・・・・それで、計画はどうするの?」

 

私の言葉にジェントルは何も返さない。

平和ボケしている世間に警鐘を鳴らす次の計画。

名門雄英高校への侵入計画。

 

言葉にするのは簡単だけど、行うのは容易ではない。

雄英高校のセキュリティは国内でも有数。

ヴィラン連合の事件で一度隙をつかれて侵入を許したとはいえ、依然としてそのセキュリティの高さは変わってない━━━━それどころか、その事件の影響で強化されてしまってるだろう。

 

「実際、雄英高校が本格的に動いたら、侵入の難しさはこれまでの比じゃないわ。文化祭も中止になるでしょうし、そうなったら隙なんて・・・中止するなら早い方が良いわ。ジェントル、次の企画は━━━」

「ラブラバ」

 

言葉を遮られて、私はそこへ視線を向けた。

ジェントルの視線は自分の右手に向けられていた。

震えて止まらない、その指先に。

 

「━━━━━ラブラバ、私は、私の心は、震えている。恐怖に・・・・そして、これ以上ない歓喜に、だ」

 

その言葉通り、青ざめたジェントルの顔には複雑そうな笑みが浮かんでいた。

 

「彼女と握手を交わした掌が、酷く熱いのだ。ラブラバ。これまで多くのヒーローと相対してきた。だが、あれほど明確な敵意を感じたのは・・・・初めてだった。身が竦むというのを、私は初めて感じたのだ。分かるか、ラブラバ━━━━━私は、あの体育祭で怒涛の活躍を見せた彼女に、ステインすら踏み台にした彼女に、あのニコというヒーローに!!敵だと、そう認識されたのだ!!私が!!」

 

ジェントルの手が握り込まれた。

震えを残したまま。

強く。

 

「このジェントル・クリミナルが!!」

 

握り拳から血を流しながら、ジェントルは笑い声をあげた。瞳を潤ませながら、顔を青ざめさせながら、体を震わせながら━━━━けれど何処までも嬉しそう。

 

「彼女は強い、間違いなく!握手した瞬間に分かった!これまでで、きっと、最も強い!才能もある!運も!エンタメ性も!彼女はいずれ、誰よりも高く飛ぶ!ヒーローとして!誰よりも!!だから━━━━━」

 

 

ドン、とジェントルは拳をテーブルへ叩き付けた。

 

 

 

「━━━━━だからっ、私は勝つぞ」

 

 

 

静かに吐き出された言葉に、ジェントルから漂う熱い空気に、私の体は震えた。

だってその言葉に、これまで感じた事のない程の覚悟が見えたから。この計画を最初に口にした時、髭を懸けるといった言葉すら霞む程の、断固たる覚悟をそこに感じたから。

 

 

 

「私は、彼女に勝つ。勝って、私は・・・・」

 

 

 

ジェントルはそこで口を閉じて、何かを払うように顔を振った。それから何度か深呼吸を繰り返し、体の震えが無くなった頃、ジェントルは漸く顔をあげてくれる。

その表情はいつもの紳士然としたものに戻っていた。先程のような震えがくるような灼熱の気配は感じない。

けれど、その瞳には悔しさが残ってた。

 

「・・・・すまない、やはりリスクが高過ぎるな。計画を見直そう。何より、このまま文化祭が予定通り行われる訳もない。ラブラバ、何か面白い代案は━━━━」

「やりましょう、ジェントル」

「━━━━━っ、らっ、ラブラバ?」

 

ジェントルの声を聞きながら、私はパソコンを操作した。そして雄英高校について調べてる時に見つけた幾つかの記事を表示させ、呆けてるジェントルにその画面を見てもらう。

 

「見て分かるように今回の文化祭開催について、殆んどのメディアが雄英の対応に厳しい意見を表明してるわ。それでも強行した以上、そう簡単に中止はあり得ない。例年に比べれば警備は強化されるでしょうけど、それでも通常時よりセキュリティレベルを落とすのも事実。乗り込むなら、この時以外にない。隙は必ずあるわ・・・・ジェントル確認なんだけれど、自分の正体と私達の計画について話した?何かに気づいてる様子は?」

 

ジェントルは少し考えた後、否と首を横に振る。

 

「それはこの髭に誓って"ない"と断言しよう。多少怪しまれるような行動をしてしまったのは事実だ。加えて撮影の下見にきた事も口にしてしまった━━━だが、明確に私の目的を口にはしていない。私の正体については・・・・どうだろうな。だが、さっきも言ったがあの状況で捕らえなかった事を考えるに、私を知らなかったのではないかと思う。私も・・・自分でいうのもなんだが、そこまでメジャーではないからな。悔しいが。まぁ、ただの一般人とは思われてはなかろうが」

「間違いないのね?それなら仮に教師に伝えられたとしても、学校側も文化祭中止の選択までは出来ない筈よ。パトロールが増える可能性はあるかも知れないけれど、一週間何も起きなければ下見出来る程度に警戒も緩むわ。一ヶ月先のイベントに、今日の事を結び付かせる人間もいないでしょうし。念の為に数日様子を見ましょう。ジェントルは家にいて。ルートに関して懸念があれば私が確認してくるから」

 

やることを考えながら、私がやるべきそれをパソコンに打ち込んで整理していく。

何列か打ち込んだ辺りで背後から声が掛かった。

戸惑うようなジェントルの声が。

 

だから、私はそれを返した。

ずっと前にジェントルから私が貰ったものを。

 

「ジェントルは、私の光なの・・・・あなただけが、私を受け入れてくれた。あなただけが、私に向き合ってくれた。あなただけが、私に踏み出す勇気を教えてくれた」

 

 

「だから、今度は私の番なの。ジェントルがやりたいなら、私は全力で応援する。それが悪い事でも、良いことでも、ジェントルの為なら何だってやって見せる」

 

 

「だから嘘をつかないで、ジェントル。本当にやりたい事を教えて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらい経ったのか、私は時計を確認してなかったから分からない。だけどキーボードの音が鳴り響く中で呟くような声が聞こえてきた。

 

「計画は変えない、私は雄英高校に侵入する。だが、それともう一つやりたい事がある。・・・・・私はあのステインをくだした、彼女を超えたい。勝ちたい。私が、私である為に。私が、ジェントル・クリミナルであるが為に━━━━━━協力してくれるか、ラブラバ」

 

いつもより頼りない言葉に私は頷いた。

いつもより想いを込めて。

力強く。

 

「必ず用意するわ。ジェントルの望む場所を」

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