私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ミルコねえさんパネェぇ(*´Д`)ハァハァ




古事記にもあるようにですね、人の恋路を邪魔する奴は馬に〇られてまえ、と言いますけど……えっ、言わない!?嘘だぁ、昔河川敷にあった古事記には…ねぇ友よ。そうだったよね?こっち向けよ、友よ。の巻き

文化祭まで残り一月を切った今日この頃。

文化祭の出し物について色々と内容が固まった私達A組の面々は、与えられた役割を果たさんとそれぞれがそれぞれの活動を開始していたのであった━━━━━

 

「はい!どうよ!!こんな感じで、どぅ!?」

「完璧だよ、ニコ!!この天才めぇ!」

 

━━━━そして今、私のノルマは終わったのであった!!

 

私がエリちゃん関連の事でわちゃわちゃしてる間にも、A組内での文化祭の話し合いは粛々と進められていた。漸く私やかっちゃんが参加する頃には殆んどやる事が決まっていて、私のやった事といえば言い渡された役割に頷くくらいだった。

 

そんな訳でその日の放課後、A組で借りきった演習場で、あしどんから伝えられた私のダンスパートを完璧にこなして見せれば、様子を見てた皆が歓声をあげて拍手の嵐を起こした。

アルティメットな天才にしてエクセレントな美少女が故の賞賛。目立つのはそこまで好きじゃないけど、これは致し方ない。美少女が故の定め、甘んじて受けようぞ。もっとやるが良い!!讃えよ!我輩を崇めよ!!苦しゅうないぞ、ははははー!!世界は私の為に回ってるーー!!ふぅぅぅぅ!!

 

喜びを表現すべくバレリーナもかくもやといった所作でクルクル回ってると、行動を遮るように横腹をつつかれた。私の親友オブ親友たる、マイフレンドお茶子に━━━っうひゃぅ、ちょっ、く、くすぐったいで御座います!お代官様ぁ!なになにどうした・・・あれ、オコなの?もしかしてオコなの?なんでぇ!?

 

「ううー、何で一番後から練習始めた人が、一番最初にマスターしとるんや。納得いかん」

「ああ、嫉妬ね!いやぁ、ごめん天才で!てへぺろ!」

 

可愛さ全開でてへぺろしたが、ジト目で見られた上に無言で脇腹をつつかれた。お茶子だけじゃなくて、ダンス担当の女子ーズ全員からつつかれた。なんでや、なんでなんや!ほんまの事なのにぃ!くすぐったいんですけどぉ!止めてっ、マジで!ふみゃぁ!

 

過呼吸になるほど女子ーズに弄られて少し。

復活して皆の様子を見てると、喧しいドラム音が聞こえてきた。視線を向けた先では演奏隊になったかっちゃんが怒号をあげながらドラムを叩きまくっていた。

ドラムを頼まれた当初は欠片もやる気無かったのに、今では誰よりも熱心に練習してる。なんで心変わりしたのかは知らないけど、事情を知ってそうなお茶子が言うには「愛やで、愛 」らしい。意味分からん。急に音楽に目覚めたのかな?ん?

 

「おらぁ!ちゃんとついてこいやぁ!!タタタッつったら、ギャーンだっつったろ!!てめぇ何回言わすんだ、アホ面ァ!!おい、カラス頭ァ!てめぇもダラダラしてんじゃねぇ!!キッてやったら、パッだろうが!!舐めてんじゃねぇぞクソが!!」

 

「わ、わっかんねぇよ!んな事言われてもよぉ!なに?!何なの!?何処が駄目なの!?常闇ぃ!助けてぇ!」

「すまん、上鳴。俺にも分からん」

 

私は何となく言いたい事分かったけど、演奏隊の皆は何とも言えない顔をしてる。苦笑いを浮かべてる耳郎ちゃんは分かってるっぽいかな?あっ、助けにいった。大丈夫そうかな?

 

 

「緑谷さん、ちょっと良いですか?」

 

 

わちゃわちゃしてる演奏隊の様子を眺めてると、不意にそんな聞いた事のない高い声が後ろから掛かった。

かっちゃんから視線を外して振り返ってみれば、胸の所で両手をモジモジさせるお口チャックさんがいた。一応軽く周囲を見回してみたけど他に人はいない。声を掛けてきたのはお口チャックさんで間違いないみたいだ。珍しい。

 

なんやかんや、お口チャックさんとは話らしい話をした事がない。前に手マンとっちめる為に個性の事を聞いたけど・・・・思い返すとマジで話したのなんてそれくらい。シュガーアニキならお菓子談義した事あるし、アオヤーマならチーズケーキで語り合った事もあったけどなぁ。しかし、お口チャックさんって長いな。チャッさんでいいや。もう。

 

そんなレアキャラなチャッさんは、私と目が合うと視線をキョロキョロさせて酷く焦り始める。まるで猛獣の前に突き出された子犬のようだ。

その姿に悪戯心がムクムクしちゃって猫パンチと共に「がおぉっ」と言ってみるとめちゃくちゃ怯えられた・・・・いや、なんで!?そんなに!?ダイジョーブ!この美少女怖くない!噛まないよ!あんまり!

 

「すっ、すみません!演出の事で相談があったんですけど、でも、あの、あ、後で良いです!ごめんなさい!」

「あーーーーいやいや、怒ってないから。それよりどったの?演出の事でしょ?」

 

とある事を頭に思い浮かべながら逃げ出そうとするチャックさん掴まえて話を聞けば、やはり私のソロパートの事での相談だった。他の面子と違って私は一人で演じる所がある。曲の間奏部分でやる、お茶子の個性を使った空中でのソロダンスだ。時間としては数十秒もないけれど、間違いなく注目される所だし手は抜けない。演出も同じく、最新の最高が良い。相談があるならどんとこいなのである。

そんな訳で話を聞くと演出ありきで一回リハをしてみないか、との事だった。

 

「さ、先程、み、見てました。その、ダンスの方も、大丈夫そうで、手も空いてるように見えたので、一度、こちらもリハをしてみたくて声を掛けたんですが・・・」

「そういう事ね、いーよー。何処でやるん?チャッさん」

「あ、それは、あの、向こうで・・・チャッさん?」

 

首を傾げながらチャッさんが指差した所には、妙にやる気を滾らせてる演出隊の姿があった。ダンス隊や演奏隊と違い、演出隊の仕事はぶっちゃけ今はやる事ないのでこのやる気も仕方ない気はするけど。

演出隊の仕事は言うまでもなくA組のライブの演出をする事。ライブをより効果的に見せる為の演出を考えたり、飾りとか衣装とか必要な道具を用意したりとか裏方仕事全般だ。━━━━だけど、その演出内容も他の隊と話し合いの末、先日やっと決まったばかりなのだ。余程の事がない限り、変更するにしても試してからだろう。余程の事がない限り、な。

んで、飾りとか衣装に関しても、既に大まかな物は業者に注文して届くのを待ってる状態なので、そっちもやる事なし。

 

だからまぁ、重ねて言うけど、こいつらただの暇人なのである。しょうがない、仕事をくれてやるか。

仏の心を持って慈悲の眼差しを向けると轟は口元を軽く緩めてくれたが、切島と瀬呂が思いっきり顔をしかめてきた。

 

 

「おう、ものすげぇ失礼な事考えてんな。緑谷」

「俺達だって分かってんだよぉ、こんちくしょう」

 

 

おっと、私の鉄壁のポーカーフェイスが崩れちゃってた?そーりー!暇人共ぉ!

 

ダンス隊に片足突っ込んでるアオヤーマも呼んで改めて演出について再確認。段取りを決めてからお茶子に浮かして貰い、曲無しのままだが通してやってみる事に。

 

私の合図と共に空中に飛び出せば、アオヤーマのキラキラビームも空中に放たれる。予定では私の動線にビームがない筈なのだが思いっきりビームが飛び交ったのでいきなりストップ。位置の調整をして再び始めるが、今度はアオヤーマのビームが離れ過ぎてると切島にストップを掛けられる。そいでもう一度話し合って段取りを決め直し、もう一度試してみたが・・・・今度は完璧な私の振り付けに待ったが掛かった。なんだよぉ。

 

「いや、緑谷のダンスに文句ある訳じゃねーんだよ。でもなんかよォ、こうしてみると、中盤にしては騒がしい絵面だなぁって。なんかクライマックス感が凄いんだよな」

「緑谷が飛んでるだけでも結構目引くもんなぁ。最後のポーズ決めた所で音楽止まる幻聴聞いたわ。つーか、本番はここにダイヤモンドダストもすんだろ?なんだろ、盛りすぎた感あるよな」

「青山くんの、光もあるし・・・」

 

なんだと、この野郎共。

私が目立って何が悪い!美少女の義務でしょ!いや、目立つのは不本意だけどね!?だけど、必然でしょ!

轟に味方するよう視線を送ると、分かったと言わんばかりに頷いて口を開いた。

 

「やっぱり、ダイヤモンドダストはラストまで止めて置いた方が良いだろ。青山のレーザーの演出も過剰だ。緑谷はスポットライト当てるだけで十分目立つ」

 

おおぃ!?この野郎ぅ!

何に頷いたの!?今ぁ!?

ねぇ!!削っとるやん!私の見せ場削りまくっとるやん!ねぇぇ!

 

轟の言葉を聞いて切島達はウンウンと頷く。

完全に賛成ムードだ。

おかしい。

 

「じゃぁ、やっぱ緑谷下げる時に青山にレーザーやって貰う感じにするか?ぱぁーってよ。ほら、こーやってさぁ、扇状的にさぁ。切島、こんな感じどーよ?」

「それが良いかもな。スポットライト落として、バババーって青山のレーザー飛ばしたら場面転換としては分かり安いよな。メリハリっつーの?」

「でもそうなると、スポットライトを動かすのは動物には難しくなりそうだね☆!僕と同じく、緑谷さんはスター性が強いからさ☆!」

「あ、あの、でも、決まった場所に動いてくれるなら、そこまでは・・・・あっ、緑谷さんのダンスパートの動きをもう少し抑えて貰えば」

 

私そっちのけで話がずんずん進んでく。

なんか私の見せ場パートがどんどん地味になっていく。

なんでや、お茶子(関係なし)。

 

エリちゃん来るから、その見せ場だけはがっつりやりたいんだけど・・・・バランス考えたら仕方ないのも分かる。元より人手の割に演出過剰過ぎる気はしてたし。

一つの問題点が見つかると、今度は全体の演出について演出隊は見直し始めた。それまでは盛れる限界まで持っていた演出に疑問を持ったようだ。

 

「もしかして、これヤバいんじゃね?切島」

「かもな。と言うか、見返して気づいたんだけどさ、演出隊ライブ終わる頃には死ねるんじゃねぇか。この仕事量」

「僕はダンスパートもあるから、期待し過ぎないでくれよ☆!」

 

そんな事を良いながら、三人が私を見てきた。

なんで私に聞くのか分からないが「今更?」と返したら「もっと早く教えろよぉ!」と言われてしまう。だってそこで苦労するのは私じゃないし。やるっていうなら頑張ってやれよ、としか。

 

「同じクラスメイトとして、最低限掛ける優しさとかあるだろ!?気づいたら言おうぜ!?ねぇ!?」

「どんまい」

「そこはどんまいじゃないからぁ!」

 

演出隊は私とのリハを中断して本格的に演出内容を確認し始めてしまった。アオヤーマもダンス練習に帰り、私も解放されてしまう。仕方ないのでダンス隊でも冷やかしに行こうとしたら、チャッさんに呼び止められた。

 

「どしたん?」

「あ、いや、あの、ダンスパートの動きで少し話が・・・僕、ライト担当なんで、その」

「そういう事ね。りょ」

 

足を止めた私にチャッさんはメモ帳片手に質問してきた。ダンスの流れや位置関係、移動時間など諸々。聞かれた事を淡々と答えていったのだが、私の言葉を文章に起こしていたチャッさんは何故か目を丸くさせる。

 

「え、そんな正確に自分の位置が分かるんですか?移動距離も測ったみたいに・・・・」

「ん?まぁーね。流石にミリ単位は無理だけど。だからさっき言った位置にライト当ててくれさえすれば、後は私が合わせるから大丈夫」

 

私の個性は正確であれば正確であるだけ性能が上がる。

だから個性の性質を理解してからはそういった感覚は積極的に鍛えてきた。元々才能あっての事だけど、今なら目視五十メートル以内、誤差一センチで位置を測れると思う。

ガッツポーズを取りながらその二の腕を叩き『センスの為せる業よ!』とアピールすると、感心するような溜息を吐かれた。素直にそういう反応されるとあれだ。照れる。

 

「凄いですね・・・・前から凄い人だとは、思ってたんですけど。はぁ・・・・・」

「やめぃやめぃ、本当の事だけどさ。天才な上、美少女でごめんね。惚れる事も許す」

「あ、いえ、そんな・・・・・」

 

瀬呂を相手にするぐらいのノリで言ったら、真面目な顔で本気で恐縮された。チャッさん弄りがいがあり過ぎるな。物凄くやりづらいんだZE。

 

どうやって話そうかと考え始めた時、遠くからギターの甲高い音が響いてきた。視線を音の方へ向ければ、耳郎ちゃんが演奏隊の皆の前でやり方を教えてる様子が視界に入る。涙目の上鳴がカクカク頷いてる姿が面白い。話してる内容までは聞こえないけど、あっちもあっちで上手く回ってるようだ。かっちゃんがあんまりにもあんまりなら翻訳係でも行こうと思ってたけど、その心配はいらないみたい。

 

そう思って視線をチャッさんに戻すと、妙に熱っぽい視線で演奏隊を見てるのに気づいた。演奏隊入りたいのか?と一瞬思ったが、こっそり背後回って視線の先を追ったら耳郎ちゃん見てるっぽい。

 

「可愛いよね、耳郎ちゃん」

「ひぇぇっ!?」

 

声を掛けたらチャッさんは悲鳴を上げた。

顔を真っ赤にさせて冷や汗も凄い。

視線も泳ぎまくってて、息も荒くて、手がアワアワとしてて、もうなんだ挙動不審が過ぎる。

 

「あ、あの、ちが、違うんです!僕は、別にっ、耳郎さんの事は━━━━━」

「あーーーうんうん。分かった分かった。何も見なかった事にするから。大丈夫、耳郎ちゃん可愛いから仕方ない仕方ない。普段ボーイッシュだけど、時折見せる乙女な所がきゃわいいんだよね。ギャップ萌なんだよね。分かる」

「━━━━━何も見なかった事にしてくれるんじゃないんですか!?」

「皆聞いてよぉぉぉぉぉぉ!!チャッさんがねぇぇぇぇ!!」

「もう話そうとしてるし!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんや楽しい文化祭の練習も終えて部屋に帰ると、充電してたスマホがピカピカしてた。ゲームアプリからの体力回復報告かと思って画面を表示させれば、やっぱり回復報告だった。

けれど、今日はもう一つ知らないアドレスから通知が来てた。

 

メールを開いてみれば、Subに書き込まれたその文字が目に入った。『撮影会への招待状』という、その文字が。


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