私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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しぇんろぉぉぉぉぉん!おらに、文才をおくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!(心からの叫び)


料理と同じ様に、何事も下準備というのは大切。衝動で殴ったりしては駄目。良いですか、相手に一度一番ダメージにならない場所を攻撃させてから、正当防衛を盾にやりなさい。一思いに股関を。良いですね?の巻き

エリちゃんとの楽しい学校見学会を終えた翌日。

 

「━━━━という訳で、どっかの馬鹿が喧嘩吹っ掛けてきました。ぶん殴りにいきますので、フォローの方お願いしまーす」

 

私は休み時間を利用してガチムチをいつもの仮眠室に呼び出し、悪戯メールの内容を書き上げたノートを見せると同時に協力要請をしていた。

えっ、話したら不味いんじゃないのか?大丈夫!バレなければどうという事もない、問題ナッシング。念の為に監視されてる可能性の高いスマホは教室に置いてったし、ガチムチが秘密を話せるレベルに機密性の高い仮眠室へ来てるからOKOK。もーまんたいよ━━━━というか、あんなフワフワした脅ししか出来ないレベルなら、そこまで心配する必要もない気がするけどね。それこそ警察とかヒーローが本格的に動き出したりしなければ、今回の輩相手ならバレないでしょ。

 

ガチムチは私の話を聞きながらノートを読み終えると、矢鱈と長い溜息をついてから一息つくようにお茶をズズッと飲む。

 

「・・・はぁ、まずはこう言うべきかな。一人で抱え込まずよく相談してくれたね。緑谷少女。信用してくれてありがとう。他にも色々言いたい事はあるけれど・・・・なんでまた、こんな事になっちゃったんだい?何か心当たりは?」

 

心当たりというか、犯人だと思う奴は分かる。

態々撮影会なんて言葉を使ってきたあたり、恐らく喫茶店の時の紳士マスクだろうと思う。私が刺した釘で刺し返しにくるとか、何気洒落が利いてるよね。こんな回りくどい事するくらいなら、いっそその場で文句でも言えば良かったのに。ご丁寧に即殴り飛ばしてやったものを。

はぁ、面倒臭い。

 

「恐らく差出人だと思う輩には会いました。喧嘩売られたのはちょっと謎ですね。めちゃくちゃ怪しい行動してたから、かなり遠回しに『私の近くで変な事するなよ』と釘刺したんですけど・・・・やっぱりそれですかね?プライド傷つけちゃった系かな?でも、それならそれで直ぐ喧嘩売ってくれば良いのにっ、て個人的には思うんですけどねぇー。言ってくれれば、普通に買うのに」

「はぁーー・・・・まったく君は。まず、不審者に迂闊に近寄らない。どうしてもと言うなら、そういう時こそ直ぐに通報しなさい。君はまだ学生なんだから、何でもその場で解決しようとしないの。それと喧嘩を簡単に買うんじゃありません。良いね?」

「へーい」

 

ガチムチは「本当に分かってるのかなぁ」とぼやきながらノートを返してきた。

 

「さて、先に確認をしておきたいんだけど、今この話を知っているのは私だけで良いのかな?爆豪少年は?」

「あーー、かっちゃんにはまだ言ってません。昨日話そうとしたんですけど、文化祭の練習で疲れたのか部屋行ったらもう寝てて。だから、今夜にでも話そうかと」

「へぇ、あのタフネスが売りの爆豪くんが疲れてか・・・・練習相当頑張ってるんだね」

「付き合わされてる皆は屍みたいになってましたけどねぇ。あはは」

「HAHAHA、そりゃそうだ・・・・というか、ちょっと待って緑谷少女。彼寝てたんだよね?そもそもどうやって部屋に入ったの君」

 

急に真顔になったかと思えば、ガチムチはそんなどうでも良いことを聞いてきた。

そんな事聞くまでもないのに。

 

「━━━━?普通に合鍵で入りましたよ。貰ってるんで。大丈夫ですよ、窓割って入ったりしてないんで」

「いや、私もそんな泥棒みたいな事するとは思ってないよ。でも合鍵か・・・・・君ら本当に付き・・・・何でもないよ。気にしないで。おじさんの感覚が古いのかも知れないね。うん、そういう事にしておこう。さて、話を戻そうか。まだ通報もせず相澤くんにも話さず、私にしか話していないって事は、何かしら考えがあるんだろう?まずはそれを聞かせて貰えないかな?」

 

ガチムチは話が早くて助かる。

相手の狙いがどうあれ、この不安定な時期にこんなメールが生徒に来てしまった事が学校側に知られれば、学校側は警備を更に強化するしかない。そうなれば当然、文化祭は中止。他の活動だって、その多くが自粛に追い込まれるだろう。

 

そして、エリちゃんは間違いなくしょぼんとする。許せん。

 

だから、私はこの件が人に知られる前に終わらせるつもりだ。具体的に目標を言えば、文化祭の開催に悪影響を及ぼす騒ぎを起こす前に、紳士マスクとその協力者を逮捕すること━━━とは言ってもだ。メールの誘いを馬鹿正直に受けて一人で戦いに行くつもりはないし、ましてや一人で全部解決しようとも思ってない。

それが出来るなら理想ではあるが、現実的に考えて難し過ぎる。

 

あの時の紳士マスク一人を倒すだけなら、それほど難しくない気がしてる。確かにそれなりに強そうではあった。まともにやったら面倒そうな相手だとは思う。

だけど、あまりにも雰囲気が温かったのだ。釘を刺した瞬間、紳士マスクから向けられた敵意は・・・・チワワに睨まれた程度だった。全然怖くなかった。

だけどそれもあくまでお互いが対等な条件、状態の下で戦った場合の話。主導権が相手にある以上、相手にとってベストの戦いが出来る状況・環境を用意されるだろう。態々こんな手間の掛かる事をやってくる連中だ。報復手段があるなら、自らを守る為の"保険"も用意している事が考えられる。それらが騒ぎを起こす類いの事で、文化祭に影響及ぼすものなら使われた時点でアウト。勝てても意味がない。

 

叩くなら一気に全部。

保険を使う暇もなく、報復する余裕もなく。

疾風迅雷で丸ごと一撃粉砕である。

 

それにはどうしても人手がいる。

恐らくいるであろう紳士マスクの協力者まで綺麗さっぱり根こそぎ捕まえる為にも、教師の協力は勿論、警察関係者とヒーローの協力も必要だ。

 

「私が連中の目を引き付けてる間に、捕まえる為の準備してて欲しいんですよね。現段階だとただの悪戯で終わるレベルなんで、次の連絡がきて相手の動きが具体的に分かったら動けるようにして貰いたいんですけど・・・・頼めます?」

 

私の話を一通り聞いて、ガチムチは疲れた顔をする。

 

「君は教師の私に、生徒を囮にしろって言うのかい?」

「まぁ、そうですね」

「そうですねって・・・・軽く言うなぁ、もう」

 

ガチムチはお茶を啜りながら、何とも言えない顔で悩み始めた。悩む時点でこっちとしてはありがたい。これが包帯先生ならとりつく島もなくスマホを取り上げて校長辺りに報告しそうなもんだし。

暫く唸った後、ガチムチは湯飲みをテーブルに置いて私を見据えた。真面目モードだ。

 

「教師としては頷けない。君の身の安全に関わるからね。然るべき所へ連絡し対応するべきだと思ってる。・・・・だけど━━━━」

 

言葉を途切れさせたガチムチは私の頭を撫でてきた。

すわセクハラか!っと思ったけど、ツッコミより早くガチムチが言葉を続けた。

 

「━━━━━君が皆の為に、文化祭を守ろうとするその気持ちは応援したいとも思ってる。君の()()としてね」

 

それだけ言うと、ガチムチは頭から手を離して立ち上がった。よっこいしょ、とかおっさん臭い言葉を言いながら。

 

「取り敢えず、塚内くんに相談してみるよ。事情も含めて。信用出来る知り合いのヒーローにも声を掛けておく。━━━だけど、万全の体制が整えられないようなら、今回の事は諦めて欲しい。良いね?」

「万全ってどれくらいですか?」

「君が危険な目に遭わないくらい、かな」

「もう一声」

「条件を値切らないで」

 

暫く条件の緩和について交渉を続けたけど、ガチムチはそこだけは首を縦にふらなかった。どう話が転ぶか分からない以上、交戦許可くらいは取りたかったんだけど・・・うぅん、ガチムチの頑固ホモぉ。

あと、去り際「最悪、何かする前に教えてね」とか言われた。何もしないって言ってるのに?なんだろね?

 

 

 

 

その日の放課後、文化祭の練習を終えた私はかっちゃんの部屋に直行した。先に帰られると前みたいに眠られる可能性があったので、部屋に帰るかっちゃんの背中にぴったり張り付いて一緒に帰った。無言で。

周りからの生暖かい視線には勘違いだと叫びたい所だが、スマホの事もあるので睨む程度に留めておく。大丈夫だと思うけど、盗聴盗撮は警戒した方が良い。

事が済んだら覚悟しておけ、醤油顔・アホ面・尻尾。

 

部屋に入るまでは何も聞かず怪訝そうな顔で私を見るだけだったかっちゃんだけど、部屋に入った瞬間「今度は何しやがった!」と怒鳴ってきた。私が何かした体で話を進められるのは腹が立ったのでローキックをお見舞いして、即座に返ってきたローキックはガードしとく。

ははは!私に不意討ちなど、貴様にはッッッッ!?あっ、あああああああああああああああ!!!ば、馬鹿野郎ぅ!!雷神拳は反則でしょ!!私のっ、ファンキーボーンがおかしくなったらどうするのぅ!!なに、ファニィーボーン?だからそう言ってるでしょぉ!ファンキーボーンだってさぁぁぁぁ!!

 

 

ダメージの回復を待って、かっちゃんの部屋でだらける事暫く。スマホの電源を落とし、毛布でぐるぐる巻きにしてから、私は改めてメールの件とガチムチに伝えた件について話した。そしてその話を始めると直ぐ、かっちゃんの額に青筋が浮かぶ。

話し始めて僅か一分の出来事であった。かっちゃんは短気過ぎるのであった。

 

怒りポイントが分からず身構えると、かっちゃんは怒気の籠った溜息を吐きながら話始める。

 

「お前、なんでその日の内に言わねぇんだ」

「・・・えぇ、だって寝てるから」

「そういう時こそ起こしゃ良いだろうが、ああ?無駄な時ばっかり叩き起こしやがって、本当にてめぇは・・・・はぁ、話しただけマシか」

 

無駄な時っては何時の事だろう?身に覚えがありすぎて分からんなぁ。マジで。

 

「まぁまぁ、それは取り敢えず置いとこ。話進まないからさ、ね?」

「ね、じゃねぇわ・・・・んで、どうするつもりだ。俺に話した以上、オールマイトの言う通り大人しくしてるつもりもねぇんだろ?」

「ん?いや、普通に大人しくしてるつもりだけど」

 

私がそう言うとかっちゃんが目を丸くさせながら「はぁ?」と間の抜けた声をあげる。

だけどそれも一瞬、直ぐに疑いの眼差しを向けてきた。

 

「なに、その目は」

「本当の事を話せ、二度は言わねぇぞ」

「だ・か・らっ、大人しくしてるって!・・・・そりゃ、ガチムチがあんまり頼りにならないならやれる事はやるつもりだけど、それだって情報少な過ぎて動けないってば」

 

一応メールにあった『ジェントル・クリミナル』というヴィランについて調べはした。だけど、分かった事と言えば最近ネットの一部で名前が通ってて、警察の捜査が本腰にならない程度の悪事を重ねる小悪党で、正体も経歴も不明で、弾性とかいう個性を使い何人ものプロヒーローを退けた経歴を持ってる事くらい。

六年も活動してて未だに警察に尻尾を捕まれてない以上、逃げ足の速さだけは間違いないんだろうけど・・・まぁ、私が知ってるのはそれだけだ。

 

流石にこんな誰でも知ってるようなしょっぱい情報では何も出来ない。ん?指名手配?一応されてたよ。サイトの一番隅っこの方に載ってた。食い逃げの常習犯と下着泥棒の間に挟まって。あれは気づかないわ。うん。

 

「━━━━て訳でさぁ、次の連絡待ちなわけ。何かあったらまた言うし・・・・ん、なに?」

 

一通り理由を説明してから顔をあげると、かっちゃんが目をぱちくりしてた。可愛らしくあざとさ120パーセントで首を傾げると、おもくそ頬っぺたをつねられる。しかも手加減なし。バリくそ痛い。

 

「やっ、めいっ!!何するだーー!!乙女の柔肌にぃ!!・・・ったいなぁ、もう!まぁ、そりゃね、触れたくなるほど魅力的なのは私も認める所だけどさ、それにしたって加減という物があるでしょうが。どうしてもとお願いしてくれれば、かっちゃんなら特別にお寿司で手を打つ事も━━━」

「訳分かんねぇことほざくな。あと昼はてめぇで買えや。引子さんからちゃんと食費貰ってんだろが・・・・この馬鹿さ加減、偽物って訳じゃねぇな」

「━━━なにおぅ!?」

 

失礼な事ほざいたかっちゃんを睨みつけると、ぼやくようにかっちゃんはある事を話した。

轟から聞いたらしいんだけど、アザラシの学校でヒーロー科の生徒がヴィランと入れ替わられた事件があったらしい。しかもその入れ替わってた時期が仮免許の時で、その入れ替わられてた生徒というのが私と接触したあのエロ女だという。因みにエロ女の中身について、アザラシは教えて貰えなかったそうだ。誰だろ。キバ子かな、ムカつくから。もしキバ子なら、力一杯ぶん殴っておけばよかったなぁ。

 

「まぁ、そういう訳だ。オールマイトが活動休止してから頭の悪ぃ馬鹿が増えてる。この間の糞ヤクザみてぇな厄介なのもいりゃ、今回みてぇな木っ端の馬鹿共もな。これに懲りたら、てめぇも不用意におかしな奴に近づくな。良いな」

「はぁーい。りょ」

 

大人しく返事したらジト目を向けられた。

 

「・・・・・大人しくしてろよ」

「だから、分かったってば」

 

重ね重ね失礼な奴だなと思いつつも、別に企んでもないので頷くとジト目の間にシワが寄った。

 

「正直に話せ、何するつもりだ。聞くだけ聞いてやる」

 

その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが切れる音がした。

 

「だぁかぁらぁっ、何もしないって言ってるじゃん!!分かったって、さっきから言ってるでしょぉぉがぁぁぁぁ!!なんなの!?後から知ったらかっちゃんが心配すると思って、こうして態々教えにきてんのにさ!!そもそも教える必要ないからね!!ガチムチにはちゃんと話通して対応して貰ってんだからさ!!それをなに!?ネチネチ、ネチネチとさ!!大人しくしてるって、言ってんじゃん!!なに喧嘩売ってんの!?上等だよ、買ってやるよぉ!!今日こそ、その爆発頭丸坊主にしてやんよぉ!!!」

「あっ、待て、誰も━━━━━っぬぐ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに殴り合いの喧嘩した。

勝った。圧倒的に勝った━━━━というか、なんか、あんまり抵抗してこなかった。疑い過ぎた事、ちょっとは悪いと思ってるっぽい。まぁ、許さんけどな。

少なくとも、明日のお昼でデザート奢るまでは絶対に許さん。許さぁんんんんんん!!!


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