私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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アニメの方がついに、あのエンデヴァー回来てもうた。はぁぁぁぁぁぁ、たまらん!!
ていうか、原作マジでどうなるの。先が全然見えないよホリー先生。


よく女の敵に「こういう男」的な事を言うやつがいるけど、女の本当の敵も女だから。よく覚えておくように。の巻き

「━━━━もしかして、雄英の緑谷さんじゃない?」

 

不意に掛けられた声に、私はスマホから顔を上げて運転席を見た。するとミラー越しにこちらを覗くタクシーの運転手と目が合う。物珍しそうに覗く視線に、軽く会釈すれば同じように頭を下げ返された。

 

「体育祭見たよ。凄かったね。これでも若い頃ヒーロー目指してた事もあってさ。私は才能なかったから全然駄目だったけど、割と本気でやっててね。だからなんて言うのかな、個性の使い方というか・・・・戦闘センスっていうの?そういうのは凄さとか分かるんだよ。轟くんとの戦闘なんて痺れちゃったよ。あれは凄かった、うん。可愛くて、強くて・・・きっと人気のヒーローになると思うなぁ」

「いやぁ、それほどでも━━━━ありますけどね!クラスでも未来性ナンバーワンと言われたり言われなかったりするくらいなので!あっ、企業秘密なんですけど、引き寄せる個性って簡単そうに見えるじゃないですか!なんか、こう簡単に対象選択して、問答無用に引っ張るみたいな!実は全然そんな事ないんですよ!あれ、実際ムズいんですぅ!超スーパーデラックスシビアなんですよぉ!正確に位置を測ってないと、引き寄せる出力なんて全然でなくて!物の重さも頭に入れてないと、自分が飛ぶことになっちゃって!でもっ!!でもですね!そこは天才な私ですから!息を吐くように出来ちゃうんですけどね!そう、アルティメット可愛くて、めがっさ強くて、百年に一人の天才なんですぅ!私ぃ!サイン要ります?」

「えっ、あ、あぁ、サイン貰えるの?ありがとう、それじゃぁ、そうだな・・・・この手袋とかでも良いかな?」

 

そう言って渡された予備っぽい手袋にササッとヒーロー名のサインを入れてあげる。えっ、サインペン?いつも持ってるけど?私程のスターになると、呼ばなくても人が寄ってきてしまう。故に身嗜みの一つとして常備してるのである。

 

「サインありがとう、息子に自慢出来るよ━━━━それにしても、こんな時間に、こんな所に来て大丈夫かい?この先何もないんだけど」

 

運転手の人はハンドルを握った左手に視線を落とした。見ているのはワイシャツの裾から覗く腕時計。

スマホの時計でさっき確認したけど、時間は既に夜の十時を過ぎた所。未成年の女の子が出歩くには些か遅い時間。車はさっきからどんどん人気のない場所に向かってる。心配されるのは当然だ。

どうやらこの人は違うらしい。それなら答えは決まった。

 

「すみません、ちょっと守秘義務的な感じなので」

「あっ、いや、ごめんね。詮索しようって言うんじゃないよ。ただ、ちょっと心配でね。女の子二人で出掛けるような場所でもないし、時間もあれだからさ・・・・そうか、守秘義務か。こんな時間に出掛けるなんてよっぽどの事なんだろうね。頑張って、応援してるよ」

「あざーす」

 

運転手の人が都合良く勘違いしてくれたみたいなので、そのまま放っておいて窓の外から風景を眺めた。ガラスにうっすらと車内が映る。

車の揺れに合わせてツインテールを揺らす、隣に座る小さな女の子の姿も。

 

深く被った帽子とマスクで表情は見えない。

けれど、コートの上からでも肩に力が入ってるのは分かる。緊張している。慣れた様子はない。きっと、この子も初めての事なんだろう。

ぼんやりその姿を眺めていると、深く被った帽子の下から覗く女の子の瞳と目が合う。窓ガラス越しにも、瞳に浮かぶ緊張と警戒の色は分かる。

 

「━━━━ゲームはもう良いのかしら?」

 

取り繕った声に、私は笑顔を返しておいた。

 

「今日分は回ったからねぇ。今回のイベさぁ、クリア報酬のキャラ好きじゃないから、あんまりやる気しなくて。いや、結構強くなるみたいなんだけど・・・・でも、編成はもう大体決まってるし、私は別に人と対戦とかしないからそこまで強くなってもなぁって。ツインテちゃんはアプリとかしないの?」

「・・・・やってた事もあったわね。もう興味もないけれど。私には・・・・なんでもないわ。それより降りる準備をして、もう直ぐ着くわ」

 

僅かに顔を曇らせたツインテちゃんは手を差し出してきた。大人しくスマホを渡すと、受け取ったそれを側に置いてあった箱へと仕舞い込む。GPSはとっくに切ってるのに用意周到だ。

ミラーから覗いてた運転手が少し不思議そうにしてたけど、私がウィンクすれば納得した様子で前方へと視線を向けた。

 

「降りる前に言っておくわ。私が見逃すのは一度までよ。失望させないで頂戴」

 

ギラリとサングラスの下で怪しく輝く瞳に、私は頷いて返した。

 

「あいあいさー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭がいよいよ前日に迫ったその日。

あれこれ理由を付けて外出許可を得た私は、紳士マスクからの連絡を待って、駅前の漫画喫茶で一人漫画を読み耽っていた。

読んでいるのは後ろに立った人は問答無用で殴るヒットマンの漫画と、たまに警察署を爆破させるとある公園前勤務の警官の漫画。どっちもアホみたいに巻数があるので丁度良かった。幾らでも時間潰せる。

 

かっちゃん並みにボンバーしてる警官の描写におしとやかに笑ってると、スマホがブルブルっときた。スマホの画面を見れば『非通知』の文字。面倒臭がりながら出れば『こんばんは、私だ』とガチムチかな?みたいな言葉が聞こえてくる。

 

「すみません。私という知り合いはいません。お掛けになった電話番号を確認して、もう一度掛けなおして貰えると幸いです。ではっ━━━」

『あっ、待ってくれ!ニコ!私だ、ジェントルクリミナルだ!すまない、非通知になってるのを忘れていた。え、えーっと、そうだ!今何処にいるかね?迎えを寄越したのだが・・・・』

「というか、一つ良いですか?」

『ん?』

 

当たり前のように迎えとか言ってるけど、そんな話これが最初なんですけど?

そもそも待ち合わせ場所も聞いてないんですけど?

私がここにいるの、私が気を利かせて何処にでもいけるように準備してたからなんですけど?

 

こいつから電話を貰ってから、私は待っていた。

撮影会とやらの場所は言わないまでも、待ち合わせ場所とか時間とかとかとか・・・・何かしら追加で連絡が来るだろうと。なのに、こいつ、マジで、何も言ってこなかった。このご時世だ、雄英のセキュリティレベルが普段より上がってる事は、こいつだって分かってる筈。私も外出許可を取ったように、雄英生徒だって気軽に敷地から出られなくなってる。

なのに、こいつ、本当に、マジで、何も言ってこなかった。何時までには学校から出てとか、最低それぐらいしても良くね!?いきなりは出られないからね!?

 

━━━━との事を淡々と伝えると、紳士マスクは申し訳なさそうに謝ってきた。

 

『こっ、こちらの、リサーチ不足だ。すまない、ニコ。こっちもこっちで、何かと準備する事もあり、どうしても手が回らなくて・・・・本当に申し訳ない。それと色々と手を打って貰って感謝する』

「感謝しなくても良いんで、もう止めません?文化祭終わったら幾らでも相手しますから。喧嘩くらい、普通に買いますよ」

『いや!そういう訳にはいかない!こちらも譲れぬものがあるのだ!!相応しい場所を用意した!期待して待っていてくれたまえ!では━━━』

「はいはい、待って待って。迎えは何処に来てるんですか?それとも私の場所分ってます?」

『━━━━あ、そうだった!私としたことがっ!え、と、君の場所は・・・・・あっ、問題ない。私のパートナーが既に把握済みのようだ』

 

大丈夫だろうか、この人。

話すのはこれ三度目だけど、紳士マスクはそう悪いやつでもない気する。何であんな動画あげてるのかは意味分からないけど、根っこから"犯罪者ァ!"みたいな黒マスクや若頭とは違う人種だろう。根っこは腐ってなさそう。これで頑固でさえなければ、説得してるんだけど・・・・やっぱり難しいかなぁ。

 

「分かりました。じゃぁ、この巻読み終わったら店出ますんで、迎えに来てる人にそう伝えて貰えます?」

『えっ、巻?君はそこで何を・・・・?』

「何をって、ここ漫画喫茶ですよ?漫画読むでしょう。普通に。もう少しで終わるので、この巻だけ読ませて下さいありがとうございます」

『いや、礼を言われる程の事では。構わないとも。そうか、漫画喫茶か。そうだな、漫画喫茶なら漫画を読んでいても可笑しくはな・・・・・いや、それは困る!こちらも、時間があまり・・・・あ゛あ゛っ、ごほん!わ、忘れてくれ』

 

どんどんボロが出るな、この人。

多分近くにブレインの人がいないんだろうなぁ。

持ち直そうとした所と、さっき私の場所を確認した事を考えれば、連絡とかはとってそうだけど。

 

『兎に角、外に出て、迎えの者と合流を。忘れてはいないだろうが不穏な動きは━━━━』

「はいはい、分かってますよー。そっちこそ、私が従ってあげてるんですから、変な事しないでくださいね?」

『━━━ッッ!?あ、ああ、勿論だ。で、では、会場にて君を待っている!』

 

ぷっつりと通話の切れたスマホを見ながら、私は面白い人だなこの人・・・・と、思った。打てば響くとはいうけど、こんなに何でもかんでも反応する人はそうはいない。リアクションも込みで。このリアクションっぷり、芸人に成れるよ。

漫画の話をした時のノリツッコミもそうだったけど、少し声色低くしただけで、こんなに良い反応してくれるなんて・・・・はぁ、からかい甲斐あるなぁ。なんで犯罪者してるん?向いてないよ、絶対に。私達バカスリーWithお茶子と漫才やろうぜ。勿体ない。

 

なんか少し心をしんみりさせて店を出ると、店の出口を出て直ぐの所にベージュのコートを羽織り、帽子と色の濃いサングラス、そしてマスクで顔の大半を隠してる女の子がいた。

帽子の下から飛び出したツインテールが、風に揺られてピョンピョンしてる。ツインテちゃんだ。

 

一件すると可愛らしいお客さんに見えない事もないけど、女の子から漂う雰囲気はどうにも剣呑とし過ぎていた。

 

「初めまして、緑谷双虎さん。お迎えにきたわ」

「あ、やっぱり?どうも、こんばんは」

「挨拶は良いわ。それより、確かめさせて貰うわ。貴女が約束を守れているのかどうか」

 

それだけ言うと、ツインテちゃんは何かの機械を取り出して身体に近づけてくる。嫌な予感バリバリなので下がろうとしたら、「抵抗しないで」と威圧的な声で制止を求められた。

 

「あくまで確認するだけ。それ以上の事はしないし、するつもりもない。彼が望んでいないもの。それと私に何かあれば、彼が実行するようになってるから覚えておいて」

「何するつもりか聞いて良い?」

「答える義務が私にある?でも、そうね。答えてあげる。貴女が素直になってくれるなら、それが一番楽だもの━━━━━━文化祭を潰すわ」

 

女の子はそう言うながら私の顔を見てきた。

平静は保ってるつもりだけど、女の子は何かを確信したようにほの暗い喜色が瞳に浮かぶ。

 

「━━━━ふふ、やっぱり、そうなのね。良かった、無駄にならなかった。それなら聞いて、緑谷双虎さん・・・・今回、雄英はかなり無理をしてるでしょう?マスコミも騒いでいるし、何より警察から圧力が掛けられてる。世間からもあまり良く思われてない・・・・だから雄英は今問題を何一つと起こせない。誰が何が原因だろうと、それこそ警報一つ鳴らせない程に」

「ふぅん、良く調べたねぇー。私はそこら辺の事情とか興味ないからさっぱりだけど、そうなのかもねぇ。てか、どんだけ雄英の事好きなの?ファン?今からでも文化祭の招待状あげよっか?」

「嘘つきね。貴女が興味ないわけないわ。だって小さなお友達が来るのでしょう?違うかしら?」

 

探るような声に舌を出しておく。

ツインテちゃんはそれに対して冷たい視線を向けたけど特に言葉を返さず、黙々と機械を身体のあちこちに近づけ続けた。そして小さな電子音が鳴った。ちょうど盗聴機を入れていたズボンのポケット部分で。

ツインテちゃんは私のポケットに手を突っ込んで、マイクのついたそれを引っ張り出した。

 

「━━━━そうだろうとは思っていたわ。だって貴女、見た目よりずっと頭が回りそうだもの。相手は誰かしら?」

「私のパンクでボンバーな幼馴染。爆豪勝己っていったら分かる?体育祭で事あるごとに爆発してた。何かあったら駆け付ける手筈になってる」

 

これは嘘じゃない。

かっちゃん"も"聞いてる。

ていうか、この子、今見た目がなんちゃらって言わなかった?あれ、気のせい?

 

「そう・・・・最低限、人は選んだみたいね。破棄させて貰うわ━━━と、その前に、マイクの先で聞いてる"人達"に警告するわね。こちらが何も知らないと思ったら大間違いよ。手は既に打ってあるわ。迂闊な事しないで頂戴ね」

 

そう啖呵を切って盗聴機を踏み潰す姿は、電話越しでオロオロする紳士マスクより数段格好いい。ボロボロ喋ってくれる紳士マスクと違って中々にやってくれる。こっちはあくまで一人しか名前をあげてないのに、人達とこの子は言った。手を打っている、という不意討ちの言葉はさぞ効いただろう。これがなんの根拠もないただのブラフでも、あれだけはっきり言われれば動揺する。あっちの面子を考えれば大丈夫だとは思うけど、面子次第では動きが止まる可能性もある。本当にやってくれる。

この子が紳士マスクのブレインかどうかは分からないけど、紳士マスクの近くであれこれフォローしてるのは間違いなさそう。

 

「まだ何か持ってるなら、自分で出して貰えるかしら?勿論出さなくても結構よ。ただ、そうしなかった場合の結果だけは考えてね」

「はいはい、これで良い?」

 

スマホに付けてた発信器入りのストラップを外して差し出せば、ツインテちゃんはそれを軽く調べた後面白くなさそうに投げ捨てた。

 

 

 

 

「さぁ、乗り込んで頂戴。案内するわ、彼の元に━━━━」

 

 

 

 

そうして促されるまま用意されたタクシー乗り込み移動を開始。何度かタクシーを替えて移動した後、私は漸くその場所へと辿り着いた。人里から離れた所にある、その古ぼけた遊園地へ。

営業してる様子はない。それは今の時間という訳じゃなくて、もう何年もといった感じ。

 

案内されるまま錆びた門を潜ると、一斉にライトアップされた。音割れしまくりなスピーカーから耳障りな曲が聞こえ、配線が駄目なのか機械が駄目なのかあちこちで火花が散ってる。遊具によっては稼働してるものもあれば、ぎこちない動きで悲鳴をあげてるのも。

周囲の様子を見渡していると、突然スピーカーからドラムロールが流れてきた。それに合わせて稼働式のライトが動いて観覧車を照らす。

 

『リスナー諸君!!これより始まる怪傑浪漫!!目眩からず見届けよ!』

 

スピーカー響く声を聞きながら、ライトアップされた場所に目を凝らしてみる。いつかの紳士マスクの姿があった。今日も姿を隠す為なのか厚着してる。

 

『私はっ!!そうっ!!私はっ、私こそは救世たる義賊の紳士!ジェッッントルゥゥゥゥ、クリミナルゥ!!!』

 

威勢の自己紹介と同時に、紳士マスクは身に付けていた帽子とマスク、コートを脱ぎ捨てた。帽子の下にはオールバックに整えられた白い髪があり、マスクの下には立派な白髭が蓄えられていて、コートの下には襟が矢鱈と強調された燕尾服的なイカれたコーディネートが施され━━━━━パンダみたいなメイクがされてる目は、眩しそうに細められていた。

アホかな。これだけライトアップされてたら、そうなるよね。帽子脱ぐ前に気づいて。

 

『っお、うぉ、眩しっ━━━こ、今宵は多少趣向を変えた物をお見せしよう!そう、私の新たなる挑戦!!その為に今日、ゲストがいらっしゃっている!!』

 

そんな声と同時に、私にもライトアップが襲ってくる。

うおっ、眩しっ!!

 

『そう、今をときめく雄英生!!ヒーロー科の緑谷双虎くんだ!!体育祭で活躍し、あのステインを倒した、あの彼女だ!!日々躍進を続ける彼女は!!今宵、私を止めにきてくれた!!そう、私の次の企画を阻止する為にきてくれたのだ!!このジェントル・クリミナルの敵として!!』

 

手で光を遮りながら、紳士マスクの位置を確認。

さっきの場所から移動はしてないっぽい。

私は側に落ちてた小石をフルスロットルで引っこ抜いた。勿論狙う先は一つ。

 

『故に私は戦うのだ!!私は私の正義の為に!!彼女は彼女の為に!!リスナー刮目せよ、私は今宵━━━━━ッッッ!?』

 

放ったそれは紳士マスクの前で何かに弾かれた。

個性の事は調べた。恐らくそれを使ったんだろう。

紳士マスクの個性である"弾性"は、触れた物に一定の時間弾性を持たせる事が出来る。生物でなければ、対象は空気も何でもありの厄介な物。

一撃で終わればラッキーだったんだけど、流石にそこまで間抜けでもないかぁ。

 

『━━━━━ハハハハハハッッ!!嬉しい限りだ!!お待ちかねなのはっ、お互い様だったようだッッ!!歓迎しよう、ニコ!!私を止めてみたまえ!!君の全力を以て!!!』

 

その言葉と共に紳士マスクは跳んだ。

私に向かって。

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