私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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はい、ジェントル編おわりぃぃぃぃ!
次回、やっと文化祭がはーじまるよーぉぉぉぉ!!


寝たい時に限って眠れないのは良くあるよね。逆に寝たら駄目な時に限って眠たくなる時もあるよね。世の中もっと上手いこといかんのかね?まぁ、私はどっちにしろ直ぐ寝れるんですけどね!ドヤァサ!の巻き

「煌めく眼でロックオン!!」

「猫の手 手助けやって来る!!」

「どこからともなくやって来る・・・」

「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」」」

 

バイィィンとポーズが決まった四人は、カラフルな衣装も相まって真夜中でも取り分け異彩を放っていた。何故か一人だけスーツだったけど、それをおいても異彩を放ってた。一般人なんて私とかっちゃんしかいないというのに、それでも一糸乱れぬ動きで登場ポーズを取って見せるそのプロ根性たるや・・・・思わず感嘆である。ごいすー。

 

かっちゃん達と合流した後、直ぐに他のヒーロー達が遊園地へと雪崩れ込んできた。状況を把握してるプロヒーロー達の動きは迅速で、紳士マスクはあっという間にお縄にされ連行されていった。

紳士マスクの連行に同行しなかった他のヒーロー達も暇な訳ではない。遊園地内にゴロゴロしてる緊急性のある危険物の撤去作業があるからだ。大体紳士マスクが悪いとはいえ、多少は私のせいでもある。なので紳士マスクに代わり、一応念の為に謝罪しといたら「白々しい」と白い目で見られた。なんでやろなぁ。真面目にやってきたのに。

 

皆があっちこっち忙しくしてる間の私はといえば、ヒーロー達と一緒にきたゴリラ刑事に事情聴取を受けていた。と言っても、ゴリさんは最初からこちらの協力者の一人。事情は大体知ってるので、聞かれたのは盗聴機が壊れた後から遊園地までの出来事くらいだ。特に観覧車を含めて所々壊れてるアトラクションについて聞かれた。しつこく聞かれた。訝しげにめちゃくちゃしつこく聞かれた。

 

そんなこんなで漸く解放された私の所に、同じく作業が一段落ついたネココス達がやってきて━━━━バイィィンと復帰の挨拶してきたのが今だ。休業してたのは聞いてたけど復帰したのは今が初耳なのでちょっと驚き。

やんややんやと拍手してると、マンダレイが笑い声をあげながら手をあげた。

 

「お久しぶり、緑谷さん。また派手にやったものね。相変わらずそうで安心したわ」

「こんちゃでーす、派手にやったのは私じゃなくて紳士マスクでーす。私はちょこっとアレしただけでーす。それより洸太きゅん元気ですか?」

 

ふと思い出して洸太きゅんについて聞けば、水色ネココスこと年増・・・・・ボブ子18が「ねこねこねこ」と独特の含み笑いをする。

 

「洸太はねぇー、最近は矢鱈と元気よぉー。この間も虎に必殺技教えてくれ!なんて突っ掛かってたくらいに。なんでかは知らないけどねぇー?ねぇー虎?」

「ウム。身体が出来上がっておらぬが故、我から伝える事はそう多くはなかったがな。精々ランニングのやり方程度か。そう言えば、ラグドールも何か聞かれていたな」

「うん、まぁね。一丁前に気を使いながら、個性の効率の良い特訓方法ないかにゃて聞いてきたよ。一丁前にさー」

 

そう言ってカラカラ笑う黄色ネココスは、何故かヒーロースーツじゃなかった。オフィスレディーみたいなパリっとしたスーツ姿。さっきから気にはなってたけど、なんだろあれ。似合わない訳でもないけど、違和感が凄い。なんだあれ。

違和感が凄くて眺めてると、かっちゃんに頭ひっぱたかれた。スパンッッ、つった。めちゃ痛い。私の貴重な知能指数が2は減った。

 

「えーーと、何かな喧嘩売ってんの?買うけど」

「喧嘩は売ってねぇわ、馬鹿が。あんまりジロジロ見てんなっつってんだ。神野ん時の事忘れた訳じゃねぇだろ。色々あんだ、放っておけ」

 

神野と言われてピンときた。

洸太きゅんからも色々聞いて、迎えにきたマンダレイにも何となく聞いた話題なので余計にである。

ピピピン!ってきた。

 

合宿の時、私と同じように誘拐された黄色ネココスは、私と同じように神野で救出された。救出時、若干衰弱している以外目立った負傷はなく、大事に至らなかったと思われていたそうだが・・・・私と違って、黄色ネココスには一つだけ大きな問題があった。それが個性の消失だった。万年スーツ・変態・僕っ子ワンの証言によれば、個性の力で奪ったとかなんとか。

あれから個性消失について検査やら何やらあるんだとか言ってたけれど、この様子だと結局どうにもならなかったんだろうなぁ。

 

「・・・・・ヘビィだぜぇ」

「そのノリで話聞きに行くんじゃねぇぞ」

 

ぷんすこするかっちゃんからネココス達に視線を戻すと、黄色ネココスのクリクリした丸い大きな瞳と目があった。それはもうがっつり。

しかも私達の話を聞いてたみたいで苦笑いされる。あうちなんだぜ。

 

「たはは、ごめんね!気を使わせちゃってさ!でもあちきは大丈夫だから気にしにゃいで!個性がなくたって、やれる事もやりたい事も幾らでもあるんにゃよ!これからは三人のサポートを頑張る訳さ!取り分け事務に燃えるのだよ!若人達よ!にゃははは!時間もあるし、オフィスラブも狙っちゃおっかなぁー!」

「うちの事務あんただけでしょ。誰とラブする気よ、まったく」

 

溜息交じりにマンダレイがツッコミを入れる中、ボブ子が血涙を出すんじゃないかという顔で怨念の籠ってそうな低い声を吐いた。「オフィスラブなら、私の方がしたいわ」と。

全員が真顔になった所で、虎兄貴が優しい言葉を掛けながらボブ子を回収していった。そのまま結婚すれば良いのにと言ったら、他のネココス達が複雑そうな顔しながらそれは難しいとの事。お似合いなのに、世知辛いね。

 

「・・・・まぁ、ピクシーボブの事は気にしないで。本当に。あれよ、発作みたいな物だから」

「あちきらとか半分諦めてるけど、ピクシーボブはまだ本気で諦めてにゃいからねぇ。ねぇ君達、親戚に独身の格好いいお兄さんとかいにゃい?」

 

「えぇ・・・・あー、お兄さんじゃないけど、かっちゃんとかどうです?将来性はありますよ」

「秒で人を売るんじゃねぇ。ふざけんなクソボケが」

「じゃぁ、切島っていうのがいるんですけど」

「あいつも止めてやれや」

「じゃぁ、眼鏡とか轟とか・・・あとは黒豆パイセンとか、天ちゃんパイセンとかは?」

「・・・・・」

 

なんか言ったげて、かっちゃん。

あの人の相手は学生には酷だよって言ったげてよ。

流石に私も、これでマジに紹介とかになったら心が痛むからね。

 

そうこうしてるとゴリ刑事と話してたガチムチが戻ってきた。話を聞けば今日はもう帰って良いとの事。

ただ紳士マスク達の証言次第では、警察署に呼び出し受けてまた事情聴取するかも、だそうな。

話に一区切りついたタイミングでマンダレイが声を掛けてきた。そろそろ仕事に戻るとの事らしい。

 

「それじゃ、二人共、明日は・・・・て、もう日付変わってたっけ。今日の文化祭頑張ってね。見にはいけないけど、私達も陰ながら応援してるわ。オールマイトもお疲れ様でした。後の事はナイトアイや私達で片付けますから、文化祭に備えてゆっくり休んで下さい」

「ありがとう。明日は忙しくなりそうだし、お言葉に甘えさせて貰うよ。マンダレイ、今日は駆け付けて貰って本当にありがとう。休業中だったというのに」

「そんなっ、そこまで言ってもらう事でも。何より復帰の切っ掛けを貰えて助かったのはこちらの方です。それに他の皆もそうですが、ヒーローとして当たり前の事したまでですから。それよりも今回のビル━━━━いえ、何でもありません。お疲れ様でした」

 

賑やかなネココス達と別れた後、私達は忙しなく働く社会人達に見送られ帰宅を開始した。紳士マスク達に連れてかれた場所は何気に二つくらい県を跨いだ所にある辺境の地だったらしく、車で真っ直ぐ帰っても二時間程掛かるそうだ。とっくに日付が変わった今から慌てて帰っても、寮に着く頃には朝の方が近いという事実に若干頭が痛い所である。

最も外出届けの内容的には翌日帰る事になってるので、仮にもっと早く帰れても寮には帰らず、学校の近場のヒーロー事務所で休ませて貰う手筈になってるんだけど。

 

そうして七三事務所の車が走り出す事少し。

運転手してくれてるバブっちから「コンビニあるけどどうするー?」ときたので、かっちゃんが奢ってくれるなら寄りますと返すと、「何でだ、こら」と隣の目付き悪いボンバーヘッドからツッコミを頂いた。

でも、奢ってくれる気はあるみたいで「軽いもんにしとけ」とツンデレしてくれる。それでこそかっちゃんやで。話分かるぅー。

 

「あはは。仲良いねぇ、二人共。ちょっとした物ならお姉さんが奢ってあげるから、お財布は置いてついておいで。オールマイトは何か食べますか?」

「・・・・・んっ?ふあぁ・・・あーーごめん。少し眠ってしまっていた。何かな、バブルガール」

「コンビニです、コンビニ。ちょっと寄るんですけど、何か欲しい物とかありませんか?」

「コンビニかぁ・・・・それじゃお茶をお願いしようかな。緑谷少女と爆豪少年も、何か欲しい物があれば買っておいで」

 

「あっ━━━━あぁ・・・・」

 

瞼を擦りながら財布を取り出したガチムチが、流れるように千円をくれた。直前に先輩風吹かせたバブっちがションボリンしてるけど、それはツッコまないでおく。ややこしくなるから。バブっちにはまた次の機会に先輩風を吹かせて貰おうと思う。どんまい。

 

着いたコンビニでちょこっと買い物してから帰宅を再開。ガチムチが静かに寝息を立て始めると、程なくしてかっちゃんも窓ガラスに頭を預けたままクテっと就寝していった。

当然というかなんというか、そんな場所に頭を預ければ車の揺れと共に頭を窓ガラスにガンガンぶつける訳で・・・・若干可哀想になったので膝枕してやる事にした。私の件を心配して、昨日良く寝れなかったみたいなのでこれくらいサービスじゃ。よく寝るが良い。ボンバー勝己。

 

ラジオとエンジン音が流れるだけの静かな車内で、かっちゃんのボンバーヘッドを撫で撫でしながら夜景を眺めてると、バブっちが「寝ないのー?」と聞いてきた。

夜に備えて時間があれば昼間に寝まくってた事を伝えれば、呆れた顔で「自由だね、緑谷さんは」と苦笑いされる。

 

「それにしても文化祭かぁー。懐かしいなぁ、何だか随分前の事みたい。緑谷さんは明日何するの?劇とか?お店とか出す感じ?」

「出店とかはないですね。劇はB組がやるみたいですけど。うちはクラスの出し物でライブやります、ライブ」

「ライブかぁ、緑谷さん歌ったりするの?」

「いや、私は踊ります。めちゃ目立つパート貰ったんで、がっつり盛り上げまくってやりますよ」

「はははっ、なんか面白そう。ちょっと見てみたいかも」

 

ハンドルを握りながらバブっちは笑い声をあげた。

その声に反応してかっちゃんがもぞったので、人差し指を口許に当ててバブっちにしぃーってやれば「おっと」と可愛い仕草で口を塞いでくれる。

 

「ごめんね、大丈夫そう?」

 

ゆっくり撫でながら様子を見れば、かっちゃんは相変わらず子供みたいな顔で寝てる。

気持ち良さそう。

 

「大丈夫ですよ。ぐーすかぴーしてます」

「ふふ、そっか。良かった良かった。それにしても可愛い寝顔してるね。起きてる時はずっとこーんなだったのに」

 

かっちゃんの真似なのか、バブっちがぎゅっと眉間にシワを寄せる。微妙に似てる物真似に思わず笑ってしまうと、バブっちもつられてクスクス笑い声をあげる。

それから暫く二人でヒソヒソ話してたけど、自然と会話が途切れて車内はまた静かになった。

 

ラジオから流れる曲を聞きながら、私はぼんやりと目の前にある夜景を眺めた。漸く街並みが見える場所まで戻ってきても、時間が時間だからか暗闇に浮かぶのは街灯くらい。人の気配が殆どしないそこは驚くくらい静かで、何だか街まで眠ってるみたいに見えた。

思えばこうやって深夜のお出掛けとか、初めてかも知れない。あーーー、いや、大晦日に鐘突きに出掛けた事あったわ。でもあの時は結構人がウロウロしてたしなぁ。やっぱりちょっと違うかな。こんなに寂しい感じではなかった。

 

「寂しい、かぁ・・・・」

 

ふと、紳士マスクの顔が頭に浮かんだ。

去り際は背筋を伸ばして何処か誇らしげですらあったけれど、強化して息を吹き返す前は見ていられない表情をしていた。悲痛というのかなんというか。向かってくる姿から言い知れない虚しさが漂っていて、少なくとも本心から望んでそうしているようには見えなかった。

てっきりあのツインテちゃんに弱みでも握られてて、良いように使われてるのかなと考えたけれど・・・・あの子が駆けつけた時の表情を見れば、それが勘違いだったのは直ぐ分かった。

 

直接聞いた訳じゃないから多分でしかないけど、紳士マスクにとってツインテちゃんは、私にとってのかっちゃんだったんじゃないかなと思う。

それが良い出会いだったのかどうかは分からない。結局こうして捕まった事を考えれば、もっと違う出会い方をした方が良かったんじゃないかな?と思わなくもない。

だけど、そうはならなかった。紳士マスク達は捕まって、私達は明日の文化祭の為に帰ってる。それがたった一つの現実。だからこの話はそれで終わりなのだ。

 

不意にかっちゃんが、寝心地悪そうにモゾモゾする。

いつの間にか止まってた手で頭を撫で撫ですれば、かっちゃんはまた直ぐに穏やかな寝息を立て始めた。

 

「ふふっ、ちょろかっちゃん」

 

掌から伝わる温もりを、膝から伝わる鼓動を感じながら、私は座席に凭れて目を閉じた。

瞼の裏に生意気な態度で声を掛けてくれた、あの日のミニかっちゃんの姿が浮かんでくる。

 

 

 

 

 

 

「・・・・ありがとう、かっちゃん」

 

 

 

 

 

 

あの時、私に声を掛けてくれて。

 

 

 

 

 

 

心の中でそれだけ呟いて、私も意識を手放した。

車の振動に体を揺らしながら。


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