私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ようやく、先週のヒロアカ見れた。
ああああああ!エンデヴァァァァァァァ!!


文化祭とかの屋台の食べ物はちゃっちくて値段に見合ってない気がするけど、それでも美味しく感じるのは色々頑張った後でお腹が減ってるからでしょうね。えっ、仲間がいるから?あっ、そっちね。の巻き

早朝から澄みきった青空が広がるその日。

今日のイベントに関して学校側から特別お達しはなく、クラスメート達は朝早くから慌ただしく動き出した。

何の為に?勿論、文化祭の為だ。

 

 

 

「━━━━という訳で!!俺が迎えにきた、よね!」

 

 

 

一時間の車の旅を経て、エリちゃんの病室へと辿りついた俺は、緑谷さんから伝授された格好良いポーズを取りながら部屋に突入した。緑谷さん曰く、エリちゃんがどっかんどっかん笑う定番ネタだというので、この格好良いポーズは練習に練習を重ねた。今が最新にして最高の出来だと自負してる。

 

けれど、何故か笑いは起こらない。

 

不思議に思って病室内のエリちゃんへ視線を向けると、すっかり可愛い外着に着替えてベッドに座るエリちゃんが首を傾げていた。

 

「とりさん・・・・?」

 

訝しげだ!見事なまでの訝しげ!!騙したね!緑谷さん!!でも、ちょっと疑ってたからそこまで驚かないよね!!

でもおっかしいなぁ・・・見せて貰ったプリクラだと本当にこんなポーズしてたのに。こんなに反応悪いとは。

 

「そう、これは鶴の構えっていうんだ!おはよう、エリちゃん!可愛いお洋服だね!よく似合ってるよ!」

「おはよう、ございます・・・・可愛い・・・・・」

 

素直に思った事を伝えると、エリちゃんは少しだけ頬を染め口をモゴモゴしながら下を向いてしまった。恥ずかしがる姿も微笑ましくて温かい気持ちで眺めてると、エリちゃんが俺の後ろの方を気にしたようにチラチラ覗き始めた。どうしたのかと思えば「ふたこさんは・・・」とエリちゃんが小さな声で呟く。

 

「ごめんね、緑谷さんは文化祭の準備が忙しくて、どうしても来れなくてね」

「ううん、大丈夫です。多分、むかえにこれないからって、聞いてたから・・・・」

 

そう言いながら何処か期待していたのだろう。

エリちゃんの表情には落胆の色が見える。

緑谷さんもあの件が無かったら間違いなく来てるだろうから、その期待もあながち間違ってはいないんだけど。何も無かったら絶対に来てるよね。うん。

どう慰めようかと考えてると、エリちゃんは「だけどね」と話始めた。

 

「むかえにこれない代わりに、すごいの見せてくれるって・・・・言ってて、だから・・・えっと、わ、ワクワクさんだから、大丈夫です」

「はははっ、そうか・・・・そうだね。きっと凄いの見せてくれるよ!一緒に応援しちゃおうね!」

「・・・・・うん」

 

それから暫く文化祭のしおり片手にエリちゃんとお喋りしていると、エリちゃんの主治医に外出許可の最終確認をしに行っていた相澤先生が看護師の女性と病室へとやってきた。

エリちゃんもそれに気づいたのか、相澤先生達を見つけるとペコリと頭を下げる。

 

「あっ、お、おはようございます」

「おはよう、エリちゃん。お医者さんから外出許可を貰ってきたよ。今から雄英に向かって一時間くらい車に乗るんだけど、出掛ける準備は出来てるかな?」

 

相澤先生の声にエリちゃんは慌てた様子で辺りを確認し始める。最初は鏡を見ながら自分の洋服を、次に今日一日履く事になる靴を、その次にお出掛け用の小さなバッグを開いて指差ししながら持ち物をチェックしていく。

そう時間も掛からず確認し終えると「だいじょうぶです・・・・」と何処か不安そうに看護師の女性を見つめた。

見つめられた看護師の人が「大丈夫。昨日一緒に確かめたものね。おトイレだってさっき済ませたし」と言えば、エリちゃんは小さく頷いて俺達の顔を見上げた。

そんなエリちゃんの様子に、相澤先生は口元にうっすら笑みを浮かべると、エリちゃんの頭を優しく撫でた。

 

「それじゃ、行こうか。文化祭に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

文化祭当日。

 

学校近場のヒーロー事務所で仮眠した後、予定通りの時間に私とかっちゃんは寮へ帰宅した。

そしてまた予定通り、昨日皆に振る舞ったとかいう百のお紅茶でも嗜みながら、ゆるりと文化祭の準備に勤しもうと思っていたんだけど━━━━━辿り着いたそこは既に戦場であった。A組の面々は右へ左へ駆けずり回り、衣装がどうとか何がないとか、時間がなんとやらとか忙しくしてる。

あらららーと呑気に眺めていたら、荷物を抱えたあしどんに突撃された。おっとぉ。

 

「おっそい!!ニコ!!今まで何処ほっつき歩いてたの!!ほら、これ持ってゴーゴー!」

「おっふ!?えっ、何処に!?ていうか、私の朝のお紅茶タイムは!?」

「そんな時間はない!!ていうか、ニコのこれまでの日常に元からそんな時間ないでしょ!新しく面倒なルーティーン作るな!戯言は良いからさっさと体育館運んで!!待機してる演出隊に渡して、ついでにあんたの出番の確認をしてくる事!戻ったら直ぐにあんたも着替え!良い!?」

「いっ、いえっす!まむっ!緑谷双虎、体育館にいっきまーす!!」

「よぉし、行ってこい!で、爆豪は演奏隊と合流して!!打ち合わせしてるから!!早く!!駆け足!!」

 

「喧しい、言われんでもいくわ」

 

そうして慌ただしくかっちゃんと別れて、私は体育館にいるであろう演出隊の元へと向かった。

人で賑わう体育館について直ぐ、人混みの中にライブの小道具を手に打ち合わせしてる男共を発見。荷物を持って突撃してやる。よっすよっす、童貞共!!私を呼んだらしいなぁ!来たぞぉ!!可愛さ余って美しさまで天元突破してる双虎にゃんが訪れてやったぞぉ!!咽び泣けぇい!!

 

━━━━と軽く挨拶を交わしたら時間もないのでさっさと荷物を渡して、演出隊と絡む部分について確認作業を開始する。練習の時から特に変更点もないので、確認作業は思ったよりスムーズに進み・・・結局5分も掛からずに終わった。

 

用件も済んだので着替える為に寮へ帰ろうとしたんだけど、なんか轟に呼び止められた。なんぞや。

 

「いや、用事の方は大丈夫だったのかと思ってな」

 

そう言う轟の目は矢鱈と真剣だった。

何かを確信してるような態度に、ちょっと動揺する。

何せ今回の件に関して轟には何も話してないのだ。学生で知ってるのはかっちゃんと黒豆パイセンだけ。お茶子も切島も他の皆は誰一人知らない。包帯先生にだってまだ知らせてない・・・・お陰で昨日学校を出る時は随分と怪訝そうな眼差しを送られた。

皆を信用してない訳ではないけど、相手が何処から情報収集してるのかはっきり分からなかった為、話す相手は最低限にしていたのだ。包帯先生に話さなかったのは文化祭を中止にしかねないからだけど。包帯先生はあれでいてかなりツンデレだから、生徒の安全重視で動く筈だからね。

 

しかし、まいったなぁ。

いつから気づいていたのか分からないけど、この調子だと少なくとも昨日今日って訳ではなさそう。そんな素振り見せた覚えはないんだけど。

 

言葉に迷ってると轟に「無理に言わなくて良い」と言われた。

 

「何があったかは話さなくても良い。・・・・・ただ、もう大丈夫なんだな?」

「まぁ・・・・・うん。一応はね」

「それなら良い。ダンス、頑張れよ」

 

そう言って笑顔を浮かべた轟だったけど、その笑顔は何処か寂しげに見えた。見てると胸の所がズキリとしてくる。何だか悪い事した気分だ。

 

「別にさ、轟の事を信用してないとかじゃないからね?お茶子にも話してないくらいなんだし・・・・なんなら、また今度時間のある時にでも話すし」

「分かってる。だから、そんなに気にしなくて良い。お前が無事ならそれで」

 

せやかて、しょんぼりしてるやん。

 

掛ける言葉が中々見つけられず、一人でモヤモヤしてたら轟が切島に呼ばれた。演出隊も本格的に準備を始めるみたい。さっさと行ってしまう背中がまた寂しそうで、思わず呼び止めてしまいそうになるけど、結局掛ける言葉が見つからなかったから止めといた。

ライブ終わったら、焼きそばでも奢ってやるかなぁ。

 

ともあれ、用事も終わったので私も急ぎ寮へと帰る事に。寮へ辿り着くと着替えた皆に出迎えられて、息つく暇もなく既に準備の終わってる女子ーズの面々に更衣室代わりとなってる部屋へ連行された。

私の衣装はちょっと手間が掛かる。なので元より手伝って貰わなきゃならないんだけど、鬼の形相でどんどん着飾らせてくる皆の勢いが凄くて圧倒される。うわっぷ、ってなる。負けっぱなしはお祭り女の沽券に関わるので、皆の勢いに負けないようテンション上げたら「大人しくしてて!!」と怒られた。しょんぼりん。

 

着飾られてる最中に花火の音が鳴った。

おっ、と思って時計を見れば文化祭の開幕の時間。

直ぐにスピーカーからラジオ先生の『雄英文化祭開幕ぅぅぅぅ!!』と響いてくる。あのおっちゃんは朝からテンション上がりまくりすてぃーんだな。元気の秘訣はお紅茶ですか?はぁーゴールドティッシュ・インドジンデアル飲みてぇー。えっ、なに百?違う?何が?ゴールドディプ?なにそれ?

 

ライブ開始まで残り三十分を切った頃。

化粧をしてる所に男子共の声が掛かった。

どうやらお客さんが来たらしい。

 

お茶子に頼んで呼んで貰えば、綺麗におめかしした小さなお客さんがおずおずと部屋に入ってきた。

だから笑顔と共に声を掛けた。

 

「いらっしゃい、エリちゃん!今日はまた随分と可愛くなっちゃったねぇ!がっ、しかしぃ!それでも残念ながら、可愛らしさ部門不動のナンバーワンである私の方が、やっぱりちょこっと上だけどね!なはは!」

 

元気にとまではいかなくても、可愛いらしい返事を期待してたんだけど、エリちゃんから返ってくる物がなかった。なんかぽけーっとしてる。

私の言葉に呆れ顔だったお茶子も、エリちゃんのその様子には首を傾げる。

 

「どうしたん、エリちゃん。何かあった?・・・・さっきのニコちゃんの言葉なら間に受けんでええからね。ニコちゃんのいつもの軽口やから。素直じゃないだけ。ほんまは、エリちゃんめちゃ可愛いー!とか、抱き締めて頬ずりしたいー!っとか思うてるんよ。多分」

 

おっと、勝手に翻訳されてしまった。

大体間違ってないけど。

ついでに甘やかしたいもつけといて。

 

お茶子に声を掛けられても、何も言わずポカンとするそのエリちゃんの様子に、周りの女子ーズが段々と心配そうな顔になっていく。

そして流れるように今度は私がジト目で見られ始める。ちょっ、なんでなん。え、なに、私のせいなの?何とかしろと?あいあい。

 

小粋なジョークで爆笑を取ろうかなぁと、ネタについて考えてたらエリちゃんがゆっくり口を動かし始めた。

 

 

「・・・・・きれい、お姫さまみたい」

 

 

呟かれた小さな声に。

私は自分の服へ視線を落とした。

この日の為に用意した衣装は他の皆と少し違ってフリルのついた白を基調にしたワンピースドレスだ。裾の刺繍や胸元のリボンだったりはダンス隊の服と同じオレンジ色で統一してる。

そんなドレスは可愛いし、我ながら似合うとは思うんだけど・・・・それでもまさかお姫様とまで言われるとは思わなかったので、エリちゃんの反応はちょっと照れる。恥ずい。

 

「すごい、ふたこさん、きれい!かみ下ろしてる!」

「ああ、これね。最後まで皆と悩んだんだけど、ダンスの時に映えるからってこうなったんだ。エリちゃんとお揃いだねぇ」

「えっ、あっ!うん、いっしょ!」

 

目がキラキラしてるエリちゃんを横目に、しまったなぁという考えが頭に浮かぶ。こんなに良い反応してくれてるけど、このドレスは演出で直ぐに脱ぐ物なのだ。

実際、その演出の為に、ドレスの下にはダンス隊の女子ーズの皆とほぼ同じ服着てたりする。スカートとショートパンツの違いはあるけども。

見てがっかりさせるのも悪いかと思ってドレスの事について教えようか悩んでると、エリちゃんが小さく手招きしてきた。耳を寄せれば「あのね」と可愛いらしい声が聞こえてくる。

 

「私ね、すごく、ワクワクさんだよ」

 

エリちゃんの顔に浮かぶものは、笑顔とはまだまだ言えない物。だけどその顔に僅かに浮かんでる表情の変化は、その言葉が嘘じゃない事をちゃんと伝えてくる。

だから私は吐き出し掛けた言葉を飲み込んで、精一杯の笑顔を返しておいた。

 

「そっか、それじゃ楽しみにしてて。エリちゃんの事、思いっきり驚かせてみせるから!」

 

演出隊だけじゃない、それこそ皆で考えた演出だ。

後は自信を持って見せつければ良い。

それこそ、私らしく。

 

 

 

 

 

それから程なくしてエリちゃんと別れた私は、残りの準備を済ませて皆と体育館へと向かった。

時刻は9時45分。

 

ライブ開始まで、残り15分━━━━━。


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