私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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はぁぁぁぁぁぁ(・д・ = ・д・)

ミルコ姐さんがぁぁぁぁぁぁぁ( ;∀;)


『ナンバーワンの称号』の閑話の巻き

電話越しから告げられた言葉に、気づけば俺の口からその言葉が溢れていった。

 

「なんの冗談だ」

 

自分ですら分かる程の怒気の籠った言葉。

電話越しのそいつは震える声でその言葉を繰り返した。

つい先程、俺の耳に響いたそれを。

 

『で、ですから、オールマイト氏は、今回のヒーロービルボードチャートの発表に合わせて引退しますので、今後は現在No.2であり、次回暫定1位となりますエンデヴァー氏にはNo.1ヒーローとして━━━』

「ふざけるな!!この俺に、こんなどさくさ紛れに!!奴のッッ、No.1の座につけというのか!!」

『憤るお気持ちは、こちらも理解しております。ですが、今後の混乱を避ける為にもエンデヴァー氏には』

「貴様らの都合など知るかァ!!奴を出せ!!引きずってでも、この俺の前に連れてこい!!引退など腑抜けた事、二度と言えぬようにしてやる!!」

 

怒りと共に吐き出した言葉に偽りなどない。

本心から吐き出した言葉だ。

だがどれだけ怒鳴っても、何度聞いても返答は変わらなかった。勝てないと思いながら、それでも足掻き挑み続けた頂・・・平和の象徴と謳われた奴の、引退という言葉だけは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様が引退とはな」

 

文化祭の騒ぎを一望出来る校舎の屋上。

缶コーヒーで喉を潤しながら、俺は隣に立つショボくれた奴にその言葉を吐いた。

つい最近まで、誰しもが認めるNo.1ヒーローであったオールマイトに。

 

奴は何処か申し訳なさげに「ああ」と短い返事を返す。

何度も聞き確認した事だ。今更驚きはない。

ただ、それでも、何処かで俺は否定の言葉を望んでいたらしい。胸に響く痛みが、それをどうしようもなく教えてくる。

 

「ヒーロー協会から許可が出た以上、私は正式に引退を発表させて貰うよ。どれだけ続けられるか分からないけど、これからはこの学校で後進の育成に専念するつもりさ。・・・・これから君には、沢山の苦労を掛けると思う。共に戦えなくて申し訳なく━━━」

「面白くない冗談だ。俺は元より、貴様と共に戦うつもりなどないわ」

「━━━HAHAHA、つれないな。君は」

 

力なく笑った男の視線は学生達の声が響く柵の向こうへと向けられる。その横顔に、もうヒーローだった頃の輝きは見えない。痩せこけた頬、窪んだ目、しなだれた髪・・・・張り裂けんばかりだったスーツも、今ではブカブカとして不恰好だった。袖から覗く腕の細さは常人以下だろう。

 

弱々しい姿に、もう戦えないのだと見せつけられた。

文句はもう口から出てこなかった。

 

「分かっていた。貴様のあの情けない姿を見た時から」

 

代わりに出たのは、そんな言葉だった。

 

「そう・・・か。いや、それもそうか」

「当然だろう。俺でなくともあの情けない体を見れば、貴様が引退するのは目に見えていた」

 

そう、引退は目に見えていた。

理性では分かっていた。

これまで戦いの日々の中で多くの人間を見てきた。自ら傷つく事もあったが、それより多くの敵を傷つけてきた。どれだけやれば人が壊れるかなど、どれだけ傷つけば壊せるかなど、分からない筈もない。神野で見たこいつは、既に絶望的なまでに壊れていた。

 

だから、あの時、咄嗟に声を飛ばしてしまった。

俺にあれだけ煮え湯を飲ませた男が。

全てを犠牲にしても届かなかった男が。

焦凍に託してでも超えたかった男が。

 

もう戦えないなど━━━━ふざけるな、と。

 

「ははっ、これで俺は晴れてNo.1ヒーローだ。貴様の忌々しい背中が見えなくなると思うと清々する。精々、テレビの前でハンカチでも噛んで己の不甲斐なさに涙でも流すが良い」

「エンデヴァー・・・・本当にすまない」

「謝るなッッッッ!!」

 

瞬間的に沸き上がる熱に。

声が出ていった。

 

「貴様にっ、謝られる筋合いなどないッッッ!!欠片とてだッッッ!!同情など、この俺に掛けるな!!何様のつもりだ貴様っ!!」

 

この男のいない世界で、そんなNo.1の称号に何の意味がある。なんの価値がある。

俺は肩書きが欲しかった訳じゃない。

ただ、成りたかったのだ。

 

この男よりも強く。

誰よりも強く。

 

その機会を永久に失ったのは、こいつのせいでは断じてない。No.2に君臨し挑む機会を得ながら、その地位で足踏みしていたのは俺の不甲斐なさが故。才能が、努力が、運が足りなかった。それだけの話だ。

この男の強さも、怪我も引退も関係ない。届かなかった俺の弱さだけが全てなのだ。

 

荒くなった呼吸を落ち着けて奴を見据えた。

申し訳なさそうに眉を下げる奴は何か言いたげだが、結局何も言う事はなく黙って俺を見つめた。奴の瞳には癪に障る思いが透けて見えたが、何も言わないのであればそれで良い。十分だ。

 

「・・・・・二十歳の頃には、既にNo.2へと登りつめた。そして登ってきたからこそ、理解してしまった。俺は頂に辿り着けないと」

 

辿り着いたそこから見える景色は、俺の足を止めるには十分過ぎた。眼前に聳えるオールマイトが作り上げたそれは見上げる程に高く、息を切らし血を吐きながらギリギリで登ってきた俺がまた手を伸ばすには、その頂はあまりにも遠すぎた。

 

「貴様には勝てないと、俺は思っていたよ」

「・・・・・君らしくないな」

「はっ、らしくなかろうが俺はそう思っていた。だから焦凍に託した。俺の全てを懸けて育て、貴様を超えさせるつもりだった。だというのに、貴様の引退でパァだ」

「まだ、彼に何かを背負わせるつもりかい?」

 

尋ねる、というよりは諌めるような言葉に。

思わず自虐的な笑いが込み上げてくる。

敵だとすら思っていた男に心配されるなど・・・なんの冗談なのかと。実際どうしようもないほど、こちらも壊れているのだから、その心配も見当違いとも言えないが。

 

「はっ、教師面が板についてきたか」

「笑い事じゃない。私は彼の教師の一人として、彼を守るつもりさ。君がまだ彼にいらぬ重荷を背負わせるつもりなら、今度は文句の一つも言わせて貰うよ。場合によれば、それ以上の事だってする」

 

妙に力の籠った声と共に、強い光の灯った瞳が俺を真っ直ぐに見据えていた。

 

弱々しい体ではさして脅威は感じない。

だが、オールマイトの発した気配は、現役時代に幾度も感じたそれと変わらなかった。

 

「いらん心配だ。・・・・もう焦凍は、自分の足で歩き始めている。貴様の手など必要ないわ」

「えっ、それは」

「望まぬ限り、俺が教える事はない」

 

自らの意思でインターンに来た時、既に焦凍は俺に囚われるだけの存在ではなかった。焦凍の瞳には以前より強い光が宿っていた。未来へと進む強い意思の光が。

この男の背を追うというのは未だに頂けん話だが、あれは二度と自分の歩む道を迷うまい。自らの意思で望む場所へと行くだろう。俺の望みなど蹴り飛ばして。自由に。

それに仮に迷っても━━━あの馬鹿や喧しい小僧のように手を取る者がいる。背を押す者がいる。

誤る事などあるまい。

 

この俺とは違って。

 

「・・・・そうか。それなら良いんだ。それで、今日はどんな用があって来たんだい。わざわざ私に文句を言いにくる程、君も暇でも無いだろう?」

「ふん、それでも良かったんだがな・・・・」

 

俺は頭の隅にあったそれを思い出した。

あの電話以降・・・・いや、それよりもずっと前、神野以来より考えていた事を。

 

「オールマイト、貴様には一つだけ聞きたい事があった」

「ん?何かな、一つと言わず私が分かる事ならなんでも伝えるつもりだけど」

「貴様の休業以来、犯罪発生率は上がり続けている。ここ一ヶ月のそれは例年に比べて三%もの増加だそうだ。それだけ仕事は増えた、だがそれまで以上に取り締まりも続けている。だが、それでも聞こえてくる。貴様の築き上げてきた目には映らぬ何かが、崩れていく音が」

 

崩れ、何かが広がっている。

言葉に出来ない、何が。

そしてそれは、恐らく俺が止める物。

 

「故に貴様に聞くつもりだった。平和の象徴が、俺がこれから担うモノがなんなのかを・・・・だが、その必要もなくなった」

 

そんな事は、聞くまでもなかった。

久しぶりに焦凍の顔を見て、忘れかけてた物をはっきり思い出した。俺が背負うべきモノ、背負うべきだったモノ達。そして、もう背負う事すら許されぬモノを。

求められようと求められぬとも、どのみちこの男と俺は何もかも違う。今更考え方は変えられない。歩んだ道も変わらない。俺が手にした力も一朝一夕で手に入れた物でない以上、急に強くなる訳でもない。

ならば俺という人間が出来る事など、肩書きがどうであれそう変わる訳がない。やれる事をやるしかないのだ。

 

奴の背負ってきた物など知らん。

平和の象徴足り得るかなど知らん。

ただ、それでもせめて見せねばならん。

 

焦凍に、子供達に、妻に。

俺がこれまで犠牲にしてきたモノ。

その全てに見せねばならんのだ。

 

これからの俺を。

No.1ヒーローとなった、エンデヴァーというヒーローの姿を。

 

「テレビからでも眺めていろ。この俺の姿をな」

「・・・・・ああ、そうさせて貰うよ。応援してる、と言ったら怒るかな?」

「気色の悪い事をほざくな!!虫酸が走る!!」

 

手元のコーヒーを飲み干し、俺は出口へ向けて歩き出した。これからやることは幾らでもある。立ち止まってる訳にはいかないのだから。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「虫酸が走るか・・・・ふふ、彼らしいな」

 

慌ただしく行ってしまった彼の事を思い出すと、どうしても笑みが溢れてしまう。弱気な言葉を吐いた時はどうしたのかと思ったが、結局彼は彼のままだった。

勿論、良い意味でだ。

 

彼は私の事を嫌っているようだが、私は心強い仲間だと今も思っている。何年も同じトップヒーローとして活躍してきたのだ。彼の強さは誰よりも知っているし、ヒーローとして信用もしてる。私生活の方に少し気になる所はあるが、ヒーローとしてなら間違いなく一流の彼だ。彼ならきっと、これからの時代を牽引してくれるだろう。

惜しむらくは、そこに自分がいない事だろうか。

 

ふと、フェンスの向こうに視線を向けると、生徒達の姿が視界に映った。笑顔を浮かべながら楽しげな声をあげて、忙しなくあっちへこっちへ・・・・・不安定だと思われてた社会もここでは平和な物だ。

目立ったトラブルもなく順調そのもの。生徒達の為に多くの関係者へ頭を下げた校長の努力も、これで報われる事だろう。

 

そんな事をぼんやり考えてると、文化祭の為にここ一月の間戦い続けたもう一人の姿が頭に浮かんだ。無茶ばかりする、サボり癖のあるけど憎めない可愛い生徒の姿だ。

 

「緑谷少女、今頃何処にいるのかな・・・・」

 

何とはなしに見慣れたポニーテールを探した。

常識的に考えて生徒達が溢れるそこから見つかるとは思っていない。目は悪い方ではないが距離もあるし、何より人探しするには人も物も多すぎる。

だけど、そこは彼女だ。もしかしたらという期待もしてしまう。

 

「・・・・流石に無理か」

 

元より難しいとは思っていたが、見渡したそこから彼女の姿は見つけられなかった。人混みに紛れてしまっているのか。はたまたここから見えない場所にいるのか・・・どちらにせよ、残念だ。余計なものに囚われず、楽しんでくれてると良いのだが。

 

「平和の象徴か・・・・」

 

ふと彼の言葉を思い出した。

私が担い続け、積み上げてきた形の分からないそれ。

今の情勢を鑑みれば、彼がいうように形の見えぬそれは少しずつ崩れているのかも知れない。事実目に見えて人々の不満が増え、犯罪者も増えてしまった。私という抑止力に見切りをつけ、新体制への移行を急いだヒーロー協会の動きからも、それは覆しようもない事実なのだろう。歯軋りしたくなるほど悔しい話だが、私にはもうどうしようもない。彼のいうように、もう見守るしか出来ないのだ。

 

あの子達に、何をしてやれるだろうか。

力で守る事が出来なくなった私が。

何をしてやれる。

 

考えても答えは出なかった。知識も経験も足りない半人前の教師の私では少し難し過ぎたんだろう。

けれど、彼が歩み始めたように、私もまた自分で答えを出し進まねばならない。

 

 

笑顔を浮かべる、彼等を守る為に。

 

 

お茶を飲みながら生徒の様子を眺めていると、不意にポケットから着信音が鳴った。取り出して画面を見てみれば、ナイトアイからメールが一件。内容は現場の片付けが一通り終わったとの報告だった。

感謝の言葉を返した私は飲みかけのペットボトルの蓋を閉め、与えられた職務をこなす為に巡回ルートと書かれた紙を片手に屋上の出口へと向かった。

 

これからの事を。

私に出来る事を。

頭の中で考えながら。

 

 

 

 

 

 

「━━━━━あっ、ガチムチがサボってる!!」

 

「うわっ、いた。後ね、サボってはないから」

 

「サボってる!!」

 

「サボってないからね!?警備巡回中なの、本当に!!」

 

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