私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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随分と前に感想で掛かれた設定で、パッと思い付いたお話を載せておきます。

双虎が出久くんの姉だったら、な小話です。
リアルが6月なのに、3月のお話です。
季節感?知らんなぁ。


ifストーリーズ:もしとか、たらとか、ればとかに惑わされまくった多次元宇宙な物語編
お姉ちゃんはいつだって可愛い弟の味方なのであーる!つまり、貴様ぁ、ボンバーヘッド野郎!何してくれてんだごらぁぁぁぁ!!なifの巻き


立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花!浮かべる笑顔は向日葵が如し!━━━━そんな言葉がぴったりな見返らなくてもアルティメット美少女の私は緑谷双虎!14歳!現役ピチピチの近所でも可愛い過ぎると噂の中学二年生だ!

 

そんな私には父の悲しきモジャモジャ遺伝子を継いでしまいモサイ頭になった、ちょっとオタクでパッとしない顔したダメンズな双子の弟がいる。名前は緑谷出久。ガチムチなヒーローをこよなく愛し、無個性というハンデを抱えながらもヒーローを目指す立派なホモだ。

ちょっとあれな趣味を持つ暗くてオタクでブツブツ呟く事が多い不気味な所もある変態な弟だから周りから色々と言われるけど、私にとって大切な可愛い弟だ。根は真面目だし、虐められてる子がいると助けにいくくらい優しいし、おやつを喜んで献上してくれるし、朝は起こしてくれるし、髪のセットもしてくれるし、おかずくれるし、私のお小遣いでは足りない物を買う時はいつも笑顔でお金を貸してくれる。私の戦闘訓練に付き合わせても嫌な顔一つしない。足腰を震わせながら、ゲロ吐きながら、何度ボコボコにしても死にもの狂いで噛みついてきてくれる・・・・彼女がいないのが不思議なくらい、良くできた私の自慢の弟なのである。

 

そんな可愛い私の弟に、最近矢鱈と突っ掛かってくる不届きな輩がいる。絶賛思春期中の幼馴染、かっちゃんこと爆豪勝己だ。弟と同じくヒーロー大好きな男の子で、やはりガチムチが好きなホモである。

それだけ聞くと気が合いそうな二人だが、どうにも昔から仲が宜しくない。個性のせいなのか、性格がそもそも合わないのか何かとぶつかってる。最近は特に酷い感じで突っ掛かってきていて、お姉ちゃんプンプンスコスコなのだ。

そんな訳で三月に入った今日この頃。今日も今日とて、かっちゃんがうちのモサモサを数人で囲っている所を見掛けので、拳を構えて全力ダッシュ中であった。

 

 

 

 

「ごらぁぁぁぁぁぁぁ!!何っ、ウチの可愛い弟に手出しとんのじゃぁぁぁぁ!!爆発頭ぁ!!」

「━━━━っ!?なっ、ぐぬぇ!?」

 

 

 

 

勢いそのままにソォイ!とギカントパンチ。

取り巻きの悲鳴の中を爆発頭がきりもみ回転しながら横っ飛びしていく。丁度飛んで行った方向にいた取り巻きにぶつかると、近くの机やら椅子やらを巻き込んでド派手に倒れていった。

 

「や、やべぇ!緑谷姉だ!!姉の方が来たぞ!!」

「殴られる!!かっちゃん!い、行こうぜ!もう良いだろ、出久はさ!!」

 

怯えたような声をあげながら、取り巻きABが倒れたかっちゃんと取り巻きCに駆け寄っていく。

興味もないのでそれはスルーして、私は顔が真っ青な弟に近づいた。

 

「大丈夫?出久、あのボンバーヘッドに何かされてない?キンタマ潰しとく?」

「キンタマは止めてあげてよ!━━━と言うか、僕は別に虐められてたとかじゃなくて、ただ何と言うか、かっちゃんはその、話があったというか、その、なんて言ったら良いのかなぁ・・・・」

 

弟はよっぽど怖かったのかしどろもどろにそう答えた。何をされたかは分からないけど、多分脅されたんだろう。裸の写真撮られてとか、かっちゃんに無理矢理やられたとか・・・・なんか、そんなんだろう。分からないけど。

ホモ達の考える事はノーマルの私には分からんとです。

 

そうこうしてるとかっちゃんが起き上がった。

怪我はないようだけど、額に青筋が浮かべてめちゃくちゃ睨んできている。間違いなくオコだ。尤も、オコなのはこっちもだが。

 

「て、てめぇ、いきなり何しやがんだ!!ああ!?喧嘩売ってんのか!?このっ、こ、この、馬鹿女が!!」

「はぁぁん!?誰が馬鹿だ!誰が!!天才中の天才たる私を捕まえて、目玉腐ってるんじゃありませんこと!?つーか、ウチの可愛い弟虐めてんじゃねぇーよ!!その頭所々むしって、あられもない髪型にしてやろうか!?リアルにハゲさすぞ、ああん!?」

 

そう言ってぎっと強く睨み返せば、かっちゃんも同じように強く睨み返してきた。怒りで思わず拳に力が籠る。かっちゃんも似たような気分なのか、飛び込めるように姿勢を低くした。ピリピリとした空気の中、お互い臨戦態勢を整えた所で何故か出久が間に割って入ってきた。右の掌と左の掌を私とかっちゃんそれぞれに向けて制止を求めてくる。

 

「止めてんじゃねぇ!クソデク!!てめぇからぶっ飛ばされてぇのか!!ああ!?」

「ああ!?誰の弟ぶっ飛ばすだってぇ?てめぇ、このクソかつが!!ふぁっきゅぅぅぅぅ!!・・・・出久、お願いだからちょっとどいてて?お姉ちゃんね、今日こそこの爆発頭に引導渡してやろうと思ってるの!ふふふのふ!!」

 

「お、お願いだからどっちも落ち着いて!かっちゃんも喧嘩しにきた訳じゃないでしょ!?姉さんも、確かにかっちゃんはアレだから!そういう時もあるけど!さっきのは勘違いだって言ってるんだから止めてよ!!」

 

勘違い・・・・?ん?

 

「それじゃ何してたの?」

「あっ、え、えっと・・・・」

 

私の質問に出久は目をキョロキョロさせて口をモゴモゴさせた後、無言でかっちゃんの方をチラ見する。

つられて私も見れば、私と目が合ったかっちゃんはバツが悪そうに目を逸らした。

そしてかっちゃんは出久に意味ありげな視線を送る。

 

「・・・・・あ、あれは、その、姉さん!話は変わるんだけど!ちょっと良いかな!?」

「む?・・・・はぁ、なんか気が抜けちゃった。良いよぉーなになに、どったの?おねーたまに何でもお聞き」

 

私の言葉に出久はかっちゃんと私を交互に見た後、意を決したように口を開いた。

 

「もうすぐホワイトデーでしょ!先月のバレンタインデーのお返しとか、姉さん何か欲しい物ないかなぁーって━━━」

「てめぇクソデク!!」

「ひぃっ!!ごめんなさい!!」

 

取り敢えず意味不明に怒鳴ったかっちゃんの頭を一発ひっぱたいてから、出久に言われた事について考えてみた。欲しい物は幾らでもある。だけど、どれもそれなりにする。出久のお小遣いでは無理だろう。それでも敢えて何かないかと言われれば・・・・特に思い付かなかった。

 

「うーーーん?まぁ、お返しとか良いよ。あげたのだって、余り物だし」

 

態々弟の為に作った物じゃない。マジの余り物だ。

手間も暇も掛かってないし、ラッピングすらした覚えもない。バレンタインデーの前日、余ったそれを皿にポイしてオヤツ代わりにあげてやっただけだ。畏まって感謝される覚えはない。

 

だから断ったんだけど、出久は目を丸くして焦ったような表情を浮かべた。

 

「えっ、嘘・・・姉さんが何も要求しない!?何か悪いものでも拾って食べたんじゃ━━━はっ!?」

「おっと、出久よ。私の可愛い弟よ。それどういう意味?詳しく聞こうじゃないか、ん??」

「あっ、いや、ごめんなさい!でも悪気があった訳じゃ、でも姉さんいつも━━━━━あてててて!?頭がっ、われっ、ごっ、ごめんなさい!何でもないです!本当に!すみませんでした!!とっ、兎に角っ、何か!あげれるか分からないけど、何か欲しい物ないかなぁって思っててててててて!!!」

 

出久は頭を腕で締め上げられながらも、それでもそんな事を聞いてくる。お返ししようという精神は嬉しい。つまりそれはチョコのプレゼントを喜んで貰えたという事なのだから。頑張って作った甲斐がある。出久には余り物しか与えてないが━━━━けれどだ、どうにも腑に落ちない。バレンタインデー前日の様子を思い浮かべると、ひきつった顔で『えっ、今度はなに?』と何処か怯えた表情を浮かべる弟の姿しか思い出せない。散々疑った後、私の顔色を窺いながらそれを食べて『美味しかったけど・・・・えっ、なに?僕は何をすれば良いの?』とか『お願いだから、お母さんに怒られない事にして。本当にお願いだから』とかしか言われた覚えがない。食べた対価として、アルゼンチンバックブリーカーの練習台にした覚えしかない。あっ、対価貰ってるやん。

 

取り敢えず頭を解放してやって、その日プロレス技の練習台になった事が一番のお返しだった━━━と言ってあげると何ともいえない顔をされた。何故かかっちゃんも微妙な顔をする。そんな二人の姿に、昔微妙な顔して追い掛けてくる幼い二人の姿が過った。昔からこいつらこんな顔する。もしかしたら最近仲悪いのかと思ってたけど、こいつら私の見てない所だとそこそこ上手く行ってるのかも知れない。

 

「まっ、兎に角、お返しは良いよ。あんた今月なんか買うんでしょ?あのアホみたいに高い、ガチムチだらけの写真集。楽しみにしてたもんね」

 

前に楽しそうに教えてくれた弟の姿を思い出しながらいうと出久は顔を真っ青に、周囲にいたかっちゃんの取り巻き達が物理的に距離を取った。凡そ二メートル程。かっちゃんは何か呆れた顔してるけど。

 

「ちょっ、止めてよ皆の前で!!それだと誤解されちゃうから!オールマイトの!オールマイトの写真集だから!!去年の活躍を納めた限定版が出るから、それで!!━━━━ね、かっちゃん!!ねっっ!!」

「俺に話ふってんじゃねぇよ、クソデクが」

「ねっ!てば、かっちゃん!!いいの!?かっちゃん!!」

「・・・・・ちっ、そんなんあったな」

 

また男同士で分かりあっとる。

仲良いな、こいつら。

 

「兎に角っ、兎に角!何かないかな!?聞くだけだから!聞くだけ!あげるかは別として!!実際、僕もお金にあんまり余裕はないし・・・・」

 

尻窄みに声が小さくてなってく弟の様子に思わず溜息が溢れる。優しいのは美徳だけど、お姉ちゃんとしてはもう少し男らしく強気な所も見てみたい所なのだ。

まぁ、何がともあれ、そんなに聞きたいならと考えてみた。

 

「そうだなぁ、まぁ、お金。一億万円くらい欲しいかなぁ?」

「一億万円って子供じゃないんだから・・・なんか、もっとこう、現実的な物はないの?バレンタインデーのお返しとしてだからね?よく三倍くらいだって聞くから、その範囲で何かさ」

 

現実的?ふむ?

 

「えーーそうだなぁ?洋服とか?最近駅前のショップで可愛いパーカー見つけてさぁ~、にゃんこのやつね、にゃんこの。色んなカラーあったけど、個人的には三毛カラーの奴が良いかなぁ」

「パーカーね、そうかぁ。パーカーかぁ」

「あとねあとね、スカート欲しい。チェックの可愛いのあったの。ほら去年行ったじゃん、福袋買いに行った所。デパートのさぁ~あそこにあったのよ」

「あー、あそこね。うん覚えてるよ。でもスカートか、スカートはちょっとあれかなぁ」

「?後はね、ケーキとか?シュークリームも良いよねぇ。あっそうだ!この間さ、光己さんがお土産に持って来てくれたのあったでしょ!あれあれ!あれが良い!」

「シュークリーム好きだもんねぇ、そっかぁ」

「━━━━とかまぁ色々言ったけど、明日の休みに母様達と買い物に行くから良いや。学年末の結果良かったから買ってくれるってさ」

「えぇぇぇぇぇぇーー・・・・」

 

出久の目は明らかに他に何か言って欲しそうだけれど、そうは言っても特に欲しい物とかはない。よもやここまでお姉ちゃんっ子だとは予想外だった。それならそれでちゃんと欲しい物リスト用意したのに。残念だ、実に。今度はそうしよう。

 

「兎に角っ、今は特になし!」

 

ビシっとポーズを決めて言うと、出久は分かりやすく肩を落とした。丁度よくチャイムも鳴ったので、出久と他の連中にもバイバイして教室へと帰る━━━━つもりだったのだが、一つ言うことがあった。

 

「かっちゃん、かっちゃん」

 

振り向き様声を掛けると、微妙な顔したかっちゃんと出久が足を止めてこっちに振り返った。二人と目が合う。どちらも『なんだよ』と言いたげな目だ━━━━━なので笑顔を返しておいた、その言葉も付けて。

 

「ホワイトデー、楽しみにしてるから♪」

 

私の言葉聞いたかっちゃんは一瞬呆けた。隣にいた出久も大きく口を開けてポカンとする。少し経つと何を言われたのか理解して、出久は変な汗を額に浮かべて、かっちゃんは眉間のシワをまた一段と深くさせ睨んできた。私がからかってた事に気づいたんだろう。

 

分からない訳がない。それなりに長い付き合いだ。隣には隠し事出来ない可愛い弟もいる。隠せる筈もない。

そうでなくても、それまでの話の流れを考えれば直ぐに気づける。からかい甲斐がありそうだったので、出久と一緒に泳がせておいただけだ。

 

それに、これはズルした罰でもある。

 

「私も色々考えて作ってやったんだから、セコイ真似しないでちゃんと自分で考えな。つまらない物だったら、来年はあげないからね?」

 

人が折角色々考えて、頑張って用意してやったのに、そのお返しがズルで用意されるのは癪なのだ。何がどうあれ私に返ってくるのは、かっちゃんが頭を悩ませて選んだ物の方が良い。本気で選んだ物だからこそ、それが可笑しな物なら思いっきり馬鹿にも出来るし、テキトーに用意されるよりお値段的にも品質的にも良い物がくるだろうから。かっちゃんのセンスは中々良いのだ。

 

「今年も期待してる、じゃーねー」

 

そう言って軽く手を振ると、かっちゃんは何故か顔を赤くさせてそっぽ向いて行ってしまう。返事くらいして欲しかったんだけど。

出久は私にハンドサインで隠し事してた事を軽く謝り、かっちゃんの後を慌てて追い掛けていった。

 

「今年はなにくれんだろ・・・・?」

 

貰える物を想像しながら、私も自分の教室へ向かった。

先生に見つかっても怒られない程度の駆け足で。

 


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