私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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寝相が悪過ぎて、平行世界にジャンプしちゃった双虎さんの小話。

思いつきパート2。


はろーはろー!聞こえてますか!私はただのウルトラストロングスパーキングギャラクシー美少女!なんてね!なんで無視するの?ねぇ?ねぇってば!!聞けよごらぁ!のifの巻き①

「はっ!また知ってる天井だ!」

 

目が覚めると見慣れないガチムチのポスター。

体を起こしてあちこち見てみれば、やっぱりガチムチグッズに囲まれた最高にイカれた空間に私はいた。ただ実家ではなくて寮部屋だ。かっちゃん達の部屋と良く似てる。紳士マスクの事を始め何かと面倒事がやってくるなぁ、と最近の運の悪さに辟易していたが、よもやまたここに来る事になるとは。平行世界すら寝ただけで干渉してしまう私は、もはや女神なのでは?元から女神だけども。

 

「━━━━━わっ!また来た!?」

 

驚いたような声に振り向くと、この間夢現で見たモジャモジャがそこにいた。「やっ、怪人モジャモジャ」と手を挙げると少し照れた様子で「ははは、こんにちは」と挨拶を返してくる。普通の挨拶だ。相変わらずユーモアセンス0だな、こいつは。

 

「ウルトラストロングスパーキングギャラクシー美少女を前にして、なんでそうつまらない挨拶するかな?そこはようこそおいで下さいました!!今日も変わらずお美しくあられますね、お姉様!!くらい言ってよ。気が利かないなぁ」

「出ません出ません、そんな言葉。僕を何だと思ってるんですか・・・・というか、またこれたんですね。まさかまた向こうで?」

「さぁ?怪我するような事はしてないと思うけど?」

 

寝る前の事を思い出してみたが、今の状況と繋がるようぶっ飛んだ現象が起こる理由に心当たりはない。確認の為に体を確認して見れば、寝る前に来てたにゃんこの着ぐるみのまま・・・・・まま?むむ?

 

試しに壁を殴ってみた。

鈍い痛みとミシリという音が響き、ついでに隣の部屋から悲鳴が聞こえた。

 

「ふっ、双虎さん!?なんで急に!?何か気に入らない事でも━━━━あっ、いえ!いきなり男の部屋に寝てる事とか、突然転移させられたとか怒る理由も思いつきますけど」

「そうじゃなくてさ、私実体あるわ。おっ、個性も使える」

「そうなんですか、実体が。それに個性もなんて・・・・えっ!?それはっ、えええ!?」

 

試しに色々と試してみた。

個性の具合に特に変化なし、体を動かしてみたが身体能力に変化はなく、重力やら何やらも元の世界とそう変わらない気がする。

 

「・・・・・これは、ついに時空を越える力が覚醒したと言うことか。元より女神だし、アルティメットに可愛い美人が過ぎる美少女だから、いつかはそういうのも身に付けるだろうとは思ってたけど━━━━まさかこんなに早くだとは」

「何で納得してるんですか!?双虎さん!?そんな落ち着いてる場合じゃないと思うんですけどっ、と言うか、時空に関係する個性なんて聞いた事っ、いや、今の状況がそもそも簡単に説明出来る物じゃないし、前の半透明の状況で僕の部屋に来た事だって誰かの個性の影響の可能性があったと考えた訳だけど、ここまで強力な物なんてこれまで━━━━━」

 

何かブツブツ始めたモジャモジャ。最早欠片もこっちを見てない。仕方ないので部屋にあった冷蔵庫からスポドリ取り出し、それをチビチビ飲みながら観察してると慌ただしくドアが開いた。開いたドアの先には警戒心ビンビンな顔した男連中がいた。外国人アオヤーマ、切島、常闇、ブドウの四人だ。

 

「緑谷!ドタドタってよ、何かスゲェ音したけど大丈夫か!?」

「朝からウルセェぞ緑谷!!おいらの朝の大事なルーティーンが出来ねぇだろ!!」

「緑谷くん!!いきなり酷いじゃないか!びっくりして紅茶を溢してしまったよ☆!」

「・・・・慌ただしき目覚め、何かあったか緑谷━━━ん?」

 

常闇の視線が私を見つめた。

その視線に他の連中が私の存在に気づき、全員の動きが止まった。驚愕の表情を浮かべるもの、静かに血の涙を流すもの、あっちこっちに視線を泳がせるもの、怪訝そうに眉を顰めるもの・・・・浮かべる表情はそれぞれ違ったが、全員が全員何も言えずに固まる。

 

暫くして切島がオロオロしながらも口を開いた。

 

「みっ、緑谷・・・・幾らなんでも、そのさ、彼女を寮部屋に連れ込むのは不味いだろ」

 

その言葉に考え事に夢中だった出久が目を見開いてはっとした。

 

「つまりこの現象を説明━━━━はっ!?ちっ、違うよ!絶対に違うから!!本当に違うから!!この人はそういうのじゃないから!!本当に!!信じて、切島くん!!」

 

おい、こら。どんだけ勘違いされたくないんだ。この美少女と彼女に間違われて、何が不満なんだ貴様。

控え目に言って、ぶっ飛ばすぞ。ごら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「平行世界の・・・・デクくん???」

 

出久の部屋に生身でリスポーンしてから暫く。

寮の共同スペースに連れ出された私はA組の面々に囲まれていた。出久の説明に殆んどの者が首を傾げ、さっきと引き続き警戒心を露にする連中もいる。ベストフレンズなお茶子も疑いの眼差しで私を頭の先から爪先までジロジロと眺める。悲しい・・・・といっても、なんだろ。お茶子だけ疑いのベクトルが違う気がするけど。

 

「緑谷、嘘ならもっと上手い嘘つきなよ。幾らなんでも無理があるでしょ」

「そうだよ、三奈ちゃんの言う通り。相澤先生にそんな事言ったら怒られるよー。正直が一番。今なら許せるって!ねっ、お茶子ちゃん?」

「なっ、何で私にふるん!?ゆっ、許すとか、そんなっ、私は関係ないし・・・・」

 

そんな事言うのは私のお笑いユニットのメンバー。

悲しい気持ちが加速する。

あと、脈あるぞ。弟。

 

「けろっ・・・・でも、彼女、確か双虎さんと言ったわよね。何がどうあれ雄英のセキュリティを抜けてここにきてるのは問題よ。ここの生徒だって夜は勝手に出歩けないようになってるくらいにね。何より昨晩異常があったようには思えないわ」

「だよね。そうなると、以前侵入してきたヴィランみたいに転移の個性で来たとか?この子が言ってる事に嘘がなければ送られたって事になる・・・・のかなぁ?分かんないな」

「現実的に考えればその筋があり得そうですわね。流石に平行世界というのは、信じがたい物がありますし」

 

なんか気がつけば女子ーズが否定的な意見でまとまり掛けてる。これは不味いと思って弁解の言葉を探してると、切島が「待て待て」と割って入ってきた。

 

「いやさ、状況は意味わかんねぇし、そりゃ疑う気持ちはわかんだけど、ワルモンみたいな言い方良くねぇって。少し話したけど、そんな悪い子じゃねぇよ。俺が保証するぜ」

「フォロ島・・・・!」

「フォロ島!?」

 

かっちゃんと付き合える辺り、前々から良い奴だとは思ってたけど、よもやここまでとは!帰ったら、向こうのフォロ島に飴でもあげよう。

 

「切島ほど信用はしていないが、敵にしては考えなし過ぎる。彼女が敵であり転移を行える者が背後にいるのであれば、狙い目は皆が寝静まる時間、つまり夜になるだろう。俺というイレギュラーはいるが、殆んどの者が睡眠不足や油断から戦闘能力が落ちる以上狙わない訳がない。それに緑谷の証言に間違いがなければ、彼女がこちらに来たのは緑谷がジョギングに出掛けた後・・・・状況的に敵と考えるのは無理がある」

 

フォロ島に続いてトコヤミンが味方になってくれた。

感謝の気持ちを込めて鳥顔をモフろうとしたけど、直ぐに距離を取られた。こっちでも勘が良い。

 

「切島じゃねぇーけどさぁ、俺も悪い子には見えねぇなぁ。すげー可愛いし」

「なぁ上鳴ぃ、ちゃんと頭使ってっか?まぁでも、俺も襲撃か事故のどっちかと言われれば、個性事故かなとは思うけどさ。尾白は?」

「えっ、俺?ああー、えっと、そうだな、悪い人には見えないかな?」

 

上鳴、瀬呂、尾白の三人もフォロ島と同様味方になってくれた。思わず目に涙が滲む。日頃から駄目な童貞共だと思ってたけど、本当は良い童貞だったらしい。

 

「皆っ・・・・私しゃ嬉しいよぉ!バ上鳴とか心の中で思ってごめんねぇ。ドンマイと尾白もありがと」

 

「待って?あれ、待ってくんない。何か俺だけ酷いアダ名で呼ばれてない?まさか、向こうの世界でもドンマイって呼ばれてるの!?ねぇ!?」

「いや、瀬呂。俺もストレートに罵倒されてるんだけど」

「いや、本当の事だろ」

「何だとコンチクショー!!」

 

順調に集まってた味方だけど、援護射撃はそこまでだった。他の連中は遠目から状況を窺う感じ。後から起きてきた轟に一縷の望みを掛けたけど、こいつ早々話をドロップアウトしてソファーでうたた寝し始めた。

一応ブドウが下心満載で何か言い募ってきたけど、それは踏んだ。こいつはどう頑張っても味方にならない。案の定拒絶したらめちゃくちゃ文句言ってきたので、奴の顔面を踏みつけてる踵にゆっくり力を込めながら「啼けゴミ虫が」と冷たい顔を向けたら「喜んで!」と言ってきた。女子ーズの嫌悪感の籠った視線が足元に突き刺さる。

 

何ともいえない微妙な空気が流れる中、眼鏡が二つの陣営の間に入ってきた。こっちでも委員長のようでキリッとした真面目な顔向けてくる。

 

「どちらもその辺りにしよう。女子の皆の意見は尤もだし、常闇くん達の意見にも一利ある。しかしだ、俺達は彼女に対する情報に乏しく、どちらの意見も正しいとは断言出来ない事も事実だ。━━━で、ある以上、彼女の身柄を押さえつつ、相澤先生の到着を待つのが一番だと思うのだが・・・・どうだろうか?」

 

眼鏡の意見に皆が頷いた。

取り敢えず今すぐ敵対関係にならずに済んだとホッと一息ついていたら、皆の後ろから聞き慣れた悪態が聞こえてきた。

 

「朝から喧しいわボケ共がっ、何たむろってんだ?ああ?」

 

背筋を伸ばして声のする方を覗けば、眉間にシワを寄せながら不機嫌だと全身でアピールしてくる、不良百パーセントな金髪ボンバーヘッドがいた。

 

「あっ、かっちゃんだ!こっちもちゃんと眉間にシワ寄ってる!なになに~、かっちゃんの遺伝子には眉間のシワが自然と寄ってく呪いでも掛かってんの~?あはは、うける~!」

「ああ!?んだ、てめぇは!!喧嘩売っとんのか!!」

 

私の言葉に青筋を浮かべたかっちゃんは人混みを押し退けながら、真っ直ぐにこっちに向かってきた。体をペンギンのように揺すりながら、如何にも不良ですとアピールしながらだ。中学の頃のかっちゃん思い出す。腰パンしちゃってる所も含めて。なんかお可愛い。

 

「か、かっちゃん!落ち着いて!双虎さんも悪気があった訳じゃ・・・・ないと思いたいんだけど、なんか話を聞いてると、まったくない訳でもないような気もするんだけど、いやっ、だっ、だけど!兎に角喧嘩売ってるとかじゃ━━━━ふべっ!」

「っせぇ!クソデクが!!雑魚の癖に道遮ってんじゃねぇ!!どけボケが!!」

 

あっさりと掌底食らった出久が床に転がる。

そんな様子に出久のアダ名を呼びながらお茶子が慌てて駆け寄っていった。あれれ、いつの間に。少なくともこの間はかなり距離ありそうだったのに。

 

出久とお茶子の様子を見てる間にもかっちゃんがズンズン迫ってくる。止めに入った切島やら阿修羅さんやらを押し退けて、怒りを微塵も隠さずに力強く歩を進め━━━━あっという間に私の目の前まできた。

 

「てめぇが何処の誰だか知らねぇけどなァ、喧嘩売ってんなら買ってやるよ。女だからって手加減されると思ってねぇだろうな?ああ?」

 

かっちゃんはそう言いながら指を鳴らす。

何だか懐かしい感じだ。最近丸くなってきたのか、こういうのは少なくなってたから。

やっぱり中学の頃のかっちゃん思い出す。

 

「ちょっと、爆豪!!止めなよ!!女の子に━━━」

「ああ、良いよ良いよ。あしどん。いつもの事だし。こんな頭ボンバーマン、逆にボコっちゃうからさ」

「━━━━ぼっ、ボコっちゃう?ていうか、あしどんって?えっ、私のこと!?」

 

 

 

「よそ見たぁ、てめぇよっぽどぶっ飛ばされてぇみてぇだなぁ!!」

 

 

 

あしどんと話してたら、怒鳴り声と共に右の拳が振り抜かれた。癖は変わらないのか見慣れた軌道だ。いつものように首を傾けてかわし━━━━懐へ一気に踏み込む。

 

「なっ━━━━ぐぬっ!?」

 

がら空きの顎へ左のアッパーカット。

ふらついた所で腰を回転、勢いを乗せた右フックで下顎を刈り取る。更に体勢が崩れた所へ、左膝を腹に叩き込む。体がくの字に折れ曲がったら左肘を背中に叩きつけて、そのまま全体重を掛けて床へと押し倒す。とどめに隙だらけの腕を捻りあげ、おまけに首の上へ膝をおいてフィニッシュ!!━━━━その間、僅か五秒。やはり私は天才だったか。

 

「・・・・・あれ?」

 

━━━と、何やかんや最後まで決めたものの、私が思ってた展開とは大分違う。向こうのかっちゃんなら最後まで食らう事なんて有り得ない。必ず何処かで連擊を外してくる。なんなら反撃だってしてくるだろう。極め技なんて当然食らうわけない。この程度のじゃれあいなら、お互い数度打撃を浴びせて終わり。痛み分けが精々だ。だから今もそのつもりだったんだけど・・・・それがまさか、こんな簡単に、完璧に、最後まで極められるとは。

 

「なっ!?てめっ!!」

 

私と出久以外、何でもかんでも同じかと思ったけど、かっちゃん一人とっても色々と勝手が違うらしい。他の皆も同じようだけど少しずつ違うし。お茶子とかは特に。なんか敵意すら感じる。

 

「はぁ・・・・ごめん。かっちゃん。向こうのかっちゃんと同じ感覚でやっちゃってさ、あはは。いやでも、こんなに弱いとは思わなくて」

 

これは流石に私が悪いと思って素直に謝ってみたが、取り押さえてるかっちゃんの抵抗が何故か強まった。首の所に置いた膝に力を込め、更に腕を強く捻ってやれば、その抵抗も多少は弱まった。

だが、そこはプライドの塊なかっちゃん。それでも悪態をつきながら全力で抵抗の意思を示してくる。

こういう所はマジかっちゃんなんだけどなぁ。

 

「うわっ、本当にかっちゃんと戦えてる・・・・」

「ほんまや、スゴっ」

「いや、緑谷、麗日。全然戦えてねぇよ。爆豪の方が。一方的だったぞ。今も拘束解ける気配もねぇし」

「凄いな、彼女。爆豪くんがあんなにも容易くやられるなんて。轟くん、今の見たかい?」

「ああ、すげぇな・・・爆豪が近接戦闘で圧倒されるのなんて、先生相手に戦闘訓練してる時でも早々ないぞ」

 

おお、我が身に送られる称賛の声の、なんと気持ちの良い事か・・・・もっと褒めるが良いぞ。ふふふ。気持ちーー。

 

「あの口ぶりだと平行世界の爆豪ってもっとやべーんだよな?あっちの俺大丈夫かなぁ・・・・死んでないよな?ん?峰田どうした?」

「うっせぇ上鳴!オイラはなぁ、オイラはぁ、今心底ムカついてんだよ!向こうでこっちの緑谷がいねぇって事はっ、あっちのオイラの前の席に、あのボイン美人が座ってるって事だぞ!許せるか!?クソっ、向こうのオイラ死ねよ!そんでオイラ代われ!」

 

変なのもいるけど・・・・まぁ、あれは良いや。きっとこっちでもモテないんだろうな。ナムナム。

しかし、足元のは元気だなぁー。

 

「てめぇ!クソ女!!いつまで乗ってやがんだ!!ぶちのめすぞ!!ごらぁぁぁ!!」

「ハッハッハッ、本当かっちゃんだなぁ。出来るもんならやってご覧遊ばせ!先ずは拘束抜ける所から頑張ってみよーか!はい、もっと捻りまーす!」

「ッッッッッッ!!?ぐぬぅっ!!てめっ、覚えとけよぉ!!!」

 

それから少し包帯先生が来るまでの間、かっちゃんをからかって遊んだ。こっちの世界でも、かっちゃんはかっちゃんであった(笑)。

 


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