私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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そして、続いた。


はろーはろー!聞こえてますか!私はただのウルトラストロングスパーキングギャラクシー美少女!なんてね!なんで無視するの?ねぇ?ねぇってば!!聞けよごらぁ!のifの巻き②

包帯先生とネズッミー校長から取り調べを受けてから暫く。私から事情を聞いた包帯先生達は改めて状況を整理した後、他の先生達も交えて緊急会議を開いた。

そして二時間にも渡る会議の末、帰ってきた包帯先生とネズッミー校長から言い渡された私の処分は━━━━━状況が完全に把握出来るまで、制限付きでA組寮にて軟禁という沙汰であった。

勿論、三食ご飯付き。数日分の衣服も無償で提供され、部屋も家具付きで貸してくれるそうだ。寮に完備されたパソコンも使い放題。学校の回線だから監視されまくりだけど、どうせ動画サイトぐらいしかみないし。あとついでに包帯先生が監視につけば近くのスーパーくらいは行っても良いそうだ。お金ないから立ち読みしか出来ないけども。

 

「マジすか、包帯先生。至れり尽くせりじゃないですか。昼間とか自由ですか?完全フリー?」

「いや、基本的には俺が監視として付く事になる。俺の都合が合わない場合は別のヒーローが君の監視に付く事になるだろう。その場合は出来る限り女性が付く手筈になっている。まぁ、あまり居心地は良くないだろうが、こちらも状況が状況だ。悪いが諦めてくれ・・・だが最低限、君のプライバシーを守る事は約束するよ」

「トイレとかお風呂は覗かない感じ?みたいな?」

「とっ・・・・・女の子がはしたない事を言うもんじゃない。念の為に言っておくが、そこまではしない」

 

包帯先生の言葉に続いてネズッミー校長も「そんな無体な事しないし、他の教師にも生徒達にもさせたりしないのさ。安心して過ごして欲しいね!」とかにこやかに言ってくる。

二人はそこまで、と言ったが状況を考えればそんなに有り得ない話ではない。実際、絶妙にタイミングが悪いのだ。何せこっち今は夏休み真っ只中。私がやってきたのは合宿で襲撃を受け、ガチムチが黒マスクと激闘を繰り広げた後らしい。ただでさえピリピリしてるのに敵対勢力ではないにしろ、原因不明な現象で部外者の侵入を許した。慎重になるのも頷ける。

その微妙な状況下、A組の寮内でこの自由度で生活出来るなら破格の扱いだと言える。

 

「あっ、生理用品とかも貰えます?出来たらいつも使ってるメーカーのが良いんですけど」

 

思いついたそれを尋ねると、包帯先生はピシリと固まる。ネズッミー校長はあちゃーみたいな顔をして口を開いた。

 

「あぁーーごめんね。それはこちらの配慮が足らなかった。今日中には女性の先生を君の元に行かせるから、そう言った相談はその時して欲しいのさ」

「はーい、りょでーす!他に何かあります?」

「今の所はないなのさ」

 

女性の先生か、ねむりちゃん辺りだろうか?

まぁ、何がともあれ取り敢えずは手元にあるカードを消費する事を考えよっか。

私は見張り役として残ってる女子ーズの皆に向き直り、手元のトランプのカードに視線を落とした。

 

待ってる間暇だったので最初は色々あっちの事を話してた。未来の事は伏せてだけど。それでもこっちでは起こってない事もあって、その手の話に対して基本的に皆食い付きは良かった。何故だか、かっちゃんの話は特に。

ただその手の話は向こうで何度もしてるやつばかり。話してるだけなのもちょっと手持ち無沙汰になって、それで何となく始めた大富豪だったけど・・・・思ったより白熱してしまった。私も含めてギラギラした目でやってる。

 

「━━━━はい、んじゃ再開ね。私の番だよね?はい8切り。で、エースの革命・・・・出す人いない?いないよねぇ?だって、2もジョーカーも使っちゃったもんねぇぇぇ?はい!んじゃ、5であがりー!いぇーい!」

 

ポンポンと持っていたカードを場に出し終えると、まだカードを持ってた面子が悔しげな声をあげた。特に先程まで大富豪だった耳郎ちゃんは格別で、恨みの籠ったジト目でむっちゃこっちを見てくる。

 

「くわぁーくそっ、マジか!あの一枚だけ処理出来ればあがれたのに!」

「へいへい~都落ち~!都落ちぃ~!さっさと王冠を譲るが良いっ、この大貧民めが!!」

 

百が作ったちっちゃい王冠を耳郎ちゃんから奪い取り、自らの頭の上にセット。神々しい黄金が私の美しさとの相乗効果によって光り輝く。多分。

 

二位争いが始まる中、あしどんは手元のカードを眺めながら呟くように言った。

 

「そっかぁ、ニコ暫くいるんだねぇ。部屋どうする?私の隣なら空いてたよ、確か」

「あっ三奈ちゃんズルい!そーゆー事なら、私の隣も空いてるよ!て言うかさ、どうせお布団もないんだし、私の部屋においでよ!一緒寝よ寝よ!向こうの事とか聞きたい事あるし!特にニコやんと爆豪の関係とか!!・・・・あっ、そうだ!寧ろ皆で集まってパジャマパーティーしよ!パジャマパーティー!」

「パジャマパーティーか、良いね!私は賛成ー!麗日達もどう?一緒にワイワイやろーよ!」

 

大富豪観戦組だったお茶子や梅雨ちゃん、百はあしどんの言葉に少し迷う素振りを見せたけど、何やかんやパジャマパーティーには参加してくれるっぽい。

 

「んじゃ、耳郎ちゃん。うんと可愛いの着てきてね?あっ、これ大富豪命令だから。拒否権とかないから」

「なんで!?大富豪にそんな権限ないでしょ!!王様ゲームじゃあるまい・・・・し」

「皆ぁ、そろそろ大富豪も飽きてきたから、王様ゲームやろ!一回だけ、王様ゲームやろ!」

「待て待て!ニコ!嵌める気満々でしょ!こらぁ!!」

 

耳郎ちゃんの必死の制止に楽しげな笑い声が溢れた。

百やお茶子、梅雨ちゃん辺りはまだ警戒心の方が強いけど、他の面子とは大分打ち解けられた気がする。特にいつものお笑いメンバーは元よりノリが良いのもあって向こうとそんなに変わらない感じだ。

 

「よし丁度こっちも勝敗は決まったし、このままカードで王様決めよ。ニコ。キングが王様ね」

「あっ、芦戸!なに勝手に準備進めてんの!?やんないからね!」

「まぁまぁ、響香ちゃん。これも定めだと思って。ねっ、一緒にシャンニングドローしよ?」

「こんな定め受け入れるか!てか、シャンニングドローってなに!?」

 

ワイワイしてる三人を眺めながら運命のカードをシャッフルし始めていると、背中に何かビビビッと感じるものがあった。振り返ってみれば、包帯先生の何か言いたげな視線と何処か楽しげなネズッミー校長と目が合う。

何かあるのかと聞いてみれば、ネズッミー校長の笑い声が返ってきた。

 

「ハハハハっ、何でもないのさ!ただ、そうだね、若さというのは素晴らしいと思ってね。私のようなひねくれた大人になるとね、何事も必要以上に疑って掛かるような見方をしてしまう。目に見えている事を疑って、聞いた話を疑って、何かあるんじゃないかってね。正直に言えば君と話すまで、私は君がヴィランの一味、そうでなくてもその協力者ではないかと思っていたよ」

「根津校長、それは・・・っ!」

「大丈夫なのさ。相澤くん。この子は悪い子じゃない。あんな風に笑える人間が、人を傷つけるような事はしないのさ━━━━まぁ、少しずる賢い所はあるみたいだけどね」

 

ネズッミー校長のウィンクに私は目を逸らした。

いらん事まで暴かれそうだから、このネズッミーとは話さないのが吉なのである。

 

「━━━━━しかし、うーん、こんなに仲良く出来るなら待遇を変えた方が良いのかも知れないね?」

「ふぁ?」

「!?校長っ、何をっ・・・!」

 

包帯先生の驚いたような声。

そしてネズッミー校長の瞳に宿った怪しげな光を、私の優秀過ぎる双虎アイは見逃さなかった。上手い事これからの話を誘導しないと、私にとって大変宜しくない結果になる気がする。

シャッフルしてたカードをお茶子にパスして、私はネズッミー校長と向き合った。

 

「そんなに緊張しなくて大丈夫なのさ。君は・・・向こうで、つまり平行世界で我が雄英高校に通っていたんだよね?ヒーロー科の生徒だった、間違いないかな?」

「そ、そうですけど・・・それが何か?て言うか、私の話を鵜呑みにして良いんですか?平行世界とか、割とぶっ飛んだ話してる自覚はありますけど」

「にわかには信じがたいさ。でも、君の話を聞くとまるっきり嘘とも思えなくてね。さて、そんな学生の君をただ寮に閉じ込めておくというのは・・・どうだろうか?きっと向こうの私も言う筈さ、健全とは言えないよね!ってね。だから提案なんだけど━━━━」

 

おおよそ何を言われるのか分かったので、即行で両手を胸の所でバッテンさせた。

 

「お断り申し上げます!!」

「━━━━で、提案なんだけど、良かったら━━━」

「おぉぉこぉぉっ!とぉぅ!わぁぁっ!りぃぃっ!しまっすぅぅぅぅぅぅ!!」

「━━━━良かったら、学生らしく生活していかないかな?」

 

ああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!

私知ってるっ、これ選択権が用意されてないやつぅぅぅぅぅ!!いやぁぁぁぁぁぁぁ!!ゲームしたり、漫画みたり、にゃんこ動画をおやつ片手に寝転がりながら観て、何もしないでのんびり過ごす計画がぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネズッミー校長の策略のせいで、私は午後から他のA組連中と一緒に訓練場へやってきていた。監視役の包帯先生が来るから、ついでに連れてかれたとかではない。ネズッミー校長のせいで、一生徒として訓練に参加する事になったのだ。げせぬぅ。

よもや身元の分からない人間を、生徒達の訓練に参加させてくるとは思わなかった。ネズッミー校長から信用されたのは良いけど、こんな事ならちょっと疑われるくらいに調整しとくべきだったのかも知れない。後悔は先に立たずとはいうけど、あれは本当にマジでマジだ。マジ、マジだわ。

 

そんな訳で本格的に参加させる前に腕試しする事になった。相手は向こうでもお世話になってたお化け先生。お化け先生の個性は知ってるので、お化け先生のコピー相手に遠慮なく手加減ゼロで試したかった技を試しまくった━━━━その結果、引かれた。超引かれた。

 

特に男連中からの畏怖の視線は凄くて、ちょっと近寄っただけで同じくらい距離を取ってくるレベルに恐れられてしまった。あのブドウですら後退りしてくるくらい。まぁ、だからと言って皆が皆そうでもない。男の中でも轟とかかっちゃんは対抗心を燃やしてきて、出久からはキラキラとした尊敬の眼差しが向けられた。

あしどんとか葉隠とか、さっきゲームしてた女子ーズもそこまで態度は変わらなかった。同じ女子の活躍を喜んでるくらいだった。

 

皆から当然とも言える称賛を受けてると、本体のお化け先生が声を掛けてきた。

 

「━━━━驚イタ、ココマデ出来ルトハ。多少油断ハシテイタガ、遅レヲ取ルトハ思ワナカッタ。平行世界デモ、私ハ教師トシテ君ニ訓練ヲツケテイルダロウカ?ダトスレバ、私ヨリ優秀ナノダロウナ。君ノ相手ガ出来ルノダカラ」

「ん?そんなに変わりませんよ。個性も大分見られましたし、次くらいからはお化け先生でも普通に対応出来るんじゃないですか?ていうか、そもそも本気じゃない人に言われてもアレなんですけど」

「ハハハハッ、生徒ニソンナ事ヲ言ワレタノハ初メテダ。出来ルナラ本気デオ相手ヲシタイ所ダガ・・・・私モ教師トシテ立場ガアルノデネ。期待ニ応エラレズ申シ訳ナイ。シカシ、向コウノ私ハサゾ楽シイダロウ。君ハ育テガイガアル」

 

そうかなぁ・・・・向こうのお化け先生は、基本的に溜息しかつかない人なんだけど。お世辞にも楽しんでるようには見えないんだよなぁ。

まっ、どっちでも良いけどさ。

 

「ソウイエバ、君ハ仮免許ヲ取得シタト聞イタガ?」

「ああ、はい。ライセンス取りましたよ。資格証持ってきてませんし、そもそもこっちだと登録されてないだろうから証明しろって言われても出来ませんが」

「イヤ、今ノ戦闘デ君ノ大体ノ能力ハ把握シタ。判断力、身体能力、技術、個性、ソノドレモガ仮免許有資格者トシテ不足ナイレベルダッタ。既ニ必殺技ヲ幾ツモ用意シテイルヨウダシ、君ノ訓練メニューハ基礎能力ノ底上ゲヲ重点的ニ行ッタ方ガ良イト思ウノダガ・・・・ドウダロウカ?」

 

それについて思う事はない。

私としても、元よりそうするつもりだった。

コクンと頷いておけば、満足したようにお化け先生も頷く。

 

「筋力トレーニング、ソレト個性トレーニングヲ中心ニプランヲ立テル。組ミ手ハ必要カナ?」

「組み手は別に━━━━」

 

いらない、そう言おうとした時だった。ボンっという大きな爆発音が私の耳に響いてきたのは。

見なくても分かったけど、一応確認してみれば眉間にシワを寄せたかっちゃんの掌から焦げ臭い煙が立ち上ってる。何か言いたげな視線と目が合ったので仕方なく先を促してやれば、額に青筋を浮かべながらかっちゃんは口を開いた。

 

「てめぇが、仮免許の有資格者様だとはなぁ・・・えぇ?糞ポニテ女ァ。最近同じヤツばっか相手で退屈してたんだ。是非ともご教授願いてぇなぁ?ああ?」

 

何かそれっぽい事言ってるけど、このかっちゃん語は要約すると『理由なんざ何でも良い。さっきの借り返させろ。ボコボコにしてやるからよ』である。向こうのかっちゃんなら買ってあげても良い喧嘩だけど、こっちのかっちゃんだといまいちやる気でない。なんかノリが違うのだ。面白くない。それに弱いから遣り甲斐なさそうだし。

お化け先生に止めないの?と視線を向けたけど、アイコンタクトで好きにして良いよとの事。いや、止めて欲しかったんだけども。

 

「えぇっーと、うーん。メリットないからやだ」

「ああ!?んだ、てめぇ!!メリットだぁぁ!?この俺が━━━━」

「私より弱い奴とやって、私がなんの得するの?対人訓練が必要ならお化け先生とか包帯先生に頼めば済むんだよね。それにさ、かっちゃん絶対しつこくするじゃん。どうせ勝つまでやるつもりでしょ?やだよ、疲れる。めんどい。だから、やだ」

 

私がそう言うと様子を見てた出久が遠い目をしながら頷いた。頭に浮かんだ言葉は『分かる』だと思う。

 

「くっ・・・てめぇっ!!舐めてんのか!?ああ!?一回勝った程度で調子乗ってんじゃねぇぞ!!!来やがれや!!今度こそぶちのめしてやっからよぉ!!ごらぁ!!」

「はいはい、舐めてる舐めてる。ペロペロ~~。でも生憎、調子には乗ってないから」

 

微塵も負ける気がしない相手と戦って勝った。さっき起きたのは、ただそれだけの事。そんなの自慢になる訳がないのだから、調子に乗るも何もない━━━━とはいえ、それをそのまま直接言うと余計面倒な事になりそうだから黙っておくけど。

 

諦める気配のない目の前の男を眺めながら、どうやったら楽にやり過ごせるのか考えてみたが・・・・こっちのかっちゃんも馬鹿ではない。あっちより大分弱いけど、プライドの高さも頭の回転の速さもそこまで変わらない気がする。みみっちさも同じくらいなら、誤魔化すのは無理だろう。

 

「はぁ・・・・仕方ないか。良いよ、一回だけね」

「はっ!端からそう言ってりゃ良いんだ!!ドカスが!!今すぐぶちのめ━━━━」

「ただし、ただではやらないから。私が勝ったらシュークリーム十個。コンビニのは駄目。ちゃんと洋菓子店のやつだからね?高いやつ」

 

そう言って両手の指をパッと開いて見せれば、かっちゃんが目を丸くさせた。

 

「━━━━はっ、はぁ!?シュークリームだぁ?!てめぇ、ふざけんのも大概にしろや!!誰がっ、てめぇなんざに奢るか!!」

「じゃ、無しね。お疲れー」

「なっ、く、このっ・・・・ちっ、上等だ!!糞ポニテ女ァ!!てめぇがぁっ!!俺にっ!!勝てるもんならな!!」

 

私の言葉で火がついたのか、かっちゃんは怒鳴り声をあげると爆発の勢いを利用して飛び込んできた。かっちゃんお得意の爆速ターボだ。

ただ、やっぱり向こうのかっちゃんと違う。安定性に掛けるし、速度自体も若干遅い気がする。

 

「約束、したからね?」

 

ニコちゃん108の必殺技━━━Extra。

『ニコニコ・メテオール』コンクリver+ニコちゃんブレス派系『ニコちゃん銀河星団』線香花火ver。

 

そこら辺に落ちてたちっさいコンクリ片に対して引き寄せる個性を発動。かっちゃんを死角から狙撃した。鈍い音が響いて、かっちゃんが空中でバランスを崩す。すかさず隙をついてニ撃、三撃と攻撃を重ねて━━━更に個性の出力もあげていく。

 

邪魔の入らない環境の中、灰色の軌跡が私の指示通りに飛び交う。嵐の如く激しく飛び回るコンクリ片の群れは、風切り音をあげながらかっちゃんの体を次々に襲っていく。かっちゃんは灰色の軌跡に包まれながら、爆破して私の攻撃を散らそうとしてるけど、それもあまり上手くいってない━━━というか、上手くいかないように私が腕をあらぬ方向に引っ張ってたりするんだけどもね。隙だらけだから、つい。

 

そうこうしてる間にチャージし終えた炎を吐き出す。

フヨフヨと空中を揺れるそれは灰色の軌跡が起こす風に巻き込まれてかっちゃんの元へ。

そしてけたたましい音が鳴り響く。文化祭での出し物で使う演出用に調整した技。威力は無いけど、至近距離で食らわせれば目と耳くらいやれる。目立つにも持ってこいだ。

 

コンクリ片を大量にぶつけられながら、目と耳をやられたかっちゃんだけど抵抗はやっぱり止めない。打つ手は完全に封じたつもりなんだけども。

 

それから少し、そろそろダルくなってきたなぁと嫌気が差した頃。かっちゃんの腕の抵抗が漸く無くなった。引き寄せる個性を解除すると、コンクリ片が散らばった地べたの中に倒れてるかっちゃんを見つけた。見事に白目剥いてる。

 

「・・・・・マジか。爆豪、瞬殺かよ」

 

切島は唖然とした様子で呟くと、遅れて状況を理解した皆がざわざわし始めた。いつの間にか全員の視線が私に集まってる。

 

「シュークリームとったどぉぉぉ!!」

 

なので高らかにガッツポーズを取ったんだけど、何か不穏な気配を放つモノが背後に立った。

恐る恐る振り返ると、ご自慢の包帯を握りながら見開いた目でがっつりこっち見てる包帯先生がいた。

 

「教師の俺の前で堂々と賭け事をするとは・・・良い度胸だ。よっぽど、向こうの俺は君に甘いらしいな。向こうの、俺は」

「━━━━━ひぇっ!?こ、これは違うんです!!」

「ほう、なら、何が違うのか説明して貰おうか。ゆっくりと」

 

二時間くらい正座で説教された。

淡々とお説教された。

勿論、こっちのかっちゃんも巻き込んだ。

 


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