私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
多分、このおふさげパート次で終わりや。
拝啓、母様へ。
セミの声が耳につき、日射しが厳しいこの頃・・・おっとそちらは冬も間近でしたね。こたつとみかんが恋しくなる肌寒い日が続きますが、ごけんしょーであらせられますでしょうか?私はごけんしょーです。言われた通り毎日洗濯して、乾いた洗濯物はしまってます。部屋の隅に重ねておいたりしてません。本当です。信じて下さい。お願いだから、部屋を訪ねる時は三日前には連絡下さい。
さて、貴方の娘こと百年に一人レベルな超天才美少女の双虎にゃんですが平行世界にきてから早い物で一週間が経ちました。最初は戸惑う事ばかりだったけど、基本的に元の世界と同じ人ばかりで、その上の性格とかも大きく変わらないので上手いことやれているのですが・・・・一つ面倒な事も一緒でした。
かっちゃんがマジでメンドイの。
死ぬほど中ニなの。
母様、へるぷみー。
「━━━━━っぐぅ!?てめっぇ!!」
「あああああ!!しっ、つこいなぁ!!!」
わたぁーー!っと引き寄せる個性込みでラリアット。
怒号と共に放った渾身の一撃はダメージが溜まってたかっちゃんの意識を何とか刈り取り、漸くその喧しい口を黙らせタフネスが過ぎる体を地面へと叩きつけた。
手合わせを始めてから約二十分ちょいの戦闘で、ほぼ全部の体力を使う羽目になった。タフネスにも程がある。
「はぁ、はぁ、はぁ、はっ・・・・む、むりぃ」
そのまま立っていられず、白目剥いたかっちゃんに腰掛けて息を整えていると、出久がスポーツドリンク片手にやってきた。苦笑いと共に差し出されたそのドリンクを貰い、私は荒い呼吸を少し落ち着けてから一気にそれを胃に流し込んだ。うまあじ。
「━━━━━はぁぁぁぁぁっ!生き返ったぁ!!ったく、そのアホかつ!本当っ、アホかつ!馬鹿なんじゃないの!?出久!!幼馴染なんでしょ!?少しは躾しな!!本当っ、本当むり!アリエッティぃ!!」
「すっ、すみません。かっちゃんがご迷惑をお掛けしまして・・・でもですね、確かに僕は幼馴染ではありますけど、双虎さんみたいに強くないですし、流石に躾とかは・・・・あははは」
「あはははじゃない!!そのせいで私が大変なんだからね!?馬鹿言ったら、ぐーでぶん殴ってやれば良いの!!ぐーで!!ボッコボコにしたりぃ!」
そう言って拳を突き出してみせてたけど、出久から『やります』の言葉はなし。代わりに苦笑いが返ってきた。なんて役に立たない弟よ。そんなんだからかっちゃん馬鹿なんだぞ?略して馬鹿っちゃんなんだぞ?まったく。
この一週間、事ある毎にかっちゃんは突っ掛かってきた。訓練中は当然の如く挑んできて、自主トレ中やらランニング中にオラついた態度で喧嘩売ってくる。それ自体は別に良い。少し面倒ではあるけど、ぶちのめせば済む話だ。面倒なのはその相手がかっちゃんで、やる度に動きに磨きが掛かってる事だ。
こっちのかっちゃんは弱い。だけど、あっちのかっちゃんと比べて身体能力や個性が極端にヘボい訳でもない。戦闘センスだって向こうのかっちゃん同様頭おかしいレベルで高い。・・・・それじゃぁ何が違うの?となったら、それはほぼ間違いなく『経験』だと思う。
そう、こっちのかっちゃんの弱さの理由は簡単で、圧倒的に実戦経験が少ないせいだ。
何度か戦って確信した。こっちのかっちゃんは恐らくこれまで自分と同等、もしくはそれ以上の相手と碌に戦った事がないんだと思う。出久はあの調子だし、こっちと面子が変わらないならかっちゃんの相手を出来るようなやつ中学にもいなかった。戦闘センスは感じるのに動きの所々に粗が目立つのはそのせいだろう。
引き際に引かず、こうして意識を失うまで戦うのも自分の力量や限界を把握してないから。
でもこの一週間で確実に戦闘スキルが上がった。
私の攻撃に反応するようになってきたし、格闘術も個性の使い方も的確により嫌らしくなってきてる。
こっちも向こうで培ってきた物があるから簡単に追い付かれてやるつもりはない・・・・けれど事実として、このまま訓練を続けていけばそう遠くない内に手加減出来なくなると思う。実際さっきの止めは半分本気でぶちこんだくらいだ。
腐ってもかっちゃん、という事だろう。
いや、どういう事だろう。
言っといてなんだけど意味わかんないわ。
取り敢えず敗者であるかっちゃんの顔面に『敗北者ァ?』『やめ、やめろ!』『止まるな、かーつ!』『敗北者じゃけぇ』『種類が違うカットケーキをワンホール分所望する』とだけ書いておいた。
それを見てた出久が青い顔で「うわぁ」と言うので『シュークリームとハーゲン●ッツ馳走であったわ』と前日と前々日に奢って貰った事に対する感謝の言葉もつけといた。然り気無い気遣いが出来る、清く優しく美しい私なら当然だよね。今夜も待ってるよ、馬鹿っちゃん。
「━━━━さて、と!回復!出久、次相手しよっか?」
「えっ、もう元気になったんですか?!あ、そ、それじゃ少しだけお願いします・・・・!」
訓練を始める当初、お化け先生に言った通り戦闘訓練はしないつもりはなかった。だけどかっちゃんと一度手合わせすると無謀な挑戦をしてくる奴等が出て来た。主に轟とか、出久とか、切島とか。勿論、その場で丁重にボコボコにして差し上げた。ただ、それでへこたれる連中でもなく、かっちゃん同様ちょいちょい手合わせを頼むようになって今に至るという訳だ。
そんな訳で今日も今日とて出久をボコり、轟をボコり、切島をボコり、尾白をボコり、ついでにドンマイをボコり、セクハラしようとしたブドウを踏みつけ、復活した馬鹿っちゃんをボコったのだった━━━━。
「━━━━いや、だったじゃないわぁ!」
最早当然の如く訓練に参加させられたその日の夜。
お茶子の部屋へとパジャマパーティーしにきた私は、女子ーズの皆の前で心の底から不満を吐き出した。
人生ゲームのスロットを回しながら、梅雨ちゃんが心配そうにケロケロしてくれる。ありがてぇ、ケロケロありがてぇ。
「やってられないよぉ、私は・・・何だって別の世界に来てまで、この糞暑い時期にせっせこ授業せねばならんのよ。かっちゃんもアホみたいに絡んでくるしさ。あーーーもぅーーー久々にぐーたら出来ると思ったのになぁぁぁ。どうせ出るなら向こうの授業出るわ。はぁぁぁぁぁ、もったいな!一週間分の元気と出席日数もったいなぁぁぁ!!」
無理ぽよぉぉ!っと隣にいたお茶子に抱きつくと、お茶子は苦笑いしながら頭を撫でてくれた。慈母が如き優し手つきに心が癒されていく。頑張って誤解を解いた甲斐があったんだぜ。はふぅ。
「あははは、お疲れ様ニコちゃん。爆豪くんの様子を見とると、ぐーたらしてる時間は明日もなさそうやね」
「ケロケロ、本当ね。今日も爆豪ちゃん過激だったもの。一度負けてあげたらどうかしら?あんまり良くない事だとは思うけど」
コマを進めながら梅雨ちゃんの言った言葉に、あしどんがイヤイヤと首を振る。
「爆豪、あれで勘良いから無理でしょ。直ぐに気づいて余計にヒートアップするって」
「だよねー。『てめぇ!俺に勝ち譲るたぁ、どういう了見だぁ!舐めてんのかこらぁ!』って言うよ!絶対!━━━私は絶対言うに、響香ちゃんの魂を賭けるぜ!」
「待て葉隠、勝手にウチの魂賭けるな。あっ、梅雨ちゃん子供産まれたって。ご祝儀出しな、双子だから二十万」
また子供、だと?おいおい、梅雨ちゃん何人産む気なん?私なんて伴侶所かクソイベントばっか踏んでて、さっきなんて転んだだけで数百万飛んだのにぃ。くそうぅ。
そうは言ってもこればっかりは運。文句を言っても仕方ない事ので、私はなけなしの手札から二十万を抜き取り手渡した。
「梅雨ちゃんのすけべぇ」
と一言添えて。
すると悪のりしたあしどんや葉隠も真似して一言添えながらお金カードを渡していく。「ラブラブだねぇ!」とか「お名前はお決まりですかぁ」とかだ。
そうして現金カードを受け取った梅雨ちゃんの頬には羞恥のせいか赤みが差す。肩がプルプル震えて、視線が少し下を向いた。
「け、けろっ・・・・ふっ、双虎ちゃん。皆も。そう言うのは、良くないと思うわ」
「えーでもぉー、そーいう事しないとぉー、お子様は出来ない訳ですしぃー、それはつまりぃ、お好きで御座いますねぇって事ではないにょぉー?」
「こっ、これはあくまでゲームの話でっ、私は、そのだって・・・・けろぉ」
耳まで真っ赤になった可愛い梅雨ちゃんをニヤニヤしながら見てたら、頬っぺたをぐいーっと引っ張られた。
ちょっとした痛みと共に触り慣れた肉球の感触が伝わる。構って欲しいんかー?とか思ってたら、段々と頬を掴む力が強くなってきて激痛が走り出す。
「━━━━みぇっ!?いたたたたたっ、お茶子ぉ!力強いっ!強いって!取れちゃう!頬っぺたが取れちゃう!本当に痛いんだけど!?」
「梅雨ちゃんに言うことあるやろ?ん?」
「ごめんなさいでございましたぁッッ!!」
謝ったら鬼のような握力から解放された。
ヒリヒリは残ってるけども。
あっ、あとね、悪のりした他の二人も百と耳郎ちゃんから軽くお叱りを受けました。まる。
「━━━それはそうとさ、こっちの爆豪はただのアホとして、向こうの爆豪とはどうなのさ?梅雨ちゃんの事あれこれ言ってたけど、そういう話ならニコが一番何かあるでしょ。どうなの、実際さ。何処までいってんの?ちゅーした?もしかして、その先までとか?きゃー!」
転職マスに止まったあしどんがスロットを回しながら、ふとそんな事を聞いてきた。葉隠もその話題に乗ってきて「全部吐いちゃいなよ、ゆー!」とか言ってくる。吐いちゃなよ、ゆーとか言われてもなぁ。
「いやいや、ないない。別に付き合ってる訳でもないし」
「「「「「えっ?」」」」」
私の言葉に何故か全員が固まった。
そしてあしどんのスロットが1で止まる。
転職先はTVタレントらしい。
「あれ、おかしいな。付き合ってないって聞こえた気がする。葉隠、聞いた?」
「えっ、う、うん、きっ、聞いちゃったかなぁ~。ええ?あれぇ?」
なんか二人がめちゎくちゃ困惑してる。
何がおかしいのか?と思って周りの反応を見てみたら、そこにいた全員が同じ様な顔をしてた。
「誕生日は毎年欠かさずプレゼント渡し合ってて、バレンタインの日には、小学生の頃から毎年手作りチョコあげてる仲なのに?」
そう言ってズイっと、あしどんが迫ってくる。
疑うような視線を向けられるけど、それに特別理由はないんだけどな?小さい頃からやってるから習慣になっちゃってるだけだ。それにお返しが凄いから止められないのもある。
「しょっちゅう一緒に出掛けてるんでしょ?しかも二人きりでさ。ご飯食べに行ったり、ゲーセン行ったり、カラオケ行ったり・・・・登山なんて仲良いカップルでもそうそういかないよ?」
そう言ってズズイっと、葉隠が迫ってくる。
またしても疑うような視線を向けられるけど、でも聞いて欲しい。これは仕方ないんだ。だって奢ってくれるんだもん。文句はぶちぶち言うけどさ、なんやかんや行きたい場所には付いてきてくれるし。あと、登山はたまたま気分がのったから行っただけで、どうしても行きたかったとかではないし。
「あんたさ、相手側の実家に専用の食器を用意されてんでしょ?それどう考えても親すら公認してる仲じゃん」
そう言ってズイズイっと、耳郎ちゃんが迫ってくる。
そしてまた疑いの視線である。いい加減にして欲しい。何も付き合ってるから用意されてる訳じゃない。子供の頃から良くご飯御呼ばれしてて、個人的にも仲が良い光己さんが好意で用意してくれただけだ。それ以上はなにもない筈。
「父親にしろ母親にしろ、年頃の女の子の部屋へ男の子を通したりはせんと思うけどなぁ・・・それも寝てる時とか、幼馴染でも絶対あり得んて。と言うか、仮に彼氏だとしても中々通さんと思うよ?普通は」
そう言ってぬっと、お茶子が迫ってくる。
そしてやっぱり疑いの視線であった。そんな事言われても困ると言うのに。母様的には起こすの面倒でかっちゃんに任せてただけだろうし、それ以上何もないと思うんだよね。それにかっちゃんはあれで紳士だから、寝込み襲うような事は間違ってもしないだろうし。
でも、実際にどうかは置いて考えてみると、客観的に見てカップルと言われてもおかしくない状況な気がする。しかも並のカップルではなくバカップルよりだ。なんだろ、なんか考えれば考えるほど、勘違いするのも仕方ない気がしてきた。全然違うんだけども。
ちっ、違うしぃ?
「━━━━━こっ、この話は終了ぉぉぉぉぉ!!」
「逃げた」
「逃げたね」
「逃げたな」
「逃げたわね」
「逃げましたわ」
「逃げやな」
一斉に集まった視線に、何故か妙に気恥ずかしくなった。何故か顔も熱くなって、居心地が超悪くなってくる。激しくいたたまれない。
「うっ、うるさぁぁぁぁぁい!!お茶子こそどうなんじゃぁぁぁぁい!!出久との馴れ初め話さんかぁぁぁぁい!!うちの可愛い弟、どうやってタブらかしたんじゃぁぁぁぁい!!」
「たっ、タブら!?しとらん!しとらんから!!デクくんとはっ、そういうんとちゃうし!!ただヒーローとして尊敬しとるというか、姿勢が立派だなって思っとるだけで・・・・そんなんちゃうし!!」
「良く言う!!盛りついたメス犬みたいな目で出久の事見てる癖にぃ!バレないと思ったら大間違いだかんね!エロお茶子ぉ!エロお茶子ぉ!ひゅーー!」
「ちゃうゆーとるやん!!エロとかちゃうから!!そんなんゆーたらニコちゃんかて、向こうのかっちゃんの話する時とかニッコニコしてるやん!!どんだけ大好きなん!?見ててこっちが恥ずかしなるわ!!」
「にゃぁ!?そっ、そんな事ありませんけどぉ!?私は生まれついてのエンターテイナーだから、常に面白おかしくお話を提供する癖がついてて、だからにこやかに教えてるだけですぅ!!」
「さぁさぁ、熱くなって参りました。司会は私こと葉隠が、解説は三奈ちゃん氏でお送り致します。三奈ちゃん氏、この戦いどちらが優勢でしょうか」
「うむ、優勢とかよく分かんないけど、面白いから生暖かい目で見守ってましょう。明日弄るのが楽しみです」
「成る程、それは楽しみですね!」
「いや、止めてやりなって」
「けろっ、そうね。百ちゃん、手伝って貰えるかしら?」
「ええ、勿論です。時間も時間ですし、今日はこれでお開きにしましょう」
その日の夜、お茶子との決着がつかなかった私は、一人布団の上で復讐を誓った。今度こそ、お茶子だけを弄ってやるのだと・・・・それとちょっと、ほんとのちょっとだけ、向こうのかっちゃんが懐かしくなったので星に願っておいた。
私ばっかり大変なのは不公平だと思うので、そろそろ向こうのかっちゃんにも同じくらいの苦労と苦痛を与えたまえと━━━━━いや、まぁ、向こうで文化祭の準備で忙しくしてるとは思うから、本当に何か起きて欲しい訳でもないけど。最悪、私の代わりに文化祭を頑張って貰わないとだし。
だから、せめて、足の小指をタンスの角にぶつけるレベルで良いです。何かをかっちゃんに与えたまえぇぇぇぇ。きぇぇぇぇ・・・・・・ぐぅぅZZZ。