私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
お付き合い頂き、誠に感謝でござる。
にんにん。
現代の世界三大美人の一人と言っても過言ではない、アルティメットでグレートでエクセレントな美少女の私率いる、ヴィラン連合開闢行動隊による合宿場襲撃作戦決行から翌々日。
「作戦達成を記念しましてぇぇーーーカンパーイ!!」
炭酸ジュースが注がれたグラスを掲げ、惜し気もなく可愛いさを目一杯込めて声をあげれば、いつものバーの中に乾杯の返事が返ってきて、それぞれが持った色とりどりのグラスが高く掲げられた。
若干ノリの悪いのが視界に入るけど、主に弔とか、弔とか、弔とか、ダビーとか。まぁ、それよりテンション高い奴らが盛り上げてくれるので私的にはOK丸だ━━━━からと言ってさっさと出ていくんじゃないよ根暗コンビ!!ごらぁ!!
「セブンに乾杯!!初作戦だからよぉ、ちょっと心配だったけど、なんやかんや上手くいって━━━━良くなかったぜ!!また宜しくな!!」
「仁くん分かりづらいです。喜んでるのは何となく分かりますけど。でも、そうですねぇ、作戦上手くいって良かったのは本当です。個人的にも新しくお友達も出来そうですし、本当良いことずくめでした。これで少しはステ様に近づけたでしょうか?はぁ、ステ様。ステ様、ステ様、ステ様ステ様ステ様ステ様ステ様っ・・・ふふふっ!早く会いたいです!お話したい!ねぇ、ナナちゃん!今度はステ様を捕まえてる人達倒しに行っちゃいましょう!待ちきれないです!」
店内に流れるムーディーな雰囲気を見事にぶち壊してくれた二人を横目に、私も美味しそうな香りが漂うシーフードピザを口にした。うみゃい。チーズ追加して良かった。
「━━━これまた美味しそうに食べるねぇ、セブンのお嬢は。若いってのは良いなぁ、本当にさ。おじさんくらいになると、それはちょっと胃に重いわ」
そう言って琥珀色の飲み物が入ったグラスを傾けるコンさんに、筋肉野郎がビールの入った大ジョッキ片手に歩み寄って無理やり肩を組んだ。
「おう、おう!なぁに、ジジイみてぇな事言ってんじゃねぇよ。コンプレス。んな事言ってっと余計に歳くっちまうぞ?ああ?それよかお前マジシャンだろ?なんか芸しろよ、折角の祝いの席だろうが。ほら、あれだ、どばーんとよ!ビル消すとかどうだよ!なぁ!」
「あら、良いじゃなぁい?面白そう。私、そういうの生で見たことないのよ。何か見せて頂戴よ、ミスター」
直ぐ側でカクテルを飲んでいたオカマ、一応女性カウントされてるマグ姉貴も便乗していったので私も乗っといた。やんややんや。ポケットからキリン出せー。
「君ら、もう酔ってるの?お嬢も、それお酒じゃないよね?・・・・はぁ、あのね、ああいう大掛かりな物は、それなりに準備が必要な物なの。機材は勿論、人手もお金もね。だから今すぐなんて言われても、ちょっとしたヤツくらいなもので、例えば━━━」
「ああ?何か良くわかんねぇけどよ、つまりあれか?あんたの取ったカード当てますーとか、そう言うのか?つまんねぇなぁ!もちっとねぇのかよ!」
「━━━ああっーと、これはカチンときたよ。怪盗を舐めて貰っちゃ困るなぁ」
ムッとしたコンさんはポケットからハンカチを取り出すとヒラヒラさせ始める。まじまじと三人で見つめていたら、コンさんが「ワン、ツー、スリー!」と一声掛ければ兎のヌイグルミへと変わった。それは一瞬のこと。手際の良さに拍手しといたけど、他の二人はタネの方が気になったようでコンさんを羽交い締めにした。
「それお前の個性使っただろ!おらぁ、入れ替えたもん何処に隠したんだよ!!出せ、出せ!」
「ボディチェックさせて貰うわねぇー、あらやだ、割と良いからだしてるじゃない」
「ちょちょちょちょっ!?マジックの種明かしは厳禁だよ!というか、チェックするにしてもそっちは駄目でしょ!色々と━━━━あふんっ!?」
何か酔っ払い共によって事故が起きそうなので、私は早々にその場を脱出。隅っこで一人でゲームしてるマスオを茶化し、壁に背を預けて格好つけるトカゲを写メって茶化し、頭フィーバーしてるトガっちとジンジンと軽く踊り、「肉ぅ」とか「断面んんっ」とかなんとかずっと呟いてる病み上がりの拘束男の口には熱々の唐揚げを突っ込み━━━━さっさとキリりんがグラスきゅっきゅしてるバーカウンターへ行った。やり切った私の顔にキリりんは何処か呆れているものの、何も言わず氷のたっぷり入ったグラスにジュースを注ぎ直してくれる。さすキリだよね。しゅき。
「悪戯も程々にして下さい、セブン。狭い店内で喧嘩されたら堪りませんからね」
「えへへ、りょー。それよりニュースの方はどんな感じ?いい加減に発表した?」
「いえ、事件があった事についてはマスコミが嗅ぎ付けたようですが、警察からも雄英からも具体的な発表はありません。時間の問題でしょうが」
キリりんの見つめる先、テレビでは緊急報道と題して昨日の事件について流していた。難しい顔したキャスター達が、雄英がどうだとか警察がどうだとかあれこれ言いたい放題。現場にもいない連中が随分と偉そうだなぁなんて思わなくもないけど、それも仕方ない事だ。所詮は他人事、自分に被害がなければ人間こんなものだ。
実際、後手に回ってしまってるけど、向こうの連中は上手くやってる。最善と言っても良い。
こんな事態にも関わらず、前回同様に死傷者は相変わらずのゼロに抑えられてる。勿論それは、こちらがそうなるように手を抜いたからではある。
だがそれでも、雄英の連中がこちらの想定以下のゴミみたいな戦力しか揃えられてなければ、対抗処置について考えていなければ、二三人くらいは死んでいる計算だった。やることはやってるのだ、あの連中も。
こっちの想定を超えてた部分だってある。
例えば生徒達の動きが思ったより良くてマスオが倒され掛けたり、教師の抑え役だったダビーコピーが短時間でやられてしまったり、歯の奴がブースト薬を使わなければならない程追い込まれたり、ガチホモが単騎で突っ込んできたり。数えればアクシデントはそれなりにあった。
結果的に大きな犠牲もなく私達の作戦は上手くいったけれど、今回はかなり運に助けられていた。出来すぎも良い所なのだ。
だと言うのに、世間様はこれだ。
こっちとしてはそうしてヒーロー側を貶めてくれるのは大歓迎なんだけど、ここまで上手く行くと逆に笑えない。もう少し手応えが欲しい感じだ。
「━━━━そこんとこ、どう?かっちゃん?」
私が視線を向けた先。
部屋の隅っこで椅子に絶賛拘束中な、今回のターゲットである金髪ボンバーヘッドの姿があった。相変わらず悪い目付きと視線が合うと、拘束を解こうとガチャガチャ抵抗を始めた。猿轡無かったらもっと元気そう。
何を言うのか気になって、引き寄せる個性で猿轡のピンを外してあげる。カシャンとそれが床へ落ちると、その光景を前に、何か言いたげに私の事を睨んできた。
「お礼ならいらないけど?」
「礼なんざするか、ぶちのめすぞ。馴れ馴れしく声掛けてくんじゃねぇクソヴィラン。耳が腐るわ」
「腐りませんんーー!癒されたり虜になったりする事はあっても、腐ったりはしませんんーー!!ていうかクソヴィランじゃないからっ!私にはナナって可愛い名前があるんですぅーー!ほら言ってごらん、ナナちゃんは世界で一番輝いてる。超きゃわいいねって。僕の心は君のものだよって。ほら、ゆーせい」
「世界で一番頭吹っ飛んだ馬鹿女の間違いだろ」
「あんだとこのやろー!」
ナチュラルに口悪いな、こいつぅ。腹立つ。本当にヒーロー志望なのか?・・・まぁ、何でも良いけどさ。
「ねぇ、それよりかっちゃんさ、どうなのこのニュース。ムカつかない?頑張ってたのにね?」
「はっ、くっだんねぇ。碌に知りもしねぇ、有象無象の雑魚が喚いてるだけの事だろうが。んな事よりさっさと拘束解けや。時間の無駄だ。何されようが、てめぇらの仲間になんざならねぇぞ・・・・それと、そのかっちゃんっての止めろ。無性に腹立つ」
告げられたかっちゃんの拒絶の言葉に、僅かな揺らぎもない。折角つけたアダ名も気にいらないみたい。うちのお手々マンは仲間にする気満々なんだけど、やっぱり無理っぽいよなぁ。これは。あのコミュ性なんかに任せたら、それこそ一生平行線に終わりそう。
私は勧誘は一旦止めて、話の切り口を変えてみる事にした。押して駄目なら引いてみな、である。
「雄英のヒーロー科行くくらいなんだから、かっちゃんも将来はヒーロー志望なんだよね?ねぇ?」
「ああ?何だいきなり・・・それ以外でヒーロー科に席置くやつはいねぇだろうが」
「だよねー?でも私としては、それが分からなくてさ。何でヒーローになりたいの?」
首を傾げて聞くとかっちゃんは怪訝そうな顔をする。
なんでそんな事聞くのか分からないって顔だ。
そりゃヒーローは人気職の一つで、子供に聞けば大半がヒーローになりたいなんて答える世の中だ。それでもそう思わない奴らもいる。私みたいに。
「何だってヒーローなんかが良いのー?ヒーローなんて碌なもんじゃないよー?法律だの、利権だの、人気だの・・・そんな色んな物でがんじ絡めになってる職業なんて絶対楽しくないって」
「良いことがしたいならヒーローにならなくても出来るよ?迷子くらい私でも普通に迷子センターくらい届けるし。人ぶっ飛ばしたいならさ、ボクシングでも、プロレスでも、空手でも、好きな格闘技やれば良いじゃん?一昔程じゃないにしろプロ団体は残ってるし、好きなだけ戦えるよ?人気物になりたいならモデルでもすれば?かっちゃん黙ってればイケメンだし、直ぐ人気になれるよ。その後続くのかは謎だけどね。個性使って暴れたいだけなら、それこそヴィランになれば良いしさ。━━━━ねぇ、何でヒーローなんか目指すの?」
目をじっと見てもう一度問い掛ければ、かっちゃんは言葉を詰まらせた。私はそんなかっちゃんの頬に手を添えて、息が掛かるほど顔を近づけてみた。赤い瞳が僅かに揺れて、拘束具が音を立てる。
「ねぇ、私知ってるよ。かっちゃんが戦い大好きなの。倒した敵見下してやるのが大好きなの。人に注目される事が大好きなの」
弔が目をつける前から、この目で私は見ていた。
USJで敵を倒して笑顔を浮かべる姿を。
体育祭で生徒達を蹴散らして起こる歓声に、誇らしげにしていたその姿を。
「ねぇ、かっちゃんのやりたい事って、ヒーローじゃなくても出来るんじゃない?ううん、ヒーローなんて足枷付けない方が、もっと好きな事出来るんじゃないかな?法律も、モラルも、ルールも関係なくさ。私達のバックアップがあれば、もっと━━━━」
「うるせぇ、寝言は寝て死ね」
そして、だから知っていた。
「ふふ、意味分かんない。なにそれ」
「っせぇ、黙れって事だ。頭スッカラカン。何と言われようと変わらねぇよ。俺はあの背中に、オールマイトに憧れたんだ。そこに何か面倒があろうが、そこに腹立つもんがあろうが、俺の夢は変わらねぇんだよ」
それでもきっと、かっちゃんがこう言うのは。
「俺はヒーローになるんだよ。オールマイトも超えて、誰もが認める本物のナンバーワンヒーローにな」
吐き出された拒絶の言葉に、少し残念な気持ちになって━━━そして少しだけ嬉しく思った。期待していたのだ。こうして断ってくれる事を。
そうじゃなくちゃ、面白くない。
面倒がなく容易く事が成せるなら、それが一番良い。
あれこれ考える事も、あれこれ調べる事も、あれこれ準備する事もないなら、それが一番楽だから。
でも、そればかりだと飽きてしまう。何でも思い通りに動くのは好きだけど、それも過ぎれば退屈なだけ。たまにはこう言う融通の利かないイレギュラーがいないと張り合いがないのだ。
「それじゃ、ゲームしよう。私を捕まえたら、かっちゃんの勝ち」
それに先生ほど良い性格してないけれど、曲がらない物を無理矢理曲げるのは結構好きなのだ。
「私がフリーの間に、かっちゃんをヴィランに出来たら、私の勝ち。シンプルで良いでしょ?」
「はっ、ゲームも糞もねぇ。成立しねぇだろ、んなもん。精神系の個性持ち一人いりゃ、身動き出来ねぇ俺は洗脳されてそれで終わりだ。違うか?ああ?」
「ぶーー!しないってそんな無粋な事!もち、弔にもさせないし、他の誰にもさせない。まぁだからって、態々逃がしてあげるほどフェアにやるつもりもないけど。頑張って隙見つけて逃げなよ。その方が楽しいからさ。応援してる、かっちゃん♡」
私の言葉にかっちゃんが目を見開いた。
きっと私の言葉が冗談じゃない事に気づいたからだろう。この男、獣みたいに勘は良いのだ。当然だ。
「何処にいても、どんな手を使っても、どれだけ時間が掛かっても、きっとこっち側に来させてあげる。手始めに・・・・そうだね、私の提案を蹴った結果を見せてあげるよ。もしかしたら貴方に訪れたかも知れない、明るい未来の話をしながらね━━━━キリりん、パーティー終わった後で良いからお願い出来る?」
相変わらず静かにグラスを磨いてたキリりんはチラッと私を見て「弔にはなんと?」と聞いてきた。連絡を取ってから動いた方が良いけれど・・・・バーカウンターに弔のスマホは置きっぱなし。フラっと出ていったけど、何処に行ったのかも、いつ帰ってくるかも謎ときたもんだ。どーしようもない。
一応、緊急連絡手段はあるけど、あれは本当に緊急時に使う物だからなぁ。
「それまでに帰ってくれば直接言うよ。まぁ、入れ違いになったらテキトーに言っておいて。そこら辺はキリりんに任せるからさ」
「・・・・はぁ、彼に怒られた時は、ちゃんと責任をとって下さいよ。セブン」
「あいあい!もっちー!ポイント12ーAね、迎えは一時間後くらい目安にして━━━━━あっ、ちょっと待って」
突然ポケットで震えたスマホを取り出せば、新着メールが一件届いていた。画面をタッチしてアプリを開けば、最近良く連絡を取り合っていた人物の名前が表示された。
メールの内容は、私が予想していたそれだった。
「━━━ごめんね、かっちゃん。見せたい物があったんだけど、なんかそうも言ってられなくなっちゃった」
「あ?今度何だ?意味分かんねぇ奴だな、てめぇは」
「ふふっ、マジごめんって。でも期待してくれてて良いよ?こっちのパーティーも絶対楽しめるからさ」
「イカれ女のパーティーなんざ期待出来るか、死ね」
息を吐くように悪口言うな。
まったく、もうぉー。
困った反抗期ボーイだよ。
「さっ、皆ぁ!楽しいパーティーはお開き!二次会の準備始めて!忙しくなるよ!!」