私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
オールマイトとさよならバイバイした後、直ぐにお家に帰ろうとしたが母様よりお買い物の指令を受信。
逆らう事など出来ぬ私は、行き先Uターンで商店街へと向かった。
「牛乳~小麦粉~、バターにジャガイモ~木綿豆腐に~塩ゆでクラゲ~♪━━━って、母様何作る気なん?前半はシチューなのは分かるが、後半不穏過ぎる」
母様の謎のお買い物指令を復唱しながら商店街付近に到着。━━━が、商店街は普段と違い変に盛り上がっていた。
何事かと野次馬根性で禿げたおっさんの頭を台にして高みから覗いて見ると、鮮やかな爆発が見えた。
ややっ、祭りかや?
「おっさん、何事?祭り?」
「祭りに見えるかい?」
「見えなくなくもない」
「ヴィランが暴れているらしいよ。それとお嬢さん、頭を強く掴まないで。抜けちゃう」
おっさんの数少ない髪を抜くのは流石に可哀想なので降りておく。
しかし、どうしたもんか。
商店街で買い揃えるつもりだったのに。
「━━━━━!」
不意に聞き慣れたような声が聞こえた気がした。
振り返って見てみたが知り合いの姿はない。
━━━━いや、あった。ヒョロガリがいた。
「オール・・・オールさん、何してんすか?」
「!?き、君はさっきの・・・ていうか、名前もう忘れたんだね。オジサン君の将来が心配だよ」
「うっす。そんな事より、こんな所で何してんすか?お腹押さえてトイレですか?大きい方ですか?小さい方ですか?大きい方ですよね?」
「いや、トイレじゃなくてね。古傷がね」
「へぇ」
「興味を持とうか。聞いたんだから、人並みに興味を持とうか、ね?」
聞かれたそうにしてたから合わせただけなのに。これだよ。
大人って汚い。こういう大人にはならないようにしよう。
「なんだろう、凄く失礼な事を君が考えている気がする」
「気のせいっす。うっす」
「驚くほど信用出来ない」
軽口を叩きながらもお腹を痛そうに顔を歪めるオールさん。ちょっとかわいそすになってきた私は、そっと絆創膏をあげた。いらなさそうにしてたけど、「気持ちだけ貰っておくよ」と定番のお言葉を頂いた。感謝してないやつだ、これ。
「そんな事より、呼びました?」
「?呼んではいないよ。私はね」
「おっかしいなぁ。誰かに呼ばれた気がしたんだけどなぁ。そう言えばオールさんこんな所で何してんすか?拉致した人はけーさつに届けました?」
「うっ━━━。そ、それが、ね」
途端に暗い表情を見せるオールさんに嫌な予感を覚える。ここにいると余計な事に巻き込まれそうな気がして、さっさと別のスーパーへと向かおうとすると、聞きたくない声が聞こえてきた。
「なんて強力な個性だ!爆発が凄すぎて近づけない!!」
「中学生だってのに、なんたるタフネスだ!まだ意識がある!」
爆発、タフネス、中学生。
おおう?それって、もしかする?
人の隙間を縫って眺めて見れば、爆発しまくる中学生と、それにくっつくドロドロのおっさんの姿が見えた。
ホモは糞、はっきりわかんだね。
「中学生に手をだしちゃ駄目っしょ。あ、いや、かっちゃんの気持ちを聞いてないから何とも言えないか。両思いの可能性も微レ存」
「!?知ってるのかい!彼の事を!」
「幼馴染だし、知ってるっちゃ知ってる。けど、ホモだったのは今知った」
「彼の名誉の為に言っておこう、あれは襲われてるだけだから!!」
ホモではないと。公衆の面前でいちゃついてる訳ではないと。ほうほう。
「じゃぁ仕方ない」
「!ど、何処にいく気だいお嬢さん!そっちは━━」
スーパー行くのもありだけど、商店街だとポイントつくからね。仕方ないね。
「もう少しだけ耐えてくれ!直ぐに別のヒーローが応援に━━━━━」
「いやいや、中学生に酷過ぎるでしょ。虐待案件発生につき本庁に応援要求。被疑者はゴリラ、ゴリラです、どうぞー」
「━━━はぁ!?」
筋肉ゴリラの横を通り過ぎ様にディスり、私は一直線に幼馴染の元へ向かう。
「なんだあの子は!?危ないぞ!!」
「知り合いか?!無謀過ぎる!!」
「恋人か!」
「おう、一番最後の言った奴、顔覚えたからな。ヒーローとか関係ないから、殴りにいくから」
かっちゃんの彼女とかないわぁ。
顔は悪くはないけど、性格が糞だもんね。家庭内暴力発生確定するような奴とは、間違っても付き合わんわ。
誰か拾ってやってくれませんかね?
やべ、ゾランと目があった。
「!!てめぇ、さっきの!!!」
「あれぇ、覚えててくれた?それはサンキュ。こっちもやりたりなかったんだよ。卵の仇!!」
走りながらキュートでチャーミングが詰まった鞄を投げつける。上手いこと顔面に当たり怯んだ隙に懐へ踏み込み引き付ける個性でかっちゃんの引き抜きに掛かる。
すぼっ、と半泣きのかっちゃんが顔を出したので、日頃の鬱憤も込めてプギャーしてやる事にした。
「ちょー助けて欲しそうで笑える。助けたげよか?もち、ただじゃないよ、ん?」
「━━っ!!んなもんいるか!!!てめぇの事くらい、てめぇで出来るっつんだよ!!ぶっ殺すぞ!!」
「おう、その意気だ。フォローしてやるから、ぶちかましてやれ」
ドロドロのおっさんの顔面に目眩ましの炎をぶちかまし、引き付ける個性をフルパワー発動。かっちゃんの体をドロドロから引き抜いてやる。
ドロドロの吸着力侮り難し。頑張ったけど上半身までしか抜けない。
でも私のお仕事はあくまでフォローなので、これでお仕事はお仕舞いだ。
「かっ飛ばせぃ、かっちゃん」
「うるせぇ!糞ビッチ!!言われなくても、やるっつんだよ!!!おるぁ!!!」
我等がかっちゃんはやれば出来る子。
フルパワーの爆発は強烈で、まともに受けたドロドロのおっさんはかっちゃんの拘束を解いた。
ざまぁ、卵の仇じゃ。
そうほくそ笑みを浮かべていると、直ぐに体勢を立て直したドロドロのおっさんが私に向かってきた。
うら若き乙女の体を求めるとは、こいつバイか。
とっさに火を吹く個性で距離を取ろうとしたが、相手も学習したのか手らしき部分で防いできた。顔ならまだしも、手はあかんわ。覚悟決めたら受け止められるもんね。元より水と火で相性糞悪いし。
ドロまみれになる事を若干覚悟した所で、私の隣を凄い速さでガチムチが駆け抜けていった。ヒョロガリがクラスチェンジしたみたいだ。
「情けない・・・情けない!!助ける事に躊躇して、ヒーローを望まない女の子に、ヒーローを任せてしまうなんて!!」
せやな。
「プロはいつだって命懸け!!!!」
口から血を吐きながら振るった豪腕は突風を巻き起こした。まるで災害だ。周辺被害についてどう考えているのか、是非聞いてみたい。
あ、もち、ドロドロのおっさんは四散したよ。
「━━━っ、て、てめっ!!ちったぁスカート押さえるとかしやがれぇ!!!」
我等が幼馴染はオールさんの竜巻より、私のスカートに夢中のようだ。むっつりめが。
「よいよい。どうせ見せパンだから。なんなら好きに見るとよい」
「見るかボケぇ!!!」
ギャンギャン吠える幼馴染の声を聞きながら、荒れ果てた商店街に溜息。
これ、買い物出来るんだろうか。
はい、ドロドロおっさんが無事に捕まって安心だねーさぁ帰ろうかーとなった所でゴリラヒーローに捕まった。
超お説教。まじアリエッティ。
あんまりにも理不尽過ぎるお説教に私ぶちきれ。おめぇがさっさと助ければ、私が余計な事しないですんだんだよ、ああん?中学生に何期待してんすか?馬鹿なんすか?脳みそまで筋肉なんすか?頑張れとかwもちっとましな言葉はかけられませんかねぇ?ええ?後、さっきから気になってたんすけど、ゴリラさんが近くにいると臭うんですけど。鼻が曲がる程臭うんですけど。ワキガですか?ワキガなんですかねぇ?
━━━と、人類らしくコミュニケーションをとっていると、泣かれてしまった。ちょち言い過ぎた、めんご。脳みそ筋肉は言い過ぎた。んな訳ないよね。皺がない脳みそなだけだよね。ワキガは事実だから訂正しない。
そう言えば爆豪きゅんは褒められてた。
超解せねぇ。爆豪きゅんも解せねぇもよう。
だよね。
説教ぱーちーでくたくたになった体を引き摺り、営業再開した商店街で頼まれた物を購入し帰宅。
早く帰らないと母様からボデーにキツいの貰うからダッシュ。
所がぎっちょんちょん。
私の行き先を遮る影発見。
なんぞ?と顔をしかめて見てみれば、ガチムチがそこにいた。
偶然かな?と思い通り過ぎようとすると「いや、君に用があるんだよ!?」と声が掛かる。
「私まだ中学生なんで、告白とかされても110しか出来ないんですけど」
「うん、どうして私が告白する感じになってるのかな?違うからね」
「だから、その、ごめんなさい」
「分かった!話を終わりにしたいだけだな、君は!!」
ツッコミを入れてきた所でガチムチは吐血して、ガチムチスチームと共にヒョロガリにクラスチェンジする。
命をはったツッコミに、少しだけ感心だ。
「それで、結局なんですか?」
「げほっ、げほぉあ!・・・ああ、済まない、少し聞きたい事があったんだ。と言うか、全然心配してくれないんだね」
「ダイジョーブデスカ」
「うん、この話は止めにしよう。それで聞きたいのだけど、緑谷少女、どうして彼を助けにいったんだい?」
どうしてって、まさかヒーロー様に聞かれるとは。
「そりゃ、知り合いですから助けるでしょ」
「君は言ったね。ヒーローが恐ろしい化け物に見えると」
「っすね」
「先程の君の行動はね、ヒーローそのものなんだよ。いや、本質と言ってもいい」
本質?
「そう不思議そうな顔をしないでくれ。君はどうしてと聞いたね。どうしてあの倒壊した危険なビルに、私が飛び込んでいけるのかと。それはね、あの時の君と同じ気持ちだったからさ。私は君より少しだけ世界が広いんだ。君が助けたくなるような、そんな人達が、私は少し多いだけなんだ。それが私と君との違い」
「はぁ」
「君は私の笑顔が気持ち悪いと言ったね。分かるよ。常に笑ってる敵がいたら、さしもの私も気色悪く思うだろう。でもね、これは自分の為の笑顔でもあるんだ」
ヒョロガリのいやに真剣な眼差しに嫌な予感を覚える。
「誰かを安心させる為に、敵へ余裕をアピールし圧力をかける為に、平和の象徴であるが為に。皆色々言うし、実際の所、そういった要素があることは否定しないさ。けれど、一番の理由はヒーローの重圧、そして身の内から沸く恐怖から己れを欺く為なのさ」
ぐっとヒョロガリが拳を握る。
見せんな、見せんな。分かったから。
「君なら、分かる筈さ。あの時、笑顔を浮かべて少年を助けにいった君ならっ」
えぇ・・・・。
あれは、爆豪きゅんを理由ありきでおちょくれるから、嬉々としていただけで、そんな恐怖がどうたらとか関係無いんですけど。
ぽん、と肩に手を置かれた。
セクハラ案件発生につき本庁応答願いますどうぞー。
「あの場の誰でもない、他人に関心がない、ヒーローを好きでない、面倒ごとを嫌い、それでも迷いもなく助けにいった君だったから!!私は動かされた!!トップヒーローは学生時代から逸話を残している…彼らの多くはこう結ぶ!!『考えるより先に体が動いていた』と!!君もそうだったんだろう!?君は誰よりも強く、立派な、本当のヒーローになれる!!だから━━━」
さっとヒョロガリが手を差し出してきた。
明らかな勧誘。
私は勉めて冷静に考えた。
「━━私の後継としてヒーローに」
「お断りします」
そしてちゃんと断った。
目をパチパチさせるヒョロガリさん。
私は念の為にもう一度言っておいた。
「お断りします」
花も恥じらう花より団子な女子中学生な私。
私は曖昧なんて許さない、サバサバ系女子。
やらないったら、やらないのである。