私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
紹介のアナウンスを受けて会場に出たら、みんな私の美貌に釘付けになった。これはサイン求められちゃうね。明日にはアイドルになっちゃうね。関連商品でちゃうね。濡れ手で粟だよ!わっはは!
へい!このわたくし様が手を振ってしんぜよう!手を振り返せ!野郎共!!ウェーーブ!! おー、本当にした。
「ニコちゃん、何してんの!?あかんから!」
「ウェーブさせるのが?規則的に?」
「いや、規則にはないかも知れんけど・・・」
お茶子にたしなめられては仕方ない。
ウェーブしてくれたノリのいい野郎どもにばいちゃして、私はA組の列に戻った。眼鏡にめちゃ怒られた。済まんかったって。あ、皆ーー私の為に眼鏡を怒らないたげてーー!この子、ホモだけどいい子なのー!ホモだけどー!
一部の男子と女子から眼鏡に変な歓声があがったのを確認した私は大人しく列に並んで待つことにした。━━のに、眼鏡にめちゃ怒られた。解せぬ。
それから他のクラスの生徒とか入ってきて、皆こっちを敵視してる感じで見てきた。有象無象に興味のない私は特になにもしない。まざーふぁっかーとかしてない。中指が立ってるように見える?気のせいだよ。ま・ぼ・ろ・し。
それからミッドナイト先生が出て来て、体育祭の説明とかあった。目があったから手を振ったら、ウインクが返ってきた。最近、体育祭関連で忙しそうにしてたから授業以外で会いにいってないけど、普通に元気そうだったので良かったと思う。しかし、相変わらず衣装がヤバイな。あの人、もう31なのに・・・お、なんか見られた。
「選手宣誓!!」
ミッドナイト先生の元気な声が響いてくる。
後ろから「18禁なのに高校にいていいものか」と常闇の声が聞こえてきた。それに返すように「いい」と変態小僧の声も。あいつはもう駄目だな。
「はい!静かにしなさい!!選手代表!!」
ミッドナイト先生の視線をおったら、かっちゃんがいた。
「1ーA、爆豪勝己!!」
無理やろ。
私は本気で思った。
「無理やろ」
「ニコちゃんがそれゆうたら、味方いなくなると思うんやけど」
「だって無理やろ」
「そ、それはそうかも、知れんけど」
ほら、お茶子もそう思うじゃん。
無理だって、かっちゃんにそういう事出来るわけないじゃん。
十中八九喧嘩売って終わりだよ?一緒に出掛ける時とかは周りに気を使って怒鳴ったりしないけど、基本的に悪口しか言わないとからね?この間、山にいった時とか・・・え、何?出掛けた話?あとで教えるよ。
「いや、でも仕方ねえよ緑谷。あいつ一応入試一位通過だったからな」
しょうゆ顔がなんか教えてくれた。
ありがとな、しょうゆ。
全然名前思い出せないけど。
壇上に上がっていくかっちゃんの後ろ姿ちょっと格好良く見えた。なんか背中が大きく見える。
黙ってれば少しはいけてるのに。勿体ない。
壇上に上がりきったかっちゃんはポケットに手を突っ込みながら「せんせー」と言った。
嫌な予感しかしない。
「俺が一位になる」
「絶対やると思った!!」
切島はこの言葉を予測していたみたいで思いっきりツッコミを入れた。まるで芸人のようだ。案外仲良いのね、君ら。私には何言うかまでは分からなかったよ。
ブーイングが上がる中、「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」と煽る始末。らしいっちゃ、らしいけども。
しかし、かっちゃんよ。
よくも言ってくれたな。
お前、私のさっきの宣言を聞いた上でそれを言ったんだよなぁ?ん?
壇上を降りてきて自分の位置に戻ろうとするかっちゃんの肩に、私は自分の肩をぶつけてやる。
軽く睨まれたが、今更この程度で怯む私ではない。がん飛ばし返してやった。
「私に、勝つ気だって事で良いんだよなぁ。勝つ気の勝己くぅん・・・!?」
「━━っせぇ。てめぇは、俺だけ見てりゃ良いんだよ」
かっちゃんからの宣戦布告を受け取った私は心に誓った。かっちゃんも紅白饅頭も、こってんぱんのボッコボコにして、海の藻屑に変えてやると。
続いてミッドナイト先生により最初の競技が発表された。電子掲示板にでかでかと現れた一文は『障害物競走』と書かれている。
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4キロ」
4キロとか楽勝なんですが?
「我が校は自由さが売り文句!ウフフフ・・・。コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」
それは信用ならない言葉だ。
私は知っている。言うほど自由じゃない事を。
多分、この言葉で私みたいな善良な生徒を反則で落とすつもりなのだろう。どうせ、ボコボコにしたら駄目だーーー!ってあと出しで言われるに違いない。
汚い、大人は汚い。
ま、やるとしても、バレないようにやるけども。
「さぁさぁ、位置につきまくりなさい・・・カウント始めるわよ」
点灯してる三つの内の一つが光を落とした。
あと二つ。
周りの皆を見ると一様に緊張した顔だ。
忌々しいかっちゃんと紅白饅頭もあった。
こいつらは先に潰す。
また、ランプが消えた。
あと一つ。
最後のランプが消えた。
「スターーーーート!!!!」
全員が走り出すその瞬間、私は溜め込んだ息を一気に吹き散らした。
炎が渦をまく。
他生徒達の阿鼻叫喚の中、飛び出す影を見つける。
一人くらいは抜けると思っていたので想定内だ。
私は落ち着いて狙いを定め、引き寄せる個性をフルスロットル発動する。
射程ギリギリだったが、捉えた。
思いっきりそれを引っこ抜く。こちらに引き寄せられた人物と同じ速度で、支えのない私は一気にその人物の元へと飛ぶ。更に距離を稼ぐ為に、突然の事に反応できていないその人物を踏み台にし、先頭へと飛び出した。
「━━━っ、やっぱりお前かっ!!緑谷!!」
「ぶぁぁぁーーーはっはっー!!さらばだ、紅白饅頭!!精々私の可愛いお尻でも眺めながら、ゆっくりと追ってくるが良い!!」
紅白饅頭が人混みに落ちていく様を眺めながら、引き寄せる個性をフルスロットル発動する。前方に丁度良さげな木があったので上手い具合に更に飛べた。
紅白饅頭が他生徒妨害の為にやった氷の床を悠々と越えた私はそのまま勢いを殺さずダッシュする。
走りでは眼鏡以外に負ける気がしない。
「━━━って、これ!」
目の前にそれが現れた直後、そばのスピーカーから声が響いてきた。声の主は入試の時に滑りまくっていたラジオのおっちゃん。英語の先生だった人だ。
『さーて、実況してくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!』
『・・・無理矢理呼んだんだ━━━』
『━━━と!!こいつはスピィーディー!!もう障害物にぶつかる生徒がいるぜぇ!?』
『聞けよ』
・・・包帯先生も、なにしてんだろ。
『さぁ、いきなりの障害物!!まずは手始め!!』
『第一関門、ロボ・インフェルノ!!』
ずらりと並ぶ入試のロボット。
まともに戦ったら死ぬほど時間が掛かる代物だ。
ま、戦わなければ良いだけなんだけど。
戦うのが面倒臭かった私は、普通に引き寄せる個性つかって上手いこと飛びかわし、普通に抜けた。
言うほどなんて事なかった。
『見せ場も作ってくれレディーーー!!!』
知らん。