私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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明日は一話しかあげない。
これは確定事項だ。

確定事項だって、忙しいんだって。

き、期待されたって、応えてあげないんだからねっ!!


本当に困った時助けてくれるのは、きっと何気ない日々を共に生きてくれた君だと思う。助けて、私を。さ、この連帯保証人の所に名前を書くんだ!の巻き

雑魚ロボットをさっさとかわした私は次の障害物までやってきた。

目の前にあるのは切り立った岩達とそこに掛けられたロープ。大袈裟な綱渡りのようだ。

 

 

途中でラジオのおっちゃんが『コースアウトしなければ何でもアリ』『残虐なチキンレース』と言っていたので、もし私を抜かそうとした輩がいたら半殺しにする気満々だったのが、意外とここに来るまで追走者はなかった。お陰で私のおてては、まっちろけである。

 

あと『各所にカメラロボが設置されて━━━』なんて話をしてたので探したらけっこう見つけたりした。取り合えず見つけたカメラには全部ピースしといた。

ファンサービスだよ。へけ!

 

 

 

『オイオイ!第一関門なんだって話だよ!んじゃさ、第二はどうさ!?』

『俺いるか・・・?』

『落ちたらアウト!!それが嫌なら這いずりな!!』

『聞けよ』

 

私はロープの上をダッシュした。

 

『ザ・フォール━━━って、そういう感じでゴーイング!?どんなバランスしてんだレディーーー!?』

 

切り立った地形も、頼りないロープも関係ない。

落ちなければどうという事はないのだよ!!

ふぁーーっははは!!!

 

『何気、身体能力が高いからな。あいつは。それに上手く個性を使ってバランスをとってる。そういう意味では優秀なんだ』

『授業見てるとそうは思えねーな。ほぼスリープしてっからな、緑谷は。そのくせ、問題出してもスラスラ答えやがるしYOー!!』

 

うるさいぞ!!この先生共めが!!個人情報垂れ流しすんじゃぁないよ!!

 

母様がっ見てるんだぞ!!

バレるだろっ、授業まともに受けてない事が!!

お願いします黙ってて下さいいぃぃぃぃ!!

 

全力ダッシュしていると声が聞こえてきた。

振り返って見れば、空を跳ねてこちらに向かってくるかっちゃんの姿があった。その後ろには猛追する紅白饅頭の姿もある。

追い付いてきおったか。小わっぱ共めが。

 

私は渡りきったロープを炎で焼き切り、手の届く範囲のロープも落としていった。

勿論全部は焼いてない。最短距離のルートに関わりそうなものだけだ。後方からくるお茶子やA組女子の為にも、ルートは残しておかねばならんからね。

 

しかしその妨害はあまり二人には意味がなかった。

かっちゃんは爆破で飛んでくるし、紅白饅頭は氷で道を作ってそこをダッシュしてくる。どちらもルート無視。私より最短距離を来てる。

 

・・・ずるい!!

 

私が飛ぼうとしたら引き寄せる個性をフルスロットル発動しなくてはならない。足場の数と一つ一つの距離を考えたら、渡りきる頃には腕が千切れる覚悟がいる。

やってられるか!!ボケぇ!!

 

「おっせぇぞ!!馬鹿女!!」

 

後ろから煽ってくるかっちゃん。

喧しいので、近くにあった競技を撮影してるカメラロボを引き寄せ、かっちゃんに投げつけてやった。

 

あ、当たった。

 

不時着したかっちゃん。

けっこうなダメージだったらしく呻いてる。

ふむ、これは。

 

 

 

 

私は近くにあるカメラロボを引き寄せ、紅白饅頭に投げつけた。かっちゃんの様子を見てたのか、簡単にかわす紅白饅頭。

 

それならばと、手当たり次第にあたりのカメラロボを引き寄せ、紅白饅頭に投げまくった。かっちゃんの時はそのまま投げたが、今度は軽く火をつけて投げてやった。間接部のオイルが燃える燃える。

軽い物なら幾らでもいけるから拾えるだけ拾って投げまくってやった。

君が立ち止まるまで、私は投げるのを止めない!

 

 

あ、当たった。

 

あ、落ちた。

ざまぁ。

 

 

『カメラが凄い勢いで消費されてってるぜ!?オイオイ!?レディーーー!!何でもアリだけど、障害物じゃない備品は程々にしてくれぇぇぇぇ!!』

『無駄だ、マイク。緑谷の目見てみろ。良い武器拾ったって顔してる』

『レディーーー!!頼むから、程々にしてくれぇぇぇぇ!!』

 

断る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人を打ちのめした私は更に走る。

独走。もう、完全独走である。

勝った、これは勝った!!

 

そう確信したその時、事件は起こった。

 

「━━━━っぐぅ!?」

 

『!?どうした緑谷ぁぁぁ!?急に止まったぁ?!』

 

最終関門を前に、私は足を止めざる得なくなった。

一歩足りとも進めない。

足が震える。

 

駄目だ、もう。

動けない。

 

私はその場に踞るしか無かった。

 

 

『ど、どうしたぁーー!?いや、本当にどうしたー!!体に不調か!?』

『緑谷!どうした!何処が痛む!』

『おぉっ!熱いぜミイラマン!!』

『茶化すな!!のいてろ!!』

『アゥッ!?』

 

近くによってくるカメラロボ。

私はそのロボのマイクに頑張って顔を寄せ、思いの丈を口にした。

 

「吐きそう」

 

『吐き気か!他にはっ━━』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「食べたばっかなの・・・忘れてた。胃がきゅうきゅうする。頑張って走りすぎた、かも。気持ち悪い、出る・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大馬鹿野郎、そのまま予選落ちしろ』

 

「酷い!!うっぷ━━」

 

完璧美少女、緑谷双虎に吐くという選択肢はない。

アイドルよりアイドルな私はうんこだってしない。

だから、ここで吐いてすっきりなんて事は選べない。

 

襲ってくる吐き気と戦いながら、私は最後の関門を進んだ。もう苦しくて走れないから、歩くしか出来ない。

お腹もチャポチャポして気がする。スポドリの飲み過ぎも原因だと思う。二リットルはあかんかった。あ、トイレもいきたい。

 

最終関門である『びっくりするけど死なない地雷源』をとぼとぼ歩いていると、後ろから元気な声が近づいてきた。

 

振り返ればかっちゃんの姿があった。

眉間に皺を寄せ青筋を浮かべたかっちゃん。

何故だかその姿が、今はとても頼もしく見えた。

 

「うぇぇぇん!!かっちゃーーーん!!!」

「っは!?はぁ!?」

 

泣いて呼んだら私の所で止まってくれた。

流石かっちゃん。ありがとうかっちゃん。

そういうとこ好き。

 

「お腹が苦しいのぉ、チャポチャポしてるのぉ、吐きそうなのぉ、トイレもいきたいのぉ、おんぶしてぇ」

「ふざけてんのかぁ、てめぇはよ!?」

「ふざけてないもん!真面目にやってたもん!ここまで!!でも、うっぷ、限界で・・・」

「止めろや!!俺の肩を掴むな!!ごらぁ!!」

 

駄目だ、本当に吐く。

 

出たらすっきりするけど、色々終わる。

きっと勢い余ってあっちもすっきりする。

絶対あかん。

 

「うっ、ぷ。誰も、助けて、くれなくてぇ。包帯先生とか、予選落ちしろとか言うし・・・」

「そりゃ言われるだろぉが!!つか、そのまま落ちろや!!」

「かっちゃんまで、そんな事言わないでぇぇぇ!!うわぁぁぁん、皆がいじめるぅぅぅぅ!!訴えてやる!訴えてやる!!たこ焼きのおっちゃん訴えてやる!!」

「そいつだけは訴えんじゃねぇ!!」

 

『なんだろっ、ミイラマン。絶対緑谷がわりぃのに、可哀想に思えてきた。おかしいな、罪悪感がスゲー』

『騙されんな、馬鹿』

 

かっちゃんを逃がせば終わる。

そう思った私はかっちゃんの腕にしがみついた。

連れていかないと言うのなら、このまま道連れにしてやる。一人では絶対死なない。

 

すると後方が騒がしくなってきた。

かっちゃんの腕越しから覗けば紅白饅頭の姿が見えた。

もうじき最終関門に辿り着きそう。穴に落ちたと思ったのに、まだ生き残ってたのか・・・。

 

それに気づいたかっちゃんは今までで最高のしかめっ面を浮かべ、私を背中に背負った。

 

「しっかり掴まってろや糞ボケがっ!!!」

「うむ、苦しゅうない」

「何様なんだごらぁ!黙ってろボケ!!」

 

かっちゃん号に身を預けながら、私は口を押さえて目を瞑った。おんぶも揺れる。自分の足で動かない分楽だけど、苦しい事に変わりはないのだ。

 

『爆豪ぉぉぉぉぉ!!スゲーハンデ自分で背負ったぞ!?オイオイ!あれか!当て付けか!?助けなかったオレたちへの当て付けか!?』

『爆豪・・・ま、こうなるか』

 

アナウンスうるさい。

 

『おお!ここで轟一気に距離を詰めてく!!やっぱりハンデが効いてるのか、歩みが遅いぜ爆っ豪ぉぉぉ!!』

 

そんな声を聞いて、吐き気に耐えながら後方を見れば、直ぐそこに紅白饅頭がいた。今は食べ物の姿が浮かぶ物を見たくないので、忌々しくて仕方ない。

 

だから、紅白饅頭の後ろにある地雷を引っこ抜き上手いことぶつけてやろうと、そう思って個性を発動した。

 

 

 

そしたら、大きな爆発音と共に紅白饅頭がとんだ。

 

 

 

なんか連鎖爆発してエライことになっていった。

引き寄せる個性の調整が甘かったせいで、何個か同時に引っこ抜いちゃって、それが暴発したのが最初の原因みたいな気がしたが、それでも私のせいじゃないと思う。

こんな障害物を用意した大人達が悪い。

よって私は悪くない。全然。

 

ねっ、かっちゃん。

 

ねぇ、かっちゃん?かっちゃん?

何知らないフリしてんの?ねぇねぇ、かっちゃんや。

私ら仲間だろ?親友だろ?分かち合おうよ、痛みも、苦しみも、罪も。

 

「っざけんな!!一人で償ってろや!!」

 

突然の裏切りかっちゃん。

 

いつもなら、ここでボディブローの一つも入れてやるのだが、何分そんな元気は売り切れてる。

私はかっちゃんに体重を預けてゴールまで耐えた。

切実に思う、トイレいきたい。

 

 

 

 

最大の敵がいなくなったかっちゃんはそのまま一位通過。

かっちゃんに背負われた私は二位になった。

 

そしてかっちゃんに途中まで送って貰ったトイレで、アイドルを脱ぎ捨てた私はただの女子高生へと戻った。

 

敢えて言うなら、すっきりした。

 

 


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