私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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騎馬戦回書くの、死ぬほど疲れる件σ(´・д・`)


踊る阿呆に見る阿呆、どうせ阿呆なら踊らにゃ損々!だから私は踊るのさ、あそれ!あそれ!それそれそれ!それ!の巻き

「騎馬戦の残り時間も僅かぁぁぁ!!生き残りを懸けて戦いの激しさは更にスーパーホットだぜぇ!!てか、囲まれてんのに緑谷強すぎだろ!!この競技だと無敵かよぉぉ!!」

 

隣で騒ぐマイクを横目に、俺は騎馬戦のフィールドへと視線をやった。マイクの言葉は正しくあり間違ってもいる。実際問題、緑谷双虎にとって今回の競技は有利であり、同時に的にされる不利な競技だったと言えるからだ。

 

ある程度距離を保ったままハチマキを引き寄せられる個性。発動瞬間は視認出来ず、ノーモーションで使用も可能。しかもその引き寄せる力は人を浮かせるだけの力強さがある。競技内での攻撃力で言えば断トツ。これほど今回に適した能力をもつ奴はいないだろう。

 

だが、その反面でハチマキが集まる以上それを守る防御能力が求められる。もしくはそれと同等の逃走手段が必須。

 

これは開始直後より、勝負後半に効いてくるリスクで、事実緑谷はB組を中心としたノーポイントのチームに囲まれている。

 

麗日の個性とサポート科の道具でなんとか逃げおおせていたが、その両方が同時に潰された。もはや勝機は見込めないだろう。

 

と、大体の者が思っていることだろう・・・。

 

「・・・なぁ、イレイザーヘッド。今更だけどよぉ、なんであいつはあれだけ出来て、補習なんてやってんだ?あいつ、絶対頭良い奴だろ」

「頭の良さにも種類があるんだろ」

 

マイクの視線の先にあるのは騎馬の足を潰されて尚、複数の騎馬相手に立ち回る緑谷の姿。

尾白の尻尾を起点に騎馬の上を縦横無尽に動き回り近寄る騎手の腕の一切を寄せ付けない。所か、味方騎馬に対する攻撃にも対応し、残りのハチマキを奪う余裕まで見せる始末だ。

 

その緑谷の動きに合わせて尻尾を動かしバランスを取れる尾白も、緑谷の無理な動きを個性でフォローする麗日も中々だが、やはりそれを実行してる緑谷が一番注目されるべきだろう。

 

類い稀なバトルセンスもそうだが、あの状況で倒すべき敵を的確に攻撃する冷静さは目を見張る物がある。USJであのヴィラン達と渡り合えたのは、運に頼るような偶然ではなく実力そのものだったということだ。

 

━━━━しかしだ。

 

「マイク、あと何分ある」

「おおぅ?!いきなりかよ!えーと、3分切ったな」

「3分・・・」

 

全力で動いている緑谷があと3分動けるとは思えない。

実力があろうが緑谷もまだ学生の一人でしかなく、体力も無尽蔵という訳ではない。加えて引き寄せる個性を現段階での最大出力使用を複数回行っている。終了の合図が出る前に、力尽きハチマキは奪われるだろう。

 

このままいけば、だが。

 

「お前がこの程度の事、予想していない訳がないな。なら、どうする」

 

 

 

 

 

「おおーと!ここで、爆豪ぶっ飛んだぁぁぁぁ!?」

 

マイクの声で視線を爆豪達に戻すと、騎馬から飛んだ爆豪が轟のハチマキを取る瞬間だった。取ったポイントは高くはない。いつの間にか爆豪の額から1000万のハチマキが見えず、現在のポイントを見れば爆豪チームと轟チームの得点が綺麗に入れ替わっていた。

恐らく先程の特攻は取られたポイントを取り返す為の行動だったのだろう。随分と無茶をする。

 

 

 

 

不意に歓声が上がった。

 

 

気になって視線を爆豪達から離せば、それが目に入った。一番の問題児の緑谷双虎の姿が。

 

「あいつ・・・最初からこれを狙ってたな」

 

そこにあったのは尾白の尻尾から伸びるワイヤーと、その先でフワフワと浮かぶ緑谷の姿。遠距離攻撃する生徒も見えるが、ジェットパックを巧みに操る緑谷に攻撃は空を切るばかり。

 

ミッドナイトを見れば、反則と取るかどうか迷っているようだった。

 

それはそうだ。

爆豪の行動にミッドナイトが許可を出している。

その上テクニカルであると、地面に足がついてないから大丈夫だと言い切った。

 

しかも憎たらしい事に緑谷は完全に離れていないと言わんばかりにワイヤーで騎馬と繋がっている。爆豪の時は完全に離れた状態で許可を出した以上、これに対して反則は取りづらい。

 

こうなってくると土台になってる騎馬を攻撃するべきなのだろうが、騎馬への悪質な崩し目的の攻撃は禁止されている。つまり騎馬を崩して緑谷の反則負けを狙う事は出来ない。

 

その用意周到さから、即興ではなく元より準備はしていたのだろう事が分かる。

自分からやらなかったのは、前例を作らせた後の方が認めさせ易いから以外に理由はない筈だ。

 

反則ギリギリ。

 

使った道具も個性も、ルールでさえ問題がない。

ミッドナイトの前例を盾に否定もさせない。

そもそもルールブックの中に、どれぐらいの時間騎馬から離れていてはいけないと厳密なルールが存在しない以上、緑谷のこれは立派な戦法の一つだ。

 

「いや、しかしまぁ━━━━」

 

会場にブーイングの嵐が起こった。

当然だ。こんな戦いを見せられれば、反感を買うに決まっている。

 

だが、それでも緑谷の動きに乱れはない。

勝つことに執着しての事か、もしくは何も考えていないのか。

どちらにせよ、勝負は終わったような物だ。

 

「マイク、残りは」

「ん?もうすぐ一分前だ。そろそろカウント始めるぜ。ミイラマンも一緒にやるか?!」

「勝手にやれ」

「ノリが悪いぜぇ、そんじゃカウントダウンいくぜぇ!!━━━ってオイオイ!!なんだぁ!?」

 

カウントダウンが始まるのかと思えばマイクの驚くような声が隣から響いてきた。

マイクが見つめる先を見れば、止まっていた緑谷達の騎馬が走り出している姿があった。麗日の足元を固定していた靴は脱ぎ捨てられている。

 

「━━━あの、馬鹿っ・・・!」

 

本当にあいつはふざけてるのか、本気なのか分からない。ただ一つ言える事があるとすれば、とんでもない大馬鹿野郎だってことだけだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「緑谷ぁ!!本当にやるのか!!このままいっても2位通過だぞ!?」

 

飛来物をかわしながらお空をお散歩していると、下から尾白の声が聞こえてきた。

安全を考えれば尾白の言葉は正しい。

でも、折角のお祭りなのだ。縮こまっては楽しくない。勿論勝ちにはいってるが、それとこれとはまた別の問題。

 

「もちっ!こんな面白い時に、黙って見てるなんて勿体ない!盛大に茶化しに行ってくるぜべいべー!」

「その気持ちになるのが分からない!」

 

空高くから見下ろす二つの騎馬。

氷と爆発が渦巻くそこに、最後のハチマキがある。

得点表を見たが現在ポイントを持っているのは三チームだけ。私と、かっちゃんと紅白饅頭の三チームだ。

他のハチマキは全部奪い取った。私が。

 

ハチマキ持ちのB組らしき奴が愚かにも私の個性を真似っこしてきたので、練度の差をハチマキを奪う事で見せつけ、その上で真っ向からボコボコにしてやった。気絶するまで殴った。

一人変な雰囲気が出てる面倒臭そうな奴がいたけど、そいつのも問答無用で取ってある。何故かブドウのポイントも持っていたのでラッキーだった。なんかほざいてたけど、取り合う理由がないので無視した。

 

「ニコちゃん!もうじき射程圏内だよ!!」

 

お茶子の方を見れば目的地に着く寸前の所まで来ていた。

 

「いや、いけるだけ行って!合図出すまで前進!!」

「うん!分かった!皆!!」

 

お茶子達が前へ進む速度があがる。

 

「2位の人ー!ジェットパックのガスの残りは大丈夫ですか!メーターで確認して針が赤でなければ最大出力で一発は保証しますけどー!」

 

言われた通りに確認すれば、胸元についているメーターは黄の赤の間を指していた。

 

「赤と黄ー!」

「ギリギリでぶちかませる筈です!やっちゃって下さい!!」

「あいさー!」

 

一発分を保証された所で掲示板の時間を確認すれば、残り30秒をきった所だった。私は下にいる尾白に準備の合図を送る。

 

「発目さん、足のこれって、どうやるんだっけ!?」

「思いっきり踏み込んで下さい!レッツスパイクです!!」

 

尾白が踏み込んだ瞬間、尾白の足元につけられていた金属の杭が地面に深々と突き刺さるのが見えた。

それを合図に全員が尾白の尻尾を支えるように掴む。

 

「ニコちゃん!合図頂戴ね!思いっきり引っ張るから!!」

「最大出力で引き上げますよ!だから、ドッ可愛いベイビーの勇姿、大企業の皆様に見せつけちゃって下さい!」

「こっちは任せろ!折角行くんだっ、全部持ってこい緑谷!!」

 

皆の声援を受けた私は、手元のスイッチを押した。

騎馬戦最後の大勝負へ向けた、それを。

 

「双虎、いっきまーす!!」

 

 


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