私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
だから、嫌わないであげてぇぇぇぇ((((;゜Д゜)))!
ロケット横バンジーでかっちゃんと紅白饅頭ぷぎゃーしてやろうぜ大作戦━━━━失敗。
私はその事実に打ちのめされ、控え室でふて寝した。
お茶子が心配そうにこっちを見てるが、今は返す言葉がない。流石に落ち込んでいる。
頑張った上での失敗はやはり堪える。
「ニコちゃん・・・取られたんは、取られたんけど。2位通過だよ?もう立ち直ろ?私も尾白くんも気にしてへんし。それに発目さんも『良いプレゼンになりましたー』って喜んどったし、ね?」
「しょんぼりん」
「・・・ニコちゃん、本当はそんなに落ち込んでへんやろ」
失礼な、とても落ち込んでいる。
お茶子なら分かってくれると思ったのに残念だ。
「お昼休憩なくなるよ?出店も混んでくるし、お昼買いにいくなら今いかんと━━━」
「お茶子!焼きそば買いにいこっ!!」
「うん、それでこそニコちゃんや」
お茶子とお買い物に行こうとすると梅雨ちゃんが声を掛けてきた。話を聞けば梅雨ちゃんもお昼を買いにいくそうだ。折角なので三人でお昼を買いに出掛ける。
「それにしても、緑谷ちゃん凄いわね。騎馬戦、轟ちゃんと爆豪ちゃんを除いたら全部のハチマキ持ってたんじゃない?」
「ふぁふぇ!」
「緑谷ちゃん、口に何か入れてる時は無理してお返事返してくれなくて良いわよ」
「ふぁふ!」
「結局そのまま返事しとる。あかんってば・・・あ、ほら、食べかすついとるーもぅ!女の子なんやから、ちゃんとせんとあかんよ!」
「ふぁふぃ」
三人でお喋りしながら楽しく歩いていると、B組の面々を見掛けた。私がボコボコにした物真似野郎と騎馬をしてた面白B組一味だ。
気さくな私は焼きそばをモキュモキュさせながら「ふぁ」と優しく挨拶した。
何故かメチャクチャ驚かれた。
「A組の緑谷!?なぜこんな所に!?」
「あれでもまだやり足り無かったってのかよ!?」
「物間!頼んだ!」
「円場!?ちょっ!押すなって!?」
どん、と押し出された物真似野郎が私の前にやってきた。物真似野郎は私の顔を見て、頬を引くつかせる。
しっつれいな。
物真似野郎は深呼吸を一つした後、皮肉げな笑みを浮かべてこっちを見てきた。
「ふっ。君のような肉体言語しか介さない野蛮人が同じヒーロー科で在籍してるなんて恥ずかしい限りだよ。クラスが別れてるのがせめてもの救いだね。しかし雄英も何を考えてこんな生徒を入れたのやら。理解に苦しむね。━━━ああ、そうだ。一ついいかい?今回は勝ちを譲ったけど、これが僕らの全てだと思わない事だ。たった一度ヴィランと対峙したくらいで偉そうにふんぞり返━━━っこほぉはっ!?」
「「「物間ーーー!!!」」」
悪口を言ってきたので喉をエイヤってしてやった。
多分喧嘩を売ってきたのだろうから、間違った返しではない筈だ。
喧嘩するときは大体こんなで始まるし。
「━━ん」
焼きそばを飲み込み、他の奴等の様子を見る。
まったく動きなし。
他のメンツが戦おうとしない以上、ボス格の物真似野郎を倒した私の勝ちだ。なので正当な報酬を求め掌を差し出した。
そしたら、なんかきょとんとされた。ん?
「?・・・迷惑料、渡す。OK?」
「「「普通にかつあげされた!?」」」
正当な報酬を要求したら断られた。
私の貴重な時間をつかって喧嘩相手をして差し上げたんだから、払うのは当然だと思うのだけども。
と、思ってたら、お茶子と梅雨ちゃんに肩ポンされた。
「それはあかん、ニコちゃん」
「緑谷ちゃん、駄目よ」
駄目だった。
「「「━━━っ、て、天使達がいる・・・!!」」」
やかましいわ。
そこに私も入ってるんだろうな。おい。
まぁ、なにがともあれ、二人に止められては仕方ない。
それなら普通の女子高生らしくいこう。
そう思って優しく提案してあげる。
「じゃぁ、奢って」
「結局金をむしりとる気だぞっ・・・!起きてくれ、物間ー!」
「こ、こぇ!女子こぇぇよぉ!うちの女子もこんなんなのかなぁ?!」
「夢見さしてくれぇぇぇ!!」
何故か膝をついたり、震えたりと芸人のようなリアクションをしてくる面白B組一味。
その姿に触発されたように、物真似野郎が立ち上がった。なんか小さい声で喉いたいとか言ってる。あれ、泣いてる?・・・ないな。大丈夫そうだ。目尻が赤いけど、大丈夫だろ。
「━━━━━ああ、嫌だ嫌だ。これだから言語を介さない野蛮人は嫌なんだ。なんだい栄えあるヒーロー科生徒がかつあげかい?信じられないね。優秀なA組ではそんな事を推奨してるのかい?後ろの二人も可愛い顔して何をしてるのか分かったものじゃないなぁ?ん、あれれ?ああ、ごめんごめん。よく見たらそんなに大した顔してないね。ひとりはもっさりしてるし、なんか全体的に太いなぁ。あれ?ひとりはよく見たらカエルじゃないか。女の子なのかなぁ、どちらかと言えばメス━━━」
「「「物間!?」」」
背後から変な気配がしたので振り返る。
そこには笑顔でゴーサインを出す二人がいた。
「ニコちゃん、ええんとちゃうかな?」
「庇ったのが間違ってたわ、緑谷ちゃん」
ゴーサインが出た。
「物間の馬鹿!容姿は駄目だろ!てか、俺のカエルちゃんに謝れ!!全力で謝れぇ!!」
「味方まで削りやがって!━━━っしね!!」
「お前の財布からだせよ!!クソ間!!」
「ええ!?なんで!?お前らが僕を盾にするからっ!えっ!?そういう事言えって事だろ!?頑張ったろ!?」
「「「やりすぎなんだよ!!」」」
「じゃぁお前らが言えよー!言ってみろよー!!あの暴力女、本当、いきなり手出してくるんだぞ!!僕だって怖いんだからな!?直球投げたら殴られるかもしれないから、ああやって変化球放るしか出来ないんだよ!あの恐怖が分かったやつから文句を言えよ!!」
本当なんだこいつら、ごちゃごちゃと。
なんでも良いから、出すものを出しなさいよ。
ちゃっちゃと。
喧嘩がただで出来ると思ってんのか?あれも時間と労力を沢山使うんだぞ。授業料払ったり、お詫びに奢ったり普通するだろ。かっちゃんは毎回するぞ。
というか、可愛い女の子に奢るのは男子高校生にとって至福の喜びだろうが、甘んじて受けろ。誉れだろ。
さぁ、遠慮なんていらない、好きに奢ると良い━━━こら、逃げんな!!私の個性から逃げられると思うなよ!!おまえらぁ!!
それからなんやかんやあった後、私らは物間一味から快く奢って貰った沢山の食べ物の包みを抱え、これまた快く奢って貰ったクレープを三人でモキュモキュしながら賑わう出店周りを散策した。
すると仮設食堂の所で百達を見掛けた。
よく見るとなんかA組女子が集結してる。
はて?
「何してんの?」
「あっ、緑谷さん、ちょうど良い所に!」
話を聞くと包帯先生から、午後は女子全員で応援合戦をするらしい的な事を言われたそうだ。
・・・チアガールで。
大事な事なので二回言います、チアガールで。
マジか。
それで今はチア衣装を作る話をしていたのだとか・・・。
「バックれようかな・・・」
「逃がしませんわ!緑谷さん!」
「ウチらだけとか、ないから!」
右腕を百に、左腕を耳朗ちゃんに掴まれ━━━
「ニコちゃん逃がさんよー」
威嚇する熊みたいなポーズのお茶子に逃走ルートを抑えられ━━━
「頑張りましょ、緑谷ちゃん」
「あはは、まぁ、がんばろ?」
「やったりますかー!」
━━━━梅雨ちゃんとあしどん、葉隠に無情の肩ポンをされた。
「うぇぇ」
結論。
逃げられなかった。
「やっ、サイドテール女子」
「あ、A組の・・・緑谷だっけ?何してんの?」
大人しくサイズを測られていると、見たことあるサイドテールが目の前を通ったので声を掛けた。応援合戦するというのに着替えてないのが気になったのだ。
「応援合戦するんでしょ?チアで。B組はやらないの?」
「・・・え?応援合戦?で、チア!?はっ!?何それ!!聞いてないんだけど!!本当!?」
いや、知らないけども。
本当なんじゃないのかなぁ、知らないけど。
そもそも私が聞いた訳じゃないからね。
「百、本当?」
「ええ、確かに伺いました。相澤先生からの言伝てだと。合理的虚偽をよくお使いになられる先生ですけれど、こういったイベントで戯れ言はおっしゃらない方ですし・・・」
「だって」
「マジかー参ったなぁー。さっきブラド先生に会った時は何も言ってなかったのに・・・忘れてたのかな?というか、そもそも今から衣装とか揃えらんないし━━連絡して、皆集めて、それから着替えて・・・間に合わないよなぁ・・・」
頭を悩ませるサイドテールに、「でしたら━━」と百が口を開いた。
「━━━お時間もないようですし、私がお作りしますわ。デザイン自体は頭に入っていますから、サイズを教えて頂ければ、直ぐに複製可能です」
「良いの?少なくとも、今日は私ら敵だし・・・それに創造だっけ?その個性を使うのだって対価があるんでしょ?」
「ええ、勿論です。ですが、同じ学舎でヒーローを志す者同士、困った時はお互い様というものではありませんか?」
「・・・っか、そうだよね。ごめん、私ちょっと感じ悪かったかも。今から皆にサイズ聞いて見るから、その、頼める?」
「ええ、勿論です!お任せを!」
こうしてB組のチア衣装を作る事を引き受けた百は、恐らく過去最速の最高品質でチア衣装を産み出していった。ABで見分けがつくように赤と青で色分けし、デザインに変化までつける手の込みよう。絶好調な百。
多分頼られたのが嬉しかったのだと思う。顔見れば分かる。そういう顔してるもん。凄いはりきってたもんね。良かったね、百。
百が間に合わなければ着ずにすんだのに、とか、少しも思ってないよ。少しもね?うふふふー。
散らばっていたB組女子も集まり、AB女子が順番にどんどん更衣室に入って着替えていく。更衣室を出てきた皆はチアっチアである。全員チアっチアである。
よく恥ずかしげもなく着れるな皆、と素直な感想が頭に浮かぶ。
まぁ、そんな私もチアっチアなのだが。
おいおい、何この短いスカート。パンツ丸見えじゃん。反則だよ反則。今日は見せパン穿いてないってのに、どうすんのよコレ。
と、相談したら百が見せパンもくれた。
こういう優しさはノーセンキューしたい。
え、いや、はくよ?はくけどね?
はぁ。
・・・そういえば、かっちゃん見てないな。どこ行ってんだろ。
折角だから奢って貰おうとは思ったのになぁ。
代わりを見つけたから良いものを。
むぅー?
◇◇◇
「それでもお前は、俺が間違ってると思うか・・・?」
左を使わないと決めた経緯を一通り話した俺に、爆豪が不快そうに眉間へ皺を寄せた。
想像はつく『どうして俺に話したのか』そんな所だろう。
「半端野郎、んなこと━━━」
「悪い、爆豪。別に何か言って欲しかった訳じゃねぇ。ただ、聞いて欲しかっただけだ。答えが欲しい訳じゃねぇんだ。━━━俺も本気だって事、知ってて欲しくてな・・・」
答えはずっと前から決まってる。
だから、誰かに聞いて欲しかった。知って欲しかった。
それだけだった。
「お前は気にいらないだろうが、俺は右の力だけで勝ちにいく。さっき言ったように、別に舐めてる訳じゃねぇ」
「それが舐めてるっつってんだろぉが!!」
「舐めてねぇ。それしかねぇんだ。あの時、俺のここが醜いと悲しんでたお母さんに報いる、あの糞親父の積み上げてきた全てを否定出来る、それが出来るたった一つの方法なんだよ。━━━お前にとってくだらなくても、俺にとっては、それが全てなんだよ」
だから、爆豪。
これだけ、言わせてくれ。
「いつか俺は、右だけで糞親父を超えて、あのオールマイトを超えて、ナンバーワンヒーローになる。だからこんな所で躓く訳にはいかねぇ━━━」
「━━━━お前にも勝つぞ、爆豪」
俺はお前みたいに、緑谷みたいにはなれない。
あんな眩しいモノにはなれない。
なる訳にはいかないんだよ。
そんな資格、もう持ってねぇから・・・。
だから、せめて勝たせて貰う。
何に換えても。