私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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たまに、ね、おれは疲れてるんだろうなって思うの。


遠足前になるとよく風邪ひく人いるじゃん?間が悪いにも程があるよね、かわいそす。うん?え?私はどうなのかって?決まって寝込んでたけどなんすか?の巻

ガチムチの勧誘事件が発生してから数日。

検査入院していた爆豪きゅんは病院から出てきてからも、毎日のように突っ掛かってきた。

 

やーい、やーい、ドロドロかっちゃん、涙目乙。

とか開幕で優しく挨拶してからというものずっとだ。

短気は損気。早く大人になれるといいね。

 

「━━━━緑谷!」

 

飽きもせず休み時間に突っ掛かってきた爆豪きゅんをからかって遊んでいると、担任がカムチャッカファイヤーしてきた。

心当たりが在りすぎて何を怒っているのか分からない。宿題を丸写ししたのがバレたのかもしれないし、担任の鞄にアオダイショウを入れた事かもしれない。もしくは、爆豪きゅんのテストの答案用紙の名前を自分のに変えてこっそり提出したのがバレたのかもしれない。

 

うん、分からん。

 

「何ですか?」

「胸に手を当てて考えてみろ」

「心当たりが多過ぎて分かりません」

「その辺りは後でじっくり聞かせて貰うとして、今はコレについてだ」

 

そう言って差し出してきたのは進路希望調査表だった。

しかも皆に見えるように晒すという罰ゲーム仕様。

おぅ、恥ずかしい。

 

「第一希望、玉の輿。出来れば細マッチョのイケメン、若社長を求む」

「乙女の夢ですから」

「第二希望、宝くじを当てて億万長者」

「人類の夢ですから」

「第三希望、ニート」

「若者の理想ですから」

 

パチンといわれなき暴力が頬っぺたを襲った。

痛いなり。

 

「先生、体罰じゃないんですか?訴えますよ、教育委員会に訴えますよ?」

「上等だ、緑谷。やってみろボケなす小娘が。お前みたいな甘ったれが被害者だと知れれば、酌量の余地ありで少し謹慎くらうだけで済みそうだからな。それでお前が心を入れ換えるなら本望だ。教師冥利につきるわ、ぼけぇ」

 

なんたる理不尽。

こいつ教師の皮を被った悪魔だな。

 

「兎に角だ、もう一度良く考えてから提出しなおせ」

「同じの出したら?」

「お前の親御さん呼んで三者面談してやる」

「Oh━━━そいつはいけねぇや」

 

こんな事で呼び出したら、ビンタ所じゃ済まないからな。ボデーの一発は当然として、コークスクリューブローによるハートブレイクショットは覚悟せねばならん。

 

渋々と受けとると担任は「ちゃんと考えろ」と念押ししてきた。

 

「ちゃんとって言われてもなぁ」

「こんな事を言うと贔屓してると思われるかも知れないが、緑谷、お前は地頭は良いんだ。少しは頑張ってみろ。その気になったら雄英だって夢じゃないんだぞ?」

「うへぇ。やですよ。頭いい高校なんていったら、真面目に勉強しなきゃならないじゃないですか。私は楽して生きたいんですよ」

「甘ったれんな。まぁ、よく考えろ。高校で人生が決まる訳ではないが、人生における一つの大きな分岐点である事には違いはないからな」

 

それだけ言い残すと担任は去っていった。

私はプリントを眺めながら、隣で飛び掛かる構えで律儀に止まっている爆豪きゅんに話しかけてみる事にした。

 

「なぁ、ドロロ」

「ぶっ殺されてぇのかてめぇはよぉ!!!」

「いちいち喚くなうっさい。それよか進路希望調査表さ、それっぽいの書いておきたいんだけど、適当な高校教えてくんない?」

「あぁん!?なんで俺様がんな事手伝わなきゃいけねぇんだよ!!」

 

あからさまに嫌な顔する爆豪きゅんに指を突きつけてやる。貴様に拒否する資格はないのだよ。

 

「こないだ助けたじゃん。ほら、借り一でしょ。今返せば利子無しで良いからさ」

「っがっ!あれはっ!━━━━っち!!貸せ!!速攻で爆殺してやるっつんだよ!!ごるぁぁぁぁ!!!」

 

プリントを爆殺されても困るんだけど。そう思いながら眺めていると案外普通に高校名を記入してくれる爆豪きゅん。きっとツンデレなんだと思う。

てか、おい、第一希望雄英になってんですけど。しかも、ヒーロー科になってんですけど。まてまて。

 

「おい、かっちゃん。第一希望さ━━━」

「るっせぇ!!ついでに届けてやるから、これで貸しはなしだぞこらぁぁぁぁぁぁ!!!」

「いやいや、まてまて、まてっつってんだろ!こらぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

それからかっちゃんと廊下でデッドヒートを繰り広げた私だったが、結局プリントを取り返す事は叶わなかった。提出したプリントを見た担任が、「喜ばしい事だな、親御さんに教えておいてやろう」と止めの一撃を放ってきたので、めでたく私は雄英にいく為に勉学に励む羽目になったのだった。

 

爆豪きゅんは、後で死ぬほど弄ってやろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

そうして半年。

私は糞忙しい日々を過ごす羽目になった。

 

そもそも雄英高校は国内最難関。死ぬほど頭がいい連中が集まる所だ。勉強をめちゃしないといけない。

しかも私がいくことになったのは、更に狭き門が備え付けられているヒーロー科。ここは勉強だけでなく、品性や体力も求められる。

 

勉強はやれば出来る子な私にとって苦ではないし、体力に関しては日頃から趣味で体を鍛えていたからあれだが、品性は完全アウト。学校側の推薦はまず取り消されるだろうと油断していたのだが、何故かOKされてしまう。

 

授業サボりまくりな私の糞みたいな内申で推薦が通った事が不思議過ぎて、担任を問い詰めてみるとあっさりと理由を教えてくれた。

何でも、雄英側のとある人物が特別入試枠を私にくれたのだとか。

余計な事をしやがって、と思ったのは内緒だ。あ、内緒ですよって、先生。止めて、母様に連絡しないで。ボデられちゃう、ボデられちゃうから。

 

 

そうして糞忙しい日々を過ごす私に、更なる不幸が降臨する。トレーニングの一環としてランニングしていると、たまにガチムチが現れるようになったのだ。

 

口を開けばヒーローがなんたら、ヒーローがどうたら。

止めて耳にタコが出来ちゃう。うるせぇで御座います。

しかもトレーニング方法にまで口を出してくる始末。

まじアリエッティ。

 

ヒョロガリモードになった隙をついて腹いせでボデーを食らわしてやったのは若気のいたりだと言うことで勘弁して欲しい所である。

めちゃ怒られたが。

 

 

そうしてなんやかんや過ごしていると、あっという間に時は過ぎていき入試間近。

母様の期待もあるので受かっておきたいが、こればっかりはやってみなきゃね?

残り少ない時間をらしくもなく勉学に捧げていると、母様より面白い入電があった。

 

爆豪きゅん、風邪でノックダウンしたってさ。

はっきり言おう、笑ったね。爆笑したね。爆豪きゅんの事だけに、爆笑したったね。

完璧超人も風邪には勝てなかったらしい。馬鹿は風邪をひかないというし、頭の良いあいつが風邪をひくのはおかしくな━━━━ん?まてよ、その理論でいくと私が馬鹿みたいじゃないか。うん、なしなし。

 

幸いな事に入試にはまだ日がある為、影響こそしないだろうがさぞ焦っておられる事だろう。

そう思って、お見舞いという名目を引っ提げて、茶化しに爆豪きゅん家にいった。

 

「はいはいはいっ~と。ん?あれぇ!久し振りじゃない!双虎ちゃん!いらっしゃい」

「ちゃわーす。光己さん、お久し振りでーす」

 

中学生になってからあまり遊びにきた事がなかったけれど、かっちゃん母の光己さんは快く家にあげてくれた。オヤツにケーキを持って来てくれるとの事なので、少し余計にかっちゃんを弄って帰ろうと思う所存。

 

小学生の時のノリでかっちゃんの部屋の扉を開けると、ベッドで横になっていたかっちゃんが面白いくらい驚いた顔してこっちを見てきた。あんまりにも面白かったのでパシャッてやった。

かっちゃん、ぶちギレである。

 

「てめぇ!何しにしがっぶほぉっ!!ごほぉっ!!」

「風邪っぴきの癖に叫ぶから」

「て、てめぇの!てめぇのせいだろっごほぉあっ!!」

 

咳は酷いようだけど、顔色は悪くない。

きっと明日にはけろっとしているだろうと予想。

うん、なんてベストタイミングで来たんだろうか、私は。ぐっじょぶ、私

 

かっちゃんが気だるげな顔で此方を睨み付けてくる。

まだ本調子ではないのか、ベッドから起き上がろうとしない。入試も近いから、自分で安静を選んでるのかも知れんな。

 

まぁ、そんな事はどうでも良いけど。

 

「・・・おい、てめぇ。さっきから、何部屋漁ってんだ、こら。」

「ええー?なにー?聞こえない~」

「聞こえねぇ訳ねぇぇぇだろうがよ!!二メートルも離れてねぇゴホッ!!」

「はいはい、落ち着け落ち着け。変な事はしないから。ただ、かっちゃんの女の趣味に興味があるだけだから」

「━━━はぁ!!?」

 

私がここに来た目的は幾つかあるが、最大の目的と言えばエロ本のチェックである。どんな趣味をしてるのか、実に楽しみだ。趣味を把握次第、からかいまくってやろうぞ。ふはは。

 

「やめろっ、てめ━━━ふがぁっ!?」

「はいはい。大人しくしてましょーねー」

 

風邪っぴきかっちゃんをササッと布団で簀巻きにしやる。口元もタオルでグルグル巻きにして準備完了。抵抗は許さぬのでござる。

身動きの取れないかっちゃんをほっぽってエロ本探索再開。どこかな、どこかな?

 

定番のベッドの下は無し。

クローゼットの底も無し。

タンスの中も無し。

ふむ。持ってないのか?

 

そう疑ってかっちゃんを見れば、目が泳いでいた。

これはあるな(確信)。

 

もしや現物派ではないのか?そう思ってかっちゃんのスマホを起動。かっちゃん、めちゃ目が泳いでいる。

これは当たりだな(確信)。

 

小癪にもパスワード形式でロックしていたが、なんて事はない。こちとら伊達に幼馴染はしていないのだ。心当たりのある数字を打ち込んでいく。生年月日、出席番号、身長、体重、両親の誕生日とかもあるか?

しかし、一向に開かない。ふむ。

 

かっちゃんの目を見てみる。

何気かっちゃんの目が一番正直だから、超ヒントになる。なんだ、じっと見てきて?

 

「まさか━━━」

 

そう思って私の誕生日を入れてみた。

うわっ、開きやがった、まじか。

これは盲点だった。こいつ、こういう日が来ることを見越して態とこんな真似を。他人のスマホロックの解除にまさか他人の誕生日が入ってるとは思わない。ましてそれを開けると予想される、私のが入ってるとは思わないだろう。

 

策士よのぉ、孔明!!

 

何がともあれロック解除出来たのでチェックを開始しよう。

 

「━━━お二人さん、オヤツ持ってきたわよ!入っても大丈夫かなぁ?ふふふ」

 

おっと、邪魔が入ったか。

流石にこの状態は何か言われそうなので、かっちゃんの拘束を解いてやる。すると拘束が解けた瞬間、光の速さに負けないような俊敏さで、スマホを取り返されてしまった。アルマジロの如くスマホを抱えて丸まり、亀のように布団に潜ったその姿は正に鉄壁。手出しが出来ない。

くっ、抜かったわ。孔明!!

 

「━━━はぁ。やむなし。あ、入っても大丈夫でーす」

「はいはーい、光己おばさん、青春真っ只中のお部屋にお邪魔しまーす━━って、勝己、あんた何してんの?」

「うるっせぇ!ババァ!!」

 

光己さんが首を傾げる。

そして私を見てきた。

 

私は肩をすくめ、分かりませんアピール。

光己さんも呆れた表情を浮かべた。

 

それからかっちゃんと特に話す事もなく、光己さんとケーキをツマミに女子会をして、適当な時間で帰った。

帰り際、「あんたが落ちても、向こうでちゃんと待っててやるから安心して風邪拗らせていいよ?」と発破をかけておいた。「うっるせぇ!」と元気な返事が返ってきたので大丈夫だろう。

 

 

 

 

しっかし、かっちゃんの女の子の好みってどんなのだったのか。後であいつの友人に聞いてやろっと。

 

 

 


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