私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
あと、はよ、エンデヴァーの続きはよ。エンデヴァーの内面が書けないやろ。
あと、映画、はよ。体育祭終わったら、アレ挟んで、夏休みが来てまう、きてまうんや。
続き書けへんやろがい(;・ω・)
8月はやくこねぇーかなぁぁぁぁ(゜ロ゜)
『アレは貴様を超えるヒーローにする。そうするべく、つくった仔だ』
設けられた観客席に座りながら、私は昼休憩にエンデヴァーから聞いた話を思い出していた。
ヒーローランキング2。
フレイムヒーロー エンデヴァー。
ずっと私と共に一時代を戦ってきたヒーローだ。
その活躍ぶりはよく知っていて、私は誰よりも彼の実力を信頼していた。幾度も共に戦った。彼は私との共闘はよく拒んできたが、それでも必要とあれば必ず力を貸してくれる頼りになる存在だと思っていた。
だから私個人が彼に好かれていないのは分かっていても、私は彼をヒーローとして尊敬し認めていた。
だから、彼に聞いたのだ。
私には出来なかった事を成し遂げた彼に。
ヒーローを━━━いや、轟 焦凍という優秀な子供を育てたあげた、彼の教育方法を。
そして、漸く気づいた。
ずっと以前に、私が気づくべきだった物に。
彼が抱えてきた、灼熱の思いを。
ナンバーワンへの渇望。
燻り続けてきた末の執念。
自らの体を、思いを、心を。
持ち得る全てを焼き尽くしてもなお足りぬ。
ヒーローの頂という座への、異常なまでの執着。
「━━━追い込んできたのは、私か」
肩を並べていたと思っていた。
けれど彼は、一度もそうは思わなかったのだろう。
あの横顔を見て初めて知った。
私の功績が。
私の人気が。
ヒーローとして私が築きあげてきた何もかもが、彼を追い詰めていったのだと。
恐らく彼だけではない。
育つ筈だったヒーロー達が、何人もその足を止めただろう。私が築きあげてきた、それを見て。
目に見えて犯罪は減った。
笑顔は増えていった。
けれど、失っていった者達がいた。
それは倒すべき悪だけではない。
友になる筈だった存在まで、私は失っていたのだ。
シンボルが不必要だったとは思わない。
それは今も信じている。
だが、やり方があったのではないかと、今なら思う。
「エンデヴァー、君は━━━」
━━━彼に何を背負わせるつもりなんだ。
「━━オールマイトさん?何か言いました?」
思わず溢した言葉に、隣で観戦していた13号が不思議そうに首を傾げてきた。
いや、宇宙服的なヘルメット被ってて本当のところ首を傾げているのか分からないんだけども。
「いや、なんでもないよ。それより、さっきの試合は良かった。上鳴少年の速攻にきちんと対処した八百万少女の判断力と胆力には目を見張るものがあったね」
そう話を変えれば、13号は感慨深そうに「確かに」と口にした。
「そうですねぇ。あれほどの電光を前にして、よく恐れずに判断出来たと思います。多少取り乱してもおかしくはないと思ったのですが・・・いやはや、生徒達の成長は侮れません。やはり、若さゆえなのでしょうか」
若さゆえか・・・。
思い返せば、私の若い頃も大概だったな。
少なくとも、生徒達に偉そうに言える事はない。
どれもこれも無茶の上に出た結果ばかり。
「オールマイトさんも若い頃は?」
「ははっ、まぁね。少なくとも、彼等に誇れるような事はしてないさ。無茶ばかりでね。今でこそ褒められるが、昔はよく叱られたものさ」
「オールマイトさんが叱られる・・・?想像出来ないなぁ」
「おいおい、私だってヤングな時代があったんだぜ?叱られもするさ。まぁ、緑谷少女ほどでなかった事は胸を張って言えるけどね」
「それは、ははは。そうでしょうね。あの子は叱られてない方が珍しいですから。でも━━━」
言葉を区切った13号は会場へと視線を向けた。
その先にあったのはA組の観客席。
すぐ、何を見ているのか分かった。
「━━━僕は、あの子嫌いではないですよ」
意外な言葉に、私は言葉に詰まった。
正直教師陣からは良い評価を受けているとは思わなかったのだ。
すると黙った私を見て「あえ!?一生徒として、ですよ!!僕教師ですからね!!」と焦った弁解が出てきた。
「・・・あ、いや、そういう事を考えていた訳じゃないよ。ただ、意外に思ってね。ほら、彼女はよく授業の邪魔をしてるじゃないか。だから、どちらかと言えば嫌われてるものとばかり」
「ふふ、はっきり言いますねぇ。━━━まあ、そうですね。稀に、この子を何とか出来ないだろうか、と本気で思う事ありますよ」
「だろ?」
「ふふ、ええ。でもそれだけですから」
13号は顎付近に手をあて考えた後、人差し指を立てた。
「人柄、なんですかね。彼女の周りはいつも賑やかです。他の先生方はどうかは知りませんが、僕は一人くらいああいう子がいても良いと思いますよ。クラスも明るくなりますし」
「そう、かな」
「そうですよ。実際、ヒーロー科に在籍する生徒達は険悪とまでいかなくても、お互いをライバル視してギクシャクしたりするもんです。協調性は教えますが、それは馴れ合いをしろという訳ではないですからね。結局は商売敵。何度もぶつかるものです」
確かにそういうものだ。
これから社会に出ていく彼等に、夢以上に現実と向き合う方法を教えなくてはならない。
先達として、教師として。
「それなのに、彼女はよく笑ってます。周りもです。それを見て馬鹿だと思う人もいるかも知れません。何も考えていないだけだって。・・・でも僕はそうは思いません。あの日の彼女を見てれば、そうじゃない事が分かる筈です」
13号の指したソレに、私は恐怖に震える生徒達の姿が過った。
「彼女はちゃんと分かった上で、笑っていられるんです。僕はその強さが羨ましく、眩しいです」
「そうだろうか・・・」
「え?」
彼女は言っていた。
強くないのだと。
「一度じっくり話し合った事があったんだ」
「そうなんですねぇ」
「その時、彼女は確かに言ったんだよ。私は強くないのだと」
あの辛そうな顔を思い出す。
13号が何を言うのかと待っていると「そんなことですか」と呆気らかんとした答えが返ってきた。
私がどんな表情をしているか分からなかったが、13号の反応から相当に愉快な顔をしている事を察した。
「オールマイトさん、年頃の女の子の言葉を気にし過ぎですよ」
「そんな事はないと思うのだが・・・」
「気にし過ぎですよ。その言葉が本当だとしても、僕から見た彼女はやはり強い女子生徒ですよ?」
「それはどういう・・・?」
13号の言葉の意味が分からず不思議に思っていると、13号の隣から忍ぶような笑い声が聞こえてきた。
「スナイプさん!笑っちゃ駄目ですよ!」
「いや、済まない。天下のオールマイトが、女子生徒に振り回されてると思うと、ついな」
「全く!オールマイトさんは真剣なんですからね!」
「分かってるさ」
一頻り笑ったスナイプの目がこちらを向いた。
「オールマイトさん。彼女の言葉も、13号の言葉も、本当なんだという事ですよ」
「本当?」
「彼女が自分を強くないと思うのは間違っていないし、その彼女の姿を見て強さを感じる13号も間違っていないという事です。それは当然です、価値観がそもそも違うのだから」
私はそこで、漸く思い違いをしていた事に気づいた。
私は私の目で見たものすら疑ってしまっていたのだと。
「オールマイトさん。聞かせてくれないか。貴方が見た緑谷少女はどうだった?」
スナイプに言われ考えた。
「私は・・・ヒーローに相応しい子だと、そう思った。人の為に危険に飛び込める、優しい子だと」
「それで良いんですよ。人の内面なんて簡単には見えない。だから、最初は見たものを信じればいい。そして少しずつ彼等や彼女等と言葉を交わし知っていけば良い。オールマイトさんはその一歩目を踏んだ所なんですよ。それが彼女の全てじゃない」
スナイプの言葉は自然と私の中に染み込んでいった。
考えた事もなかった。結局私は、自分の事ばかりを見ていた。
13号はスナイプのその話を聞いて大きく頷いた。
「多感な年頃。間違った事も言うでしょう。歩み方が分からなくて迷う時があるでしょう」
「厳しい現実にまけて落ち込むこともあるでしょう。自分を見失って自暴になる時があるでしょう」
「オールマイトさん。そんな彼等彼女等を支えてあげるのが教師の役目なんですよ。教え導くなんて、大層な事しなくて良いんです。そうそう出来ませんから。・・・だから、せめて教えてあげるんです。僕達が見てきたモノを」
「私が見てきたモノを?」
「はい」と13号がうなづいた。
「教えてあげて下さい。一つでも。オールマイトさんが見てきたモノは、僕の言葉よりずっと意味がある筈です。だって貴方は、ここまで積み上げてきたじゃないですか」
そう言った13号の隣でスナイプが頬をかいた。
何処と無く照れ臭そうに見える。
「・・・こう言ってはなんですが、教員一年目の癖に一人で抱え込み過ぎですよ。ヒーローとしては尊敬しますが、教師としては半人前なんですから相談して下さい」
「はい!ヒーローとしてはまだまだですが、教師としてなら僕らは先輩ですから!任せて下さい!」
そう言ってくれる二人に、私は苦笑いが溢れてしまった。
「情けない所を見せてしまったな。恥ずかしい限りだ。頼むからここだけの話にしてくれないか?オールマイトが女子生徒一人教えられないと知られたら、お茶の間に顔が出せない」
「ふふふ、確かに!」
「それは違いないな」
おかしそうに笑う二人を眺めながら思った。
また見失ってしまう所だったと。
エンデヴァーの姿を見て反省したのはなんだったのかと。
こうして認めてくれる人達がいる。
私がやってきた事を間違ってないと言ってくれる人達がいる。
これも一つの答えだったのだ。
「彼女と話さなくてはいけないな」
もう、私の望みを伝える必要はない。
彼女はもう十分知っている。
だから、これからは、伝えていこう。
私の走ってきた道の話を。
彼女が思うような辛いだけでなかった、道の話を。
だが、今は━━━━━
『お待たせしました!!続きましては~こいつらだ!』
━━━不意にマイクの声が響き、私達は試合会場へと目を向けた。
そこにいたのは、私が今最も気にかけていた焦凍少年だった。
『優秀!!優秀なのに拭いきれぬその地味さは何だ!!ヒーロー科、瀬呂 範太!!』
瀬呂少年は顔をしかめた。
笑いどころというのは少し可哀想ではあるが、それに対した焦凍少年のクスリともしないどこか暗い表情が、脳裏に嫌な予感をよぎらせる。
『エンデヴァーを父親に持つサラブレットボーイ!!今回は成績イマイチだけど、実力は折紙つきだぜ!同じくヒーロー科、轟 焦凍!!』
歓声があがる中始まった試合。
動きがあったのはスタートを告げられた直後だった。
瀬呂少年の突然のテープによる捕縛。
そこから流れるように焦凍少年を振り回し場外を狙う。
それは素晴らしい動きだったと言える。
だが、私の視線はただ一点から離せなかった。
隣から聞こえる13号の驚きに満ちた声や、スナイプの感心するような声を聞きながら、私は焦凍少年の暗く淀んだ瞳から目が離せなかったのだ。
「━━━わりぃな」
口元の動きからその言葉を読んだ直後、異変は起きた。
一瞬で視界を覆い尽くす壁。
漂う冷気からそれが巨大な氷の塊である事を理解したのは、観客席から悲鳴が聞こえてからだった。
試合会場に巨大な氷柱。
そこに張り付くように凍らされている瀬呂少年。
その前に立つ無傷の焦凍少年。
圧勝だった。
会場に鳴り響く瀬呂少年に捧げられたドンマイコール。
それは笑いを誘うものだったろう。
現に私の耳にはそう言った声が聞こえてくる。
だと、言うのに。
焦凍少年の背中はあまりに寂し過ぎた。
瀬呂少年を捕らえている氷を左の炎で溶かす焦凍少年の横顔に、私は心の中で彼にもう一度問いかけた。
エンデヴァー。
君は彼に何を背負わせるつもりなのかと。