私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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なんやかんや、今日も更新。
頑張るなぁ、俺。

こんなに頑張ってるなら、そろそろ衝撃のファーストブリッツくらい撃てへんやろか。

衝撃のぉぉぉぉ━━━━!!

(出なかった)


トイレにある乙姫の音にびっくりしたのは私だけではないはずだ!あれって思いの外デカい音するよね!ん?だからどうしたって?どうもしないわ、このハゲ!の巻き

僕らの紅白饅頭が特大の氷を出したせいで会場は馬鹿にヒンヤリしてしまった。陽気に合わせて薄着をしてた人達は皆が皆温かい物を求めて売店にゴー。

私もそうしたかったのだが、それは出来なかった。

 

キンキンに冷えたジュースを飲んでた私にとって、その冷気の一撃はあまりに強力過ぎだのだ。

お腹のご機嫌はナナメ下どころか急降下、真っ逆さまである。

あの紅白饅頭は後で殴る。

 

私はグルグル鳴るお腹を押さえてお花摘みしにいった。

紅白饅頭への憎しみを抱えながら。

あの紅白饅頭は後で殴る。

 

 

 

「━━━━ふぅ、よい花摘であった」

 

憎しみ以外をスッキリさせてトイレを出ると、隣の男子便所からやたらとメラメラしたガチムチが現れた。

私は確信した、こいつはホモだと。

 

「━━━む?」

 

私に気づいたメラメラガチムチ。

訝しげにこちらを見てきた。

厭らしい目だった。

 

私は変態にあった時の最も正しい対処方法をとる事にした。こういう時にやることなんて決まっている。

ポケットから手早くスマホを出すとアドレス帳からその名前をクリックする。

 

「━━━━あ、包帯先生ですか?」

『・・・はぁ。どうした、緑谷。面倒ごとか?』

 

私はメラメラガチムチを頭の上から足先まで確認し、出来るだけ正確に包帯先生に伝える。

 

「私自身、こんな変な人見たことないんで、説明出来ないんですけど・・・」

『よく分からんが、だったら直ぐその場を離れろ』

「ガチムチでホモで黒タイツで放火魔なんですよ」

『・・・俺に電話してないで、直ぐ逃げろ馬鹿。何処だ、直ぐに近くのヒーローを向かわせる』

 

 

「おい、少女。その危ない会話を今すぐ止めろ。俺はヒーローだ」

 

ガチムチが自らをヒーローだとか言ってきた。

おいおい、嘘だろ?どう見ても燃えてる危ない黒タイツだよ?ホモじゃないの?変質者以外、なんだというの?

 

ホモの次の行動が分からず警戒していたのだが、隙をつかれてスマホをパクられた。通話中だというのに、なんて奴だ!マナーを知らないにもほどがある!!

 

「電話越しの誰か。誰だか知らんが、俺の声に聞き覚えはないか。エンデヴァーだ。馬鹿な真似はよせ」

『エンデヴァー?フレイムヒーローのエンデヴァーか?悪いがそれを鵜呑みにするほど我々は馬鹿ではないつもりでしてね。何か証明しては貰えませんか』

「ふん。なら、関係者用トイレAー2に人を寄越せ。その目で見れば文句もあるまい。それ以前に、監視カメラの画像を追えば分かるだろうが」

 

そう言ってメラメラガチムチは廊下を撮っていたと思われる監視カメラを見た。

 

それを見て私は思った。

監視カメラの位置を把握してるとか、この人絶対変な事する気だったに決まってるよ、と。

素直に思った。

 

『確認が取れました。うちの生徒がご迷惑をおかけしたようで。代わって貰えますか?』

「ふん」

 

メラメラガチムチに投げ渡されたスマホに、私はそっと耳を当てた。

 

『いい加減、有名ところのヒーローの顔くらい覚えろっ。大馬鹿。確かにエンデヴァーさんの顔はどちらかと言えばヴィラ━━━多少いかついが━━━』

 

「おい電話越しの貴様っ━━━」

 

『━━━れっきとしたヒーローだ。変質者の類いじゃない。いいな』

 

包帯先生も怪しいと思うんじゃないか。

やっぱり。

 

『━━まぁ、俺に電話した事は誉めておいてやる。よく警察に電話しなかった。成長したな、緑谷』

「いやぁ。えへへ」

 

珍しく包帯先生に褒められてしまった。

叱られてばかりだったから、地味に嬉しい。

変な事はするなと釘を刺され通話を切られたので、私はスマホをポッケにしまい観客席へと帰る事にした。

 

のだが、道をメラメラガチムチに遮られた。

 

「なんですか、ナンパですか?ロリコンですか?」

「そう邪険にしないで欲しいな。少し話がしたいだけさ。ヒーローとしてではない。轟焦凍の保護者としてな」

 

轟焦凍。

 

最初何を言ってるのか分からず、少し混乱した。

それでも少し考えれば理解出来た。

目の前の人が誰なのか。

 

「そう俺が━━━」

「紅白饅頭の養父さんですね?把握しました!」

「━━━そこでどうして実父が出てこない」

 

紅白饅頭の親とは思えないキレの良いツッコミ。

かっちゃんとはまた違った気持ちよさがある。

 

「いや、だって似てませんし?」

「似てるだろう・・・目元とかはよく」

「いや、全然似てませんよ。ちっとも、少しも、まったくもって」

「・・・ぬ、ぐぅ」

 

私の完全否定に、メラメラガチムチは言葉を詰まらせた。そこまで否定されると思っていなかったのだろう。

でも、私は本当の事しか言ってない。よって謝るつもりはない。

 

「・・・まぁ、良い。そんな事は些細な事だ」

 

まぁ、それで良いとご本人様が言うんですから?

ええ、勿論かまいませんけどね?うん。

 

「不躾な視線を平気でぶつけてくるな、君は」

「いやぁ、お褒めに預かり光栄です」

「褒めてはいない」

 

メラメラガチムチは溜息をつくと、私の目を見てきた。

正直嫌いな視線だ。厭らしいとは別の、品定めをするような、物を見るようなそんな視線。

 

警戒していると、メラメラガチムチの口角があがった。

 

「悪くはない、な。君の活躍は見させて貰ったよ。正に獅子奮迅の活躍。うちの焦凍とは大違いだ」

 

褒められている筈なのに癪に障る。

嫌な褒め方だ。

皮肉が籠ってても、包帯先生のがまだましだ。

 

「君も二つの個性を持っているんだろう。焦凍のそれとは少し違うかも知れんが、本質的なところはそう変わらない。実に君の戦い方は良い。考えつくされている。調子に乗る癖は直した方が良いだろうが、それをおいても素晴らしいものだった。二つの個性をきちんと使いこなせている━━━」

 

ニィっ、と。

メラメラガチムチが笑った。

 

「━━━是非とも、焦凍に見習わせたいくらいだ」

 

何を言いたいのか理解した。

この人が何をさせたいのか。

 

「で、なんですか?」

「あの子にとって、君はよい刺激になるだろう。同じように二つの個性を持ち、それを使いこなし戦う君の姿は。期待しているよ。君が焦凍の殻を破ってくれる、優秀な生徒である事を」

 

それだけ言うと私に背を向けて歩きだしたメラメラガチムチ。

 

「そいっ」

「━━っぐおっ!?」

 

私はその隙だらけの後頭部にドロップキックをお見舞いしてやった。

突然の攻撃にたたらを踏んだメラメラガチムチだったが、流石に現役ヒーローという事だけあって直ぐに体勢を整えこちらに身構えてきた。

目にはさっきは無かった殺気に近いものを感じる。

 

「小娘、なんのつもりだ・・・!」

「それはこっちの台詞だ、ハゲ」

「は、ハゲ!?俺はハゲとらん!!」

 

怒鳴るメラメラガチムチ、通称ハゲはその身を飾る炎を大きくした。

威嚇するかのような熱が頬に触れる。

 

このまま適当に煽っても良かったのだが、少々腹に据えかねるものがあったので、そのまま言っておこうと思う。

 

「ハゲてようが無かろうが、この際どうでも良い。このヅラハゲ」

「ハゲっ、何処を見て━━━」

「その空っぽの頭見てに決まってんでしょうが。何詰まってんの?カニ味噌?カニ味噌でも詰まってんの?茹でてやろうか!!」

 

言葉を詰まらせたハゲに言葉を返される前に続けた。

 

「私には分からないよ、紅白饅頭の気持ちは。なにも聞いてないから。でもね、分かるよ。苦しいんだって事くらい━━━」

 

それは、きっと言葉を交わしても分からないと思う。

形だけなら共感は出来るかも知れないけど、それだけだ。意味がない。

 

「・・・言いたい事はいっぱいあるけど、それを全部言ってたら疲れるし、第一あんたには理解出来ないと思うから言わないでおく」

「何をっ・・・!」

「でも、これだけは言っておくから━━━」

 

 

 

「━━━轟焦凍は、私が殴り飛ばしておいてあげる」

 

本気の本気で。

お腹を下された憎しみも込めて、渾身の力で。

 

 

 

 

「・・・そういうこと、らしいよ。子供達同士の事、大人が口を挟むのは野暮ってものだ。そうだろう、エンデヴァー」

 

嫌な声を聞いて振り返るとガチムチがいた。

ホモに挟まれるというアクシデントに私もう涙目。

厄日だと思う。お腹壊したり、虹を吐いたり。

 

ガチムチはハゲと私の間に割って入ってきた。

 

「オールマイト・・・!」

「感心しないな。うちの生徒に何をしようとしてるんだい?」

「・・・ちっ」

 

ガチムチの圧倒的ガチムチ力におされ、ハゲが背を向けた。逃げ帰るみたいだ、ざまぁ。

そのままいなくなるのを待っていると、その背中にガチムチが声をかけた。

 

「エンデヴァー。この子は私が見込んでここに連れてきた子だ。私の後継に育てようと思ってね」

「おほぅ!?何言ってんの、ガチムチ!?」

 

突然のガチムチの暴露に、冷や汗が吹き出た。

やらないと言ってるっていうのに!

 

「貴様が、後継だと?」

「私も人の子だからね。いつまでも現役ではいられない。当然考えるさ。でもね、私は少し考える事にしたよ」

「━━はぁ?」

 

ハゲの表情が歪んだ。

理解出来ないという顔。

っていうか、それは私もだけど。

 

「彼女がヒーローになるに相応しい子である考えは変わらない。けれどね、彼女には彼女の歩み方があると分かったからね」

 

ガチムチが私を見てきた。

昨日とは少し違う目で。

 

「難しいね、誰かを育てるというのは」

「さっきから何が言いたい?」

「別に大した話じゃないさ。同じ教育者として、愚痴を溢しただけ。それだけだよ」

「ふん、くだらん!!俺は行くぞ!!」

 

大股で廊下へと消えていったハゲを眺めながら、私はガチムチを横目で見た。

ガチムチは私の視線に気づくと返事をするように頷く。

 

「さっきの話は本当さ。後継の話は考え直すよ」

「止めたって言わないところが微妙なんですけど」

「それは、まぁ、少しくらい希望を持たせてくれてもいいだろう?やっぱり私は、君にこそ相応しいと思うからね。でも、もう言わないよ。君には君のやり方があるのだろう」

「ま、まぁ?」

 

そう言うと、ガチムチに頭を撫でられた。

 

「応援してるよ。緑谷少女」

「さいですか。てか、セクハラですよ」

「ははは、手厳しいな」

 

 

それからガチムチにセクハラの代償として大判焼きを奢って貰った。

皆の分も要求したら泣かれた。

 

それでも買わせたけど。

 

 


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