私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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体育祭いよいよ終盤ですぅ。

長かったぜぇ(゜ロ゜)


辛いときのが多い人生だけど、その分やってくる幸せは格別です。だから、今は試練の時なのです。たえる時なのです。たえろ!たえろ!私!たえろぉぉぉ!頑張ったらきっと、あいつがアイス奢ってくれるぞ!の巻き

実質の一試合目を終えた私は、控え室で暇をもて余していた。

 

暇をもて余してるなら外出すれば良いじゃないと思うだろうが、残念ながらそれは出来ない。包帯先生によって移動制限をされてしまったのだ。

私の動いていい範囲は精々がトイレとこの部屋の行き来くらい。途中にある控え室には立ち寄るなとの事。

立ち寄ったらどうなるんですかと聞いたら、一言「覚悟しておけ」と脅かされた。ブルブルである。

 

それでも暇なものは暇。

どうにか時間を潰そうと逆立ちの練習したり、アプリゲーしたり、今年の流行語大賞を予想したりしたのだが、直ぐに限界がきた。

なので素直に人を呼ぶ事にした。行ってはいけないと言われたが、人を来させてはいけないとは聞いてないからね。包帯先生、破れたり。

 

「あ、もしもし、かっちゃん?」

『試合前に掛けてくんじゃねぇ!!馬鹿か、てめぇはよ!!』

 

酷い。

傷ついたよ、私のハートは。

 

「それよりさ」

『無視すんじゃねぇ!!━━━で、なんだ!!』

「暇だから遊びにきて」

『━━━っざっけんなっ!!なんで試合前の俺が、てめぇの遊び相手になんなきゃいけねんだ、糞ボケがぁっ!!』

 

ギャンギャン吠えるかっちゃん。

それでも電話を切らない所はかっちゃんらしい。

文句言っても、ちゃんと聞いてくれる。ちょっと喧しいけど。

 

かっちゃんの負けドッグ的な鳴き声を聞きながら何を話そうかと考えていると、ドアがノックされた。

誰か激励にでも来たのかと思ったけど、今は紅白饅頭の試合最中。今大会一番の目玉とも言える紅白饅頭の戦いを見ないわけがない。となればクラスの誰かはない・・・と、言いたい所だけど一人心当たりがある。

 

「お茶子でしょ?いいよ」

『は?!丸顔━━━』

 

かっちゃんとの通話を切って待つと、いつもより暗い表情のお茶子が部屋に入ってきた。

 

「ごめん、いきなり。━━━れ?誰かと話しとったんちゃうん?」

「気にしないで良いよー。かっちゃんと電話してただけだから」

「あ、爆豪くんと。って、爆豪くんこんな時もニコちゃんに構うんやねぇ。もう、なんやろ・・・・付き合うてしまえばええのに」

 

お茶子の最後の方の言葉が聞き取れずリピート要請したけどあっさり拒否された。

何か聞き捨てならない事を言っていた気がするだけに、気になって仕方ない。でも、お茶子の顔を見て絶対に言わないんだろうなぁと思い、今回は諦める事にした。

次回はこうはいかんぞ、お茶子よ。

 

「━━━はぁ。ニコちゃんとこ来たのは間違った気ーするわ。そもそも、ニコちゃんは爆豪くんの味方やし」

 

おおう?

そんな事ないぞ、今はお茶子の味方だ。

味方アピールをするためにアルプス一万尺の構えをとれば、それに気づいたお茶子が手を取ってくれる。

 

一踊り終わる頃には、少しだけ顔に元気が戻っていた。

 

「あははっ!もうっ、ニコちゃん無理矢理過ぎるわ!でも、少し元気出てきた、ありがとぅ」

「ゆーあーうぇるかむ、お茶子。こんなんで良かったら百万回でもやったげるよ」

「百万回はええわ!腕もげてまうよ、てか、飽きるわ!」

 

クスクス笑うお茶子。

入ってきた時の暗さはもうない。

お茶子の様子を微笑ましく見ていると、お茶子が少し真剣な顔をしてきた。何か言おうとしてるので、お口チャックで見守る。

 

「・・・ねぇ、ニコちゃん。聞いて欲しい事があるの。ええ?」

「うん、聞くよ」

「あはは、即答て。・・・ありがと」

 

それから椅子に座ってお茶子の話を聞いた。

ヒーローを目指しているのはお金の為である事。

実家の仕事があまり上手くいってない事。

 

かっちゃんとの戦いの事。

 

 

「ニコちゃんに聞いて貰うんはちゃうと思ったんやけど・・・・・でも、やっぱりニコちゃんに聞いて貰いたかった。ごめん、こんな話して」

「いいよ、別に。暇してたし」

「ううん、ありがとぅ。本当に少しスッキリした」

 

そう言って大きく深呼吸したお茶子はゆっくりと立ち上がった。お茶子は天井を眺めながら、また口を開いた。

 

「今日な、一日ニコちゃんの事見て思った。ヒーローってこういう子がなるんやろなって」

「お茶子?」

「友達がそういうんになれるかも知れんのは嬉しいし、誇らしかったよ。でもね、少しだけ恥ずかしくなった」

 

横からだと見えないけど、お茶子の声が少しだけ震えてる気がした。

でも、それを指摘するつもりはない。

何か大切な事を言おうとしてるのに気づいたから。

 

「━━━私ね、私が恥ずかしかった。騎馬戦の時、勝つために頑張って策を考える姿とか、最後まで勝つことに必死になってたニコちゃん見て恥ずかしかった。何も考えてこんかった自分が。ニコちゃんに頼ってチーム組んだ事とか。全部」

 

「ヒーローになりたいんは、私やのに。私はあの時、頼ることしか考えてなかった」

 

ごめん、と小さく謝ったお茶子が目元を拭う。

実際お茶子の個性は猛威を振るったし、そんな事は全然ないんだけど、お茶子はそうは思えなかったみたいだ。

ここでそれを説明する事は出来るけど、お茶子が言ってる気持ちの問題は解決出来ないと思う。

だから、私からかける言葉はない。

 

今、私がしてあげられるのは、きっと聞いてあげる事。

そっと耳を傾ければお茶子の話はつづいた。

 

「私ね、子供の頃、ヒーローに憧れた。私が憧れたんは、戦うヒーローやなくて救助するヒーローやった。瓦礫とかあっという間にどかして、泣いてる人とかあっという間に助けてしまうん。だから私の個性がこの力だって知った時、凄く嬉しかった。私にもああいう風に誰かを助けれるって」

 

「勉強したよ、頑張って体も個性も鍛えたよ。でも分かってへんかった。ヒーローってなんなのか━━━」

 

お茶子の目が私を見た。

覚悟を決めた良い目だった。

 

「━━━私ね、ヒーローになりたい。ニコちゃんの隣にいても恥ずかしくない、そういうヒーローになりたい。だから、ごめん。私、爆豪くんに勝ってくるよ」

 

自信があって言ってる訳じゃない。

その証拠に顔はひきつってるし、手が少し震えてる。

味方なら心強いけど、敵としてのかっちゃんは私でも怖いから、その気持ちは痛いほど分かる。

 

だから、そのお茶子の姿は、素直に凄いと思った。

 

「━━かっちゃん強いよ?」

「ふふ、ほら、やっぱりニコちゃんは爆豪くんの味方や。でもありがと。今だけは私の味方でいてくれて」

 

そう言うとお茶子は親指を立てて言った。

 

「決勝で会おうぜ!」

 

私は同じように親指を立てて返した。

 

「かっちゃんが負けた時は私が慰めておいてあげるから、遠慮しないで勝っちゃえ!!私が許可する!!」

「うん、行ってくる!!」

 

 

 

 

 

 

 

空元気で部屋を出ていったお茶子を見送った私はスマホを手にし、もう一度かっちゃんの名前をタッチした。

二コールした所でかっちゃんの荒々しい声が聞こえてくる。

 

『てめぇ!!勝手に掛けて、勝手に切ってんじゃねぇぞ、ごらぁ!!』

「あー、うん。ごめんねぇ」

 

一言謝れば、かっちゃんの勢いが少し緩まる。

 

『━━けっ!で、丸顔がなんだってんだ、ああ!?手ー抜けって話なら聞かねぇからな!!』

「ううん、違うよ。ねぇ、かっちゃん」

『ああ!?』

「・・・本気で戦ってあげてね」

 

そうお願いすると、また『けっ』と言われた。

 

『━━言われんでもそうするわ。てめぇとちゃんとつるんでる奴が、普通な訳ねぇからな。油断はしねぇ、全力でぶっ殺してやる』

「うん、ありがと」

 

本気ならそれでいい。

かっちゃんは相手に合わせて戦える。

今のお茶子の実力じゃ、きっとそれなりの力しか見せないと思う。

意表をつければ、一度くらいかっちゃんを驚かせる事は出来るかも知れないけど、それでもそれが限界。

かっちゃんはそんなに甘くない。

 

勝てないとは言わないけど、本気のかっちゃん相手だとかなり分が悪いと思ってる。

 

 

 

電話を切ろうとしたら『おい』とかっちゃんに止められた。珍しいなと思って電話を切るのを止めて耳に当てなおす。

 

「どしたの?」

『━━っせぇ。・・・そんな顔で丸顔んとこ出んじゃねぇぞ』

 

不思議な事言うかっちゃんだ。

電話越しで顔なんて見える訳ないのに。

 

「いつのまにかテレビ電話してた?あはは」

『んなもん、見なくても分かるわ。馬鹿が。つれぇだけの電話なんざすんな。━━━ダチなんだろうが。余計な事考えねぇで、素直に心配だけしてろ』

 

 

「・・・うん。ありがとう、かっちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして試合の為に柔軟していた私の耳に、沢山の爆発音と沢山の声援が聞こえてきた。

そして、それを終わらせた大きな爆発音も。

 

私はお茶子がいつ来ても良いように顔を洗って待った。

結果がどっちでも笑って迎えられるように。

 


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