私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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職場体験編がやってきてしまう。
どないしょ、なんも考えてねぇ(;・ω・)


勝つだけが全てじゃないよ!他にも大切なことが世の中にはいっぱいあるんだよ!だから、もう頑張らなくて良い。休んでいい。そう、そのまま進んで・・・隙ありぃ!!ちっ、避けやがったか!私の糧になれぃ!の巻き

「━━━なら、どうしろって言うんだよ」

 

 

不意に轟の口からそんな言葉が出た。

視界の中によろめきながら立ち上がる轟の姿。

その目に宿る光から、戦意はまだ無くなっていないように見える。

 

「この力で勝たねぇと、意味がねぇんだ。この力だけじゃねぇと、意味がねぇんだよ」

 

轟の酷く歪んだ顔が私を見た。

 

「お前に、何がわかんだよ!!」

 

そう言って向かってくる轟の動きは鈍い。

蝿が止まるようなレベルだ。

どれだけ意識があろうと怖くも何ともない。

 

構えられた拳に。

必死の形相に。

吐かれた啖呵に。

 

力を感じない。

 

 

 

『この特攻は━━━━ぶはっ!?なにSOON!?』

『少し黙ってろ。試合場付近の音声も切っとけ』

『はぁー!?』

 

 

 

轟から放たれた右のへぼパンチをかわし、カウンターに左フックを叩き込んだ。いっつぁ、クロスカウンター!いえー!

 

勿論、遠慮なしの顔面パンチである。

スカッとするぜ。

 

倒れようとする轟の体を引き寄せ、胸ぐらを掴む。

ダメージに朦朧とする轟の頭におまけのヘッドバットをお見舞いしておく。

鼻血を出した轟は大きくぐらつく。

 

そのまま放っておいてもダウンしただろうが、今は頗る私様の機嫌が宜しくない。

なので、心操の時にやった様に腕をつかんで投げ飛ばしてやった。

 

何度か地面をバウンドする轟。

しかし心操とは違い崩れていた体勢を整え、場外ぎりぎりで踏み止まってきた。

やっぱりイケメンは違うね。

 

恨みがましい目が私を見る。

もうずっとこの目だ、うんざりする。

 

「お前にっ、何がっ!!」

 

アホのオウムみたいに同じ言葉を繰り返す轟。

きっと馬鹿になってしまったのだろう。

殴り過ぎたことを心の中でちょびっと謝り、正直なところを口にした。

 

 

「知らん!!!!」

 

 

あんまりしつこいから言ってやったのだが、轟が予想以上に動揺した。こっちが驚くほど、動揺した。

 

どうした。

なんだそのきょとんとした顔。

写メってやろうか?そして拡散してやろうか?

何もおかしい事言ってなかろう。

 

「お前は私の兄弟か?それとも恋人?違うよね、いいとこ友達でしょ。親友でもなんでもない、ただの友達。その私がお前の事なんでも知ってると思ってんの?自惚れるなよ!烏滸がましいわ・・・このハゲ!!」

「は、ハゲ・・・?」

「そもそも、さ。ちゃんと知ってなきゃ、何も言っちゃ駄目なの?人の事なんて、知らない事の方が多いのにさ。そんなに共感して欲しいなら、知って貰える努力はした?してないでしょ?私は何にも聞いてないもん」

 

轟を苦しめてきた物の正体は知らない。

それが轟にとって大切な事なのは何となく分かる。

でも、だからどうしたって話だ。

 

「私は認めるって言ったでしょ。理由は知らないけど、使いたくないなら使わなくて良い、苦しいなら逃げて良いよ。私だって補習から逃げたい、夏休みを謳歌したい。だから今頑張ってる」

「それは違う気がするが・・・」

「違くない!一緒!!」

 

轟が「俺がおかしいのか・・・」と呟き始めた。

天然さんめ、やっと気がついたのか。

でも安心しろ、お前はずっとおかしい。今更だ。

 

「右しか使わなくていい。でも、さっきも言ったけど後悔しないようにね。━━━そのせいで助けられない人がいるかも知れない事」

「━━━!」

 

目を見開いた轟が息を飲んだ。

私の言いたい事が分かったのだろう。

 

「プロになればいいよ。右の力だけで。あんたの左の力があれば助けられたかもしれない人がいて、その人の為に悲しむ人がいて、その時あんたは胸張って言いな『仕方なかった』って」

「そんな、ことっ━━!」

「それが出来ないならやるな!!」

 

轟を引き寄せる個性で引きつけ、右の前蹴りで蹴り飛ばす。左手でガードされ足が僅かに凍るが関係ない。

思い切り踏み抜く。

 

「言い訳なんて出来ない!!そういう時、出来るか、出来ないしかないんだよ!!だからっ!私は、かっちゃんはっ!頑張ってきてんだよ!!」

 

よろめく轟へ引き寄せる個性で飛び、膝蹴りを顔面に叩き込む。今度は左手が間に合わなかったのか、右手だけの薄いガード。

威力を防ぎ切れなかったのか、指先から鮮血が跳ねる。

鼻血だと思う、ばっちい。

 

「ヒーローになるのが、ゴールじゃないんだよ!!」

 

轟の後ろにある氷柱目掛け引き寄せる個性をフルスロットル発動。もう一度加速をつける。

 

「いつまでもっ、どこ見てんだ!!バァーカ!!!」

 

通り過ぎ様にかました左ラリアット。

確かな手応えが腕に走り、轟の体が地面に叩きつけられた。

私は華麗に着地し、轟の様子を見る。

立とうとしてるのが見えた。

 

 

そういう所が、本当に腹が立つ。

 

 

ちゃんと分かってるくせに。

ちゃんと想ってるくせに。

 

 

「いまっ!なんの為に立とうとしてんのか少しは考えろ!!━━━━本気でこい、轟焦凍!!」

 

突然轟の体から炎が噴きあがった。

多少、火への耐性がある私ですら汗が吹き出る高温。

使わない使わない詐欺、ここに。

 

 

『これはーーーーー!?』

『轟・・・』

 

 

解説達が復活してきた。

はよ、弱点まで解説して。

 

「・・・緑谷、馬鹿だな、お前」

「はぁーん!?」

 

突然投げ掛けられた暴言に双虎プンスコ。

紅白饅頭如きが何を言うのか。

殴るぞ。

 

ほわたぁ、と構えると轟が笑みを浮かべた。

珍しい光景にびっくり双虎にゃん。

 

「黙ってれば、勝てたのによ。黙ってれば、勝手に潰れたのによ━━━━━本当馬鹿だよ、お前」

 

 

ほう、喧嘩をお売りで御座いますね、紅白饅頭様。

お買い上げいたしましょう?

 

「俺だって、ヒーローに・・・!━━━あの背中に憧れて、ここにきたんだよ!!」

 

半身を炎で包んだ轟が、その顔に笑顔を浮かべた。

さっきの自然な笑顔とは比べ物にならない、まだまだ格好つかないひきつった笑顔を。

 

「キモい」

「言ってろ」

 

拳を握りこむと、聞き覚えのあるハゲの声が聞こえてきた。ショートとか叫んでる。

どした、スマホでもイカれたのか。

 

まぁ、紅白饅頭のパパンの事なんて、どうでもいいから良いけども。

それよりも目の前の紅白饅頭が問題だ。

どんどん火力があがってく。

私のとは比べ物にならない。

 

「お前が、言ったんだからな、本気でこいってよ。どうなっても、知らねぇぞ」

「上等。ど真ん中ぶち抜いて、ぶっ倒してやる」

 

紅白饅頭の足元が氷で覆われる。

それと同時に右の火力があがっていく。

練り上げられる冷気と熱が、風を産み出していく。

 

半冷半燃の本領を初めて見た感じがする。

 

炎を出すのも冷気を出すのも、恐らく体に温度負荷がかかるタイプの個性。どちらか単体なら威力も制限されるし、発動後にインターバルを設けなければいけない。けれど二種類の特性がそれぞれの欠点を補いあっている現状下ではそれがない。高まる威力も桁違いだろう。

まともに受ければ命はない。

 

 

火炎での相討ち狙いは駄目。

差がありすぎる。

 

避ける?

攻撃範囲を考えれば無理だ。

 

 

「━━━ふぅ、試してみるか」

 

 

私の個性。

引き寄せる個性にずっと違和感を感じていた。

どうして私は掌だけしか物を引き寄せられないのかと。もう一つの対象は自由に選べるのにと。

切っ掛けはいつだったのか、もう思い出せない。

でも、それが違和感だった。

 

それから何度も試してきた。

でも一度も成功した事なんてなかった。

それでも、今ここで。

 

 

手をかざし、集中する。

深く呼吸する。

深く、深く。

 

 

 

『待てっ!轟!!』

 

 

包帯先生の声が響いた。

その瞬間、視界の端に赤い光が走り、熱気が嵐となって頬を通り過ぎていく。

 

「緑谷!!」

 

引き寄せる個性、最大出力。

対象、前方空間一帯、無差別。

対象、掌の前方二メートル地点。

非対象、私。

 

「おらぁぁぁぁ!!」

 

脳に走る焼き付くような痛みと共に、目の前に迫った炎が引き寄せ地点に集まっていくのが見えた。肌をなでる空気もそこへと向かっていく。

腕に掛かる負担はゼロに近い。

 

けど、その反面頭に掛かる負担が大き過ぎた。

頭痛なんて可愛いレベルじゃない。

頭の中でかっちゃんが暴れまくってるような気分だ。

端的に言って死にそう。

 

炎の勢いはまだ落ちない。

いま引き寄せる個性を切ったら死ぬからそれも出来ない。

 

思考力が落ちてるのが分かる。

目の前の炎が揺らぐのが見える。

息をするのが苦しい。

 

頭痛い━━━。

 

痛い━━。

 

痛い━。

 

痛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った。真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者と!!』

 

 

不意に頭の中にラジオ先生の声が響いてきた。

 

 

『ヴィランよ こんな言葉を知ってるか!!?』

 

 

これは知らない。

知らないけど、この声は━━。

 

 

『更に向こうへ!!』

 

 

『更に向こうへ!!』

 

 

 

『更に』

 

 

 

『向こうへ』

 

 

 

「プルス、ウルトラぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

気合いと根性と、不屈の乙女力をフル動員する。

頭の中を這いずる痛みを蹴っ飛ばし、沸騰するような脳の熱を無視する。

全意識を目の前の対象地点へ向ける。

 

 

視界に映る集束し消えていく炎。

頭に宿る熱。

 

 

「━━━━!!」

 

 

誰かの声を聞いた所で視界は灰色に包まれて、瞼が落ちてきた。

どうしようもない眠気と共に。

 

 

 

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