私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
第一次貴様のネーミングセンスのがクソだろ合戦を中断させられた私達は、言葉を出さずハンドサインだけでずっと互いを罵りあっていた。
かっちゃんがクソ生意気にマザーファッカーしてきやがった。やれるもんならやってみろや。うちの母様つえーかんな。ばーか。
「止めろ、緑谷、爆豪。いい加減にしろ。・・・ま、そういう訳だ。馬鹿達に邪魔されたが、君らには仮のヒーロー名を付けてもらう。まぁ仮だからと言って適当なもんを・・・」
「付けたら、地獄を見ちゃうわよ!!」
ハンドサインすら禁じられフラストレーションはマッハ。戦争し損ねた私とかっちゃんが互いを睨み合う中、包帯先生の話を遮って元気な声が聞こえてきた。
気になったので一時休戦にして視線を向ければ、心の友ミッドナイト先生の姿がそこにあった。
「この時の名が!世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」
相変わらずのエロ衣装。
今日もミッドナイト先生は決まってる。
それならば私も決めねばなるまい。
にゃんポンチョをささっと羽織り、手をあげて存在を全面にアピール。
直ぐに気づいてくれたミッドナイト先生が、私の姿を見て「可愛いわね!」とグッドサインを出してくれる。
流石に分かってる大人の女は違うね!分かってるね!
どや顔でかっちゃんを見たが、今度は普通にスルーしてきやがった。
許すまじ、爆豪勝己。
「緑谷、可愛いのは分かった。大人しくしてろ」
「はい!」
包帯先生にもお褒めの言葉を頂けたので大人しく座り直す。
私は聞き分けは良い子なのである。
「まぁ、そういう事だ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうの苦手なんでな。将来自分がどうなるのか、まだ曖昧な奴もいるだろう。そういう奴等は名を付けることでイメージが固まり、行動や考え方がそこに近づいてくこともある。仮とはいえ、おかしな名前は付けるな」
包帯先生は人差し指を立てた。
「『名が体を表す』ってことだ。オールマイトとか、いい例だろう。君らの目指すものを、その名に込めろ・・・以上だ。後はミッドナイトさん、お願いします」
「はいはーい。任されたわ。て言うか、人に名前を決めて貰った人がよく言うわ。聞いたわよ、マイクから」
「俺のは・・・まぁ、合ったから良いんですよ」
包帯先生が寝袋inした所でミッドナイト先生が教卓に立ち、皆と楽しいお名前講座が始まった。昔のヒーロー名の例をあげたり、最近の流行の付け方とか、名前を付けるコツとか教えて貰う。
私的には助かったのだけど、周りの様子を見るに元から考えてあるみたいであんまり役立ててはいないみたい。まぁ、皆ヒーローになりたくてここに来てる訳だしね?うんうん。
しかし、どうするか。
いきなり名前とか言われても分からん。
あれか、なんか凄いって分かる奴がいいな。
私の美しさと可愛さと愛らしさと偉大さが一目で分かるような、そんな名前がいいな。
「デリシャスキュート双虎ちゃん」
「緑谷、もう少し捻れよ」
隣から苦笑いの瀬呂が見てきた。
「・・・黙れ、瀬呂ドンマイ」
「まるで名前みたいに呼ぶなよっ!凹むわ!」
難しい。
なんか違うな。
「ビューティフル双虎・ザッ・パーフェクト」
「緑谷、それじゃいまいちだと思うぜ。数字とか入れてった方がいいんじゃね。シャレてるぜ」
今度は後ろからブドウがしゃしゃり出てきた。
「・・・数字?」
「自分に関係ある数字を名前の頭とか後ろに付けるのって結構あるんだぜ。緑谷に関係ある数字なら、例えば・・・スリーサイズとか」
「肥やしにされたく無かったら黙ってろ。ブドウ」
「・・・ぶっ殺すぞ、くそブドウ」
「ば、爆豪は交ざってくんなよぉ!」
むむむ。
難しい。
「ゴッデス・フタコ」
「緑谷はなんになる気なんだよ」
今度は斜め前から耳郎ちゃんが割り込んできた。
皆して暇すぎだろ。自分は決まってるからって。
「じゃ、何か良い案頂戴よぉ」
「そういうのは自分で考えるから意味あるんでしょ。なんかないの?ほら、個性にかけるとかさ」
「個性に?」
引き寄せる個性・・・ひきよせー双虎!違うな。
もっとこう、なんだろ、こう・・・・む!
「引き寄せヒーロー、インコ!!」
「ん?よく分かんないけど良いんじゃない?インコって何から?引力とか?」
「いや、うちの母様の名前だけど」
「━━なんでだよっ!」
「え?引き寄せ個性って、母様の個性だから・・・」
「━━だとしても、なんでだよっ!止め止め!」
耳郎ちゃんに却下されてしまった。
折角しっくり来たのに。
「難しい・・・インコで良い気がする」
「あんたのお母さんが苦労するから、止めたげな!」
耳郎ちゃんはケチである。
しかしこうなってくるとますます難しい。
うんうん悩んでいると、ミッドナイト先生が来てくれた。
「お悩み中?少しも希望はないの、緑谷ちゃん」
「希望・・・むぅ。こう偉大さと優雅さと、美しさと可愛さと愛らしさが一目で分かるような、そんな名前が良いです」
「あら、素敵じゃない。でも全部が混じってると、一人の名前としては賑やか過ぎるわ。一つか二つかに絞ってみない?」
一つか二つか。
「じゃぁ、偉大さ可愛さで良いかなぁ」
「それなら昔の偉人の名前をヒントに考えてみてはどうかしら?少しアレンジすれば可愛さも出るわよ」
「おお、なるほど」
「ここに資料があるから、よく見て考えてみてね」
そう言って渡されたプリントには色んな人の名前が書かれていた。ヒントになりそうなのもチラホラある。
これなら大丈夫かも知れない。
「考えてみまーす」
「頑張ってねぇー」
ちょっと本気でやってみますかぁ!
「ニコちゃんが手玉にとられとる・・・!」
「ミッドナイト先生凄いわ」
「・・・前から言おうとは思っていたんだが、僕が間にいること忘れてやしないか、二人とも」
「はーい、無駄話はそこまで。考え終わってる子も自分の名前をもう一度確認しておきなさい。仮とはいえ、その名前が世に出るのよー」
「はーい」
「けろ」
「はっ、はい!・・・・」
それから色々考えて名前が纏まった私は、それを発表ボードに装飾多めで書き込んだ。
名前の回りに私のスター性を表現するため星、可愛さを表現するためのにゃんこがいる。偉大さを表現するために名前に絡み付くドラゴンも必須。
一生懸命書き込んでると、かっちゃんが覗いてきた。
「なに?」
「・・・おまえ、本当にそれにするつもりかよ」
「爆殺王の百倍マシだけど」
怒るかと思ったけど、かっちゃんは眉を顰めるだけ。
認めた訳ではなさそうだけど、評価してる感じでもない。
結局そのまま時間は流れ、ミッドナイト先生の提案で名前発表会が始まった。
一番初めに名前発表したのは、あの謎の金髪転校生だ。
「輝きヒーロー、『I can not stop twinkling.』」
まさかの外国人だった。
しかも短文みたいな名前━━━はっ、あれはヒーロー名か。本名なんて言うんだろ。ジョン?いや、マイケルか。
「短文!!!」
あ、誰かも私と同じ事を思ったみたい。
だよね。そうだよねぇ。
ミッドナイト先生はそんな外国人にもアドバイスしていた。日本語でのアドバイスだったけど。
彼は分かったのだろうか。
それに続いたあしどんは『エイリアンクイーン』と発表したけど、ミッドナイト先生はこれを却下。
私は良いと思ったんだけどなぁ。
あしどんの次は梅雨ちゃん。
発表されたヒーロー名は『フロッピー』。
ミッドナイト先生は勿論、クラス皆から称賛されていた。個人的にもフロッピーは可愛いと思うけど、さっきのエイリアンクイーンが認められなかった事が疑問だ。
何故だ。
続く切島は『烈怒頼雄斗』。
読み方はレッドライオットと言うらしい。
憧れのヒーロー名をリスペクトした物らしい。
良いんじゃないの?分からんけど。
それに続いて耳郎ちゃんの『イヤホン=ジャック』。
阿修羅さんの『テンタコル』。
瀬呂の『ドンマイ』。
「セロファン!緑谷!セロファンだから!見ろ!こっちを!!」
「・・・・・」
「無視すんなぁ!」
尾白の『テイルマン』。
お菓子くれる人の『シュガーマン』。
リベンジあしどんの『ピンキー』。
上鳴の━━━は聞き逃したので分からない。
多分『デンキー』とかそんなだろう。
葉隠の『インビジブルガール』はまんまじゃねぇーか、と思ったのは内緒だ。
百は『クリエティ』。
轟は『ショート』。名前らしい。
常闇、ブドウ、無口さんは分からない。
発表ボードに抜けがあって仕上げに集中してたのだ。
ごめんねぇ。
お茶子が発表しそうになったので仕上げを一旦止め、教卓へと耳を傾ければ『ウラビティ』という可愛い響きが聞こえてきた。ミッドナイト先生からシャレてる!とのお褒めの言葉。
良かったね、お茶子!
私を含めて発表してないのは残り三人。
おおとりを務めたい私はかっちゃん達に先を譲る。
すると眼鏡より先にかっちゃんが前に出た。
「爆殺王」
・・・私にダサいと言われたにも関わらず、小揺るぎもせず欠片も変更しないで発表したかっちゃん。
その呆れるまでの自信、嫌いじゃない。嫌いじゃないよ、かっちゃん。寧ろそういう所、好きだよ。
「そういうのは、やめた方が良いわね」
物の見事にミッドナイト先生から駄目だしくらってるけどさ。
「なんでだよ!!」
再考を言い渡されたかっちゃんを横目に、私は発表してない眼鏡を見た。さっさと出ろや、コラ。というアイコンタクトである。
けれど、眼鏡の様子が少し変だ。なんか悩んでる感じがする。名前を書くだけなのに、何をそんなに悩んでるのだろうか?
少しして眼鏡が教卓に立ち、それを発表した。
眼鏡が発表したのは『天哉』の二文字。
ミッドナイト先生いわく名前らしい。
少し視線をずらしてお茶子を見れば、心配そうに眼鏡を見てた。
ふむ、なんかあるんだろうな。
朝から変な感じしてたから、何かあるとは思ってたけど・・・男女のあれかな!?━━━違うかぁ。
眼鏡の事は取り合えずおいておいて、私はおおとりの仕事を務めるべく教卓へと向かった。
「どうかしら、緑谷ちゃん。良いの考え付いたかしら?」
「むふふ、勿論ですとも」
私は気持ちを込めて発表ボードを教卓においた。
「アルティメットオブにゃんこプリンセスヒーロー!!ラストエレガント双虎・ザ・キュート!!」
「言いたい事は色々あるけど・・・却下」
なんでぇ!!?
それから、かっちゃんと競うように名前を直しまくり、なんとか『ニコ』で勝利を得た。
かっちゃんが『爆殺卿』とかアホな事言ってくれて良かったぜぇ。
どうした、悔しいか?悔しいのんか?
ええ?なんとか言って下さいよぉ!取り敢えずついたヒーロー名が本名の人ぉ!!
━━━あっぶな!爆破すんな!こらっ!