私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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うぇーい。
職場体験編始まってきちゃたぜぇ(*´ω`*)
暗くなるだろうぬぅなぁ、やだぬぅぁ。
もう、あれだよ、ノンストレスで書ける平和が一番やで。


違う違う。私が面倒見られてるんじゃないの。私が面倒を見てるの。分かる?私がっ、面倒を、見てるの、OK?そうだよ、私だよ。━━━なんだってそんな目で私をみるのぉ!違うってば!の巻き

明日に休みを控えた週末。

 

誰もが明日の休みに思いを馳せ、重たいからだに鞭打ってもうひと頑張りする、そんな日。

 

そんな日の、私の放課後。

 

私は皆の前でダーツを手にしていた。

目の前には事務所リストを張り付けた的。

その的の脇を囲むように佇むクラスメート達。

掛かるコールは特になし。

 

そう私は今、皆大好きダーツで職場体験する事務所を選ぶ所なのである。

 

「ニコちゃん、もっと真剣に考えた方がええと思うけど・・・」

「作っておいてなんですけれど、麗日さんに同意ですわ」

 

お茶子達がやんわりと止めてくるが、止める訳にはいかない。これは仕方ないのだ。

もう随分と悩んだ。悩んだのだ。

でも決められなかったのだ。

 

どれも一緒に見えて仕方ないんだもん。

 

一応調べたさ、リストのヒーロー事務所の活動とか。

ちゃんと見たさ、経歴とかランキングとか。

でもね、見たけど、何が良いのか分からなかったんだよ。

 

元から興味が薄かった事もあって、もうさっぱりだった。皆一緒じゃないのん?ん?ってなった。

ヒーローって、そんなに細かく分類する物なの?ん?ってなった。

だから、もうこれで良いのだ。

 

・・・てか、もう悩んでる時間すらないのだ。今日がそれの提出期限なのだから。そして期限切れ直前のラスト放課後なのだから。

 

かっちゃんと同じ所から指名きてたら、それと同じでも良いかと思ったけど━━そんな事なかったし。

なんつったっけ、ベスト・・・ベスト、ジーパンマン?

 

取り合えず真剣さをお茶子に見せる為に、出来るだけ真剣な顔をしてお茶子の肩に手をおいた。

 

「お茶子、私は真剣に投げる。だから大丈夫」

「一つも大丈夫な所ないんやけど」

 

皆に見守られる中、ダーツを構えた私は魂をそこへと注ぎ込んだ。

 

そう、これは運命力を試される試練。

手を抜く事なんて出来やしない。

誰でもない、自分との戦い。

 

楽な所になるか、厳しい所になるか。

いざ、勝負!!

 

 

「砕け散れ、グングニル!!」

 

「砕いたらあかん!てか、ダーツ一発にどれだけ気持ち込めてん!?」

 

 

お茶子のツッコミと共に手元から放たれたダーツは真っ直ぐに飛んだ。

空気を切り裂き、音を置き去りにした━━━感じがするほど気持ちよく飛んだ。

 

そしてトン、と突き刺さる。

 

「梅雨ちゃん、かもん!」

「本当はちゃんと選んで貰いたいんだけど、これも悩んだ末に出した結果というなら仕方ないわね」

 

ダーツが突き刺さったリストを取り、梅雨ちゃんがそれに目を通し━━━何故か言葉を詰まらせた。

どうしたのかと見ていると、私以外の女子ーずに集合を掛けて協議が始まった。

 

そんなに微妙な所飛んだの!?

 

「・・・けろ。緑谷ちゃん、また大変そうな所を射ぬいたわね。そもそもこの事務所に選ばれていたのが驚きだわ」

「事務所の方もあれだけど、ここだと・・・でしょ?一緒にするのはどうだろ。少しマジくさいんだよねぇ」

「ニコちゃん、また凄いとこ射ぬくなぁ。持ってるわぁ、ある意味」

「━━というか、こんな凄い事務所に選ばれているのに本人にはまったく響かず、結果ダーツで決まるというのがなんとも言えませんわね」

「最近、緑谷は嵐そのものなんじゃないかなって思う時があるわ、あたし」

「ドッキドキだねーこれはっ!」

 

不穏な話し合いが聞こえる。

ど、何処に決まったの、私・・・!?

 

「うーーーかっちゃん!」

「ちっ、なんだって俺が・・・」

 

調べてくるようにかっちゃんにGOサインを出したら、文句を言いながらも女子ーずの囲みを破って見に行ってくれた。

そういう空気を読まないとこも良いよ!それでこそかっちゃんだ!!

 

 

「そんな事言ってしっかり行く爆豪。ナニあれ、面白い」

「刺激するなよ瀬呂・・・どうなっても助けないからな」

「いつもの事ながら、尻に敷かれまくってるな爆豪。ある意味で男っつーか。━━あれ、っかしな、なんか涙出てきた」

「幼馴染とイチャイチャと、く、妬ましい・・・!」

「ぶれねーな峰田。まぁ、気持ちはわかっけど。彼女とか欲しーなぁ」

 

「「「出来たらいいな・・・」」」

 

「「ちっとは心込めろ!」」

 

 

男子がガヤガヤするのを眺めながら結果報告を待っていると、かっちゃんが突如リストを爆破した。

 

何してやがんだぁ━━━てめぇはよぉ!!

 

「かっちゃん!!何しよっとじゃぁ!!プリント無くしたら、私が怒られるじゃんか!!てか、今から提出しなきゃいけないのにぃ!!」

「るっせぇ!!勝手に怒られてろや!!」

「なにぉぉぉ!!その時は貴様も道連れだ、おらぁ!」

 

虎の構えでかっちゃんと対峙していると、女子ーずが間に割って入ってきた。あしどんと葉隠、耳郎ちゃん三人かがりで連行されるかっちゃん。

反対に私の方にはお茶子と梅雨ちゃん、百がきた。

 

百が手のひらからさっきと同じプリントを個性で作ってくれて、一つの場所を指差してくる。

 

「緑谷さん、貴女が射ぬいたのはここですわ」

「しれっと、全部暗記しとるの凄い・・・」

「本当ね。でも今はそこじゃないわ、お茶子ちゃん」

 

指差された所を見ると何処かで聞いた事あるような名前があった。

 

「エンデヴァーヒーロー事務所?」

 

どこだっけ、ここ?

 

「エンデヴァーヒーロー事務所?本当か、緑谷」

 

首を傾げてたら紅白饅頭が交ざってくる。

そしてプリントを見て顔をしかめた。

 

「あの、クソ親父・・・」

 

おぅ、なんかヤバイオーラ出とる。こわっ。

紅白饅頭となんか関係あるの・・・・あっ、エンデヴァーってあの時のメラメラガチムチ、顔が似てない事に定評のある轟パパ、通称ハゲのことか。

なるほど、なるほど。

 

「轟もここなの?」

「あ、あぁ。・・・まぁな。あれでもランキング2位のヒーローだ。人間としてはあれだが、ヒーローとしてなら何か学べる事があると思ってな」

「そっか」

 

もう一回選び直すのもあれだし、一人ならまだしも紅白饅頭もいるなら別に良いか。

 

「うん、決めた。私もここにする。よろしく、轟」

「・・・良いのか?」

「?何に対するやつか知らないけど、良いから言ってるんだけど?色々とフォローよろ」

「分かった━━━━そういう事だ、爆豪」

 

おう、何故にかっちゃんに確認とった。

 

「っざけんなっ!!おい、馬鹿女!!てめぇは俺んとここいやっ!!」

「いや、指名来てないんだから、いけないんだってば」

「━━なっ、ぐっ、うぐぅ、ちっ!ならてめぇと俺の指名事務所の中で被ってる奴を━━━」

 

 

 

「━━━━わわっ、私が!!独特の姿勢で来た!!」

 

かっちゃんが怒鳴り声をあげると同時に、教室のドアが開きガチムチが現れた。

突然の事にクラスが静まり返る。

 

「あ、オールマイトや!」

 

お茶子の声にみんながやっとガチムチを認識してザワザワする。

 

「あ、驚かせてごめん。A組の少年少女。ちょっと良いかな?」

 

慌てた様子のガチムチが教室の中に入ってくると、かっちゃんが女子ーずの拘束から抜けだし、しかめっ面で私の前に出てきた。

ちょっ、邪魔。ガチムチが見えないんだけども。

 

「んだ、オールマイト。まさか、馬鹿女に用がある訳じゃねぇよな・・・!」

「え!?いや、え、うん。実はね、君に新たに指名が来てるんだ。爆豪少年。その事で、ちょっとね・・・なんか手違いがあったというか、うん。そのね、ちょっとおいで」

「はぁ?」

 

指名数一位のかっちゃんに今更な話だ。

それにかっちゃんはもう職場体験の事務所を決めてる。

そうこうしてる内にオールマイトの小脇に挟まれたかっちゃんは、教室から連行されていった。

 

「・・・ひとさらいって、ああいうのを言うのかな?」

「オールマイトも先生だ。大丈夫だろ」

 

紅白饅頭はそう言うけど、ガチムチはガチムチだしな。

男の子なんて大好物だろうし・・・かっちゃんのお尻が心配だな。

 

「ま、かっちゃんの無事は神のみぞ知るって事でおいておいて、取りあえずプリント提出してこよっかな」

「・・・それなら、俺も一緒に行くか?同じ所だし、何か言われるかもしんねぇからな」

「うん?まぁ、よろしくぅ?」

 

 

 

「きゃー!何か始まる予感ー!アオハルが吹き荒れてるよー!」

「ニコちゃんが、ニコちゃんが・・・あわわ、爆豪くん!どないしよ!」

「爆豪・・・荒れるだろうなぁ。こっちにとばっちりこないと良いけど」

「けろっ。耳郎ちゃん、爆豪ちゃんと席お隣だものね」

「心配ですわ、色々と」

「あはは、こうなったらなるようになれだよね?」

 

紅白饅頭とプリントを提出しにいったら、包帯先生に珍獣を見るかのような視線を向けられた。

なんか「爆豪とじゃないのか?」とか言われた。

 

おう、どういう意味なん?

さっきから。

 

紅白饅頭といい、包帯先生といい。

まるで私がかっちゃんに面倒見られてるかのようじゃないか!!しっつれいなぁ!

 

プンスコだよ、あたしゃ!!

プンスコぉぉぉ!!

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「おいっ!放しやがれ!オールマイト!!」

 

 

暴れる爆豪少年を小脇に抱えながら、思わず溢れそうになる溜息を飲み込む。

 

「すまない、爆豪少年。これも、私の不手際でな。出来れば、私の手で処理したかったんだが、先方がもう、なんか、凄いやる気で・・・」

「━━っ?なんの話だ」

 

 

 

 

 

始まりは今日のお昼。

胃を摘出してしまった私に食事の時間はあまり必要ない。基本的に消化がよく栄養価の高いゼリーを流し込み、余った時間を読書に充てるのが日課だったのだが、その日はそうならなかった。

 

「あ、爆豪くんに指名来てますよ」

 

そんなセメントスの言葉を聞いて、私は読み掛けの『すごいバカでも先生になれる!教育者に大切な108の法則』を閉じて、セメントスが眺めるパソコンを覗いた。

 

「聞いた事ない名前ですね」

「ん?何処だい」

「ここですよ。届いたのは一昨日だったみたいなんですが、爆豪少年の指名が多かったから見逃してたんですね」

「まぁ、時期がズレれれば漏れてしまうのも仕方ないさ。しかし、競争の激しそうな爆豪少年に、遅れて指名を送ってくるなんて誰が━━━━」

 

セメントスが指すそこの名前を見て、息が止まった。

あの懐かしき青春の日々がフラッシュバックし、その体験を思い出した体が震えに襲われる。

 

「ど、どうしたんですか、オールマイト」

「いや、すまない。少し、昔を思い出して」

「見たことないくらい怯えて見えるんですが、もしかしてこの事務所をご存じなんですか?」

「事務所というか、この事務所を経営してるヒーロー。私の先生だった人でね」

「オールマイトの?!それは雄英の━━━」

 

そこまで言ってセメントスが首を傾げた。

 

「━━━いや、それにしては聞いた事のない名前ですね。グラントリノ?」

「この人が先生だったのは一年だけだったからね。知ってる人の方が少ないさ」

「そういう事ですか」

 

 

冷や汗を流しながら昔を思い出して話してると、携帯電話が鳴り始めた。嫌な予感しかしない。

 

「オールマイト、鳴ってますよ」

「う、うん。ちょっと出てくるよ」

 

廊下に出てけたたましく鳴る携帯電話の画面を確認すれば、予想していた名前がそこにあった。

無い筈の胃のチクチクとする痛みに耐えながら画面をタッチすれば、元気な老人の声が響いてくる。

 

「おう、俊典!元気にしてたか!相変わらず無茶してるそうじゃないか、ええ?聞いたぞ、後継を決める気になったんだってな」

 

遠慮のない言葉に、また無い胃が痛んだ。

 

「お、お久しぶりです。グラントリノ。お元気そうで何よりです。その話は誰に・・・」

「おう?なんだ、覚えてたのか、俺を?はははっ!ちっとも連絡寄越さねぇから、すっかり忘れてやがんのかと思ってたぞ!後継の話はナイトアイの坊主からだ。随分と納得してねぇみたいだったな。俺からも文句言えとよ。ま、そんな話はどうでもいい。それでな、見たぞ体育祭。あいつだろ。面白い奴見つけたじゃねぇか 」

 

グラントリノには見当がついたようで、一気に捲し立てるように言ってきた。

 

「ま、まぁ。逸材ではあるのですが、まだ心の準備が出来てないと言いますか、その、性格や本人の気持ちを尊重する事にしまして、考え直してる所で・・・」

「あ?聞こえねぇな?わりぃな、最近耳が遠くてな。なんだって?」

 

私は少し息を吸い込み、声を張り上げて返す。

 

「ですから━━━」

「ああ、それでな、見たぞ体育祭!あいつだろ、面白い奴見つけたじゃねぇか俊典!」

「━━━それはさっき聞きました!ですから━━」

「俺に預けろ!アレはまだ渡しちゃいねぇみてぇだが、いずれ渡すんだろ。なら、徹底的に鍛えて下地を万全にしてやるよ」

「━━━いや、ですから!」

「俺の個性と近しいもん持ってるしな!鍛えがいがあるってもんだ!」

「グラントリノ!聞いてますか!?」

 

どんどん進んでいく話に悲鳴をあげたが、グラントリノは笑うばかりで全然聞いてる様子がない。

弱りきっていたのだが、話の流れにおかしな所があるのに気づけた。私は新たな嫌な予感に襲われながら、それを尋ねてみる。

 

「あの!グラントリノ!先程近しい個性と聞いたのですが!彼女は!」

「はぁぁ?何、ワケ分からん事言っとるんだ、お前は。いきなり誰の話してだ。ありゃどうみても男だろうが。体がぶっ壊れてんのは知ってるが、ついに頭までイカれたか?ん?━━━いや、おめぇは割と最初からイカれてたな。あの志村からお墨付き貰ってたもんなぁ!はははっ!」

 

更に膨らむ嫌な予感。

なにか大きな勘違いがそこにある気がした。

 

「あのですね!グラントリノ!」

「おう、そんじゃ待ってんぞ!しっかり俺んとこ呼べよ!あの━━━━爆豪って跳ねっ返りをよ!」

 

違うっ!

そっちじゃない!

 

そう叫ぼうとしたのだが、直ぐに電話が切れてしまう。

何度かかけ直してみたものの全然繋がらない。

グラントリノの事務所の電話は昔ながらの黒電話。留守電すら存在しない。

 

 

「・・・どうしよう」

 

 

 

 

 

 

結局、私は爆豪少年に事情を話し、なんとかこの話を引き受けて貰えないか説得する事にした。

グラントリノはヒーローとして優秀で学ぶ事はきっと多い。一流のヒーローになりたい彼にも悪い話では・・・きっと悪い話ではない筈なのだ。

 

そうして拐うように爆豪少年を連れてきたのだが、既に後悔に心は満ちていた。

だって、小脇に抱えた爆豪少年の目が反抗心に満ち満ちているんだもん。どうしよう。

 

爆豪少年を説得する為の言葉を考えながら、ゆっくりと話を出来る場所を探して、私は廊下を進んだ。


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