私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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眠い・・・疲れた・・・(´・ω・`)
あ、あれが、るーべんすの絵・・・?

言うほど、ええもんちゃうがな・・・がくっ・・・・・。

・・・絵画より、漫画絵のが好きやで・・・がく。


誰にだって間違いはある。だからそれを責めてはいけない。明日は我が身。寛容な気持ちで許しを与えるのだ。・・・うん?そうだよ、だから許せ!あれがお前のもんだとは知らなかったのだ!御馳走様でした!の巻き

ガタンガタンと揺れる電車の中、私は紅白饅頭と隣の席に腰掛け、反対側に座るおっさんのバーコードを見つめていた。おっさんがバーコードの乱れを気にしてたりするが、それは関係ない。目の前にあるからただ見てるだけなのだ。直すな、直すな。

 

イケメンとの隣合わせ。人によっては月9とか少女漫画とかにある甘い空気が漂わせる人もいるかも知れないがここにそれは一切ない。寧ろ犯人見つけた刑事ドラマのような一触即発しそうな緊迫した雰囲気だけが漂っていた。

どうしてかと言えば、それはもう完全に私が原因だ。

訳あってこうなっている。

 

どこか戸惑う紅白饅頭を他所に、私はマグマのように煮えたぎる感情を外に出さないように心掛けながら、朝のクソかっちゃんの顔を思い出していた。

 

「次あったら、ぶっ飛ばす・・・」

「さっきから言葉と感情が、隠せないレベルで身の内から溢れてるぞ。緑谷」

 

流石の天然記念物な紅白饅頭でも私の気持ちが分かるのか、そっと駅の売店で買った飴を差し出してきた。

怒ってる時に甘いものは良い。とても心が和む。

いいよ、紅白饅頭。その気遣い、流石エリートだ。

 

貰ったそれを口に放り、一舐めすることなく噛み砕いてやった。憎しみを込めて。

そしてやっぱり腹は膨れないし、イライラも依然治まらない。

多分一袋全部食べきったとしても、まだイライラしてると思う。

 

それでも甘い物をくれた事は感謝している。

だから感謝の言葉を返しておいた。

 

「ごち」

「・・・ああ、気にすんな。少しはマシになったか?」

「次あったら、ぶん殴りまくってやる」

「一つも改善されてねぇな」

 

治まらぬ怒りを覚えながら、朝のかっちゃんを思い出す。

ムカつくの一言しか浮かばない。

 

「ふん」

 

もう知らぬ、あんなやつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

包帯先生に希望体験先のプリントを提出してから暫く。

漸く職場体験、当日となった。

 

 

「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするな」

 

「はーい!!」

「あいあいさー!」

 

「返事は伸ばすな、『はい』だ芦戸。緑谷、元気があるのは結構だが、返事くらいまともにしろ」

 

コスチュームを持った雄英一年A組一同と私は駅構内で包帯先生から注意を受けていた。皆それぞれ行く場所が違うため、包帯先生が今回の事で皆にネチネチ説教出来るのはこれが最後の時間だ。そのせいか、かなりの気合いを感じる。

 

 

なんか凄く視線を感じるけど、気のせいだろう。

あの、包帯先生あんまし見ないで。

 

 

包帯先生のありがたい話を聞いていると道行く人から雄英の子だと手を振られる。どうせ手を振るなら体育祭一位のかっちゃんが嬉しかろうと、かっちゃんの手首を掴み無理矢理手を振り返してあげると倍くらいになって返ってきたりした。

 

意外と人気あんのね、かっちゃん。

 

 

 

「・・・はなせやっ」

 

 

 

ぺしっと、雑に手を離された。

いつもなら睨んできたり罵倒くらいされるのに、今日も何もない。

離されて、それで終わりだ。

 

 

この所かっちゃんはずっとこう。

何処かそっけないというかなんというか、暑苦しいまでのいつものやつがない。

 

「怒ってんの?」

「なんで俺が怒らなきゃなんねんだ、ボケ」

 

怒ってないっていうのに、ずっとこんな態度をとってくる。

かっちゃんがそっけなくなったのは職場体験場所を決めてからだ。休み明けにはもうこうなってて、ご機嫌とりに色々やったけど全然駄目。

何かあったのは分かるけど、何も言ってくれなくてこれだから、正直なんなんだこいつと思わずにはいられない。

 

 

むぅ、気に入らぬぅ。

 

 

イライラしながらかっちゃんを見てると肩をつつかれた。顔をそちらに向ければ、梅雨ちゃんが少し焦った様子で別の場所を指差している。

 

なんじゃろと思ってそこへと向けば、髪の毛がワサァってなってる包帯先生がいた。

 

 

「聞いてるのか、緑谷ァ」

「はっ、はい!聞いておりました!」

「今の話は大体お前に聞かせるつもりで言ったんだが・・・聞いてたんなら、ちゃんと理解出来たという事で良いな? 」

 

はい、と言ったら地獄を見る気がした。

はい、と言わなくても地獄を見る気がするけども。

 

私は明確な答えを出す事を避け、曖昧に理解してますけど?といった視線を包帯先生に返す。

すると包帯先生は溜息をついた後「轟、今回はお前がなんとかしろ」とまるで紅白饅頭が私の世話係であるかのような事を言ってきた。

 

温厚な双虎にゃんも、これにはご立腹だよ。

 

「出来る限りは」

 

紅白饅頭も紅白饅頭で返事するんじゃないよ!

この野郎共!

 

「━━━はぁ。まぁいい。いいかお前ら、くれぐれも、先方に失礼のないようにな。じゃぁ行け」

 

説教をし終えて満足したのか包帯先生からGOサインが出た。皆それぞれの場所へ向かい歩を進める。

そんな中、相変わらずお茶子が眼鏡を心配そうに見てたので一緒に声を掛ける事にした。

 

「眼鏡!」

 

そう声を掛けるとゆっくりと歩んでいた足が止まった。

その背中に、お茶子が声をあげる。

 

「飯田くん!横から色々言われんの嫌かもしれんけど、これだけ覚えておいてな!何かあったらゆうてきて!私、話ぐらいしか聞けんし、何か力になれるとは思えんけど、話すだけで楽になるときもあるやろし・・・」

 

尻窄みなお茶子の言葉に、眼鏡は振り返って「ああ」と力のない笑顔を返してきた。

それはいつもの眼鏡とは思えない、酷く頼りなくて弱々しい物で、お茶子はそれを見て心配そうに顔を歪める。

 

それでもその立ち去る背中に掛ける言葉がなかったのか、お茶子はただ俯いて私の手を握ってきた━━━ので、ポケットから朝買っておいたカロリーをメイトするアレを取りだし、力一杯眼鏡の後頭部に投げ込んでやる。

 

スコーンと良い音が鳴った。

 

びっくりするお茶子と、眼鏡がずり落ちた眼鏡の視線が私に突き刺さる。

 

「ニコちゃん!?」

「った、な、いきなり何をっ!」

 

「喧しいわ。お茶子がこう言ってんだから『分かりました、慎んでご連絡差し上げます』くらい言え。何格好つけてんの、そんなにイケメンでもない癖に」

 

眼鏡が眼鏡をかけ直した。

 

「いや、格好をつけたとか、そうでは・・・」

「つけてる、つけてる。ほら、見てみ。お茶子もつられてシリアス顔になってんじゃん。死ぬほど似合わないのに」

 

「ニコちゃん!それはあんまりや!」

 

お茶子が頬を膨らまして怒ってきた。

そうだよ、お茶子はそうじゃなくちゃね、可愛いよ。

私はプンスコお茶子をなだめながら、眼鏡に視線を戻した。

眼鏡は少しだけ固さが抜けた顔に戻っていた。

 

「━━━何かあったら言いなよ。私もお茶子もちゃんと話聞いてあげるから」

「それは・・・」

「言いたくないのは分かってる。でもね、だから私らの勝手な気持ちも聞いといて。心配してる。あんたが思ってるよりずっと・・・お茶子が」

 

「私だけなん!?」

 

いや、まぁ、他にも何人かは気づいてるとは思うけど、流石にお茶子ほど心配してる人はいないと思うよ?なんやかんや皆の認識はしっかり者の眼鏡委員長だし。

あたふたするお茶子の頭を撫でながら、私は話を続けた。

 

「何を考えて何をしようとあんたの勝手だけど、そんな顔してれば心配する人がいるって事忘れないでよ。それとも、そんなの少しも関係ないって?」

「・・・そんな、事はない。だが、僕は━━━━」

 

それだけ言うと眼鏡は逃げるように行ってしまった。

お茶子の気持ちの一欠片でも分かってれば良いのだけど。

 

「・・・ニコちゃん、ありがと」

「なんも、してやれてないよ?」

「ふふ、そうかもしれんね。でもね、ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

お茶子達と別れた私は待たせてある紅白饅頭と合流した。相変わらずのボーっとした顔である。

 

待たせたかなと思ってごめんねしたけど、コンビニで買い物する時間が欲しかったらしく、丁度良かったと相変わらずのボーっとした顔で言ってきた。

本当、何考えてんだろ、こいつ。

 

自分達が乗る路線を目指して歩いていると、かっちゃんを見掛けた。丁度改札を通る所だったので全力で声を掛けた。すると「うっせぇぞ馬鹿女!」といつものテンションの返事が返ってくる。

 

最近何をいっても軽く流されていたので、その反応はちょっと嬉しかった。

かっちゃんはこうでなくてはね。

 

「一人寂しくどこ行くのー?なんなら私もついてってあげよっか?」

 

折角返してくれたのでサービス気分でそう言うと、もの凄い怖い顔で睨んできた。

思わず私でもびっくりするレベルのそれで。

 

「━━━絶対ぇついてくんな!」

 

拒絶するような言葉を吐いたかっちゃんはそのまま改札を抜け人混みに消えていった。

 

あろう事か一回も振り返る事なく。

 

それ以上何も言わず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

爆豪の姿が消えていった方を眺めたまま、何も言わず黙りこくっている緑谷の姿が心配になった。

 

 

「緑谷・・・大丈夫か?」

 

 

思わずそう声を掛けた俺だったが、直ぐに後悔した。

そんな事を聞かなくても、大丈夫でない事が手に取るように分かる表情をしていたからだ。

 

頬を膨らませた緑谷。

それは子供がやるような可愛い物ではなく、頬に怒りでも詰まっているかのような迫力に満ちたものだった。

眉間によったしわ、目の鋭さ、漂わせる剣呑な雰囲気。

何をとっても分かりやすく怒っていた。

 

どうしてこんなに怒っているのか、俺には分からない。

 

長い付き合いのある爆豪の拒絶が効いたのか。

それとも暫く放置気味にされてたストレスがここにきて爆発したのか。

あるいはその両方か。

それとももっと別な理由か。

 

兎に角、緑谷は怒っていた。

 

 

 

「なに、あれぇぇ!!むっ、かつくぅぅぅぅ!!!!」

 

 

 

そうしてこれから1週間、この緑谷と共に過ごす事を考えて少しだけ頭が痛くなった。

 

覚えておけ、爆豪。

 


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