私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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アイスの美味しい季節ですね。
お陰で食べ過ぎて、お腹がポチャポチャしてきました。

あははっ。

ダイエットしねぇとなぁ・・・(´・ω・`)



迷っても間違っても大丈夫。気づいた時にやり直せば、それで良いよ。前向きに行こうよ、ね?━━━え、うん?何かしたのかって?ええ?疑うとか酷くない?違うって!本当に何もしてないからぁ!今回はぁ!の巻き

立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。

国を傾けるのなんてお茶の子さいさいな儚く美しい珠玉の超絶美少女、美しいという言葉の体現者であるそんな私は、緑谷双虎15歳、皆大好き美人過ぎる女子高生だ。

 

ドキドキワクワクの職場体験、今日は遠くに出張活動。向かう先は保須市っていう、微妙に栄えた街なの!

でもでも、ハゲの車で保須についたまでは良かったんだけど、そこからがさぁ大変!なんと保須には、野生の脳味噌丸だし生物が生息していたのだ!しかも三体!

 

世紀の大発見に双虎にゃん写メ連写。

 

急いでブログにあげねば!うひょーアクセス爆上がりー!・・・ん?よく考えたら、面倒臭くてブログなんてそもそもやってなかった。

━━━うわ、じゃいらね。

 

「一応残しとけ」

 

消そうとしたら地味に轟に止められたので、一応残しておく事にした。けーさつさんに高値で買い取って貰えるのかも知れんしね。

あったま良いね、流石エリートは違うぜぇ。

 

「まさか、以前雄英に現れた化物の仲間か・・・!」

 

ハゲが窓の外に見える脳味噌生物を見て舌打ちした。

あれの厄介さについて何処まで知ってるか分からないが、何かしら情報を得てるように見える。

 

やっぱりこのハゲ、仕事だけは出来るな。

仕事だけは。

 

あ、やべ。なんか睨まれた。

目は口ほどに物を言うと言うしな、目逸らしとこ。

 

「口から漏れてるぞ、緑谷」

「OH!れありー?」

 

「白々しいコントをするな!」

 

鋭いツッコミを入れたハゲはサイドキック達に指示を出し始めた。民間人の避難誘導を優先しつつ、脳味噌生物の捕縛をするようだ。

サイドキックのお姉さんは残るのかと思ったのだが、ハゲが俺一人で十分だと言うので避難誘導する為にドナドナされていった。「ショートくぅぅぅん」という捨て台詞で私ではなく轟狙いだった事が発覚。ハゲの形相から、後で灸が据えられることだろう。

南無。

 

「焦凍!緑谷双虎!お前達は俺の後をついてこい!オールマイトなど目ではない、最高峰の捕物を見せてやる!!」

 

そう言って脳味噌生物に向かって歩き出すハゲを横目に、私はポケットから発目から貰っておいた秘密兵器を取り出す。電源を入れれば小さいモニターの中に光の点がついた。

 

「緑谷、何してんだ」

 

私の様子を隣で見てたのか、轟が声を掛けてきた。

こやつになら教えても良かろう。

 

「発目のベイビー第35子『泳がせて捕まえろ追跡くんβ』だけど?」

「発目って体育祭の時のサポート科か?」

「そっ。体育祭から私のサポートアイテム開発に付き合って貰ったり、作ったベイビーのモニターになったり、色々しててね。これもその一つ」

 

私のヒーロースーツは最初に貰ったやつをベースにしてるけど、付属してるアイテムはいまや殆どが発目作のやつだ。私専用の装備満載である。

 

「てか、名前すごいな。なんの道具か直ぐに分かったぞ。それで何を追い掛けてんだ」

「眼鏡。こんな事もあろうかと、発目に頼んで発信器を仕込んでもらってましたー」

「飯田か?」

「そっ」

 

何かやらかしそうな顔してたので、変な事しようとした時に直ぐに殴りにいけるよう、眼鏡のヒーロースーツに発信器を埋め込んでおいたのだ。

 

これがあれば百キロ先からでも居場所が手にとるように分かる。トイレにいようと、お姉ちゃんと楽しくお酒が飲めるお店にいようと、エッチなお店に入ってようと、直ぐに居場所を割り出せる。

プライベートなんて欠片もなくなる優れものなのだ。

むっつり眼鏡、貴様のお楽しみを邪魔してくれようぞ。

 

「━━━ま、そんな訳だから、私はハゲの約束を守って撤退するから。よろしく」

「まて、どんな訳だ」

「最初に言われたでしょ?自分で危ないと思ったら逃げとけって。それをするからって話」

「・・・それで偶然、飯田の所に撤退しに行く気だったんだな。よくそういう事をポンポン考えつくな。今すぐじゃなきゃいけないのか?」

 

轟の言葉は間違ってない。

こんな状況だ。優先すべきは目の前の脳味噌生物だろう。

 

「私もそう思ったんだけどね━━━眼鏡のいく方角がさ、今の騒ぎが起きてる方向とは逆だったんだよね。今は進んだ先でワチャワチャ動いてる」

「どういう事だ」

「さぁね。でも、こんな状況で一向に騒ぎのある方向に行こうとしてないなら、考えられるのは避難誘導してるのか救出活動してるのか━━━何かと交戦しているのかくらいしか考えられないと思うけど?」

「・・・!」

 

せせこましく狭い範囲を動き回る反応を見れば、避難や救出活動をしてるようには思えない。

となれば、何かと交戦している可能性のが大きい。

眼鏡のいる方向から騒ぎが起こってないのを考えると、派手に動いてる脳味噌生物が相手とは考えられない。

 

なら、多分、そういう事だ。

 

「━━━━━最悪の場合、相手はヒーロー殺し『ステイツ』・・・」

「飯田を国と戦わせるな。ステインだ、ステイン」

「そうとも言う」

「そうとしか言わない」

 

呆れたように眉を潜めた轟は「分かった」と一言言うと、ハゲへと声をあげた。

 

「親父、友だちに何かあったみたいだ。俺は緑谷とそっちにいく。後で位置情報送るから、そっちが済むか、手の空いたプロがいたら応援頼む」

「はぁぁぁぁ!?どういう事だ、焦凍!!?」

「友だちがピンチかもしれねぇって話だ。━━あんたなら、すぐ解決出来んだろ。応援頼む」

 

追跡くんの反応に従い道を曲がった私に轟もついてきた。轟がついてきたのも意外だったが、私が被る筈だった泥を被った事も意外だった。

こういう事をする奴だと思ってなかったから。

 

「まてぇ!今サイドキックを━━━焦凍ぉぉぉぉ!!」

 

「いいの?叫んでるけど」

「放っておけ。それより、反応は何処にある」

 

背中にかかるハゲの声を無視してモニターに視線を落とし確認する。

反応が間違ってなければ、私なら5分と掛からない場所だ。

 

「このまま東に向かって、二つ目の交差点過ぎた所にある路地入ったとこ」

「分かった、急ぐぞ」

「言われなくても━━━てか、ちょっと先行ってくる!」

 

モニターを轟に預け、私は引き寄せる個性で低いビルの屋上へと飛ぶ。

最近特訓の末、地面だとか壁だとかを対象にしても出力が安定してきたので、こんな事も出来るようになったのだ。

流石、私様だよね!

 

「緑谷!!先行くな!!」

 

私は轟の声に任せとけとガッツポーズを返し、眼鏡のいる方向へと向けて引き寄せる個性を発動した。

 

馬鹿な事してる眼鏡の横っ面を叩きにいくために。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

鼻先を通りすぎる斬撃。

踊るように揺れる赤い巻物。

 

それはまるで風を相手にしてるかのような、掴み所のない動きだった。

 

「ハァ・・・未熟。相手をするのも馬鹿らしい」

 

溜息と共に吐かれた言葉に、僕の中にあった燻っていた感情に熱さが加わる。

 

「馬鹿らしいっ、だと!!何が、馬鹿らしいんだ!!犯罪者ぁぁぁ!!」

 

刃を潜り抜け蹴りあげた。

けれど手応えがない。

またかわされたのが分かる。

 

「インゲニウム━━━ハァ、兄弟か━━━」

 

頭上から掛かる声に脳が熱くなる。

その名前を語られる事すら許せない。

 

「お前がっ、兄の名を語るな!!」

 

そう顔を上げれば、ステインの金属に覆われたブーツが視界に入った。振り下ろされるそれが、酷く遅く見える。

 

「奴は伝聞の為、生かした。おまえは・・・その価値すらない」

 

鈍い衝撃と刺さるような痛みが腕に走った。

思わずステインから目がはなれ、体勢まで崩れる。

 

その直後、後頭部に衝撃が走った。

 

「弱いな」

 

気がつけば体は地面へと叩きつけられ、無傷だった反対の腕に刃が突き立てられる。

痛みに意識が飛びそうになったが、身の内から湧き上がる感情がそれを阻止した。

 

「おまえも、おまえの兄も弱い・・・贋物だからだ」

 

ステインから吐かれた言葉に熱くなっていた脳が更に沸騰した。

 

「黙れ、悪党・・・!!」

 

何が分かる。

 

「脊髄損傷で下半身麻痺だそうだ・・・!もうっ!ヒーロー活動はかなわないそうだ!!」

 

ベッドの上で僕に笑う兄さんが忘れられない。

無理して笑う兄さんがどんな気持ちなのか。

考えただけで、気が狂いそうだった。

 

「兄さんは、多くの人を助けて導いてきたっ!立派なヒーローなんだ!!」

 

ずっと見てきたんだ、応援してきたんだ。

誰かの為に、頑張る兄さんの姿を。

 

「おまえが潰していい理由なんて、ないんだ・・・!」

 

誰かの為になる事を、うれしいと笑える。

そういう人なんだっ。

 

「僕のヒーローだ・・・僕に夢を抱かせてくれたっ、立派なヒーローだったんだ!!!」

 

それをおまえがっ、おまえがぁ!!

 

「殺してやる━━━!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつを━━━まずは助けろよ」

 

突然のステインの言葉に、僕は今まで忘れていたヒーローの姿を思い出した。僕がステインに気づく切っ掛けになった、最初にステインと交戦し、そしてやられたヒーローの姿を。

 

「自らを顧みず、他を救い出せ。己の為に力を振るうな」

 

脳裏に兄さんの姿が過った。

誰かの為に頑張る、兄さんの姿が。

 

「目先の憎しみにとらわれ、私欲を満たそうとなど・・・ヒーローから最も遠い行いだ・・・ハァ」

 

誰かの為になる事を、うれしいと笑う兄さんが。

 

 

 

 

 

 

「だから、死ぬんだ」

 

背筋に悪寒が走ったかと思えば、体が急に動かなくなった。

理由は分からない。

けれど、今だ身動きをしない先にやられたヒーローの事を考えれば、ステインの個性である可能性が高い。

 

ならば、もう何も出来ない。

 

目の前に仇がいるというのに、こんな事を言わせてしまって、僕はもう━━━━。

 

 

「じゃぁな。正しき社会への供物」

 

 

ふざけるな。

何が供物だ。

何が正しき社会だ。

 

「黙れっ・・・黙れ!!何を言ったっておまえはっ、兄を傷つけた犯罪者だ!!」

 

 

振り下ろされる刃が━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━っ!!?なんだっ!?」

 

 

━━━━突然、刃が宙を舞った。まるで何かに釣り上げられるように。

直後、その光景に覚えのあった僕の脳裏に、彼女の姿が浮かんだ。

 

 

 

 

僕を心配していると、そう言ってくれた彼女の姿が。

 

 

 

 

ステインの顔が歪んだ。

真上から振り下ろされた彼女の拳によって。

 

ふらついたステインの顔面に、続けて放った彼女の回し蹴りが突き刺さる。

蹴りの衝撃に転がるよう地面を滑っていくステイン。

 

そんなステインに彼女は中指を立てた。

 

 

「私の手下その1になにしてくれてんだ、ああん?」

 

 

ヒーローとは程遠い言動。

彼女はこんな時でも彼女のままだった。

不良で不真面目なトラブルメーカー。

A組きっての問題児。

 

 

けれど僕は、その彼女の背中に、ずっと遠くになってしまった兄さんの影を見た気がした。

 

 

彼女は笑って僕を見る。

いつもの屈託ない笑顔で。

 

「やほ。眼鏡、生きてるか・・・・眼鏡っ!?」

 

返事を返そうとしたが、彼女は地面に落ちてる割れた眼鏡の前で跪いた。

そして悔しそうに地面を叩き言う。

 

「遅かったか・・・!!」

 

 

「よくこんな時にボケられたものだな!!」

 

 

思わず突っ込んだ僕は悪くないと思う。


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