私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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毎回毎回、書くことなんてないよ!

眼鏡の最後の活躍ポイント
もうすぐ終わりだぉ(*ゝ`ω・)


間違っていても行き着く所までいったら綺麗に見えるから不思議。例えば、ほら、見てよ私が研きまくった泥団子。凄くね?ピカピカよピカピカ。なんだろ、ちょっと良くね?買わね?五千円でいいよ!の巻き

私と代わるようにのーれんず飯田が加わり、ボロ雑巾ことヒーロー殺しとの熱き戦いは、より過激な物に変わっていった。

 

のーれんず飯田のキックが雲を切り裂き、だぶるどらごん轟が炎と氷の嵐を起こし、ボロ雑巾殺しが音すら置き去りにした斬撃を放った。

 

天変地異に揺れる路地裏。

私はその光景を横目にダラケていた。

 

いや、違うんだよ?

だってね、動けないの。

全然動けないの。

仕方ないの。

 

働きたくないでござる的な、それじゃないんだよ?

・・・帰りたいなぁ、甘いもの食べたいなぁ。

 

「お、おい、そこのお嬢ちゃん!聞こえてたら返事してくれよ!おい!」

 

ダラケていると、見えない方向から声が掛かってきた。

多分最初に倒れていたインディアンだろう。

てか、さっさと復活した飯田と違って、この人全然復活する兆し見せないな。

 

ははぁん、さてはサボってるな。

 

「・・・分かる」

「何を!?何が分かるの!?あ、もしかしてサボってると思ってる!?俺が!!違うからね、動けないんだって、本当にさ!」

「言葉にせずとも良いわ。ワシはなにも言わんよ。ふぉほほほっ」

「なんか悟った仙人みたいになってる!やめてっ、本当に!分かってるアピしないで!」

 

あんまりにも喧しいので、引き寄せる個性を上手く使って反対にゴロンする。

そんな私にインディアンのジト目が突き刺さる。

 

「君、案外余裕だね。その動き個性だろ。上手く使うね」

「どういたしまして。じゃ」

「反対に向こうとしないでっ!ちょっ、こな、あっ!完全に反対向きやがった━━あぁ!もういい!こっち向かなくて良いからそのまま話を聞いてくれ!」

 

二人の激戦に顔を向け直したけど、インディアンはお構いなしに話を続けてきた。

 

「さっきから動きを見てて分かった!ヒーロー殺しの狙いは俺と白アーマーだ!!お嬢ちゃんと紅白少年は命まで狙われてない!!いや、紅白少年は微妙かも?……と、兎に角、均衡保っていられる内に逃げるように伝えろ!!」

「だってぇー」

「伝える気全然ないなぁ!!」

 

伝えた所で退くような奴らじゃないしね。

無駄な事はしない主義の私にそれをしろと言うのは酷と言うものだにょ。

 

それに私も割と忙しい。

 

「ちょっと聞けって━━━━」

「シャラップインディアン。ルート66に帰さすぞ」

「インディアンじゃないから!」

 

 

「━━っかんないかな!?瀬戸際なんだよ!なんでも良いから黙ってて!!集中出来ない!!」

「あ、はい、すいません」

 

インディアンを黙らせ荒ぶる気持ちを落ち着かせる。

直ぐに頭が冷えてきて、個性に集中出来るようになった。

 

こういう時私は自分の個性がこれで良かったと思う。

私の個性は基本的に手足を動かす必要性がない。

そうした方が楽なのでそうしてるだけで、本質的には頭さえ働けば十分なのだ。

 

こうなった以上私がするべきは阻害のみ。

攻撃の一切を切り捨て、そこのみに集中する。

 

動きを封じる必要はない。

ほんの僅かでも制限させればいい。

動きの初動に合わせて手足や道具、衣服を引き寄せる。

 

剣を振り下ろす瞬間、懐から武器を抜こうとする瞬間、駆けようとする瞬間、飛び上がろうとする瞬間。

意識が飯田や轟に集中する瞬間を狙って。

 

動きの出端にちょっかい掛けられれば面白くもないし、リズムが崩れる。いつも通りの動きが出来ない。

掛かる負荷に対応しようとしても、その掛かる負荷はマチマチで対応しようにもやはり出来ない。

 

その僅かなストレスは少しずつ大きくなっていって集中力と体力を確実に奪う。行き着く所まで、つまりは感覚まで狂いだしたらこちらの物だ。

 

 

 

「ぐっ!!!」

 

壁を足場にしようとしたボロ雑巾が体勢を崩した。

引き寄せた足が、本来踏むべきだった場所からずり落ちたせいだ。

 

その隙を逃さず、飯田が壁を駆け上がった。

轟に冷やさせて準備していた、再びのレシプロで加速する。

 

ボロ雑巾が飯田に気づき身構えたけど、そうはさせない。

 

引き寄せる個性でボロ雑巾の首を私へと向けさせる。

忌々しげな視線が、私の姿を捉える。

 

「ざまぁ」

 

「━━━━ぁ!!」

 

なにかを言おうとしたボロ雑巾の脇腹にレシプロで限界まで加速した蹴りが叩き込まれた。

こちらにまで聞こえてくる鈍い音が、止めの一撃だった事を知らせる。

 

 

 

 

━━なのに、嫌な予感がした。

どうしようもなく、嫌な予感がしたのだ。

 

 

 

その様子を見て轟も腕を構えていた。

どちらかと言えば捕らえる為の右手ではなく、攻撃する為の左手を。

 

「まだだ!!飯田!!」

 

声に反応した飯田が顔を逸らす。

その瞬間、顔のあった場所を刃の一閃が走る。

 

「たたみかけろ!!」

 

轟の声にもう一度蹴りあげようとするが、それより早くボロ雑巾から放たれたナイフが飯田の体に突き刺さる。

ボロ雑巾は体勢を崩した飯田から目を離し、轟を見た。

一目で分かるほど殺意に満ちたその目で。

 

「粛清っ、せねば!!」

 

飯田を足場のように蹴り、ボロ雑巾が空を駆けた。

真っ直ぐに轟に向かう。

距離を取ろうと轟は炎を放つが、ボロ雑巾はそれを物ともせずに突っ込んでいく。

 

「正しき、社会の為に!!」

 

轟の足元からボロ雑巾を止めるように氷壁が姿を現すが、それも一瞬の時間稼ぎにしかならない。

一呼吸もなくこま切れになる。

 

「全てはっ!!正しきっ!!社会の為に!!」

 

ボロ雑巾の目に映るそれは、殺意だけだった。

他の意思なんて欠片も存在しない。

何処まで歪んでいるのに、透明さすら感じる、何処までも歪みきった漆黒の殺意。

 

 

 

 

 

 

「━━━っ緑谷!!?」

 

 

人間やれば出来るもんで、フルスロットルの力で轟を引っこ抜く事が出来た。

余裕があれば壁だの何だのに向かって引っ張ってやれたけど、生憎咄嗟に対象に出来たのは使い慣れた掌だけ。

私の体と、轟の体が宙で交差する。

 

私と逆方向へと飛んでいく轟に、何処か見覚えがあった。何時だったと思い出して、直ぐにそれがUSJだった事を思い出す。

あの時も確かこうした。

 

「緑谷くん!!」

 

飯田の声が聞こえた。

焦ったような声だ。

きっと私が切られると思っているんだろう。

普通、そう思う。 普通は。

 

私は眼前に迫る刃を見ながら、歯を食い縛った。

来るであろう衝撃に備えて。

 

 

死が過る最中。

 

 

限界まで高まった集中力は時の進みを遅くした。

 

 

思考が回転していく。

 

 

 

今まで感じた事のない、速度で。

 

 

 

 

そして、その時の中で、私は見た。

 

 

 

 

間延びしていく時の中で、私は確かに見た。

 

 

 

 

 

ボロ雑巾の刃が、その場に止まる瞬間を━━━━。

 

 

 

 

 

鈍い感触が頭に響いた。

私の頭がボロ雑巾の顔面にぶつかったのだ。

後ろへと大きくよろめくボロ雑巾を見ながら、私は勢いを殺せず地面を転がる。あちこち痛い。ぐるぐる転がって気持ち悪い。

 

信じていた。

私の事を殺さないと。

 

信じていた。

こいつは言ってる事メチャクチャだけど、自分で口にした事は意地でも守るクソ野郎だと。

 

歪みきってる筈なのに、何処までも真っ直ぐだった、その目を見た瞬間から。

 

 

「━━━がっ、はっ、ぐぅ、にを!粛清っ、せねばっ!!正さねばっ!」

 

 

よろめきながらも未だ崩れないボロ雑巾。

何がこいつにここまでさせるか分からないけど、肉体的なダメージで止まらない事は理解した。

こういう手合は、意識を刈り取るまで終わらない。

 

 

「━━━っ!」

 

 

不意に手足の感覚が戻った気がした。

試しに動かせば力が入る。

ならば、やれることをやるだけ。

 

止めをさそうと立ち上がり━━━━視界の中に入ってきた光景を見て、間髪入れず横になった。

それはまるで浜に打ち上げられたアザラシのように。

 

うん?どうしてかって。

いやぁ、見ちゃったからさ。

 

何故かは知らないけど、どうしてそうなったのか知らないけど。

 

来る筈のない嵐がきたのを。

 

 

 

 

 

 

「爆速ターボ━━━━最高出力F1」

 

 

 

 

 

 

爆音と共に金髪のミサイルが突っ込んできた。

ミサイルが直撃したボロ雑巾は数十回の小規模な爆発を繰り返しながら勢い良く吹き飛んでいく。

 

最後には壁にめり込みぐったりしたが、ミサイルさんに慈悲はなく、そこに止めの一撃をぶちこんで完全に意識をぶったぎってきた。

今度こそ戦闘不能に見える。

ていうか、死んだように見える。

 

 

唖然とする轟と飯田。

最早言葉すらないだろう。

 

弱っていたとはいえ、あれだけ苦しめられたボロ雑巾を瞬殺されたのだ。

これは仕方ない。

 

 

 

 

「・・・・・おい、馬鹿女」

 

 

 

 

こっそりその場を離れようとしていたら声を掛けられた。声色から怒ってるのが嫌でも分かる。

あれだ、振り返りたくない。

 

・・・ん、待てよ?

 

そもそもなんで、コイツがこんな怒ってるんだ・・・。

よくよく考えたら、私が怒る理由はあっても、コイツに怒られる理由はないじゃないか・・・・!

 

そうだ、怒りたいのは私の方だ!このやろうがっ!!

忘れてないぞ、あの時の態度!!!

 

 

「おい」

 

 

━━とは思うけど、そういう雰囲気じゃないよね。

分かります。双虎にゃんは空気を読める小悪魔系美少女。ひと一倍そういうのは分かるのんです。

 

 

だからまぁ、穏便に済ませる為、私が取るべき行動は一つ。

 

 

 

 

 

 

「かっちゃん!さらだバー!!」

「なんで逃げてんだ、ごらぁぁぁぁ!!!」

「鏡みてこい、ばーか!」

「んだとこらぁぁぁ!!」

 

 

 

結局、戦い終えたばかりのクタクタな私に勝ち目がある訳もなく、逃走を図って私が捕まるまで5秒と掛からなかったよ。

 

あははは・・・くっ、無念でござる。


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