私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
良かった、間に合いそうだ。
別に映画版のお話は作らないけど、日程とか知りたいもんね!夏休みの描写がなにかあれば、良いなぁ(*´ω`*)
私の活躍によって保須が平和になった翌日。
ボロ雑巾との死闘で怪我した私は、轟や眼鏡達と一緒に保須総合病院に入院していた。
どこにいってもアイドル気質な私は病院でも大人気。
名声とお菓子を欲しいまま悠々自適なベッド生活を満喫している━━━━と言いたい所だが、現実は非情の一言に尽きるものだった。
「やだぁ!やめてぇ!取らないでぇ!」
白い悪魔達によって奪われていくお菓子達。
三人かがりで羽交い締めにされてる私に出来る事は精々嘆く事だけ。無惨な搾取。無慈悲な強奪。
山と積まれたお菓子は徐々にその姿を消していく。
「取らないでぇ、ではありません!緑谷さん!!貴女ね!昨日からパクパクパク!!お菓子ばっかり食べて!ご飯なら三食ちゃんと出てるでしょ!それで我慢なさい!!」
「ああーもう!ベッド食べかすだらけにして!」
「今朝回収した筈なのに、なんでまたこんなに!?おらぁ!男共!餌あげんじゃないわよ!」
私を取り押さえる白い悪魔が一斉に吠えてきた。
「病院食はいやぁ!味気ないもん、美味しくないもん!あんなの、ジジババの食べもんでしょ!」
私の必死の訴えに、三人の中で最も力強く押さえてくるボス格の白い悪魔が鬼の形相をした。
「栄養管理の為に色々あるのよ!美味しさは求めてないんだから仕方ないでしょうが!!てかね、私達に文句言わないでくれるぅ!?毎回、毎回!こっちだってね、こんなもん食ってる奴の気がしれんわ!」
「先輩!!それは言っちゃ駄目ですよ!!看護師ですよ、看護師!そこらへんはもっとオブラートに包んで下さい!!」
「・・・私は結構好きだけどなぁ」
「「黙ってなさい味音痴」」
「酷い!!」
白い悪魔達のコントに気を取られていると、目の前にあったお菓子の山、その最後の板チョコが回収される。
食べきれない程あったお菓子は全て白い悪魔の手に落ちてしまった。
「先輩~。回収終わりましたぁ~」
間延びした白い悪魔の声。
私はこの悪魔が回収係りであった事に感謝し、嵐が通り過ぎるの待つ。
「・・・はぁん?」
するとそんな私の様子に何か気づいたのか、ボス悪魔の目が光った。
「・・・緑谷さん、嫌に大人しいわね」
「え?そ、そんな事ないにょ?ちょ、なに言ってるかわからにゃい。やめてー、おたすけー」
「・・・・」
「・・・・」
ボス悪魔はベッドの周囲を見渡した後、枕を見た。
「枕の中を確認しなさい!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
無情に開かれた枕カバー。
クッションの代わりに詰め込んでいたお菓子達がバラバラベッドに落ちる。
「━━━回収!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!鬼ぃ、悪魔ぁ!厚化粧!」
「魂ごと回収してやりましょうか!?ああん!?大人は化粧しないと駄目なのよ!毛穴とか、肌荒れとか、若いときは大丈夫でも目立つようになるんだから!あんたも覚悟しときなさい!若い内だけだからね!こんなに・・・・はっ!?」
私のほっぺを触ったボス悪魔が目を見開いた。
驚愕といった顔だ。
「あ、あなた、この肌・・・まさか、すっぴんじゃないわよね・・・?」
「すっぴん!?」
「え、これで!?」
取り押さえたきた悪魔達の迫力が凄く、あまりに怖かったので正直に頷いておく。
すると、ボス悪魔がベッドに突っ伏した。
「ちっくしょぉぉぉぉぉぉ!!!」
「私の二時間と変わらないなんてぇ!!」
「若いとき、なんでもっとちゃんとしとかなかったかなぁ!わたしぃぃ!!」
魂の慟哭だった。
「あはは、大変ですねぇ~。私、若いからまだ分かりませんけど~」
その瞬間、六個の殺意を帯びた光が間延び悪魔に突き刺さるのを察した。
間延び悪魔の死期を悟った私は、お菓子を彼女に全部あげる事を約束しその旅路を見送る。
馬鹿な奴。雉も鳴かねば撃たれまいに・・・。
達者でな!
「女ってのは大変だな」
「僕らにはさっぱりだな」
白い悪魔達が去った後、轟に隠させておいたお菓子を食べていると、眼鏡と轟が昨日の事件について話し始めた。
また眼鏡が謝ってる。動かせる片腕をまたカクカク動かしてる。傷の具合から左腕を固定されてなければ、きっと両腕をカクカクさせた事だろう。
本当、なんだろうあの動き。
「緑谷、これも食うか?」
モクモク食べてたら轟がお菓子が入ってそうな袋を差し出してきた。
預けてたやつじゃない。
となるとこいつの持ち物って事になるけど・・・こいつも持ってたのか。
・・・あ、ハゲの献上品かな?なんか貰ってたよな。
「いいの?」
「ああ。別に甘いものは好きじゃないからな」
「そっか」
ありがたく受けとったけど、中身が煎餅とかだった。
和風・・・!
「・・・しょっぱいやつだけど、大体。寧ろ甘い物がない・・・あ、塩饅頭がある。ん?塩ヨウカン?」
「そうなのか。中身見てなかったから、分からなかった」
「ねぇ、本当に良いの?しょっぱいやつなら食べれるんでしょ?てか、ハゲって轟の好みとか知ってるんだねぇ」
「たまたまだろ。それに甘い物も食べれない事ないぞ。特別好きじゃないだけで」
たまたまでこのチョイスはないわ。
それとね、その言い方する人に甘いものは送らないわ。
これ以上言って仕方ないので、その話をそこまでにしておく。一人で食べるのも味気ないので、お煎餅を適当に割って眼鏡と轟に配った。
眼鏡は苦笑いしながら受け取ってくれたけど、轟は首を横に振った。「一回あげたもんだしな」との事。
なにこいつ面倒くせぇ。
無視して口に突っ込んでやれば、普通に食べた。
なんかポワポワしたオーラが見える。
そんなに好きだったのか醤油煎餅。
「もう一個食べる?」
「・・・わりぃな、頼む」
「頼む、じゃねぇ!!何してんだこらぁぁぁ!!」
雛への餌付け気分で煎餅をあげてたら、かっちゃんが怒鳴り声をあげて現れた。
今日も元気におブチキレである。
「かっちゃんも食べる?ニンニク煎餅とかってのあるよ?これ多分辛いよ。好きでしょ、辛いやつ」
「ああ?・・・ちっ、寄越せや!」
照れ隠ししながらも一応欲しがったので、ちゃんと分けてあげる。しかも割ってない丸々一枚。勿論袋からも出してない新品。優しいな私。まるで天使だな。
なのに、かっちゃんは微妙な顔した。
「どした?」
「・・・んでもねぇよ、クソが」
煎餅を受け取ったかっちゃんはしかめっ面のままガリガリし食し始める。表情はあれだけど、結構好みだったっぽいな。サービスでもう一枚手渡しておく。
てか、ありがとうくらい言えやぁ。
まったくもう。
「煎餅か、俺にも一枚くんねぇか」
かっちゃんに煎餅を献上してたら、お爺ちゃんがそんな事言いながら部屋に入ってきた。昨日のかっちゃん蹴ったお爺ちゃんだ。
「あ、ミニじいちゃん。何煎餅が良い?濡れ煎餅にしとく?」
「ははっ、いや、かてぇの頼む。煎餅はかたくねぇとな。ありがとよ。まぁ、でもなんだ、その前に話があってな・・・おう、入ってくれ。丁度全員いるからよ」
そう言うとパッとしない水色スーツの男とガタイの良いスーツを着た犬が部屋に入ってきた。
なんか真剣な話が始まりそうだったので、轟に約束の煎餅を一枚投げ渡し、さっさとイヤホンを耳に押し込んで寝る事に━━━しようとしたけど、あっさりかっちゃんに耳に詰めたイヤホンを取られ阻止される。
くそぅ。
「あー、いいか?こちら、保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」
「掛けたままで結構だワン」
語尾にワンってつけてくるとは。
キャラつけ?
それからワンさんからお説教を貰った。
長くて分かりにくかったけど、要は資格のない人が個性で怪我させちゃ駄目でしょ!という話だった。
せやな。
話を聞いてる内にボロ雑巾が個性攻撃によって重症である話になり、轟が「じゃぁ、どうせぃちゅうんじゃボケぇ!そんなら助けんで見殺ししたらええん言うんかいな!」と怒鳴ったり「結果オーライなら、規則ガン無視でええんちゅうかいな?あかんでぇ、それは」とワンさんが嗜めたりした。
え?関西弁ではなかったよ?脳内補正(はぁと)。
結局、事件を公表しない事と、私達の身柄を預かっていたヒーローが罰則を受ける事を条件に、私らがやったことは揉み消される事になった。
「前途ある若者の偉大なる過ちに、ケチをつけさせたくないんだワン!?」とのこと。
警察さんがそれでいいと言うなら、私から言うことない。形だけの選択肢に、素直に了解しておく。
ただし、私がボロ雑巾へ行った止めに関しては画像が出回ってしまい、どうやっても揉み消す事が出来なかったそうだ。人質という状況からの行動だったので、一応は正当防衛として終わりそうだとか。
ついでに一つ。
表彰はしないとのこと。
頑張ったのにぃ!
ワンさんからオフレコの「ありがとう」を貰い、この件は取り敢えずの終わりを迎えた。
色々と忙しそうなワンさんとヒーロー一行が部屋を出ていった後、ワンさんの話し方に思う事があった私は、私のベッドの隣で丸椅子を占領してるかっちゃんに提案してみる事にした。
「・・かっちゃん、かっちゃん」
「んだ、馬鹿女」
「かっちゃんも語尾にボム、とかつけてみない?可愛いと思うボム」
「なんでてめぇが早速使ってんだ。つか、やるか馬鹿」
断られたボム。
「緑谷、それでいくと俺は何がつくんだ?」
何故か轟が興味を示してきた。
どした、こいつ。
「轟はなんだろ?メラとかヒエとか言っとけば?」
「メラ、ヒエ?・・・こうか━━━メラヒエ」
「そんな呪文みたいに言うもんじゃないと思うけど」
語尾につけないと駄目だろ、せめて。
放って置くのも可哀想だったので、眼鏡にも提案してあげた。
「眼鏡はメガとかガネとかメガネとか言っとけば良いと思うよ?」
「はぁ・・・眼鏡が戻った瞬間から、また眼鏡呼ばわりとは。正直これを機会に普通に名前を呼んでくれると思っていたんだが・・・いや、まぁいいか。些細な事メガネ」
何気それっぽく使いおったわ、こやつ。
眼鏡の使い方を見て、轟が分かったって顔した。
絶対に分かってないだろうけど、やりたそうにしてるのでやらせてあげる。
「分かったメラヒエ。こういう感じだなメラヒエ?」
「うん?ああ、うん。良いんじゃね」
「轟くん、さっきから緑谷くんに騙されてるぞ!」
その後、眼鏡に説得された轟は語尾を付けるのを止めてしまった。
学校まで気づかなかったら面白かったのに。
残念だ。