私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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生きてるって、なんだろ。生きてるってなぁに?
はい。この答えが分かる人!お、よし、うんうん。お前らとは良い酒が飲めそうだ( *・ω・)ノ


閑話なんて糞食らえとかいっておきながら、ちゃっかりやっちゃうその姿に痺れる憧れるぅの閑話の巻き

俺様は天才だ。それは言うまでもない事実で、否定できない真実だ。

ところがだ、その天才である俺様の、道程の先を歩く糞女がいやがる。気に入らねぇ、糞女だ。

 

俺様の邪魔をするのは緑谷双虎。

幼稚園児だった頃からの幼馴染で、生意気にも二つの個性を持っていやがる。それは超人時代でも割と珍しい事で、普通は両親の個性は合わさった末の物になる筈なのに、双虎の個性は完全に二つに分かれて存在していた。

引き寄せる個性と火を吹く個性、その二つだ。

 

特に引き寄せる個性は厄介で、初めて会った時は拳を器用に外へと引き寄せ逸らされて空振り、逃げようと身を引いた所で引き寄せてパンチ。

結局、手も足も出せずにボコボコにされ、不本意にもあいつの母親に助けて貰った覚えがある。

 

子供の頃なんてのは単純で力がある奴が偉い。

ボコボコにされた俺に周りは冷たくなった。友達だと思ってた奴等からつま弾きにされた。それまでの横暴な態度を考えれば当然だったのかも知れないが、その時の俺様にはよく分からなくて、ただムシャクシャして、ただ苛ついてた。

 

そんな時決まって突っ掛かってくるのは双虎だった。

理由は様々。俺様が睨み付けてきたからとか、俺様が可哀想だったからとか、俺様が暇そうだったからとか。

理由にもならない、そんな理由でだ。

 

あいつに誘われていくと大抵は録でもない事になった。

森に入れば遭難するわ、川に飛び込めば海まで流されるわ、公園にいけば軽く戦争状態になるわ、街に連れ出されれば財布は決まって空になった。

俺様の苛つきはさらに加速していった。

 

ムカつく、ムカつく、ムカつく。

俺様から奪っておいて、俺様より強い癖に、なんで今更俺様に構うんだよ。

 

あいつに声をかけられる度、俺様はあいつに馬鹿にされてるような気がして苛ついてしょうがなかった。

 

 

そんなある日。

俺様はやはりあいつに付き合わされていた。

けれど、その日はいつもより最悪だった。

 

あいつに付き合わされて山に入った所で雨に降られた。

いつもより激しい夕立で、俺様達は適当な木の幹で雨宿りをしていた。

そんな時、あいつが言った。

 

「かっちゃんさ、ヒーローってすき?」

 

あまりにも唐突な質問に子供ながらに疑問を持ったが、特に嘘を教える理由も、黙ってる理由もなかった俺様は「あたりまえだろ」と答えた。すると何故か糞女は顔を曇らせた。

理由は分からなかったが、普段からムカついていた糞女がその顔を曇らせた事実に何とも言えない優越感を感じた俺様はヒーローについて口にした。

 

その頃の俺様は口を開けばオールマイトの話ばかりしていて、当然糞女に聞かせたのもオールマイトの話だった。

オールマイトが誰を倒したとか、誰を助けたとか、こうしたそうしたと、俺様は思い付く限り話した。

それは何時からか嫌がらせではなく、ただ好きな事を誰かに知ってもらいたくて語るだけになっていたのだが、その時の俺様は話す事に夢中で何もかも忘れていた。

 

そんな時、不意に「ピシャ」と光が走った。

 

その直後鳴り響いた轟音で、近くに雷が落ちた事を知って身震いしてしまった。それは糞女も同じで肩をびくつかせていた。馬鹿にしようと口を開きかけたが、それは遂に言葉にならなかった。隣にいた糞女が、いつもより酷く弱い女に見えたからだ。

 

いつもの俺様であれば普段の仕返しにと罵倒したのだろうが、その時の俺様は憧れのヒーローの話をした後で酷く興奮していた。だから、らしくないその言葉をあいつに言ったんだ。

 

「はははっ!おれさまがきた!!しんぱいすんな、おれさまがカミナリなんてやっつけてやるぜ!!」

 

そう言って雨の中へ飛び込もうとしたが、それは叶わなかった。糞女が俺様の服をつかんで止めたからだ。

折角人がいい気分でヒーローになろうとしている所に何をするのかと思ったが、俺様の服を掴む糞女の表情に反論の言葉はでなかった。

 

「だめだよ、だめ。かっちゃん、やめて。けがしちゃうよ。」

 

震える声で訴え掛けてくる糞女に、俺様は何をすれば良いのか分からなくなって棒立ちした。

そんな俺様の腕を両手でしっかりとつかんできた糞女はらしくなく涙を流して言った。

 

「ヒーローになんてなっちゃだめだよ。かっちゃん、しんじゃうよ。やだよ、わたし。かっちゃんがしんじゃうの。」

 

その言葉が悔しかったのか頭にきたのか、分からない。けれど、無性にそう言って泣く糞女の涙がみたくなくて、俺様はそれを口にした。

 

「だいじょうぶだぜ。おれさまはオールマイトみたいにぜったいかつヒーローになるんだからな!」

「ぜったい?けがしない?」

「ふん!ぜったいけがしない!オールマイトだってけがしないし、しんだりしないぜ!だからだいじょうぶなんだぜ!おれさまも、オールマイトみたいになるんだから!」

 

そう俺様が言うと糞女は少しだけ頬を緩めた。

それはまるで太陽みたいに暖かい笑顔だった。

 

 

俺様は約束する事にした。

 

あいつには伝えなかった、一方的な勝手な約束。

 

糞女にあんな事を言わせる二流のヒーローじゃなく、誰よりも強く格好いい、あいつを泣かせない最高のヒーローになる事を。

 

 

 


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