私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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皆のSAN値が下がったと思うので、お口直しするよ。
皆大好き、エンデヴァー( *・ω・)ノ

ひゅーひゅー(ノ´∀`*)

次回、本編やるよ


さぁ、今日もサブタイトルの時間だ。本編よりしんどいサブタイトルの時間だ。なんでこうもここがしんどいのか。センスねぇな、わしは。『誤りし過去と訪れた平穏』の閑話の巻き

慌ただしくも忙しい一週間の職場体験が終わった翌日、我がエンデヴァーヒーロー事務所には以前の静けさが戻っていた。

粛々と執り行われる事務。サイドキック達にも無駄な動きはない。いつも通りの朝。

 

だと言うのに、俺はその風景に何処と無く物足りなさを感じていた。

 

思えば一週間前、受け入れ初日から随分と賑やかだった。事の発端は実にくだらない事。無視すれば良かろうに、あの時の俺はどうかしていた。小娘の口車にまんまと乗せられ、あのような無駄な催し物を・・・。

 

お陰で無駄な出費はかさみ、当分は何をする余裕もない。如何にトップクラスの事務所とはいえ、急な出費はよろしくはないのだ。

 

「・・・・・」

 

だが、そうだな。

あの娘を呼んだ事に後悔はない。

 

いつ以来だったか。

焦凍の緩んだ顔を見たのは。

 

 

 

 

 

 

 

妻を病院へ預けた日からずっと分かっていた。

妻が怯えた顔をしていた理由も、息子の瞳に憎しみが籠っていた理由も、遠くからこちらを眺める子供達の寂しげな視線の理由も。

けれど気づいた時にはもう、取り返しがつかない状況になっていた。何もかも、俺の手元から転がり落ちていた。

 

どうしてこうなったのか。

それは考えるまでもない、俺のせいだ。

見えて無かったのだ、何も。

 

ただ一つ、オールマイトという存在にとりつかれ、ナンバーワンの称号にただ焦がれた。

追い掛けても届かない事実に焦燥した。

届かない事を悟り絶望した。

 

そして、俺は━━━━。

 

 

『いやぁぁぁぁ!!ああっ!!焦凍っ!!焦凍、がっ!あああ、ああああ!!いやぁ!!ごめん、なさい、焦凍!しょうと!ごめんなさい、ごめんなさっ、ごめんなさい!』

 

病院へと送った息子を思い、泣きじゃくる妻の顔を今も思い出す。

直接その瞬間は見てなくても、それが妻の望んでいた結果でない事は痛いほど分かった。

 

窪んだ目が、こけた頬が、合わぬ視線が、彼女が限界であることを俺に伝えてきていた。

どうしてそうなるまで気づけなかったのか、いまでも分からない。誰が見ても、異常であることが分かった筈なのに。

 

 

それからずっと、息子を、焦凍をナンバーワンヒーローにする為に育ててきた。

息子から向けられる視線の意味を理解しながら、それでも素知らぬ顔で過酷な道を与えてきた。

 

止めることは出来なかった。

妻を犠牲にした以上、結果を出さなければと思った。

優しさを見せる事すら彼女への裏切りに思え、それまで以上に厳しく指導した。

 

 

本当にやるべき事を考えもせず。

 

 

その結果、成長した息子が選んだのは、俺が挫折した道だった。自らの体を傷つける、蕀の道。俺を個性婚へと走らせた、理由そのもの。

 

説得しようにも、俺の声は届かなかった。

世界を恨むような目で個性訓練を続ける息子に、何をさせるべきか分からなかった。

 

あの時の妻の顔を思い出しながら、俺はまた間違えた事に気づいた。

 

 

 

 

 

 

不意にドアがノックされた。

緊急時は内線電話を鳴らすように命令している。ノックの意味は書類等の確認作業への合図だ。

 

一言中へと入るよう促せば、秘書の一人が頭を下げて入ってきた。

 

「失礼致します、所長。以前タイアップを図った企業より、新製品のCM依頼がきております。打ち合わせの日程確認を行いたいのですが、今宜しいでしょうか」

「構わんから呼んだ。・・・コーヒーのやつか」

「はい、コーヒーのやつです。今度はスーパーブラックだそうです」

「スーパーブラックか・・・なんだそれは」

「ブラックの濃いめという事ではないでしょうか?よく分かりません。その点については打ち合わせでご確認下さい 」

 

そう言うと秘書は書類をテーブルへと置いた。

手に取ってみれば、確かにスーパーブラックとなっている。なんだ、スーパーブラックって。聞いたことないぞ。

 

「大人の苦味・・・濃ければ良いというものでもなかろう。缶コーヒーに言うべきではないが、コクや香りに重点をおいてだな・・・」

「それは私に仰られても・・・」

「それにだ、何故こうも、渋い依頼ばかりくる。もっとこう、ないのか」

「所長のイメージを考えれば、妥当ではないかと。世間一般的にも、所長のイメージはストイックで渋い、いぶし銀が光るヒーローですから」

「う、ぬぅぅ・・・」

 

オールマイトばかりを追いかけてきた弊害がここにもあったか・・・いや、こればかりはそういう仕事を選んできた俺の問題だな。

 

結婚したての頃は新婚ヒーローとして、子供が出来た頃は子育てヒーローとして番組に呼ばれたりしていたな。それらに付随する関連商品もそれなりにあった。

 

・・・今では、そういった関連の物は数える程しかないが。

 

「━━━はぁ。まぁ、いい。細かい話は後で聞くとしよう。日程の確認だったな、話せ。聞いてから決める」

「はい、畏まりました。それでは━━━━所長?」

 

説明を始めるかと思えば、秘書が止まった。

何事かと思えば不思議そうな顔でこちらを見てきていた。

 

「・・・なんだ」

「いえ、いつもなら聞いた後は、任せると一言で終わりでしたので」

「・・・そうだったか?」

「はい。・・・なんだか、最近お変わりになられましたね?何かありましたか?」

 

何か・・・か。

何も無かったとは流石に言えないな。

話すつもりもないが。

 

何も話さなかった俺を見て、秘書は周囲を見渡した。

 

「━━━なんだか、随分と事務所が静かになりましたね。以前は当たり前でしたけど、今では違和感が凄いです。職場体験中はあんなに賑やかでしたから」

「そうだな・・・」

「私、所長が人に振り回される姿、初めて見ました。他の皆も言いませんが、大分驚かれていましたよ?」

「・・・そうなのか」

「いつも渋い顔されていますし、必要以上に話しませんから自然と・・・。そうですね、融通のきかない昔気質な職人みたいな━━━そんな固い感じですかね?」

 

俺は部下にもこう思われていたのか。

いや、以前から気づいてはいたが。

避けられてすらいる節があったからな。

 

「彼女を息子さんのサイドキックにと考えているんですか?」

「そんな噂が流れているのか」

「はい。サイドキック達の間では。━━━ゆくゆく息子さんのお嫁さんに迎えるつもりだとも」

「誰だっ!そんな事言っているのは!奴を嫁にだと!?ふざけるな!!誰があんな馬鹿に息子を任せるか!!」

 

一番考えたくない話だ。

あんな馬鹿が家族になるなど、考えただけでもおぞましい。オールマイトの後継であることも忌々しいが、それ以前に一個人として俺が受け付けん。

なんだあいつは、本当に。目上の者をなんだと思っているのか。ハゲハゲと、ハゲとらんと言ってるというのに・・・本当にハゲて・・・ないではないか!

 

「・・・・・その割にはお部屋の件もありましたし・・・」

「なにぃ?部屋がなんだ!?」

「・・・えっ?違うんですか?」

「なんの話だ!」

 

そういうと秘書が顔を逸らし、天井の角を見た。

全然こちらに目を合わせようとしない。

嫌な予感しかしない。

 

「話せ」

「い、いえ、その・・・彼女の泊まってた部屋なんですけど、鍵が壊れてまして」

「・・・鍵が?本当か?」

「はい。以前より、報告申し上げておりました。なので、態々彼女にその部屋を使わせるのは、その、息子さんに対する父親の行き過ぎた━━━男になっちゃえよサインかと」

 

「・・・・」

「・・・・」

 

 

秘書の話を頭の中で精査し、そして話の流れを理解し、その瞬間冷や汗が噴出した。

人間本当に追い詰められたときは、本当にこうなるのだと初めて知った。

 

「なっ、何もしてなかろうな!!?責任をとらねばならぬようなマネは!!」

「は、はい!それは間違いなく!皆と代わり番こに隣の部屋で聞き耳をたてていましたので!」

「お前達、妙に帰りが遅いと思ったらそんな事していたのか!!」

「あ、勿論その時間帯はサービスです。残業代はつけておりません」

「あったり前だ、馬鹿者が!!!!」

 

そんな事に残業代をつけていたら、減給してやったわ。

というか、そんな危ない事になっていたと知ったら、直ぐに部屋を替えさせたわ!

 

確かに、息子に道を示してくれた事に感謝はしているが、それとこれとは別。まったくの別なのだ。

今回呼んだのも、息子が変に意固地にならず職場体験にとり組めるよう、比較的息子に良い影響を与える奴を━━━まて。まてまて。

帰り際、小娘を見る息子の雰囲気が妙ではなかったか。

 

・・・まさか、な。

 

 

「おい」

「は、はい!なんでしょうか所長」

「お前から見て、息子は、よもや、あの小娘に、その、ほれ・・・・・男女の仲を求めているように見えたか」

 

秘書はあごに手を当て考え始めた。

うーんという声が聞こえてくる。

 

そして数分悩んだ末、はっきりと言った。

 

「わかりません」

 

この秘書の人を見る目は確かだ。

その秘書が分からないと言うのであれば、何も問題はない。

 

ふぅ、驚かせおって。

 

「気になる相手くらいには思ってるかも知れませんけど、現状はまだかと思います。まぁ、聞いた話ですと双虎ちゃん彼氏みたいな人がいるみたいなので、それに触発されて気づいちゃう可能性は限りなく高いかと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しょぉぉぉぉぉぉとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

早まるな!!

早まるんじゃないぞ!!

お前にはちゃんと、相応しい嫁を見繕ってやる!!

だから、早まるんじゃないぞぉぉぉぉ!!

そいつは駄目だぁぁぁ!!

 

息子の目を覚まさせる為に学校へ行こうとしたが、事務所にいたサイドキックと職員全員に全力で止められ阻止された。

 

はなせぇぇぇぇ!!

 

結局その日は外出すらままならなかった。




サイド轟姉


冬美「はい、もしもし?どうしたのお父さん。私これから授業が━━━━ええ!?焦凍に女!?なに?!何が!?えっ!?落ち着いてお父さん!!」

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