私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
耳郎ちゃんが可愛かった。
ゼロ巻、ふぉーーー!!
オールマイト、ふぉーーー!!
双虎にも行かせられるな。
いや、行かせないけども。
━━━の以上だ!気になる方は映画館へゴー( *・ω・)ノ
一週間ぶりの大体の授業を、睡眠学習で乗り切った午後。
こちらも一週間ぶりとなるヒーロー基礎学の時間がやってきた。
当然授業を担当するのは、今日も今日とて人気さめやらぬ、雄英教師きっての筋肉男ガチムチである。
「ハイ、私が来た━━━てな感じでやっていくわけだけどもね、ハイ。ヒーロー基礎学ね!久し振りだ少年少女!元気か!?」
一週間のブランクがあったせいか、やる気だけは人一倍ある筈のガチムチの掴みも何処かヌルっとしている。エンターテイナー双虎にゃんとしては看過出来ない気のたるみようだ。
わざわざヒーロースーツに着替えた私の苦労と頑張りを返して欲しい。
ま、でもそこはスーパーアイドル双虎にゃん。目くじら立てたりとかしない慈愛の女神。
恨み言は取り敢えずの心の中にし舞い込んで、優しさからガチムチの高い肩をポンしてあげた。
「まだ一学期だよ、ガチムチ!そんなんでどうするのぉ!掴みは大切にしていかないと!」
「そんな芸人みたいに言わないで、緑谷少女・・・いや、でもそうだな。私もエンターテイナー。授業一つとってもそうでなくてはな。━━━━はーはっはっはっはー!!一週間ぶりのヒーロー基礎学の時間!!私が━━━」
「で?何すんの?」
「━━━言わせてくれぇ!せめて、来た!くらい言わせてくれぇ!」
ずっこけたガチムチからそうお願いされてしまえば、私も頷かざるを得ない。プライベートで死ぬほど迷惑掛けられてるけど、何気に授業では色々お世話になってる。
だから出来る限り力になってあげようと思う。
義理堅い私は恩返ししてあげちゃう清く正しい子なのだ。その上、天上の女神とみまごう美貌を持ってるとか、やばいな私。天使過ぎるな。
「はい、皆聞いて下さーい。さっきのはナシ、さっきのはナシです。もう一回決めにいきまーす。ガチムチが決めるまで、お口チャックしててねぇ。・・・はいどうぞ」
「やれないよ!?そんな空気じゃ言えないからね!?」
ええ、言わないのぉ?
不思議に思って首を傾げたら、ガチムチの眉間に皺が寄った。
「うん、今確信したよ!わざとやってるね、君!!午前中の授業寝てたと聞いて嫌な予感してたけど、まさか溜めた元気、ここで全部使う気じゃないだろうね?!」
「OH?日本語、難シクテ、ワタシワカラナーイ」
「君、生まれも育ちも百パーセントの日本人だろ!?よくそれが言えたね!?オジサン君の将来が心配だよ!」
「・・・緑谷ちゃん、キレッキレね」
「ほんまやね。寝てた分の元気、全力投球してまうんやないかな。いつにもましてテンション高いし」
「朝から変なテンションだった麗日が言える事じゃないけどね」
「じ、耳郎ちゃん!それは言わんといてぇ!!」
そんなこんなで始まったヒーロー基礎学。
その授業内容は救助訓練レースだった。
運動場γという工業地帯みたいな所を使って、誰が一番に目的地にいけるか競争するのだという。
全員で一斉にやるのかと思ったけど、5人1組で分かれてやるらしい。
勿論建物の被害は最小限に、だそうだ。
直接は言わなかったが、主にかっちゃんが言われてるみたいだった。
しかめっ面するかっちゃんに、ハンドサインでざまぁしてあげれば、忌々しげな視線が返ってきた。
負け犬の遠吠えが如きそれに返す物はない。
普段の行いの悪さのせいよ。まっこともって、ざまぁである。
「緑谷少女、君もだ」
「なん、だとぉ・・・!?」
名指しだと!?
こ、この野郎・・・!
案の定、かっちゃんからざまぁのハンドサインが返ってきた。
きぃーーー!!
◇◇◇
「耳郎さん、お隣失礼致しますわ」
組分けと説明も終わり、第一グループの出走を監視モニターで待っているとヤオモモが側に座ってきた。
朝から元気がなくて心配してたけど、少し元気を取り戻したように見える。
敢えてそれに触れて気分を沈めるのもアレかと思って、掛ける言葉を考えながらモニターに視線を戻す。
そこには準備運動する五人の姿があった。特に緑谷の姿が目についた。
「・・・ヤオモモさ、誰が一番だと思う?私的にはやっぱ緑谷か、瀬呂だと思うんだけど」
「どうでしょうか。障害物の多さを考えれば、それを無視して上空から攻められるお二人が有利であるのは分かりますが」
ウチらの話を聞いていた男達が一番予想を始めた。やっぱり、二人の名前が出てる。
「はぁ?馬鹿女だろぉが」
「お、おう。そうだな」
相変わらず変な所で素直だな。爆豪。
その調子で本人に言えば、付き合ったりしそうなのに。
てか、どれだけ信頼してんのさ。
「爆豪くんはそうゆうけど、私は飯田くんな気がするなあ。ニコちゃんも凄いけど」
「私も飯田ちゃんだと思うわ」
麗日と蛙吹の言葉に爆豪が片眉をあげた。
絶対になんか言うな。
「はぁ?クソ眼鏡が━━━」
「━━緑谷だろ」
爆豪の言葉を遮るように、轟が割り込んできた。
まさかの展開に、芦戸から『轟が緑谷にアオハルしてんじゃないの』疑惑論を語られていた女子一同が、分かりやすく驚いた。
かくいうウチも驚きを隠せない。
まじか。
「障害物が多いから飯田は不利だろ。あいつの個性、速度は出る反面、それに反比例して小回りが利かなくなる。直線的に行けねぇし、視界の悪い中なら余計に時間くうだろ。最短行ったとしても直線的に攻められる緑谷に追い付けるとは思わねぇ」
その理論でいくと、瀬呂もなんだけど・・・。
ひと欠片も触れなかったな、瀬呂の事。
「まてよ、轟。けどよ、瀬呂だってそれ出来んだろ?」
空気を読まない切島の言葉に、女子達の中で緊張が走った。どう答えるのか、気になったんだろう。
いや、ウチもそうだけども。
待っていると、少し考えた轟が口を開く。
「瀬呂か・・・分からねぇ。比べようにも、あいつの個性、間近で見たのは体育祭の時だけだったからな」
普通・・・だと!?
期待はずれな言葉に女子達が分かり易く盛り下がった。
「俺が知ってるのは、緑谷の事だけだ」
うわぁぁぁ!?
いきなりフルスロットルした!?
期待通りな言葉に女子達が分かり易く盛り上がった。
麗日の目が怖いくらい見開いてる。首折れてんじゃないの?くらいの角度で轟を見てる。
怖いわ。
「はぁぁぁぁ!?てめぇが馬鹿女の何知ってるっつんだ、こらぁぁぁぁ!!!」
飛び火した!!
うわぁ、修羅場!修羅場が!
まじか!
物凄い勢いで興奮したヤオモモに体を揺すられたけど、取り敢えずそれは放って二人の様子を見る。
鼻がつくんじゃないかと思うほど轟に近寄った爆豪が睨みを利かせているけど、それに対する轟は全然動じない。
「何とか、言えや。ああん!?」
「何とか?何怒ってんのかしんねぇけど、一応職場体験で一緒にヒーロー活動体験してんだ。知っててもおかしくねぇだろ。個性の事」
「・・・・はぁ?」
・・・あれ、雲行きが怪しい。
普通ここは「文句あんのか?」くらい言って睨みあったりしないの?あれか、それともリアルって、こんなもんなのかな?
いや、そんな事ないな。
隣にいるヤオモモも麗日達も、鈍い男子達ですら渋い顔してる。
多分おかしいのは轟の方だ。
よっぽど予想外の言葉だったのか、爆豪だってどうしたらいいか分からないみたいだし。
「個性の、事だけか・・・」
「?他に何かあるのか・・・?」
「・・・なんも、ねぇわ」
あ、なんか終わった。
何も解決しないまま、なんか終わった。
気まずい空気が流れる中、最初のグループの障害物競争が始まった。
結果はクラスでも予想人気の高かった緑谷が一位、ついで瀬呂が二位。その後は尾白、飯田、芦戸の順だった。
正直、緑谷は圧倒的だった。
クラスでもトップの成績を修める二人が勝つと予想したのは当然に思えた。
本来、リスクでしかない体重以上の物を引き寄せようとすると自分が引き寄せられてしまう力を巧みに操り、障害物の上を自由自在に飛び回る姿は、空を飛ぶ個性でも持ってるのかと邪推するレベルだった。
同系統の使い方をしていた瀬呂に、妨害とか一切なしで一分以上の差をつけるというのは凄い。
普段のあいつを知ってる身からすると、何とも言えない気持ちにもなるけど・・・
少しして競争を終えた緑谷がモニターのある場所に帰ってきた。ドヤ顔で。
そんな緑谷に対して、相変わらず素直に称賛出来ない爆豪が悪態をついてた。それに対して頬を膨らませ抗議する緑谷を微笑ましく見てると━━━ふと、ある音を聞いた。
それは固いものを擦り合わせる音だった。
何だろうと思って視線をそこにやれば、轟がいつもの表情のまま歯軋りしていた。いつも表情のままだ。
そしてそんな顔を見て察せれないほど鈍くないウチは、隣で「・・・耳郎さん、あれは」と呟くヤオモモに向け首を横に振っておく。
「ヤオモモ、ウチらはなにも見なかった。いいね」
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやらと言うしね。うん。余計なことは言わないでおこ。
それが恋なのか、それとも親しい友人をとられたせいなのかは知らないけど、間違いなく面倒な事になる案件、嫉妬からくる物だと思うので、きっちりかっちり放置したウチ達は障害物競争をしにスタート地点へと向かう。
緑谷、なんていうか、頑張れ。
ウチは応援してる。