私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
小説版エピ、授業参観編始まるよー(*ゝ`ω・)
気になる方は書店にごー!
面白さは保証しないから、よろしくー!
じとじとじめじめな季節も中盤を向かえ始めた今日この頃。今日も今日とてかっちゃんパパに送られて、私は現在進行形で登校中であった。
窓から見える景色はいつも通りの静かな通学ルート。すっかり落ち着きを取り戻したそこにカメラとかマイクとか持った人はいない。
そう、予想に反してマスコミは落ち着いたのだ。
良くも悪くも超人社会。
起こる出来事は毎日奇想天外な事ばかり、皆の関心を集めるニュースには事欠かない騒がしい時代だ。
一時期爆上げだった私の知名度も、今ではアイドルヒーローグループの不祥事に食われてしまい、マスコミさんの姿もすっかり鳴りを潜めてしまった。
嬉しいのは嬉しいのだが、何となく負けた気分で釈然としない物はあるけど・・・まぁよかろう。近くでざわざわされるよりはマシだもんね。
車に揺られながら風景を見ていたら、不意に運転するかっちゃんパパが欠伸をするのが見えた。
朝からの長距離運転は疲れるのだろう。
お疲れ気味なかっちゃんパパの肩を椅子越しにトントンしてあげると、なんか隣に座ってたかっちゃんが驚いた顔した。なに、その顔。槍でも降ってきた?
「おまっ、馬鹿女、てめぇ、何してやがる」
「なんで片言?肩を叩いてるだけでしょ。なに?」
「誰だ、てめぇ!」
「なんでよ!?」
そんなかっちゃんの反応を見て、かっちゃんパパが困ったように笑った。
「はは、そんなにおかしくないよ。勝己。双虎ちゃん気が向いた時、肩揉んでくれたりするよ?」
「はぁ!?そんなっ、見たことねぇぞ!!」
「そりゃ、勝己がいない時くらいだからね。双虎ちゃんが私に構ってくれるのは。双虎ちゃん勝己がいるとそっちに構いっぱなしだし・・・なんかまた上手くなったね。引子さんにやってあげてるのかな?」
別に私が構ってる訳じゃなくて、向こうから絡んでくるから相手してるだけなんだけどな・・・。
「━━母様にはやってあげてるというより、やらされますね。無理矢理ですよ、無理矢理。━━あ、でも最近オイルマッサージはしてあげたかな?いやぁー楽しかったなぁ。アザラシみたいに転がった母様のあの格好!うぷぷ!もう思いっきりポヨポヨのお腹をたぷたぷして、ぺちぺちしてやりましたよ!」
「なんか光己が聞いたら喜びそうな話だなぁ」
「オイルは光己さん提供ですよ?」
「あ、もうやってたのか」
光己さんのはポヨポヨが少なくて、そういった意味では楽しくなかったな。すべすべお肌は触ってておおーと思ったけど。
それに比べて、うちのポヨポヨは。
「━━それはそうと、送り迎えもう大丈夫ですよ?昨日打ち上げしましたけど、全然マスコミ来なかったですし」
「びっくりしたよ。まさかその日の内に、学校以外に迎えに行くことになるとは思わなかったからね。━━まぁ、そうは言ってもまだ世間はあの話題を忘れてないんだ。何かあっても面白くない。せめて一週間だけは送り迎えさせてくれない?」
送り迎えは楽だから嬉しいんだけど・・・。
「大変くないですか?」
そう聞くとかっちゃんパパはニッコリした。
「全然さ。━━━確かにね、疲れないと言ったら嘘になるよ?でもね、少し疲れるだけで子供達が少しでも安心して過ごせるようになるなら、そんな苦労は苦労でないのさ。血は繋がってないけど、双虎ちゃんの事は娘のように思ってるからね。そんな君が笑っていてくれるなら、こんなものはなんて事はないよ」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんなんだと思うよ。勿論、それは双虎ちゃんのお母さんである引子さんも同じだよ。いや、引子さんの方がずっとね」
母様が・・・?
「基本アザラシみたいに寝っ転がってますけど?」
「ううん、引子さんの苦労が忍ばれるなぁ・・・」
母様の苦労?
不思議な単語に首を傾げていると、相も変わらずな雄英校舎が視界の中に入ってきた。
校門前に降ろされた私はかっちゃんパパに手を振って、かっちゃんと校舎へと入る。
今日も一日、忙しない学校生活を満喫する為に。
その日も一日割と楽しく過ごした私は、帰りのHRが始まるのを席について大人しく待っていた。
学校という楔から解き放たれる瞬間を待つ私の耳に、今日のヒーロー基礎学について語り合うクラスメートの声が聞こえる。
今日はヘリを使ったダイナミックな救助訓練だったので、皆何処か浮き足だった感じで楽しげな雰囲気だ。
これなら遊びに誘っても皆のるな。
よしよし。
勝利を確信した私の耳に、教室の開く音が響いてきた。
すると一斉に教室が静まり返る。
「━━━嫌に静かだな」
静かなのは良いことだろうに、包帯先生は眉間に皺を寄せた。そして何故か私を疑いの眼差しで見つめてきた。
純度200%の疑いの眼差しだった。
「何か企んでるなら、止めておけ」
「差別ー!!差別ぅぅぅー!!なんで私が大人しくしてると、直ぐに疑うんですかぁ!!酷い!!包帯先生の畜生好き!!猫畜生好き!!」
頑張って抗議すると包帯先生は「・・・悪かった」とさらっと一言謝り教卓についた。なんか納得いかない謝り方だったけど、ここで騒いで呼び出されてもあれなので大人しく座る。
「・・・えー、取り敢えずヒーロー基礎学での救助訓練おつかれ。それでだ、いきなりなんだが、君らに一つ連絡事項がある」
包帯先生の言葉に眼鏡が勢いよく手を挙げた。
「連絡事項ですか!?それはいったいどのような事なのでしょうか!!」
「それを今から伝えるんだ。飯田少し静かにしてろ」
「はい!話の腰を折ってしまい、申し訳ありません!!」
「だから静かに━━━はぁ、まぁ良い、話を戻すぞ。それでだ、再来週・・・・授業参観を行います」
教室に「授業参観!?」と皆の声が響き、私はあまりの事に包帯先生の正気を疑った。切島の「雄英も授業参観なんてすんだなぁ」とか間の抜けた声が聞こえてきたけど、そんなのは無視だ。無視。
「今からその件についてのプリントを配る。プリントは必ず保護者に渡すよう━━━━━」
「包帯先生ぇぇぇぇ!!」
手を挙げて私の存在をアピールすれば、うんざりしたような包帯先生の視線が私に刺さった。文句を言われたり怒られたりするかも知れないが、今はそれどころではない。ここで撤回させなければ、私の命が終る。
「なんだ、緑谷・・・」
「授業参観についてお話が!!!大事なっ!大事なお話が!!」
「・・・言ってみろ」
聞いてくれるみたいなので、気持ちを込めて全力で話す。
「この時期に授業参観とか如何なものでしょうか!?USJでの事件!未だに事件解決にむけて進展のない様子!!もしかして首謀者はおろか、情報の漏れたルートすらはっきりとしてないんじゃないですか!?その時期に部外者、ひいてはその事件での被害者である生徒の保護者を内部にいれ、もし最悪な事が起こった場合、学校への信頼は地に落ちてしまうのでないでしょうか!!雄英の失脚により起こる、ヒーロー社会への不信!!その影響力の高さは甘く見るべきではないと思います!!それは学校だけの為ではなく、社会全体にとってよろしくない話だと愚考します!!ここは、最悪を想定して授業参観中止をするべきでないでしょうか!!」
「緑谷・・・おまえ」
包帯先生から厳しめの視線が返ってきた。
絶対怒られるけど、ここで引く訳にはいかない。
何故なら母様が学校に来ると言うことは、もう命に関わるからだ。
どうしてって?そりゃ、母様が学校に来たら皆と顔を合わせる事になるでしょ?そして皆、学校での私の様子を教えちゃうでしょ?それは先生も同じだ。そうして私の普段の態度を知った母様が、私に何をするかなんて想像に難くない。
おおぅっ!想像するだけで怖い!!怖いよぉ!
阻止せねばっ!
真剣な顔で包帯先生を見つめていると「ガチ過ぎんだろ、緑谷・・・」という声が隣からしてきた。
見なくても分かる、瀬呂のやつである。
「どんだけ授業参観したくないんだよ」
「うるっさいわドンマイ!」
「ひ、酷いっ!いつまでそれ言われんだよ!」
邪魔する瀬呂を切って捨て、包帯先生に再び真剣な目を向けた。
「・・・はぁ、駄目だ。もうこれは決定した事だ」
「そんなっ!!」
私を切って捨てた包帯先生は、授業参観について話を始めた。
その授業内容は感謝の手紙を書いて、それを全員の前で朗読するという恥ずかしさで悶え死ぬような、そんな地獄のような授業らしい。
なんでもヒーローになると感謝される事が多くなるから、そういった感謝がどのような気持ちのもと行われるかを考え、それを受けとる心構えを作れってことらしいんだけど・・・・ぐはっ、考えただけで身震いするっ。やだっ!やりたくない!
既にばっくれたい気持ちで一杯だが、ばっくれようにもその授業には母様が見に来てしまう。つまり逃げたが最後、授業態度の良し悪し関係なしに絞められるという事だ。
私、詰んだ・・・!!
「ま、そういう訳だ。再来週までに各自手紙を用意し、きちっと保護者の方々へ感謝を示せる準備をしておくように・・・以上だ」
包帯先生の死刑宣告を受けた私は、かっちゃんの背中にその身を預け安らかな眠りについた。
目が覚めた時、全てが夢であったらいいな、とそう思いながら。
「夢の訳あるか、馬鹿」
「いやぁぁぁぁ!!!かっちゃんの馬鹿ぁぁ!!!」
ふたにゃん「━━━━」わーわー
かっちゃん「━━━━」わーわー
ヤオモモ「またですの?お二人とも本当に仲が宜しいですわね・・・。ね、轟さん?」
ととろき「・・・・おう」ゴゴゴゴ
ヤオモモ(な、なにか見えますわ・・・!?)