私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
時間がねぇぇぇぇぇ!!!
ふぅ。
ああ、すっきりした(*´ー`*)
コメ返せなくてすわんやで。
日本全国津々浦々、何処を探してもナンバーワンである事が揺らがない美人過ぎる私は、皆の女神スーパーオフィサーエージェント緑谷双虎。花も恥じらう15歳、話題沸騰中な雄英高校の現役女子高生だ。
道を歩けば手を振られ、笑顔を向ければ黄色い悲鳴があがり、商店で買い物すればおまけを貰えるのは当たり前、ポイントだっていつでも三倍ブースト。
ガチャ爆死率の高さ以外ベリーイージーな人生を送るエンジェルな私は今、その人生において最大にして最悪の糞野郎と相対していた。
「何見てんだよ、爆発小僧・・・!」
「てめぇが見てんだろうが、馬鹿女ァ・・・!」
睨み合う私達の周りにピリピリとした空気が走る。
そこそこ混んでいる朝の電車内にも関わらず、私達の周りは一メートルくらい謎の空白地帯が存在していて誰も近寄ってこない。たまに人が紛れ込んでくるけど、直ぐに何処かへと行ってしまう。
それもこれも、私の前にいる爆発小僧が近寄り難い空気を出しているのが原因だ。なんて傍迷惑なやつ。足の親指の爪割れろ。
電車が緊急停車し、乗客全員が停車の揺れにバランスを崩す。かっちゃんも例に漏れずバランスを崩し、私の肩にその無駄に鍛えられた体をぶつけてきた。
「いったいでしょうが、ボケ。何処に目つけてんの?目玉働いてますか?それともなに?目玉の代わりに、ガラス玉でも入ってるんですかぁ?その二つの赤い奴、ガラス玉ですかぁ?・・・てか、触るな。雪のように白く美しい、私の自慢のピチピチお肌が汚れるでしょうが。はげさすぞ、この爆発頭」
「るっせぇぞ馬鹿女。てめぇがどけば済む話だろうが。てめぇのトロ臭さ棚上げして、寝惚けた事ほざいてんじゃねぇよ。━━そもそも自慢出来る程、なにが立派なんだ。俺にはなにも見えねぇなぁ・・・」
『お客様にお知らせ致します。ただいま◇◇◇駅、○○○駅区間の踏み切り内にて、ヴィランによるトラブルが発生致しまし━━━━』
アナウンスを合図に、私達は互いの胸ぐらを掴みあげた。
「上等だよ、買ってやるよ。通常価格で、そのやっすい喧嘩買ってやるよ。その節穴引っこ抜いて見通し良くしてやろうじゃん?ワタシヤサシイー」
「んだと、こらァ。やれるもんならやってみろや馬鹿女。五秒でぶちのめしてやる・・・!!」
『━━ええ、続いてお知らせ致します。車両内で喧嘩をしてる例の雄英バカップルに告ぐ。止めなさい、羨ましい』
「「誰がバカップルだぁ!!」」
かっちゃんパパによる送り迎え期間が終わった私は、以前のように電車通学の日々を送っていた。
そう。土曜日の一件以来、不倶戴天の敵と化したかっちゃんと、以前のように。
本当の所は一緒に登校するなんて御免被る。
だって斬って捨ててやるくらいに憎たらしいし、ぶっちゃけ顔も見たくない。脛とか蹴ってやりたい。飲み物に練りわさびとか入れてやりたい・・・話が逸れた。
兎に角、一緒に登校なんてしたくない。
けれど、一人で登校すると母様とか光己さんとかかっちゃんパパが心配するから、ムカつくけどこうして我慢してかっちゃんと一緒に登校してるのだ。我慢して。
そう、我慢して。私がね!
それなのに、朝から晩まで、この態度・・・。
ムカつく、超ムカつく。
超、超、超ぉぉぉーーームカつく。
周りに宥められて喧嘩せずに駅を降りると、かっちゃんは足早に私の前を歩き出す。
何となくその姿にムカついてかっちゃんを抜かせば、かっちゃんが無言で抜き返してきた。
「・・・なに?」
「はぁん?何がだよ・・・」
かっちゃんの目と私の目があった。
「・・・・」
「・・・・」
見つめあって数秒。
どちらともなく、私達は走り出していた。
「てめぇっ!!なに、走ってやがる!!」
「うっさいわ!!なに!?かっちゃんこそどうしたの!?なに走ってんの!?青春したいの?馬鹿じゃないの!!ねぇねぇ、恥ずかしくないの?恥ずかしくないの?」
「うるっせぇ!!恥ずかしいのはてめぇだろぅが!!スカートで走ってんじゃねぇ!!なに見せびらかしてんだ!!痴女かてめぇはよ!!」
「残念でしたぁ!!見せパンですぅ!!パンツじゃありませーん!!見せても大丈夫なやつだから、恥ずかしくありませーん!痴女じゃありませーん!そんな事も分からないんですかぁ!?これだから素人童貞は!!」
「誰が素人童貞だ、こらぁぁぁぁ!!」
デッドヒートの結果、校門を潜った瞬間はほぼ同時。
腹の立つことに決着はつかなかった。
かっちゃんめ、オリンピックも夢じゃない私の足についてくるとは小癪なりぃ。
靴箱で上履きに履き替え教室に行こうとしたら、また私はかっちゃんに抜かされた。
第二レースが始まったのは言うまでもない。
そして廊下を全力疾走していたのを包帯先生に見つかって、しこたま怒られたのも言うまでもない。
「私が言うのもなんやけど、そろそろ仲直りせぇへん?」
心安らぐお昼の時間。
食堂にてカツ丼にがっついていると、お茶子が口許にお米をつけた間抜けな顔で言ってきた。
目が真剣なだけに、凄く間抜けだった。
「お茶子。お米、ついてる。ここ」
「えっ!・・・ホンマや、あ、ありがと。うわぁぁー。私、今決めた感じやったのに、は、恥ずかしいぃ」
恥ずかしさから顔を隠すお茶子をよそに、その隣に座っていたあしどんが箸を向けてきた。
なんか唐揚げがついてる。
「そうだよニコ!いい加減仲直りしな!授業中も休み時間も、ずっとイガイガして!やきもきする!月曜からずっと・・・もう、一週間も終わるよ!」
あしどんがそう言うと、一緒にご飯を食べていた女子ーずが続いた。
「そうよ。何があったか、詳しくは知らないけど、爆豪ちゃんと仲直りした方が良いわ」
「そうだよー。二人がじゃれあってないのは見てて辛いよ。アオハルしてよー」
「そうですわ、緑谷さん。授業の妨げになるような行為、もうお止めください。例の夏休みの件も白紙になってしまいますわ」
「緑谷が一言謝れば全部丸く収まりそうじゃん。言っちゃいなって。爆豪、死ぬほどあんたに甘いから。一発だって」
おおぅ、皆して私を責めてくる。
それは、まぁ、授業中騒いだのは悪かったとは思うけど、でもそれは、かっちゃんが悪いのであって・・・と言った所で邪魔したことに変わりはないかぁ。はぁ。
「・・・でも、私は悪くないもん」
正直な気持ちを言うと、皆不思議な物を見る顔になって、それから話を聞いてくれる感じになった。
いつもなら脚色したり多少の嘘も交えて面白おかしく話す所なんだけど、そんな気分にならなかった私はあった事をそのまま話した。
最近かっちゃんが私に隠し事してる事とか、ヒーロー基礎学とかでやたらと邪魔してくる事とか、轟と話してると怒鳴ってくる事とか、轟母に会いにいくっていったら止められた事とか。
兎に角思い付いた事を、そのまま伝えた。
すると、女子ーずの表情は微妙な物になった。
「・・・ううん。なんてゆうか、爆豪くんは不器用過ぎるわ」
「ヒーロー基礎学のはあれでしょ?あれは、だってね、仕方ないっていうか・・・」
「けろっ。邪魔された扱いだったのね・・・不憫だわ」
おおぅ?不憫?
そんな話はしてないんだけど。
お茶子と耳郎ちゃんと梅雨ちゃんの不思議な会話に首を傾げていると、別の方からの不思議な会話が聞こえてきた。
「轟関連は・・・だってねぇ」
「私もそういった事にはあまり鋭くありませんが、それでも分かりますもの。警戒なさるのは当然のように思いますわ」
「ま、はっきりさせない爆豪くんが一番悪いんだけどね!」
葉隠の言葉に百とあしどんが顔を見合わせ、そして深い溜息をついた。
「葉隠、それは言っちゃ駄目なやつだ」
「それが出来てたら、こうはなりませんわね」
「ね?でしょ?」
なんだろか、皆それぞれ納得してる感じがする。
私悪くないのに・・・え?悪いの?私が悪いの?
気になって聞いてみたら、別に私は悪くないとの言葉を貰った。とはいえ、まったく非がないと言うわけでもないとも。
納得はいかなかったけど、皆からそう言われてしまえば私から言える事はない。事情を話した上でそう言われるなら、私にも悪い所があったのかも知れない。
・・・なんやかんや、ないとは思うけど。
それからも、私を交えた女子ーず達の話し合いは続き・・・・最終的には、次の女子会で食べたいお菓子がシュークリームに決まって終わった。
皆シュークリーム大好きだったみたいだ。
百の粋な計らいで今度の女子会に持ち込まれるであろう、八百万家御贔屓のシュークリーム。濃厚な味わいがある二種のクリーム。それを包むパイはサクサクのホロホロ。一口、それを口にすれば、天にも昇るほどの旨味が口一杯に広がるのだという。
今からとても楽しみである。
・・・あれ、何か、大切な事を忘れているような?あれ?