私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

81 / 282
前書きにかくこと無くなってきたぁ!
おいらの引き出し、もうからっぽよ!

どないしよー(/≧◇≦\)



今夜、ワニ肉焼くで。


はーい、今日もなんとなく閑話のサブタイをつけてくよー『英雄と卵』の閑話の巻き

個人面談の為に仮眠室へと連れてきた爆豪少年は、特に何か言うこともなく大人しくソファーへと腰を落とした。

 

こうして面と向かって話すのは何度めになるか・・・彼とはこうして話してばかりだ。

もっと普通の教師として接してやりたいとは思うが、中々上手くはいかないな。

 

お茶を用意しようとした私に爆豪少年は手を翳し制止してくる。お茶はいらないから話を進めろということだろう。

ぶっちゃけ私が欲しかったのだが、いや、まぁ、我慢しよう。

 

爆豪少年の対面に座り、私はことの本題に触れた。

今回呼び出したその理由について。

 

「今回の個人面談。頭の回る君なら分かるのじゃないかな?だから何も言わずに来たのだろう?」

「・・・・」

 

何も返事はないが、その表情から理解はしているようだ。それならば何故と思わなくもないが、感情というものは時に手がつけられない怪物だ。分かっていても止まれない時もある。

 

「今回君を呼んだのは最近の君の行動についてだ。最近の君の緑谷少女に対する態度は少々度が過ぎている。特にヒーロー基礎学での君の行動は顕著だ。不必要に彼女を庇いすぎだ。それで防げた怪我があるのは事実だが、その大半が彼女の行動を著しく制限させてしまっている。分かるね、邪魔しているんだ」

 

その言葉に爆豪少年は眉間の皺を深くした。

自覚はあるようで何よりだ。

 

「あげれば切りはないが・・・例を一つあげるなら、つい先日行ったチーム対抗の模擬戦闘だ。君は作戦を無視してまで彼女を庇いに行ったね。状況から見て彼女一人でも十分対処出来た筈だ。無傷とまではいかなかったも知れないが、それでも君が与えられていた役割を捨ててまで庇うほどの事じゃない」

 

一人の男として、と考えれば好ましい行動ではあった。

だが、ヒーローとしては褒めるわけにはいかない。

 

「訓練だから良かったものの、あれが実戦であれば君の穴が新たな危険を呼んだ可能性もある。ヒーローを目指すのであれば、あれは絶対にやってはいけない事だ。常にクレバーにだ。そうでなければヒーローは務まらない」

「分かってるわ・・・もういいか」

 

分かっていると言った彼の顔を見て、嘘はついていないのが分かる。もっとも、その言葉に従うかは別だろう。

分かっていても止められないとなれば、もうそれは理性ではなく感情の問題なのだろう。

 

説得で済めば良かったが、そうはいかないらしい。

 

私は冷蔵庫に閉まってある私のスポーツドリンクを二本手にし、一本を彼の前においた。お茶を入れてるとその間に逃げられそうだったので、これはその代役だ。

 

「んの、つもりだ。オールマイト。話終ったんだろ」

「まぁまぁ、そう言わずに。ここからは説教は無しだ。飲み物を飲みながら少しお話しよう。オフレコというやつさ」

「・・・ちっ」

 

忌々しそうに舌打ちした爆豪少年はドリンクを手にした。

 

私は爆豪少年がドリンクへ意識が集中してる間に、冷蔵庫脇に置いておいたメモを手にした。これは、こんな時の為に作っておいた『すごいバカでも先生になれる!教育者に大切な108の法則』で特に勉強になると思った一節をメモした名言カンニングペーパーだ。

 

あら不思議。これさえあれば新米教師でしかない私も、今から一流教師に早変わり・・・だったらいいんだけど。

・・・いや、大丈夫だ。出来るさ。やるんだ、八木俊典!頑張れ、私!!

 

「オールマイト?何してんだ」

「━━━っ!?ん??いや、何でもないさ。少しボーッとしててね!体の調子があまり良くなくてね!HAHAHA!」

「・・・だったら寝てろや」

「ぬぐっ!?いや、まぁ、私も教師。そう易々と学校を休むわけにはいかないのさ!」

 

危なかった。

そう言えば、怪我のことは彼にも教えていたんだった。

体の調子が悪いなんて言えば心配されるのは道理だな。

 

しかし、相変わらず素直でないな。

 

こうして人の心配は出来ると言うのに、その言葉の荒さで大分損をしている事だろう。優しさの形も人それぞれなのだろうが、これは何ともなぁ。

 

メモを自分だけに見えるように持ち、先程の同じように爆豪少年の前へと座る。

そして手元のメモを確認した。

 

『生徒の顔色を窺うことなかれ。されど、生徒が興味を示さない会話は最低限避けよ。理解される努力はすべし』

 

成る程。

そうなると、やはりヒーローに関しての話・・・。

 

「━━━えっと、そうだ、最近グラントリノの所で戦闘訓練をしていると聞いたんだが、どうかなその調子は?」

「はぁ?どうもこうもねぇ。別に普通だ」

「普通か。ほら、前に言ったろ?私もお世話になったと。私もあの方に若い頃よく戦闘訓練して頂いてたんだ。だから気になってね」

 

そう言うと少し興味が湧いたのか、爆豪少年の目が私を見た。前に緑谷少女から、爆豪少年は私のファンであると聞いていたから、興味を持つかと思ったけど・・・。

これは思った以上に有効なのかも知れない。

 

「よく殴られたよ。もう、あれだ、ボコボコというやつさ。私も若かった。あの頃は自分の力に振り回されてばかりでずっと弱かった。器用に動くグラントリノに翻弄されまくったね」

「あんたにも、そんな時期あったのかよ」

「そりゃね。最初からナンバーワンヒーローという訳じゃないさ。私も一つ一つ積み上げてきたんだよ。気が遠くなるほど努力して戦って、気がついた時にはここにいた」

「オールマイトも・・・」

 

うんうん。

少年らしい顔も出来るじゃないか。

 

それから爆豪少年が興味を持ちそうな全盛期の頃やアメリカでのデビュー当時の話をした。これからヒーローになる彼にとって、興味はつきない話題だろう。

話題が進むにつれ少しずつ緊張が解け、爆豪少年の顔に余裕が戻っていく。

 

爆豪少年の顔色と残り時間を確認し、もう一度あの話に踏み込めるとふんだ私は、再度その話に触れる事にした。

 

話の切り出しについてメモがあった筈だと、爆豪少年から少し目を逸らし、手元にあるメモを確認する。

 

『否定よりまず肯定を。正すのはそれからでも遅くはない』

 

うん、成る程。

 

「・・・さて、色々話したけどね、私にも君と同じように若い頃はあった。だからね、爆豪少年の気持ちは分かる。私もね、君と同じような時期があったんだ」

 

私の話の質が変わったのを察して、爆豪少年の顔から先程までの表情が消えた。早かったかと思わないでもないが、時間もない。

 

「だからね━━━」

「オールマイト。なにか言いてぇなら、あんたの言葉で言ってくれ」

 

私の言葉を遮るように、爆豪少年が声を掛けてきた。

見抜かれていた事を恥ずかしく思うより、爆豪少年のその真剣な表情に情けなく思った。

だから、本音を口にすることにした。

 

「━━━爆豪少年。ならば言わせて貰う。君は何がそんなに怖いんだ。何がそんなに気にいらない。君を突き動かすのは、恋だの友情だのではないだろ。私には分かる。君はある意味で、彼女以上に何かに恐怖している。そして憤っている。それはなんだ?」

 

ずっと感じていた。

表情には表れなくても、言葉に出さなくても。

私はずっとそれを助け、ずっとそれと戦ってきたのだ。

 

「・・・ガキの頃から、助けんのはあいつだった」

 

呟いた言葉は酷く弱かった。

普段欠片も見せないそれが、私の目の前に落ちた。

 

「ずっと、そうだった。あいつは馬鹿だからよ。いつも、誰かを助けようとしやがる」

 

 

 

「理由なんざ、ついでみてぇなもんだ。何を言ったって、あいつはそういう奴なんだよ。いつも誰かの為に戦ってやがる。止めたって聞かねぇ」

 

 

 

「俺は、いつも、間に合わねぇ・・・」

 

 

 

「俺はいつも、間に合わなかったんだよ。オールマイト」

 

 

 

「馬鹿やるあいつを、俺は、後から知るんだ。後から見るんだよ。あいつがビビりだって、俺は知ってんのによ━━━━」

 

 

爆豪少年の拳がテーブルを叩いた。

苛立ち、焦り、悔しさ。

表情を見なくても、それが分かった。

 

「決めたんだよ、俺は!!ナンバーワンヒーローに、あんた、みたいになるってよ!!けどっ!!助けんのは、いつも俺じゃねぇ!!あいつなんだよ!!」

 

 

「守ってやんなきゃなんねぇのに!!そうするって、てめぇで決めたのに!!俺はっ、いつもそうだ!!間に合わねぇ!!守られた時すらあんのによ!!」

 

 

「紅白野郎ん時もそうだ!!俺が気づいてたのに、結局俺は何も出来てねぇ!あいつにやらせちまった!あいつに助けさせたんだよ!!ヒーロー殺しの時だってそうだ!!」

 

 

爆豪少年は立ち上がった。

浮かべたその表情は怒り。

他人にはではない、己に対してだ。

 

「あんたに何言われようと、俺は止めねぇ。やっと届くようになったんだ、やっと・・・!」

「爆豪少年━━━!!」

「文句は言わさねぇ!USJん時も、ヒーロー殺しん時も、あいつが生きてたのは運が良かっただけだ!!ほんの少しのボタンのかけ違えで、あいつは死んでんだ!!」

 

相澤くんの予想はある意味で当たっていたが、その本質は別の所にあったようだ。

ただの劣等感などではない。

 

自信を持ったから?

過信してしまったから?

違う。

 

燻らせてきた思いは、ただ一重に━━━

 

 

「俺はヒーローになんだよ!!邪魔すんな!!」

 

 

駆けるように部屋を出ていった爆豪少年の後ろ姿を見ながら、私は眉間を指で摘まんだ。

 

ここまで拗れているとは思わなかった。

長い付き合いがあれば、それだけ抱く感情は複雑になっていくものだが・・・ここまでとは。

仲良しに見えていたが、お互い見ている物も感じていた物も別だったようだ。

 

彼女は言った。

自分の周りの者を助けられれば良いと。

 

彼も彼女と同じように彼女を思っているのに、どうしてここまで違うのか。

守りたい者同士なのに、どうしてこうも目線が違うのか。

 

 

「・・・これは話し合いどうこうで導ける物ではないな」

 

 

お互い向き合わなければ話にならない。

どちらかではない。

どちらもだ。

 

 

「となると、やはりそうなるか。荒療治にはなるが仕方あるまい」

 

 

私は相澤くんに報告に行くために部屋を出た。

直ぐに伝えなくてならないから。

 

彼に、私が━━━━出ると。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。