私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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書けたから投稿しといた。

人間やれば出来るわな(*´ω`*)


アフリカの雨乞いの的中率って知ってる?百パーセントなんだって。雨乞いってマジなんだね!ならきっと、私にも出来る!なせばなる!嵐を━━え、あれは降るまでやってるの?まじで?じゃ、無理じゃん。の巻き

轟母と会ってから数日。

運命の日が目前に迫ってきた私の心境は穏やかな物ではなかった。

 

教室の一角を制圧して設置した祭壇。

古代アラシオコシマス文明が残した技術を元に作られたそれは、マスと清い男子を捧げることで雨の神様フラスンジャーを呼び出し、大雨洪水を起こすと言われている。

 

生け贄であるブドウとマスを祭壇に置き、私は神社とかで宮司が持ってそうな階段みたいな紙がついた棒を振った。

 

「嵐をぉぉぉぉぉ、起こしたまえぇぇぇぇ!!!」

 

一声では流石に反応はなかった。

当然だ、古代アラシオコシマス文明でも雨乞いは三日三晩行ったとされている。しかし、今の私にそれは出来ない。もう時間は今日しかないのだ。今日願いを聞き届けて貰い、明日を嵐にせねばならんのだ。

悪しき学校行事、授業参観を阻止する為に。

 

仕方がないので、もう二人清い男子を捧げる。

丁度近くにいた瀬呂と轟を捕まえ、祭壇へと捧げる。

生憎高くてマスは一匹しか買えなかったので、代わりにシシャモを捧げる。

 

思いを込めて、私は宮司が持ってそうなそれを強く振った。一心に振りまくった。

 

「嵐をぉぉぉぉぉ!!!起こしたまえぇぇぇぇ!!!」

 

やはり反応がない。

仕方ない、こうなったらクラス中の男を━━━。

 

「いつまで馬鹿な事やってるんだ、お前は」

 

パッカーーン、と良い音が鳴った。

痛みと共に知能指数が6は減った。

めちゃ痛い。

 

振り向くと呆れた顔でこちらを眺めるクラスメートと、完全に怒り心頭の包帯先生がいた。

 

「ひいっ!」

「ひいっ、じゃない。何してるんだ、お前は。というか、よくこんな物をここに持ってきたな・・・」

 

祭壇は結構おっきい。

知り合いの知り合いの親戚のお兄さんから貰ったまでは良かったのだけれど、置く場所がなくて困って学校に送りつけておいたのだ。ガチムチの着払いで。

今朝いつもより早く来て設置するつもりだったんだけど、やっぱりかっちゃんとの登校を強いられ、いつもより少しだけしか早く来れなかった。

 

不思議そうなガチムチから積み荷を貰って、HR前に設置して儀式の前座まで済ませるつもりだったんだけど・・・結果はこれだ。包帯先生が来るまでに間に合わなかった。せめてかっちゃんが手伝ってくれれば・・・くそぅ。

 

包帯先生は生け贄の祭壇に置かれたマスとししゃもを見つめ━━━━そっと同じように生け贄に捧げられてる三人の清い男達を嫌そうに見た。

 

「・・・・お前らも、何してるんだ」

 

「それはオイラが聞きたいぜ!せっかく朝拾ったお宝本の整理してたのによ!」

「椅子に座ってたら急に。理由は分かりません。取り敢えず清いかと言われたので、経験はないと答えたらこうなりました」

「くそー皆見るなー!俺は清くねぇー!童貞じゃねぇー!け、経験豊富だー!」

 

「さっぱり分からん。取り敢えず直ぐに片付けろ、緑谷。それと遊んでた男三人も協力しろ」

 

男達から非難がとんだ。

俺は悪くないと、俺は清くないと濡れ衣だと。

そんな騒ぐ男達に包帯先生は指を突きつけた。

 

「簡単に捕まるお前達にも原因はある。もしこれがヴィランに捕まったのだと考えれば、お前達は無駄に被害を大きくする人質になったんだ。これを一つ教訓としておけ」

 

「そんなぁ!!オイラ悪くないのに!!」

「そうっすよ!酷い!!清くないのに!濡れ衣なのに!」

 

「瀬呂の経験の有無についてはコメントを差し控える。━━━が、峰田、取り敢えずお前が持ってきたお宝本というやつは没収だ。“ヒーロー”を目指す“健全”な高校生には必要ない。焼却炉で焼いといてやる。出せ」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!オイラのお宝本がぁぁぁぁ!!」

 

祭壇の後片付けをしてる間、包帯先生から明日の授業参観について説明があった。いきなり手紙を読むわけじゃなくて、先に個性を使った訓練の様子を見せるらしい。

ちょっと希望が見えてきた。

 

「・・・にしてもよ、何なんだよ、この祭壇。本当どっから持ってきたんだ?」

 

不思議そうな瀬呂。

私は優しいから教えてあげる。

 

「知り合いの知り合いの親戚のお兄さんから」

「取り敢えず、その知り合いとは縁切れ。個人的にこんなもん持ってたら絶対やばい奴だ。組織ならもっとだ」

「大丈夫、連絡取ろうと思っても中々取れない奴だし。今回もダメ元で連絡したらたまたま上手くいっただけだからさ」

「なんでもいいから、その知り合いのアドはブラックリストに叩き込んでおけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

HRが終わり皆が授業の準備を始めようとした頃、包帯先生に突然呼ばれた。祭壇を綺麗に片付けた後だったので、今度は何事かと色々やった事を思い出して言い訳を考える。

 

━━━駄目だ、やったイタズラが多過ぎて、皆目見当がつかん。

 

破れかぶれで包帯先生の所にいくと、話があると別室に呼ばれた。

何処にいくのかと包帯先生についていくとオールマイトの行きつけと化してる仮眠室に辿り着く。扉を開けたそこには1時限が授業でない教師陣が雁首を揃えていた。

 

「ハァイ!よく来たわね、緑谷さん」

 

マブダチのミッドナイト先生が気軽な挨拶をしてきたので、私も気軽に挨拶を返しておく。なんだか空気が軽い。

これは・・・怒られないやつだ。

 

「緑谷、朝の事はまだ忘れてないぞ」

「ひぃっ!!」

 

調子に乗ったら、やられる!!

 

空気を読むことに定評のある私は即座にそこへと溶け込んだ。もう気分は一教師である。

私を交えて先生達は話を始めた。

 

面倒臭い部分を取っ払って聞くと、明日の授業参観で保護者を人質にしてヴィラン退治を兼ねた救助訓練をするのだという。お手紙は読まないのかと聞いたら、あれは親御さんを意識させて人質にした時に動揺を深める為だけに行ったらしい。

 

・・・・おいっ!!

 

「頑張ってお手紙書いたのにぃ!!!」

 

駄作かも知れないけど、皆と協力して心血注いだ一作が仕上がったのだ!全米は泣かなくても、日本全国が号泣する物がやっとつくれたというのに!!━━━え、本当だよ!?大丈夫、大丈夫だって。お茶子も遠い目だったけど言ってたもん!耳郎ちゃんだって、百だって、そっぽ向いてたけど、大丈夫だって言ってたもん!

 

梅雨ちゃんだけあしどんと葉隠に全力で口押さえられてたけども!!

 

「まぁまぁ、落ち着いて緑谷さん。お手紙だって朗読しなくても後で渡せば無駄にはならないでしょ?親御さん喜ぶわよ」

 

ミッドナイト先生に宥められては仕方ない。

大人しく座り直して、憎しみを込めた目で包帯先生を見つめた。軽く無視された。解せぬ。

 

それから先生達の話は更に続いた。

そして私が呼ばれた理由も分かった。

私は保護者達の動きを抑制する人質になるみたいだ。

 

当初は保護者に事情を説明し、生徒達になんの連絡も無しに行うつもりだったらしいのだが・・・私がそれらを見抜くと判断した包帯先生が授業参観内容を大きく見直したみたい。

 

「そこでだ、先にも言ったが緑谷、お前には人質としてこちら側の役者になって貰う」

「ええーただでぇすかぁ?双虎にゃんお口のチャックのしかたが下手くそでぇ、もしかしたら不意に何かが零れて落ちてしまいそー━━━」

 

 

「テストの結果しだいだが、夏休みの件がほぼ決定する━━━今の所お前の休みは三日程しか増えてないが、どうする」

 

 

「これも社会勉強の内だと思って精進致します!!」

「清々しい程に良い返事だ」

 

悪魔の契約を交わした私は、包帯先生から告げられる当日のスケジュールを頭に叩き込んだ。間違える訳にはいかないから、死ぬ気と書いてマジで覚えた。

 

何せ行けそうな夏祭りとか調べて予定調整してたりとか、プライベードビーチが確保出来るので女子ーず全員で行く話とか、耳郎ちゃん達と夏のロックフェス行く話とか、ほぼほぼ予定が埋まっているのだ。

今更行けないとかない。

 

というか、私の夏休み三日しか増えて無かったのか!

いや、何も聞かなかったけど、まじか!

私の夏休み、三日だけか!!やっべぇーな!!

 

もう、あれだ、かっちゃんに構ってる余裕ねぇーわ!!

 

 

 

話は一通りまとまり、私は役割を確認した後教室に帰った。丁度授業中だったのだが、授業をしてた先生は事情を知っているのか何も言わずに着席するように言ってきた。

 

大人しく席に座るとこっちを振り返ってたかっちゃんと目が合う。言わなくても分かる。どうしたんだって顔。心配してるって、そういう顔だ。

 

喧嘩中という事が頭に過って返す言葉が思い付かなかった。でも、放っておくのもなんかなぁと思いジェスチャーだけ返しておく。

 

大丈夫だって。

 

そうしたら、かっちゃんは眉間の皺を深くしたけど、授業を受ける為に前を向いた。ノートに書き込み始めたのかカリカリというシャーペンを走らせる音が聞こえる。

 

それに続いて私も釣られるようにペンを手にし、その授業にのぞんだ。

いつもならイタズラしてるであろう、イタズラ時のかっちゃんの背中を見ながら。

 


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