私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
諸君、私は小説みたいなものを書くのが好きだ。
諸君、私は小説みたいなものを書くのが大好きだ!!
でも、たまには休みたいぃ(( ;∀;))!
でも、書きたいぃ( ;∀;)!!
でも、休みたいぃ( ;∀;)!!
ううん、複雑(*ゝ`ω・)!!
緑谷ちゃん救出チームである私、飯田ちゃん、常闇ちゃん、瀬呂ちゃん、尾白ちゃん五人は、ビルへの侵入を試みていた。
爆豪ちゃんが立てた作戦はそう難しくはない。
簡単に言ってしまえば爆豪ちゃんが囮となり、敵の注目が爆豪ちゃんに注目してる間に救出し、迅速に脱出する━━というシンプルな物。
救出チームは二つ分けられ、それぞれを人質の側に密かに配置する事になっている。
迅速に制圧出来る近接戦闘や拘束に秀でた救出チームを保護者達に、救出後の逃走を考え移動能力の高い人達を緑谷ちゃんの救出チームにといった具合よ。
私はその個性故に緑谷ちゃんの救出チームになっているわ。
轟ちゃんが避難路確保を確認した時点で爆豪ちゃんがドームを爆破させ敵の注目を集める。
敵の注目が人質から僅かにそれたその時を見計らい、私達救出チームが敵へとアタックをかける。勿論、戦闘よりも救出を優先する事になっているの。
「僕が道を切り開く。後続の皆、緑谷くんを頼む!」
飯田ちゃんが物陰から飛び出し、一直線に見張りの男へと駆ける。
出し惜しみなしのレシプロバースト。
一瞬で接近した飯田ちゃんは見張りの男を蹴り飛ばした。一撃だった。
直ぐ様別の見張りに向かう飯田ちゃんを横目に、私は常闇ちゃんと走る。
「蛙吹、行くぞ!!」
「けろっ、勿論よ!」
常闇ちゃんはダークシャドウちゃんを、私は舌を使ってがら空きになってる窓を通り抜け、ビル二階の内部へと入り込む。
敵の位置は耳郎ちゃんに教えて貰ってる。
最初に教えられた場所にまだいるかは分からないけど、暫くヴィラン達の様子を窺っていた耳郎ちゃんが言うには敵の配置に乱れがないとも聞いてる。今ならまだ当初の予定通りバレずに侵入出来る可能性は高い。
窓を抜けたそこにヴィランの姿はなかった。
二人で周囲を確認し、安全を確保した所で下にいる三人に合図を送る。ここからは別行動。逃走ルートを三人に作って貰わないといけないから。
ビル内部にいるヴィランの数は変わってなければ三人。
内一人は一階。二階から上に向かえる以上、気にするのは残った二人だけ。その二人は最上階から一つ下のフロアにいる。
一階にいるヴィランとビルの外を見張るヴィランは、中間距離で拘束力に長けた瀬呂ちゃんと、近接格闘が得意な尾白ちゃん、今はエンストで戦えないけれど直に復活する飯田ちゃんに任せ、私達は先へ。
ダークシャドウちゃんを先頭に進んでると、先に次のフロアを確認したダークシャドウちゃんが首を振った。
「見張リガ降リテキテルゼ。シカモ二人」
「運が良い、と言っておくか。人質の所に向かわれたら厄介だった。蛙吹、俺の後ろから逸れるな」
「けろっ、了解よ」
階段をあがりきった所で前方から掛けてくる見張り達の姿が見えた。
「ダークシャドウ!!」
「アイヨ!!」
常闇ちゃんの一声が掛けられた瞬間、ダークシャドウちゃんが一気に加速する。一瞬で距離を詰められた見張り二人はダークシャドウちゃんの両腕に殴り飛ばされて壁に叩きつけられた。
叩きつけられた見張りの二人が立ち上がる様子はない。
「弱すぎるな」
「悪い事ではないけれど・・・」
既に屋上階まで二フロア。
助けを呼ばれる事なく敵の排除が出来た事は喜ぶべき事。
けれど、どうにも腑に落ちない。
「・・・だが、迷ってる時間はないな。先に進むぞ」
「注意して。なんだか嫌な感じがするわ」
「そのつもりだ」
警戒しつつ階段を上がっていく。
耳郎ちゃんが調べた時と変わらないのか、上階からはヴィランらしき気配はない。
順調と言う他ない状況。
だと言うのに、私の中に嫌な予感が募っていった。
屋上出口付近に辿り着いた所で、常闇ちゃんが「合図だ」と小さい声で呟く。
常闇ちゃんの視線を追ってみれば、崩れた壁の向こうに上鳴ちゃんが出したであろう電気の光が見えた。
「間の短い光が二回・・・轟ちゃんと、切島ちゃんの所の準備が出来たのね」
「後はここだけだ。ダークシャドウ、様子を見ろ」
屋上への入口の前、物陰から隠れながら常闇ちゃんはダークシャドウちゃんを走らせる。
器用に影から影へ姿を隠しながら、ダークシャドウちゃんは首を伸ばし辺りの確認していく。
そして、ダークシャドウちゃんが何かを見つけた。
「━━━━耳郎が確認した通りの位置。ヴィランも同じだ。それなら、蛙吹」
「二点から、ね。分かったわ。合図は私が」
「頼む」
近くの窓を開け、下の見張りに見つからない死角を伝って屋上へと向かう。
屋上に後は一歩という所で、私は一度深呼吸する。
上った先に緑谷ちゃんがいる。
そして、それを捕らえているヴィランも。
救出チャンスは一度きり。
もしその瞬間を間違えれば、追い詰められたヴィランが緑谷ちゃんに何をするか分からない。
私は再度深呼吸し、私達の合図を待っている耳郎ちゃんに向けて壁を叩いた。準備完了の合図。授業で教わったモールス信号。
直後、ドームの方に三回連続で閃光が走った。
私は爆発に備えて壁に体を押し付ける。
耳をつんざくような爆発音。
爆風が砂埃を巻き上げて吹き荒れる。
私はそれに乗じて屋上に。
緑谷ちゃんの下へと走った。
予定通り常闇ちゃんも屋上に入ってきてる。
私より目立つ為に、その個性を存分に使って。
爆発によって混乱するヴィラン。
突然常闇ちゃんが音を立てて現れれば視線はそこに釘づけになる。
でもそれは一瞬。
直ぐに人質を盾にされるだろう。
時間はない。
ロープを切るために百ちゃんに作って貰ったナイフを手に、いつでも使えるよう白刃を抜いた━━━。
「当然、ソウ来ルヨネ?」
目の前に大きな影が見えた。
視線を上げればスーパーヴィランの視線は私を捉えていた。
「な、んでっ━━━!」
「爆発直後、混乱スルヴィランヲ二点カラ攻メル。悪クハナイ。━━━ガ、少々詰メガ甘イゾ!ドウセナラ、常闇━━━カラス少年二、私ヲ攻メサセルベキダッタナ!コレデハ陽動デアル事ガ、バレバレダ!!」
スーパーヴィランが後ろへと腕を引き絞った。
「不味いっ、蛙吹!!ダークシャドウ!!」
「ガッテンダ!!」
「スーパーヴィランーーー!!スマッシュ!!!」
ダークシャドウちゃんが私を覆うように庇った瞬間、周囲を豪風が襲う。拳の一振り。直撃していないにも関わらず、その余波はコンクリートの地面を砕き、私達をビルの外へと吹き飛ばした。
私と常闇ちゃん、ダークシャドウちゃんの体が地面に向け落ちていく。
「けろっ!!」
咄嗟に舌を伸ばし剥き出しになった鉄骨にしがみつく。
「蛙吹!」
「大丈夫よ!そのまま、掴まってて!」
落ちる振り子のようにビルに迫る私達の体。
このままだとビルの側面にただ叩きつけられるだけ。
だから舌の力を振り絞って位置を調整し、なんとか開いてる窓へと体を滑り込ませる。
ビル内に転がるように戻ってきた私達は直ぐ様次の行動に移った。本当は直ぐにでも助けに戻りたかったけど、それは感情の問題。理性的な判断ではない。
だから、最悪を想定して決められた、その合図を外に向けて放った。
赤い煙が昇る発煙筒。
作戦失敗をさす、それを。
◇◇◇
「赤い煙・・・!?そんなっ!」
決められていた合図。
念のために全員に渡されていたそれは、作戦失敗をさす物。煙が上がったのはニコちゃんが捕まってたビル外部。
つまりはそういう事。
脳裏に最悪が過った。
その光景を想像して、吐き気が込み上げてくる。
「大丈夫かよ、麗日!」
心配そうにこちらに駆けてくる上鳴くんが見えたけど、返す言葉が思い付かない。どうしようという思いだけが、ぐるぐると頭の中を巡ってく。
そんな時、不意に頭に衝撃が走った。
一瞬何が起きたか分からなかったけど、顔を上げたら手刀と鬼のような顔した爆豪くんがおった。
強い瞳が、私を見つめとった。
「プランBだ、浮かせ丸顔」
もしもの時、爆豪くんが言っていたもう一つの作戦。
もう作戦とも言えないそれを、爆豪くんは迷わず選択した。
内心私より心配してるだろうに、そんなの微塵も見せず、ただ前だけを見て。
いつか、ニコちゃんか言ってた事を思い出した。
楽しそうに私に爆豪くんの事を語る、ニコちゃんの姿を。
「耳たぶ、敵の残りは」
「あんたの爆音で分かんなくなった。けど、その後来た皆からの連絡だと、あのスーパーなんちゃら以外は排除出来たと思う。他に隠れてたりしなければだけど」
「警戒だけはしとけや」
「了解。予定通り、私らは避難始めるよ。後任せる」
耳郎ちゃんを一瞥した爆豪くんは私に掌を差し出した。
触れってことなんやと思う。
さっさと浮かせと。
私は自分の掌に沢山の気持ちを乗せて、爆豪くんの手を叩いた。
「爆豪くん・・・ニコちゃんの事宜しくな。絶対、絶対、助けて・・・!」
ニコちゃんが言うとった。
爆豪くんは頭は良いけど馬鹿なんやって。
爆豪くんはどれだけ大変でも、どれだけ辛くても。
逃げる事を知らない、諦める事を知らない。
大馬鹿なんやって。
私の言葉に爆豪くんは凶悪な笑みを浮かべる。
ヒーローとは思えんような。
でも、どこか頼もしいそれを。
「頼まれる筋合いなんざあるか!んなもん、たりめぇだろうがボケ!!」
そう言って背を向けた爆豪くんは一人飛んだ。
ニコちゃんがおる、その場所に向かって。
◇◇◇
「赤い煙・・・!まさかっ!」
俺らを先導しとった八百万ちゃんが驚きの声をあげた。
顔色を見ればそれが宜しくない事を指しとるのが直ぐに分かる。
「どないしたんや・・・?」
そう尋ねてみると、見るからに狼狽えた。
「な、なんでもありません!お気になさらず!皆さんはどうかこのまま避難を!!」
どう見ても非常事態って感じやな。
救出チームを分けた言うとった所をみると、双虎ちゃんの方に向かわせたチームが失敗した、とかそんな所やろ。
これがただの演習やったら、そない大した問題でもない。せやけどそうでなかった場合、それは最悪を意味する。だからこそ、八百万ちゃんが動揺しているのだろうし。
しかし、立派なもんやな。
仲間の危機を知りつつも、俺らを避難させる為に前を向く。心配する気持ち圧し殺して、最善を尽くそうとする。そんな重圧を背負って、なおも取り乱さずに先導し続ける。
本当に立派や。
護衛に周りにいる子もそれは同じやけど、彼女はこのチームの指揮を任されてる筈。
ならその重圧はもっと重いもんやろ。
ヒーロー科っちゅうんわ、えらい所やな。
こんな子ばっかりおるんやろか。
「少しだけ、娘が心配になってきました」
不意に隣を進んどった蛙吹さんが小さい声で話し掛けてきた。
なぜ小さい声かといえば、演習であることを確信してきてるせいで俺達の会話が軽くなってきたせいや。他の人と温度差があり過ぎるんで、話すときはこうして声を圧し殺して話すようにしとる。
「こんなに優秀な子達の中で、上手くやれているのか」
「それは、俺も同じです。お茶子は優しい子なんやけど、その分抜けた所がある子おやさかい」
「うちの子も優しい子なんですが、人と話すのが少し。喋れない訳ではないんですが、結構物を言う子なので」
「御互い変わりませんな」
「そうですね、けろ。しかし、こんな話を私達がしてると聞いたら怒るでしょうね。余計なお世話だと」
「確かに、言えますね」
そんな会話をしとる時やった。
「すみません!止まって下さい!」
全員の足が止まる。
そして視線はそこへと集まった。
突然声をあげた、轟さんへと。
「どないしたんですか?」
「いないんです!緑谷さんが!!」
言われて辺りを見渡すと確かに姿がない。
殆ど一緒にいた爆豪さんに目をやれば、首を横に振った。
「さっきまで首根っこ掴まえてたんですけど、少し目を離したら何処かに・・・」
「さっき、一瞬止まった時だとは思うんですけど」
八百万ちゃんが煙見て足を止めた、あの時。
確かに全員が足を止めて、視線がそこへと集まった。
時間にして本当に一分にも満たない時間。
その間に緑谷さんの姿が見えなくなったという。
「麗日さん、まさか」
「まぁ、まさかやと思います」
蛙吹さんの言葉に俺は双虎ちゃんが捕らえられてたビルを見た。砂埃が凄くて緑谷さんの姿は見えない。
けれど、必死に走る緑谷さんの姿が、俺には見えた気がした。