私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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店長!シリアスさんご来店です!

ポイントカードめちゃ持ってます!
なんか居座る気まんまんなんですけどーー!




向き合う物が大きければ、誰でも迷うし立ち止まる。それでも譲れない物がある者だけが、前に進む事が出来る。だから私は進む・・・体重計なんて怖くない!好きなだけ、食べてやるぞ!ケーキバイキング万歳!の巻き

「行くぞ、ヒーロー!!」

 

掛け声と共に駆け出すガチムチ。

身に纏う雰囲気はあのヒーロー殺し以上の圧倒的なまでの威圧感。改めて思う。教師としてのガチムチはポンコツもポンコツだけど、ヒーローとしてなら別格だと。

 

ハンデなんて意味がありますか?なんてレベルの速度で迫るガチムチの姿に、真正面からの戦闘は避けるべきだと思い、未だ逃げる素振りのないかっちゃんに向け声をあげた。

 

「かっちゃ━━━━っ」

「黙ってろや!!」

 

かっちゃんの怒鳴り声に言葉が詰まった。

さっきの顔や目を思い出して、なんて言えばいいか分からなくなる。

 

どうしようかと悩んでる内に、かっちゃんとガチムチの距離は手が届くところまで来てしまう。

 

「正面からとは舐められた物だ!!」

「っせぇ!!それぁな━━━━」

 

両手を前に突き出したかっちゃんの姿を見て、何をするのか直ぐに察した。最近使えるようになったアレだ。

私は目を瞑りそれに構える。

 

「━━━これを見てからほざけや!!!」

 

カッと、目も眩むような光が周囲を覆った。

スタングレネードと名付けた敵の無力化を図った技。

ガチムチは攻撃の意図に気づかずまともにそれを受けた。

 

その隙を逃すかっちゃんではない。

直ぐ様ガチムチに肉薄する。

かっちゃんの位置を予測してガチムチが手を伸ばすが、その行動を予測していたかっちゃんはかわし切った。

 

懐に潜り込んだかっちゃんの手がバチバチと音を立てる。

 

「ぶっ飛べや!!」

 

爆速ターボで加速。

その勢いをそのまま乗せた掌底がガチムチの腹部に突き刺さる。くぐもったガチムチの声に答えるように、掌底から爆撃が放たれた。

 

必殺とは言わなくてもかなりの一撃。

にも関わらず、ガチムチの体勢は崩れない。

それどころかガチムチの目がかっちゃんを捉えていた。

 

スタングレネードが直撃したなら有り得ない。

あまりも回復が早すぎる。

つまりは直撃はしていないということ。

 

私は引き寄せる個性でガチムチに向かって飛び、目眩ましに炎を噴いた。

直ぐに反応し顔を覆ったガチムチに、渾身の力を込めて飛び蹴りをかます。

 

ニコちゃん108の必殺技の一つ。

ライダー的ミサイルキックである。

 

顔面に叩き込んだつもりだったが、腕でガードされた。

流石に先生として私の行動を見てる訳じゃないなと、少しだけ感心する。

そして同時に、この野郎ぉとも。

 

私の動きに合わせてかっちゃんが二撃目をガチムチに叩き込む。チャンスだというのに掌底から放たれる爆撃がさっきより弱い気がする。一瞬、かっちゃんが私を見た所から、私を気にして威力を下げたのは分かった。

文句を言ってやりたい所だけど、言葉にならなかった。あの目を思い出すとどうしても。

 

「━━━手を抜いて、勝てると思われてるとはな!心外だぞ、爆豪少年!!」

 

復活したガチムチがかっちゃんの腕を掴み、力任せに振り回す。そして私に目掛けて投げ飛ばしてきた。避けようと思ったけど、飛んできたかっちゃんの様子を見て受け止める事を選んだ。

 

かっちゃんの体とガチムチの体に対して引き寄せる個性を発動する。フルスロットルで発動すると飛んでいってしまうのでそこそこの力で速度を弛めるだけ。

スパイクを使い体を固定し、乙女力をフル動員して身構え━━━かっちゃんを受け止めた。

 

勢いを殺しておいたお陰で大した苦もない。

飛ばされた速度そのままなら、砲撃も良いところだったけど。・・・というか、生徒相手になんてもんかますのか!あのクソガチムチ!

 

抱えたかっちゃんに声を掛ける。

混濁していた意識が戻り、かっちゃんの目が私を見た。

直ぐに状況を理解したかっちゃんは転がるように私から離れる。

 

「っに、してんだ!てめぇは!!」

「なっ!!危ないと思って受け止めてあげたんでしょうが!!感謝くらい言えないの!?」

「頼んでねぇ!!」

 

それは頼まれてないけど!

くそっ!殴り飛ばしたい!!

けど、今はそんな事してる場合じゃないから!見逃してやるけど!こにやろうめぇ!!

 

「兎に角、一旦引こう!ぶつかって分かったでしょう!まともにやったら駄目って!隙をつけばチャンスはある!」

「勝手に引きやがれ!!」

「私一人引いても意味ないの!!個別でウロウロしてたらそれこそ鴨でしょ!!一人で相手出来る人じゃないんだから!二人で━━━」

 

 

「━━━邪魔なんだよ!!てめぇが!!!!」

 

 

私の言葉を遮るようにかっちゃんの怒鳴り声響く。

拒絶以外、何物でもないそれが。

 

「目障りなんだよ!!気が散るんだよ!!てめぇがウロウロしてると!!」

 

 

「馬鹿面下げてついてくんなや!!ピーピー喚くな!!うっとうしいんだよ、ボケ!!」

 

 

「てめぇの力なんか、いらねぇんだよ!!」

 

 

そう言ってガチムチに向かって走り出すかっちゃん。

掛ける言葉が見つからなくて、私はそれを見送るしか出来なかった。

どうするべきか分からなくて、何も出来なかった。

 

かっちゃんの言葉が頭の中でまだ響いていた。

グルグルとずっと回っていた。

その顔とその声が。

ずっと。

 

 

『━━━邪魔なんだよ!!てめぇが!!!!』

 

 

気がつけば私の足は、かっちゃんの背中が見える反対方向へと駆け出していた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

荒療治である事は分かっていた。

本来なら少しずつ自覚させ、成長を促す方が良いと分かっていた。

それでもこの手段をとったのは、奴が動き出している事を知ったからだ。

 

時間がない。

いつなんどき、何が起こるか分からない。

その時になってその綻びが弱点にならぬように、克服させたかったのだが━━━結果は最悪に終わった。

 

爆豪少年から離れていく緑谷少女の背中を見ながら、私は溜息が溢れ落ちるのを耐える。

何故、こうなってしまうのか。

 

「これで、良いんだな。爆豪少年?」

 

そう尋ねれば、爆豪少年はその顔を歪めた。

吐いた言葉に後悔はあるのだろう。

けれど、その瞳は真っ直ぐ私を見つめている。

 

彼を追い込んだのは、ある意味で私だ。

 

緑谷少女を私の事情に巻き込み、それを爆豪少年は知った。爆豪少年は緑谷少女にそれを伝える事を拒み、代わりに自分が守るとそう言った。

だから任せてきた。何よりも覚悟を決めた男の言葉だ。聞いてやりたかった。

 

考えるべきだった。

爆豪少年が背負う物の大きさを。

私と同等の敵より彼女を守るという事が、爆豪少年にとってどれほど困難で、どれほど厳しい現実なのかを。

 

楽観視していた、私の甘さ。

その結果がこれだ。

 

「君を責めるつもりはない。それも一つの答えだ。かつて私の師だったお方も、危険に巻き込まぬ為、我が子をヒーローである己から遠ざけた」

 

けれどな、爆豪少年。

私は君達が共に歩む姿が見たかった。

 

孤独ではなく、友と歩む姿を。

私が選べなかった、その道を歩む姿を。

 

「もう一度尋ねる。後悔はないんだな・・・?」

 

爆豪少年から返る言葉は無かった。

燃えるような瞳が私を見つめるだけ。

ただそれは、あまりに十分過ぎる答えだった。

 

「ならば、良い」

 

私の言葉を聞いた直後、爆豪少年が走った。

爆速ターボと呼ばれる加速を使わなかったことに疑問が浮かんだが、直ぐにその理由も分かった。

溜めだ。

 

加速に使う力すら溜めたのだ。

 

「消し飛べやぁぁ!!!」

 

爆豪少年が掌を突き出す。

一瞬光が走ったかと思えば、紅蓮の爆炎が辺り一面を巻き込み私に迫る。

流石にまともに当たると痛いのでスマッシュを放ち爆炎を蹴散らす。

 

すると爆炎の先に籠手を構えた爆豪少年の姿が見えた。

私の背中に寒気が走る。

 

爆豪少年が籠手のトリガーに刺さるピンを引き抜く。

さっきの光とは比べ物にならない輝きと共に灼熱が吹き荒れた。

 

地面を抉るように殴り飛ばし、土の壁を作り受け止める。かわすことも出来たが、気持ちの籠ったそれをかわすのは気が咎めた。

それ以外にも拳圧で返す事は出来たのだが、下手に返して爆豪少年にあの灼熱が返ると怪我をさせてしまうから却下だ。あくまで試験。不用意に怪我をさせるべきはない。

 

しかし、やはり爆豪少年のセンスは抜群だな。

籠手に仕込まれたそれを理解していなければ、間違いなく不意を打たれただろう。

 

「━━━私には通じないがな!!!」

 

灼熱が治まった後、直ぐ様拳を振り抜く。

爆破によって生まれた煙が晴れ、隠れていた景色が目に映る。

━━が、爆豪少年の姿がない

 

直後、頭上から小さな爆発音を聞いた。

咄嗟に視線を向ければ、爆豪少年の掌が目前まで迫っていた。

 

「死ねやぁ!!!」

 

爆撃が私を襲った。

恐らく今日一番の高火力。

爆撃の重みに体が地面に沈む、ガードに構えた腕が焼け痛みが走る。

籠手の一撃すら囮にした必殺。

 

三段構えとは、正直恐れいった。

並みのヴィランでは相手になるまい。

相澤くんの言葉が今更になって響く。

 

これは確かに、他の先生方には任せられんな!!

 

爆撃に耐えきり直ぐに反撃に移る。

爆豪少年に向け拳を振り上げた。

しかし、この一撃は空を切った。

 

避けられた事より、その動きに目がいった。

足裏から吹き出す爆風。空中を跳ねるように移動するそれはまるで師の盟友、グラントリノの動きその物だったのだ。

ブーツを変えたのは気づいていたが、まさかこういう仕掛けがあるとは思わなかった。

 

流石にグラントリノ程の機動力はないとは思うが、三次元的な動きを自在に操るのであれば厄介さはまた一段と上がる。

 

「化けるとは思っていたが、ここまでとは・・・いや、しかし━━━」

 

それでも、まだ青い。

一つ一つの動きに粗がある。

付け入る隙が目につく。

 

強くはなった、格段に。

だが、それでもまだ。

まだ、だ。

 

「一人で私に挑むなど、三年は早い!!」

 

学校を卒業する頃まで順調に成長していけば、私がハンデなしでもそれなりに戦えるようになるだろう。

十年もすれば、ヒーローランキングに名を連ねるヒーローになるだろう。

 

だが、それは先の話。

 

まだ足りない。

経験が、力が、速さが。

何もかも足りない。

 

「デトロイトぉぉぉ━━━━」

 

爆豪少年が身構えた。

やはりグラントリノと違い空中移動には大きな制限があるようだ。かわさないのが良い証拠だ。

 

「━━━スマッシュ!!!」

 

拳圧が起こした爆風が爆豪少年を襲う。

爆風に巻き込まれ爆豪少年は切りもみしながら空中を飛んだ。それでも今度は意識までは失わなかったのか、地面に落ちる前に体勢を調え着地する。

 

だが、流石にノーダメージとはいかなかったようで体が大きくふらついている。

 

立てない彼に私は歩みよった。

もはや駆ける必要すらない。

 

「入学から僅か三ヶ月と少し。短い期間でよくぞここまで鍛えた。入学当初と比べれば段違いだ。誇っていい。君は強い」

 

立ち上がれない爆豪少年は視線だけをこちらに向けた。

 

「っせぇ!!何処がっ、強ぇんだ!!平気な面しやがって、どの口がほざきやがる!!」

「同学年・・・いや、雄英高在校生の中でも間違いなくトップクラスだよ。単純な戦闘能力だけで言えばね。私と比べるのはナンセンスとしか言えない。何故なら君と私に与えられた時間には大きな開きがある。君より遥かに努力し経験を積んだ私と、まだプロにすらなれてない学生の君とでは力の差があって当然だ」

 

その言葉で納得してくれればいいが、それが出来たらここにはいないのだろう。

案の定、爆豪少年は舌打ちを返してきた。

 

「それじゃ足りねぇだろぉが!!あんたより強くねぇと、意味がねぇだろうが!!」

 

吼える彼が何を思ってそれを吐くのか。

少し分かったつもりだが、私では理解仕切れない。

 

「決めたんだって、言ったろ!!もう曲げねぇ!!俺は、守るんだよ!!あの馬鹿を!!ヒーローに、あいつに約束したっ、ナンバーワンヒーローになんだよ!!」

 

でもそれが、彼にとってどうしても譲れない事なのは、もう分かっている。

本当は変わって欲しかったが仕方ない。

 

「━━━本当のヒーローに!!」

 

ならば、せめて全力で相手をしよう。

君の気持ちに全力で応えよう。

心を込めて。

 

拳を振り上げて、私は最後にもう一度だけ尋ねた。

 

「後悔はないんだな?」

 

答えはない。

返ってきたのはやはりあの瞳。

 

「残念だ━━━━━」

 

答えを聞いた私は拳を振り抜こうと力を込めた━━━が、迫る風切り音に拳を止めた。

 

それは真横から。

視線を向ければビルの隙間を縫うように真っ直ぐにこちらに飛んでくる物がみえる。

 

 

そうだよな。

君はそういう子だ。

 

「戻ってくると、そう思っていた!!緑谷少女!!だが甘い!真っ直ぐに向かってくるとは!速度があろうと━━━」

 

拳を構えそちらを向く。

迎えうつために。

 

「デトロイトぉぉぉ━━━お?」

 

影から飛び出してきたのは緑谷少女のマントがつけられた人形。チェーン店においてあるような、そんな宣伝用の人形だった。

しかもそれは私にぶつかる事なく目の前に落ちる。

 

 

 

 

 

その直後、後頭部に衝撃が走った。

完全に虚をつかれた一撃。

目がチカチカする。

 

「これは、おまけ!!!」

 

チカチカする視界が炎に包まれた。

視界は封じられたが音は聞こえる。

炎の先から重たい何かを引きずるような、その音が。

 

炎を消し飛ばし視界が回復した頃には、二人の姿は何処にもなかった。

 

「ふふ、まだ終わらないか・・・ああ、そうだな。そうこなくては。緑谷少女、爆豪少年」

 

私は彼女達を迎え討つ為に出口へと向かった。

最後の決着をつける為に。

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