生と覚醒のグリムガル   作:umaru

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3・豊作

「じゃあ・・・まぁ、よろしく頼む」

 

少し気まずい気持ちがあり、なんとも言えない声掛けをする。

 

「アカハくんってなあ、さっきは変な事言うてたのに、1人になるとなんかへんやなあ?」

 

・・・だってさっきは変な事言っても予想してる反応返してくれる男がいたし・・・女の子との会話なんか殆どした事ないよ、多分。記憶無いけど。

 

「まぁ、異性と話すのは苦手みたいなんだよな、覚えてないけど前からそうだったと思う。ふざけ合える相手が居たら大丈夫だけど、その、女の子だけだとちょっと・・・」

「あ、わ、分かります、私も、男の人と話すの苦手で・・・」

 

同士よ・・・!やっぱそうだよなー、恥ずかしいし。俺にはチャラ男のコミュ法がさっぱり理解出来ない。そりゃ女の子と仲良くしたいけどもグイグイ行くのは気が引けますぜ。

 

アホな事考えてると森に到着だ。鬱蒼と生い茂る木々が視界を遮り、死角を発生させている、突然襲いかかられたらどうしようか。

 

「んじゃ、まぁ、トレジャーサーチ使ってみるよ。ユメは周り警戒しててくれ」

「ほーい」

 

トレジャーのは魔法としては異質だ、エレメンタル言語を使う必要がないという点が。

なぜ使わないのか知るものは居ない、初代探検家だけだろう。知る必要もないし

 

少しばかりの魔力と引き換えに周辺の宝物を探す、人間界目線で価値ある物に反応するこの魔法。半端なく便利だ。ほかのスキルがなくとも最悪これでやってける程度に。流石探検家の奥義と言ったところか。

 

少し離れた所に反応があった、幸先いいな。魔法を使うと、ピンポイントで場所が分かる訳ではなくその方向に淡い光が見えるようになる。場所が遠いほど光は弱くなり、最後には目に見えなくなる。この光度なら・・・100メートルくらいかな?

 

あと対象のレア度によって色が変わり、

安いものから

となる。今見ているものは灰色なので、2〜30カパーにでもなればいいほうかと思う。

 

「こっちの方向だ、行こう」

 

2人を連れて先に進む。外付けの物入れを左手に構え盾替わりにし、右手でメイスを持つ。何処に敵がいてもおかしくないからな。

 

緑の香りが心地いい、空気が澄んでいる。鳥の鳴き声がしてきて、心が癒される。もうここはモンスターの巣窟ではあるが、とてもそんな雰囲気を感じさせない様子だ。ユメとシホルは2人でコソコソと話をしているなんだろう、悪口を言われてないだろうか。私、気になります。

 

そうこう考えているうちに、光がどんどん強くなってきて、小さくなる。少し開けた森の中に、いくつかの袋が落ちていた。殆どは白だったが、いくつか灰色の物も混じっているようだ。

 

「これは・・・ゴブリン袋だな。なんで落ちてるのかは分からないけど・・・、あ、抗争でもあったのかな?なんにせよ、なかなかお金になるな」

 

ユメとシホルに頼み、袋を集めてもらう。ゴブリン袋というのはいわゆる宝物入れだ。ゴブリンに見られる習性で、宝物を袋に入れておく。まぁ、ゴブリン自体に使える素材がほとんど無いのでプラマイゼロ、どころか大抵のゴブリンは大したものを持っておらず、人気のあるモンスターではない。

 

よく見ると首飾りも数多く堕ちていて、泥ゴブリンとゴブリンが戦ったようだ。お互い被害を受けている撤退、死体は動物に食われたって所かな。ゴブリンがダムロー旧市街から出てくるとは。

 

「なんか、いっぱいあるなあ、お金になるんかな?」

「牙とか、入ってますけど。小さいからならないんじゃないですかね・・・」

「んー、と、全部換金出来る物だから、一応持っておくよ。リュックに入れるから貸してくれ」

 

2人から袋を受け取り、リュックに入れる。なかなか大きなリュックなのでまだ余裕がある。中に入ってるのは、非常食の干し肉と多少の水分。まだ駆け出しも良いとこなのでろくなアイテムも買えていない。

 

付近の物を拾い終わった俺たちだが、見落としていたものがあった。緑のアイテムだ。いかんせん森の中なので気づかなかったが、ふとけもの道に目をやると光っているのが見えた。

 

拾ってみると、少し薄汚れた銀貨だった。すり減っているので、本来の価値より下がるだろうが立派な銀貨だ。

 

「わあ、すごいやん。トレジャーサーチって便利やなあ。うちも探検家なろうかなあ」

「ユメは、狼犬が欲しいんだろ?」

 

確か市場でそう言ってた気がする、残念ながら探検家に猟犬を手なずける能力は無いので、欲しいなら狩人になるしかないだろう。

 

「あー、そやった。狼犬かわいいんやんな、シホルも犬とか好き?」

「え、えっと、私は、猫の方が・・・」

「猫かあー」

 

また2人の会話に戻る、ちょっと入っていけないな、俺の対女子力では。

 

その後もトレジャーサーチを使い細々としたアイテムを集めていく。それは落とし物らしいものだったり、ゴブリン袋だったり。1度だけ、骸骨を見つけてしまったこともある。女の子2人が青ざめ、萎縮してしまっていたため頭を掴んで反対方向を見させた。

例え人の遺品だろうと俺達には金が必要だ。かと言って女の子に死体あさりなんてさせる訳には行かないので自分がやるしかない。

 

そんなハプニングがあったりもしたが、森の浅い所だったからか、運が良かったからか。モンスターには1度も出会わなかった。穴鼠には1度だけ会って、横なぎをメインに攻撃し撃退した。その際ユメが足を噛まれたので治療した。ほかの人に使うのは初めてだったが上手くいったようだ。

 

そう言えば、穴鼠戦ではシホルが意外な活躍を見せた。杖は割とリーチが長く、バットのように振り切ると1匹の穴鼠が吸い込まれるように激突して吹き飛んだのだ。飛んだそいつはもう1匹を巻き込み気絶した。俺が駆け寄りトドメを刺しておいた。シホルはあまり殺傷が好きではないようなので。杖振った時もへっぴり腰だったし。

 

「今日だけで割と稼げたな、穴鼠は割といい値段になるし。2人とも今日は助かったよ」

「いえ・・・こっちこそ、ありがとう」

「うちからもありがとなあ」

 

予想外に稼げたので、体感早めに街に戻った。まぁ、あの当たりのアイテムは粗方取ってしまったし、次からはこうはいかないだろうけど。いつかは落ちてるだけのものなんか尽きてしまうので、戦うことも視野に入れなければならない。

 

「そう言えばユメ、足はもう大丈夫か?」

「うん、アカハの魔法でうっかり大丈夫やよ」

「そこはすっかりとかだろ・・・」

 

今日1日で、2人とも随分仲良くなれた気がする。ユメは明るくて話しやすいし、シホルも物静かだけど話しかけるとちゃんと答えてくれるから、こっちも落ち着いて話せた。

 

町について、戦利品を換金する。場所は、アリル先生に紹介してもらった店だ。そこらの店だとぼったくられるかもしれないのでこれからもここを利用しようと思う。

 

「おやおやアカハくん。こんなに可愛いガールフレンドを2人も連れてくるとは中々隅に置けないねぇ」

「ちょ、違いますよ。確かに可愛いですけどまだ知り合ったばかりですし。ただのパーティメンバーですよ」

 

店主は中年のおばさんで、話好きなのでこういってからかわれるとは思った。でも換金する所を見てもらわないとまだ信頼関係が薄いので、ちょろまかしてると思われるかもしれない。ついでに個人で大体の相場を覚えておいて損は無いだろう、という考えもある。騙される危険も減るし。

 

「(いきなり可愛い言うやんか・・・)」

「(は、恥ずかしい・・・)」

 

「今日の戦利品です、換金お願いします」

 

大小様々な牙とか、すり減った貨幣、小さな小さなナイフなどもある。

 

大物といえば穴鼠だな、物理的にも。

 

「ふーん、随分と色々持ってきたねぇ。いい稼ぎじゃないか」

 

次々と鑑定していくおばさん。自分でも鑑定金額には目星を付けているが、少しでも高くなることを願おう。

 

「うん、締めて5シルバーと70カパーでどうだい?この穴鼠なんか傷が少ないから少し高めに買い取らせてもらうよ?」

 

金額に異論はない。交渉するにも、これでも割と条件がいいのでこのままでいい。傷が少ないのは、俺とシホルが打撃で倒したからだな。ユメは短剣だったから傷が大きい。

 

あ、それに気がついたユメがしょんぼりしてる、そこまで気にしなくていいのに。

 

「はい、ありがとうございます、それでお願いします」

「はいよ、落とすんじゃないよ」

 

鈍く光る5枚の銀貨と70枚の銅貨、正直重いが稼ぎとしては最上と言っていいだろう。小説では序盤殆ど稼げてなかったはずだ、レイジたちと比べてはいけない。

帰りにマナト達に内緒で串焼きを買って食べた。串焼き屋の前を通った時に皆示し合わせた様にお腹が鳴ったのだ。

2人は遠慮していたが、所詮1本4カパーのもの。自分のポケットマネーで奢らせてもらった。今日の稼ぎがどう分配されるか分からないのが不安だな。普通に考えると3人で分けるんだろうけど、もしあっちの稼ぎがあんまりにも悪かったら分けないと、かもしれないし・・・


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