騒々しいアイドル達とプロデューサー お前ら皆落ち着け。 作:べれしーと
気づけば俺は椅子に座っていた。
(ここは……プロジェクトルームか。藍子の時と同じだな。)
自分を見るとスーツ姿である。声の確認……男ですね。
(つーか俺じゃん。プロデューサーじゃん。やったぜ!)
喜びを堂々と見せてやろうと思い、俺は机の上に立つ!小学生の様に!……いや今どきの小学生は机の上には立たないか。それじゃあ彼らは一体ナニにたたせるんですかねぇ……?ニチャァ
まあそれは置いといてだ。早速決め台詞!行くぞグリ●ドマン!
「永劫と悠久を超越し、輪廻転生を果たした独身……
その名も!般若し」ガタッ!
「おはよ。」ガチャ
「おう。おはよ。」スタッ
「……今机の上に乗ってなかった?」
「それは幻覚だよ。厳格な俺がまさかそんな。」
「はあ。」ジトー
「呆れないで。」
「うん。」
「怒ってます?」
「いや。」
「二文字以上で話して。」
「いや。」
「日本語の妙。」
運悪く邂逅してしまった彼女の名前は渋谷凛。今は成りを潜めているがれっきとしたヤバイドルである。
あのね。凛はこうやって『クール!』みたいな雰囲気醸し出してるけどそんなことはないのよ。落ち着いた美少女?まさか!野獣だよ!美女と野獣の映画に出たら野獣役だよ!それか邦題が野獣と野獣になるよ!ってドキュメンタリーじゃないかそれ!
最初は雰囲気まんまのクールだったよ勿論。それに蒼かった。コーヒーのブルーマウンテンくらい蒼かった。あ、マウンテンっていうほど胸ないか!ガハハ!
はい。凛Pに殺されそう(自殺)なんで話続けます。因みにブルーマウンテン、ボクは好きです。
……でもね。急に。急にだよ。なんかおかしくなってったんだよね。志希と同レベルの変態になっちまったんだ。家に帰ったら薄着の凛がいて、あれはヤバかった(俺の理性、ではなく俺の怒りが。)
こうなった理由は定かじゃねぇ。何故か志希と晶葉がまた干渉しなくなったのと同じくらい定かじゃねぇ。つーかあいつら奔放すぎ。また不干渉の誓いたてたのか。
と、凛の手元のそれに俺は目を見張った。
「なあ、凛。それって香水か?」
まさかの探し求めていたアレである。こんなところで発見できたなんて感激!
「え?違うけど。」
「…………はえ?」
「?」
「違うの?」
「違うよ。」
「ほんとに?」
「ほんと。」
「そうか。そう、なのか。」
「手に香水持って外歩く訳ないでしょ。」
「確かに。」
あっれー?ss的展開ならそろそろ香水出てくると思ったんだけどなー?ヤバイドルだししぶりん辺りで出してくるんだろーなーとか思ってたんだけどなー?あっれー?
「じゃあそれなに。」
小さな瓶に入った少量の透明な液体。気になります!
「またそれ訊くの?はあ……これはみ……!」ニヤ
微笑む凛。なんだなんだ。可愛いな。
「DHMO……ジハイドロジェンモノオキサイドっていう化合物なんだ。」ニヤニヤ
聞いた事もない。だが名前からして危険そうだ。
「……それ安全なのか?」
香水云々の前にそんな物騒な名前だと安全性の配慮等の方が気になります!
「んー……(そうだ、いいこと思いついた)……し、志希からもらっ……ンフッ……もらった。」ニヤニヤ
絶対ヤバい(確信)
「これは水酸って呼ばれる事も、あってね……フフッ……さ、酸性雨の主成分なの。」
「俺の天敵じゃないか!!」
「ブホッ!!」
凛が突然腹を抱えて笑い出した。な、なんだ?
「ヒーッ……ヒーッ……ンフッ……重篤な火傷の原因でもあるよ?」ニヤニヤ
「み、水!水持ってくる!」
「ングッ!!……ンフッ……ッ!!」ジタバタ
凛が机をどんどんと手で叩きながら顔を真っ赤にしている。それを無視して一応水をペットボトルに汲んでおいた。二リットルだ。安心しろ(曇りなき眼)
「防火材にも用いられるんだけど。」
「はあ!?火傷の原因になるのに防火にもなんの!?」
「ンフッ……そうそう。」ニヤニヤ
「そんな意味不明なもんを志希から渡されたのか?」
「うん。」ニコニコ
あいつとことん頭いってるな。罪カウンター100のうちでそろそろ97いきそうだぞ。それだと罪の塊じゃん志希。くっそ……あいつ名前を並べかえたら性の知識になるからって調子のりすぎ。
「ち、因みにね?……ンフッ……これ吸引すると……ハヒッ……死ぬの。」ニヤニヤ
その言葉を聞いた瞬間、私は行動した。
ドアの近くにいた凛を高速で拘束。
暴れる凛を口説き伏せ、その瓶を奪う。
(これを志希に送り、警察を呼ぼう。)
性の知識なんて奴ははよ規制されろ。
と、手が滑る。
「ッ!!!!!!!!!」
空中で舞う瓶を取ろうとするも間に合わない。
地面に落ちて、割れてしまった。
「ァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるさい女たらし……」
溢れた液体が凛にかかってしまった。これやべぇわ。
「き、救急車!1111番!違う!それポッキーの日!ん!?違うトッポの日!あれ!?それも違う!プリッツの……これも違う気がする!」
「プロデューサー。」
「どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!凛が死ぬ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ダメ!!!!!!!!!!!!!!どうしよどうしよどうしよ!!!!!!!!!!!!!!」
「これ水。」
「…………………………は?」
思いがけない言葉に生命活動が止まる。久しぶりに会った天国のおっさんはいつもどおり元気でした。良いところやで天界は。
「ググってみてよ。DHMOって。」
言われた通りググる。
………………
「凛テメェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエェェェェェエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!」
「あははっ!!ひ、ひっかかってる!!あはは!」
調べてみたらなんだよこれ!ジハイドロジェンモノオキサイドって一酸化二水素、つまりただの水じゃないか!
「騙したなァァァァァアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
「騙してないよ!……ンフッ……ブホッ!!」ニヤニヤ
確かに酸性雨の主成分は水だし熱水で重篤な火傷負うことあるし防火になるし吸引したら息できなくて死ぬね!でもこれは酷くない!?
「ふふっ…………あ、あれ?……」
まじでヤバいと思ったよ!つーか水ならペットボトルとかにでも入れてこいよ!何でそんな荘厳な瓶に入れてくるんだよ!
「眩暈、が……」
今回のが一番許せねえ!志希も気狂いヤバイドル状態の渋谷凛もまだギリギリギリギリギリギリ許せる!でも今回のは許せねえ!悪趣味だ!
「…………」
そんで?結局誰も呼ばなくて良いのかこれは。水ならいいか。にしてもそういえば今日は何日だ。確認してなかった。
「……♪」
……高エネルギーリン酸結合だ(意味不明)
「プロデューサー?そこに立って何してるの?」ニコニコ
「うるさいぞイヌリン。早く体外に排出されろ。」
「まだ摂取されてないよ。ほら。早く摂取して?」
「また服脱ぎか!!」
こんにちは。プロデューサーです。
急ですが悲報です。
渋谷凛が壊れました。
というか壊した張本人は恐らく自分です。
(あの液体絶対水じゃねぇよ。だって変な匂いがこの部屋に突然立ち込めだしたんだもの。)
自分の中の理性が、少しずつ溶けていく。
(原液だ。これ。)
朦朧とする意識。
「り、凛。さっきまで持ってた瓶。お前のか?」
液体の匂いを嗅いだせいか、遡行の兆候がいつもより早くきた。戻ってしまう前にせめて訊いておかねば。
この遡行は前に前にと戻るのだ。今失敗しても成功する確率に変動はない。そこはラッキーな点である。
「んー?プロデューサーがくれたんだよ?」
……は?
「三日前にこれを三日後に返してくれって言ってたでしょ。まあ、今プロデューサー自身で割っちゃったけど。やっぱり忘れたの?さっき水かって訊いてきたくらいだし忘れてるんだ。」
どういうことだ。意味が分からない。
「それと変な事も言ってたよね。」
混乱する。情報が色々とありすぎてよく分からない。
「えっと……あ、そうそう。」
意識が混濁する。そしてそのまま、俺は、
「志希と晶葉は信じるな。」
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しぶりんの相棒感は異常。そしてその事をこんな場で言う自分の方がもっと異常。