騒々しいアイドル達とプロデューサー お前ら皆落ち着け。 作:べれしーと
好きなんて言葉よりも、嫌いって言葉の方が信用できるのは人間の欠陥だと思う。
変わりなく酒酔いから覚醒した俺は周りを見渡す。質素な空間にポツリと置いてある大きな機械は湯の沸きだつ様な音を携えてそこに君臨している。
目の前には一つの椅子。そこに座すのは黒のカットソーとホットパンツというラフな姿な志希。
薄暗い部屋には物が全く無く、あるのは遡行用の機械と二つの椅子のみであった。
志希の部屋であるようだが、あの時見た志希の部屋とは違う。似ているが違う。いるはずの晶葉がいないし、複数個あった細かな機械群もない。
自分を観察する。幽体ではない。きちんとプロデューサーである俺本人に戻っていた。そして何故か俺は縛り付けられているかのように座する椅子から動くことができない。
「……動けないんだが?」
精一杯の笑顔で彼女にそう言う。皮肉を込めて。
「動けないように『設定』しておいた。」
弱々しい笑顔で彼女はそう言う。皮肉を感じない。
「設定ね。」
「うん。設定。」
「そうか。」
「うん。」
「……」
「……」
…………訪れたのは沈黙。
何故か黙ってしまう。
重苦しい雰囲気にあてられて、今までバカみたいに軽かった俺の口は開かない。
まさしく閉口。
彼女もいつもみたいな有頂天テンションではなかった。押し黙るばかりである。
これもまさしく、平行状態だった。
…………
……
志希は徐に口を開いた。ただ散文的に。何かを圧し殺しながら。
「まあ聞いてよ。与太話みたいなあたしの前置きをさ。」
「そうだなあ…………いざこうなってみると話そうと思ってたことって全部吹っ飛んじゃうねー。二、三年前までこんなことなかったのに。あたしも絆されちゃったなあ。」
「って、違う違う。この話はさすがに脱線しちゃダメだ。」
「えっと……プロデューサーは途中で疑問に思ったよね。色んなこと。」
「遡行って何だろう。原液って何だろう。座標って何だろう。ssって何だろう。人格が変わってるのは何故だろう。抜けてる記憶があるのは何故だろう。意味の分からない行動を自分や自分以外の人達が起こしているのは何故だろう……」
「軽ーく思い出せるのはこんな所だけど、あたしが知らないだけでまだまだ沢山あるんじゃないかな?」
「そーゆー疑問に気づいた時は大慌て?まるで世界の真理を見つけてしまった衝撃のよう?どっちかな。」
「どっちかはあったと思う。当然だよね。原題に対する反駁に変わりないんだもん。」
「んで、疑問の解決を優先するのは人としてなんら不自然ないワケで。」
「そういえば遡行前はプロデューサー、不自然だったよね。それは後でいいか。うん。」
「兎に角、世界の真理にも似た疑問。」
「そんな数多の疑問にプロデューサーは、キミは目をとられすぎたの。」
「とはいっても何で気づけなかったの!?とか、怒る気はないよ?」
「誰だってそんなの気づけない事ぐらいは知ってるから。」
「もっと初歩的な所。つまるところ、原初点を。」
「ねえ。」
「いくつか質問するから、答えて?」
「キミが覚えてる最も昔の記憶は?」
……志希と周子と、あのレッスンルームで騒いだ記憶。
「うん。じゃあ、それは何日?何曜日?」
…………知らない。
「知らない?覚えてないの間違いじゃない?」
……いや。覚えてない、じゃなくて、知らない。知らないんだ。
「そっか。なら、家族の名前。」
……知らない。
「自分の家の住所。」
知らない。
「お給料。」
知らない。
「夜ご飯。」
加蓮と食べた記憶以外は何もない。昨日『夜ご飯を食べたか』さえ知らない。
「……自分の名前は?」
………………『知らない』…………
「プロデューサー。今どんな気持ちかな。」
……死刑宣告された人の気持ちだよ。
「そんなんだろうね。」
俺は、記憶喪失なのか?
「不正解。」
あっそ……
「……これあたしが全部仕組んだものなんだって言ったらどうする?」
……そんな嘘はどうでもいいから勿体ぶってないで真実を教えてくれよ。どうせまだ隠してるんだろ。なんかでけえこと。
「にゃはは。バレた?」
お前、俺が何年志希を担当してると……担当……して……えっと……
「十三ヶ月だよ。」
……すまん。
「…………ごめんプロデューサー。そろそろあたし泣いちゃいそうかも。」
勝手に泣いとけよ。
「酷い言い草!志希ちゃん怒った!やっぱまだ泣かない!」
そうか。それが助かる。
「自分勝手だー。」
そんなことはない。
「んふふ…………あのさ。」
うん?声色変えてどした?
「もうそろ、本題入る。」
……おう。
「曲がり道とか嫌いだから真っ直ぐ行くよ?」
……
「作者って言って、プロデューサーは理解出来る?」
……ああ。トチ狂ってメタフィクションやろうとした俺の妄想の産物か。
「逆。」
逆?
「そう。逆なんだ。」
何が?
「苦しいけどさ、なんとなくは分かってたんじゃないかな。」
え?
「皆都合が良かったでしょ。驚く程円滑に話が進んでいったでしょ。」
……
「それでいてテキトーだったでしょ。思考、行動、言葉に一貫性が無かったでしょ。」
……
「処女作みたい。まるで。」
ど、どういう意味
「
……??
「この世界は
?
「ショートストーリー、つまり『ss』方式で考えられた物語でしかない。」
?
「『やってくれたな、一ノ瀬ェ!』から『常務の美城だ。双葉杏、君に話がある。(しかし内容がないよう……ふふっ。)(最後にふふってつけて私が言った事にするの止めて下さい。)(はい。)』まで、展開も登場人物も何もかも、プロデューサー自身の頭の中で決められたもの。」
?
「ここはプロデューサーの妄想世界。晶葉ちゃんに協力してもらってあたしは干渉できてる。」
?
「……ずっと全部コンピューターで見てきたからさ。分かるんだ。杏ちゃんとの車内騒動とか。加蓮ちゃんになって騒ぎを起こした事とか。今も『?』なんて一字が打たれ続けてることとか。」
?
「否定しないの?志希の言ってる事は支離滅裂だって。そんなの答えじゃないって。前の話みたいに突っ掛かって来ないの?」
?
「来ないというか一種の防衛機制だよね。真理はストレッサーで認めたくない?」
?
「真実求めてた癖に知ったら乱数。哀しい人工物の悪あがき?」
?
「そんな機械みたいに『?』だけだなんてあたしの話に信憑性持たせちゃうだけなんだけど。」
俺は妄想の産物なんかじゃない。
「お。やっとコンピューターにきちんとした文字列が。」
ふざけるな。いくら志希とはいっても許せる事と許せない事がある。
「あー……勘違いしてる?」
支離滅裂だ。それは答えじゃない。
「あたしが今話してるキミは、本物のプロデューサーだよ。作者さん。」
?
「よく見て。プロデューサーの会話部分。『「」』がない。ほら思い出して。」
あ
「加蓮ちゃんの時とか。忘れてないでしょ?だって二人は……っと。これは秘密なんだっけ。」
やめあああ***うえ
「錯綜した『好き』だらけの現実より理解不能な『好き』だらけの超現実。」
*やめ*_い_*(*
「記憶を抑え込み、妄想に逃げ、自分が大好きな『笑えるメタフィクション』と『ミステリーにあるような伏線回収』を織り混ぜたオリジナルストーリー。」
**【⊂<>*や**だ
「そんな現実逃避もここで終わり。」
けさ__な___いで_______
「さて。こっからはちぐはぐじゃ済まない。」
「脳ミソでテキトーに創られた、辻褄の合わない勢いだけの物語なんて発生しない。」
「奇跡なんてくそくらえも、起こり得ない。」
「もう消え始めてるこんな脳内妄想は捨てよ。」
「無意識下で、もう『その覚悟』は出来てるんだから。」
「帰ろ?」
「現実に。」
×××深刻なエラーが発生しました×××
安全の為、自己シャットダウンを開始します
やっと60%くらい本編が終わった。あと二話で残りの40%……キツい!無理!もっと伸ばす!ごめん!一応俺も早くコメディしたいんだ!こんな意味不明シリアスなんかやるよりもさ!(多分今年中はシリアスで終わりそうという悲しき予知)