騒々しいアイドル達とプロデューサー お前ら皆落ち着け。    作:べれしーと

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エピローグ


騒々しいアイドル達と。

大都会東京。

 

人通りが多くて道も混んでいて、目的地に到着するよりも迷子になる方が簡単なんじゃないかと錯覚するこの場所。

 

そんな雑多の中を私と智絵里ちゃんは歩きます。

 

東京に来てから一週間、私達はひたすら同じ所をぐるぐると回っていました。

 

どちらからそんなことをしようと言い出したのか、いつ言い出したのか、そもそも何故言い出したのか。

 

知りませんし、分かりません。

 

でも予感があって。

 

その予感に糸を手繰るが如く惹かれて東京に来た私達。

 

この大都会を奔走している何かに導かれるよう私達は歩き続けます。

 

五里霧中とでもいえばいいのかな。

 

人の集まりは霧のように散ってはくっついていく。

 

理解もままならず傀儡のような私達二人。

 

智絵里ちゃんは文句も言わず付いてきてくれています。

 

それどころか私と同じく予感のままに、本気でその何かを探し続けています。

 

靄がかった予感。

 

何十年も繰り返したような予感。

 

何度目かのこの太陽は四方八方を照らしていました。

 

だからでしょうか。

 

プロムナードに先立つ陽炎が鬱陶しい。そう思いました。

 

と、隣で歩いている智絵里ちゃんに疲労の色が見え出します。

 

そういえばもう何時間と歩いています。休憩も無しに頑張らせてしまっていた事に私は申し訳なくなってしまう。

 

こんな道理の無い子供にありがちな行動は無駄なのでしょう。

 

そう思って言葉を発します。

 

今日は帰ります?

 

訊くと、智絵里ちゃんはあと少し頑張らせてと返してきました。

 

そう言うのなら分かりました。歩を進めましょう。

 

そうやって雑多と陽炎に翻弄されていた時。

 

雑多という霧の中に揺めき立つ一本の陽炎がこちらを見ていることに気がつきます。

 

それはゆっくりとこちらへ歩いてきて、口らしきものをもごもごと動かさせました。

 

そこからは、あなたの声がしました。

 

小日向美穂と緒方智絵里は、この日、人生の奇抜さを知った。

 

頬を垂れた水滴は霧と同化していき、誰もその存在に口を出したりはしなかった。

 

ただデジャヴに感動するばかりだった。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

和菓子屋の店番は飽々する。

 

実家の手伝いを始めて六年は経つシューコちゃん。

 

つまらなかった学業も終えてみればそんな事はなかったんだなあと気づかされ、むしろお仕事の方がつまらない。

 

京都特有の和の雰囲気と香り。もううんざりだ。

 

……でも、不思議と悪くは思っていない。

 

この無事な平和が変に愛おしく感じる。

 

お父さんは怖いけど優しいし、お母さんは和の心構えとか尊敬する。

 

好きじゃないけど嫌いにもなれないこの平和が、変に愛おしくてくすぐったい。

 

平日のお昼、客足の全く無いこの寂寥。

 

ふと聴こえる鶯の声と尺八の弱音が最大の音楽だ。

 

都市化の進む京都では雅なんて廃れモノと思っていたけど。

 

まあ、案外そんな事もないね。

 

抹茶オレを啜りながらそう感じた。

 

……西洋も好きやねん。許せ。

 

と、珍しく靴音が遠くからしてきた。

 

父母が帰るにはまだ早い時間。お客さんかな。

 

ここには入ってくるな~接客面倒くせ~なんてお祈りは届かず。

 

スーツ姿の男の人が入ってきた。

 

……ああ。

 

それならそうと言っておいてよ。なーんも準備ないやん。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

これまでのタイムリープでは、事が終わると俺は元の世界に帰っていた。

 

だから子どもの昔から大人の今までまた同様に戻れると俺は思っていた。

 

しかし戻る事はなかった。

 

二十歳を超えた大人の精神は八歳の男児の中に閉じ込められた。

 

新しい人生が神様から与えられたように、俺は思えた。

 

 

 

 

 

血の繋がった本物の両親とまだ小さな周子との四人家族で俺は過ごす事となった。

 

その生活に前のような孤独は無かった。

 

愛に溢れていて、自分そのままに暮らす事が出来た。

 

大きな事件なんて何も起きず、起きたとしてもちょっとした口喧嘩。

 

幸せだった。

 

日常が、ただ、幸せだった。

 

虐めも無く、前の世界と違って俺に友達ができた。

 

近所では面白兄妹コンビとして名を馳せた。

 

下らない話をして笑い合った。

 

両親とのすれ違いも起きたりはしたがきちんと仲直りはしてきた。親は大事だ。親愛である。

 

そんな風に前の世界と比べて大分幸せな生活を送っていた俺だが、一つ、父さんとの約束があった。

 

それは、我が儘を貫き通せ、というものだった。

 

……言われなくても。

 

(そのつもりだよ父さん。俺にはまだ、やること沢山残ってんだからな。)

 

東京の大学で学ぶため単独で上京、その後入社。

 

当然346プロにである。

 

(さて。)

 

双六でゴール手前にあなたはいて。

 

手を伸ばせば届く距離のその終わりに僅か、触れられず。

 

あなたはまたスタート地点まで飛ばされる。

 

そして二度目のスタートを切り、地道に進んで。

 

ゴール手前まであなたは着いた。

 

(やる事は、分かってるさ。)

 

俺は外に足を向ける。

 

目指すはあのプロムナード。

 

目指すは見飽きた和菓子屋。

 

 

 

 

 

目指すは()()()()()()()()()()()()()()()()()の物語。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「初めまして。私、こういう者です。」

 

 

 

 

 

「アイドルに興味はありませんか?」

 

 

 

 

 




本編終わりです!蛇足として、次のお話に作者の思考を記しておきますね!
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