騒々しいアイドル達とプロデューサー お前ら皆落ち着け。 作:べれしーと
ここはテレビ局。番組収録の終えたアイドルを事務所まで送り届けるために今、プロデューサーこと俺がいる。
どうでもいいかもしれないが、うちの事務所には結構色々な仕事がくる。テレビなら報道系や癒し系、討論系にN○K系等々本当に様々だ。……うち、アイドル事務なんだけれどと思いながら喜んで承っている。そりゃね。真面目なやつでもおふざけなやつでもテレビの仕事は嬉しい。
そして勿論、うちにくる仕事の中ではバラエティ系だってある。でもここだけの話、あんまりうちの事務にバラエティこないんだよね。何でだろう。超疑問。毎日事務所はバラエティなんだけどなあ……
と、着替えを終えた彼女が控室から出てきた。
「お疲れ様、杏。」
双葉杏。うちの事務所排出の人気アイドルだ。
「お疲れー……」
杏ちゃん、目が死んでますよ。まだ生きて。
「車の中に飴がある。しかも限定品だ。」
「お疲れ様です、プロデューサー。事務所に戻りましょう。」
え、誰だよお前。それにそんな甘ったるい声何処から出してんだよお前。飴ばっか食ってるからそんな声だせるのかよお前?羨まし……いや、待てよ。
じゃあ、俺の声は何でこんなに苦々しいんだ?パクチーばっか食ってるからか?うわ、もうパクチー食うの止めよ。意識高い系の真似してパクチー食べて、「この味、癖になるんだよ……」ってイケボ(自分ではそう思ってる声)をだすの楽しいから最近趣味になってたけどもう止めよ。やっぱパクチーは駄目だね。みくにゃんのファンやめて反パクチー至上主義者になります。
×
「……!この飴は、北海道乳牛から採れる生鮮なミルクをふんだんに使った特選ミルキー……っ!う、旨ぁい!」
味で判るのかよ。凄い舌だな。てかそんなに旨いの?杏の身体が浮いて見えますけれど比喩とかじゃなくて。俺も食べてみようかな。
「ほんとだ、うまっ。」
滑らかな舌触りにリラックス効果がある様に感じる。実際そうなのかは知らんが。あー……でも超旨いわ。飴とか全然舐めない俺でもその旨さが判るレベル。
「誉めて遣わすぞよ、プロデューサー?」
「殿様かよ。」
「失礼な!か弱い姫君であるぞ!扱いと敬いを考えよ!」
「はーい、事務所に出発しまーす。」
「おぉい!杏を蔑ろにするなぁ!」
×
車を走らせる事数分後。さっきまでの状態と打って代わり、後ろで静かに紙を繰る音がするのでミラーを使ってちらと見てみると、杏が何かを読んでいるのが分かった。……今度のドラマの台本か。まったく、なんだかんだいって杏も頑張ってるんじゃないか。週休8日希望とか働いたら負けとか、やっぱ冗談半分で言ってたんだな。
「最近、杏は仕事をよく頑張ってるよな。やる気が出てて良いと思うぞ。俺もプロデューサーだが、応援してる。なんたって俺が最初のファンなんだし。」
と、ページを繰る手を杏が止めた。なんだ。
「あんたが……」
「ん?どした杏?」
「あんたが仕事を取ってくるから仕方なくだろぉぉぉ!!!」
急に杏に怒鳴られた。ええ何でェ?
「そ、そりゃ、プロデューサーとアイドルなんだからそうなるだろ!?仕事なんだから!!」
「杏が想像してたのと180度違う!一日の平均労働時間14時間は想像出来ない!休みは何処!てか出来るならやる気なんて出したくないよ!でもバラエティにクイズに連ドラに映画!杏は嫌なのにプロデューサーと他の皆がやる気を出せさもなくば葉っぱを二つ足して緒方に採らせるぞというオーラで脅してくる!死ぬよ!肉体的にも精神的にも!」
……ああ、双葉に二つ足してだから四葉のクローバーって事か。分かりにくい。てか智絵里の扱い酷くない?そんな無慈悲な女の子みたいなものではないと思います。
「な、なら休みくれって言えば出したぞ!最初の頃みたいにさ!」
「言ったよ!一日にプロデューサーの前で100回以上、『休みくれなきゃ本当に死ぬ』って言ったよ!結果は仕事だよ!『ははは、連ドラの主演取ってきたぞ。』じゃないよ!無駄に有能かよ!つか話聞けよ!」
「す、すまなかった。そういえばそうだった。あの時はまた最初の頃のやつかと思ったんだよ。おふざけかな?ってさ。」
「今さっき言った言葉を忘れるなああああああ‼『な、なら休みくれって言えば出したぞ!最初の頃みたいにさ!』何行前の台詞だああああああ‼若年性アルツハイマーかああああああああ‼貴様ああああああああああ‼ふざけるなああああああああああああ‼」
「サイヤ人の真似はヤメロォ!」
「杏の今月の休みの日数を言ってみろぉ!?」
「え、ええと、」
「なああああんだああああああああ‼その目はああああああああああ‼」
いや、ジャギ(北斗の拳)かよ。
「ZEROだあああああああああ!!狗竜を狩る時間もないんだぞ!?1分もないんだぞ!?」
いや、ドスジャギィ(モンハン)かよ。
「わ、悪かった、本当に悪かった!これからはきちんとした休みを入れる!杏を頼りすぎていた!すまない!でも、今が稼ぎ時であることも解ってくれ!アイドル辞めた後の一生を遊んで暮らせる程の金は今しか手に入らないんだ!」
「はあ、はあ…………いいよ、わかった。杏も、ちょっと言い過ぎたよ。ごめん。」
激昂ラージャン状態から獲物を虎視眈々と狙うガララアジャラ状態に杏は変化する。おい何を狙っている貴様。
「ありがとう、解ってくれて。」
「じゃ、じゃあ、それで?何時から休みをくれるのかね?」
ワクワクウキウキとした様子で杏が質問した。それか貴様の狙いは。でも、うん。
……すまない。杏。
「3ヶ月後。」
「…………え?」
「3ヶ月後だ。」
「ねえ、杏、死ぬよ?」
「すまない……だが、泣くな……真顔でハイライト無しで泣くな……本当にすまないと思ってはいるが、これがアイドルなんだ……」
「杏の年齢、言ってみ?」
「……17歳、ですね。」
「17歳に、14時間労働を休み無しで後3ヶ月?」
「お、温泉ロケとか海外バカンスもあるから。」
「バックレてどっか行ってくるね。じゃ。」
杏は後ろのドアから外に出ようとする。走行中につき危険です!お止め下さいお嬢さん!いやおふざけ無しで本当に危ないから死んだ瞳で飛び降りようとするのは止めろォ!
「ぱ、パクチーもあるから!!大丈夫だよ!!お、美味しいから大丈夫だよ……?」
俺が必死に説得をすると、杏は呆れた様に、
「……はあ。ああ、もういいよ。解った。バックレるの止める。仕事頑張るよ、頑張る。」
こう言った。7つも年上の男に対する言葉遣いじゃねえな。嘗められている。でもどうせなら舐められたい。いや舐めたい。(願望)
「あ、ありがとう……ありがとう……」
「只し、3ヶ月後からは最低でも1週間に1日は休みを入れる事。でも出来ればずっと休みたいからそれでも可。」
1週間に2日の休みをあげるよ杏さん。
「ありがとう杏……愛してる……」
「んー。今の約束をきちんと守ってくれたら杏も愛するよー。」
ちょっと、杏ちゃん優しすぎない?女神だよね?やっぱ杏はCuteってはっきりわかんだね。
「疲れてるんだから。杏にもう一個飴をくれー。」
「仰せの通りに。」
「誉めて遣わす!」
×
てか今気付いたけどこれパクチーのおかげで上手くいったよね?やっぱパクチーは最高だね。みくにゃんのファンやめてパクチー至上主義者になります。
杏はいいぞ。後、労基法とかは無視して(震え声)。