逆位置悪魔は星屑と踊る   作:大岡 ひじき

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本当は前回の中編が、そのまんま後編として終わる筈だった。
けどタロットにおける悪魔の逆位置の意味を唐突にぶっ込みたくなって、そうなるとアヴドゥルさん出さないわけにはいかなくて、蛇足のようにこの話を、急遽付け足すことにした。


後編

 電話口で泣き出した空条ママをなだめているうちに、いつの間にか彼女に付き添って、『牢屋に入れられた』という空条に、会いにいく話になっていた。

 というか話をよく聞いてみれば、空条がケンカで複数人を負傷させ、警察のお世話になったのは確かなようだったが、鉄格子の内側に一旦入れられたのを幸いとでも言うかのように、本人がそこから出ないと頑なに言い張っているのだという。

 …彼が牢屋の中だというのなら、先ほどの電話は一体どこからかけてきたものなのだろう?

 そんな疑問もわいたが、考えても意味がないので一旦その疑問はわきに置いておく。

 だが電話の内容は、無視すべきではないと感じた。

 

『助けてくれ…樹里』

 泣きそうな声が紡いだ、恐らくは心からの、懇願。

 私の抱えているものがわかったと、そう言った。

 そして彼の母親が語る、他人の接触を拒む行動。

 一瞬、考えたくない可能性が心をよぎり、思わず首を横に振る。

 

「とにかく…話を聞いてみなきゃ、ね」

 淹れかけたコーヒーはキッチンに押しやり、私はまず身支度を整える事にした。

 

 ☆☆☆

 

 私の意気込みに反して、空条ママに連れていかれたのは警察ではなく空港だった。

 誰かを探しているのか、キョロキョロと周囲を見渡し、すぐに笑顔になって、大きく手を振る。

 

「Daddy!There is me here!」

「Holly!」

 空条ママの呼びかけに応じて、罪もない通行人を突き飛ばしながら歩み寄ってきたのは、背の高い外国人男性だった。

 周囲の目など全く気にせず、空条ママは男性の胸に飛び込み、その腰に抱きついた。

 え!?と一瞬思ったが、先ほど呼びかけた彼女の言葉を思い返して、納得する。

 男性は、空条ママのお父さんなのだろう。

 そう思ってよく見れば、男性は立派な体格をしているが、顔立ちは恐らくは60過ぎくらい。

 そして僅かに黒の混じった銀色の髪と同じ色合いの髭をたくわえている為わかりにくかったが、その顔は、空条がおじいちゃんになったらきっとこうなるに違いないと思えるくらい、特徴的な部分が彼と似通っており、身長も同じくらいだ。

 …あと、空条ママはホリィさんという名前らしい。

 まあ、友達のお母さんの名前とか普通に知らないよな。友達いないから知らないけど。

 ってやかましいわ。

 親子がいちゃついてる光景を見て、若干意識をあさってに飛ばす。

 外人顔をしてはいるが頭の中は純日本人の私に、そのノリは不可解過ぎた。

 …ふと後方から視線を感じ、そちらに目を向ける。

 その先のベンチに腰掛けて足を組む、長い衣を身につけ浅黒い肌をしたアラブ系の外国人男性と、瞬間目が合った。

 …澄んだ綺麗な瞳だと、何故か感じた。

 

「お待たせ、樹里ちゃん」

 いいだけ父親との再会を堪能したらしい空条ママの呼びかけに、ハッとして振り返る。

 さっきまでどこか沈んで、顔色も悪かったのが嘘のようだ。

 お父さんが近くにいる事で、きっと安心したのだろう。

 空条ママはこのお父さんに、ものすごく可愛がられて育ったのだと、ひしひしと伝わってきた。

 

「紹介するわね。

 私のパパ、ジョセフ・ジョースターよ。

 パパ、彼女は承太郎の彼女(girl friend)の更科樹里ちゃん」

『元』です、とつっこもうとした言葉が喉で止まる。

 ジョースターって、世界的に有名な不動産会社の名前じゃないだろうか。

 偶然かもしれないが、空条ママは確かに大金持ちのお嬢さんぽい雰囲気がある。

 

「初めまして、お嬢さん…Can you speak English?」

「耳で聞いて大まかな意味は理解できますけど、話せません。

 母方にロシア人の血が入っていてこんな外見ですが、私は生まれも育ちも日本人です」

「了解した。

 わしは職業柄、世界をあちこち回っとるから、英語もイタリア語もドイツ語も、そしてアラビア語も日本語も得意じゃぞ!」

 …なんか本当にこの人が、有名な不動産王本人じゃないかって気がしてきた。

 いやきっとそうだ。

 

「ところでホリィ…承太郎のことじゃが。

 確かに『悪霊』と言ったのか?」

 その矍鑠とした老人の言葉に、私の心臓がどきりと震えた。

 空条ママの笑顔も曇り、震える手でその美しい顔を覆っている。

 

「そうよ…。

 おまわりさん達には見えなかったらしいけど、あたしには見えたわ…。

 別の腕が見えて、それで拳銃を…」

 その件は合流した際に、私も空条ママから聞いた。

 最初は警察署から連絡を受けて、空条ママが一人で迎えに行ったところ、空条は自分を『悪霊に憑かれた』と言い、喧嘩で負傷させた相手を半殺しにしたのはそれだと言った。

 そして、自分を牢から出すと危険だと示す為に、どのようにしてか警官の拳銃を奪って、自身に向けて発砲したという。

 だがその弾丸は空条の身体のどこにも当たることはなく、空中で止まって落ちた…目の当たりにした警官はそう言ったらしい。

 しかし空条ママの目には、空条の身体から出てきたもう一本の腕が、発射された弾丸をつまんで止めたように見えたのだそうだ。

 …私の想像通りで間違いないのなら、それは私の知るものと同じ存在だ。

 だとしたら、それは空条を守る為なら、他者に躊躇なく攻撃を加える。

 そしてその『守り』は正当防衛の域をはるかに超える苛烈なものだ。

『悪霊』と彼が言ったのは、私の例を知っているからだろう。

 

『おまえが何に怯えてたのか、今なら解る』

 解って欲しくなんかなかった。

 彼には、他人を避けなければならない苦しみも、孤独も、知って欲しくなかった。

 それは温かい家庭で育ち、人に囲まれて生きてきた彼にとっては、どんなにか怖かったことだろう。

 

「他の人の目には見えないのに、おまえには見えたのかい?」

 しかし…そう。私もそこが引っかかっていた。

 私の知る『悪霊』と、空条に取り憑いたそれが同じ種類のものであれば、他人の目には見えない筈なのだ。

 血縁だからなのかとも思ったが、私のそれは両親には見えていなかった。

 

「ええ…」

 ジョースター氏の問いに、空条ママが答えながら、背の高い父親を見上げる。

 その頼り切った表情に、彼女が本当にこの父親を信頼しているのだと感じた。

 というかこんな美人にこの目で見つめられたら、父親でなくても、きっと男は太刀打ちできない。

 空条が母親に対して表面上の態度が冷たいのは、本能的な防御なんじゃないかと、ちょっとだけ思った。

 ジョースター氏は少し考えてから、再び娘に問いかける。

 

「承太郎は最近取り憑かれたと言ってるらしいが…おまえにも何か異状はあるのかい?」

「あたしにはないわ。

 でも承太郎は原因がわかるまで、二度と牢屋から出ないっていうのよ!」

 どうしたらいいの、とまた泣きそうになる空条ママの肩を抱いて、ジョースター氏はニカッと笑って自分の胸を叩いた。

 

「よしよし、可愛い娘よ。

 このジョセフ・ジョースターが来たからには安心しろ!

 …まずは、早く会いたい。我が孫の承太郎に」

 そう言ってジョースター氏が、後ろをチラリと振り返り、何故かパチンと指を鳴らす。

 つられてその視線の向く先に目をやると、先ほどのアラブ系の男性が、椅子から立ち上がるのが見えた。

 どうやら彼は、ジョースター氏の同行者であるようだ。

 

「樹里ちゃん。

 これから承太郎に会いにいくわ。

 心細いから、一緒に居てね?」

 …前言撤回。

 この目で懇願されたら、男じゃなくても逆らえない。

 

 ☆☆☆

 

 留置場に着いて、空条の居る独房の前まで来て、その光景の異様さに、驚くより先に呆れ返った。

 

「またまた、いつの間にか物が増えている…。

 こんな事が外部に知れたら、わたしは即、免職になってしまう」

 どうやらここの責任者らしい男が、泣きそうな声で訴える。

 独房の中は、本だの健康器具だの、更にテーブルや椅子、ラジオといった、生活を豊かにするものであふれていた。

 本人は『悪霊が持ってきてくれるんだ』と言っているそうだが、まあ一般の人には信じられる話ではないだろう。

 って私のと違って、空条の悪霊サービスいいな!

 ジョースター氏は、どうやらこの現象に心当たりがあるようで、臆する事なく独房の前に立つと、中にいる空条に声をかける。

 

「出ろ!わしと帰るぞ」

 その一言で出てくるなら警察も苦労はしていない。

 案の定頑なに拒む空条の反応を予想していたらしく、ジョースター氏は指を鳴らして合図すると、離れたところからずっと同行していた、例のアラブ人男性を呼び寄せた。

 

「三年前に知り合ったエジプトの友人、アヴドゥルだ」

 孫を牢屋から追い出せとジョースター氏に依頼され、アヴドゥルと呼ばれた男は、両手を不思議な形に構えた。

 

「少々、手荒くなりますが」

 ジョースター氏の是の答えに、アヴドゥルが呼吸を整える。

 次の瞬間、彼の身体から、同じくらいの大きさの人影が飛び出した。

 否、『人』ではない。

 それは人の身体を持っているが、鳥のような顔をした、異形。

 

「おまえのいう悪霊を、アヴドゥルも持っている。

 アヴドゥルの意志で自在に動く悪霊!

 悪霊の名は!『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』!!」

 ジョースター氏の説明と共に、『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』と呼ばれたそれが、口から炎を吐いた。

  その炎が空条の両手首に、蛇のように巻きつき、腕を焼く。

 

「パパ、承太郎に何をするのッ!!」

 その光景に、今にも飛び出して行きそうになる空条ママを、私は慌てて引き止めた。

 その炎は私達以外には見えていないらしく、警官や責任者の男は、不得要領な顔をするが、私達の周囲の温度は、異常な程上昇している。

 間違いない、あれも『悪霊』だ。

 そして空条ママには間違いなく、私と同じものが見えている。

 と、空条の身体から、やはり人型の何かが飛び出した。

 それはアヴドゥルのものとは違う、人間と同じ姿をしていた。

 それが、現れたと同時に魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)の首を掴む。

 途端、アヴドゥルが体勢を崩した。

 見ればその首筋に、指で掴まれているような窪みができて、それがどんどん深まっていく。

 どうやら魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)が受けた攻撃が、アヴドゥル自身にダメージを与えているらしい。

 手荒にしても構わないかとジョースターさんに再度確認をとり、アヴドゥルが大きく腕を振ると、魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)の手から、ムチのような炎が現れて、空条の顔に巻きついた。

 それは空条の顔を焼きはしなかったが、その周囲の酸素を燃やしているらしく、恐らくは呼吸困難を起こしているのであろう、空条の顔色が血色を失っていった。

 それと共に、空条から現れた『悪霊」が、その身体に戻っていくのが見えた。

 

「熱で呼吸が苦しくなれば、おまえの悪霊は弱まっていく。

 正体を言おう!

 それは『悪霊』であって『悪霊』ではないものじゃ!

 おまえの生命エネルギーが作り出す、パワーある(ヴィジョン)

 そばに現れ立つというところからその(ヴィジョン)を名づけて……

幽波紋(スタンド)』!」

 それの正体を、その呼び名を、ジョースター氏が高らかに呼び上げた。

 

 …けど、正直私は、それどころじゃなかった。

 顔色をなくしていく空条の姿を見ながら、なんだか無性に腹が立っていた。

 なんでそこで意地を張るのよ!

 私に助けてくれって言ったくせに、なんで身内にそれが言えなくて、今そうやって死にそうになってるのよ!

 …お腹の奥の方から、何かがせり上がってくるような感覚をおぼえた。

 次の瞬間、それは、私の身体の一部が引き剥がされるような感覚と共に、目の前に現れた。

 

「オオッ!?」

「な、なんだとッ!?」

 唐突に姿を現した私の『悪霊』に、その場の男たちが驚きの表情を浮かべる。

 けど同時に、私も驚いていた。

 黒ヤギの顔と下半身、首より下から腰までが人間の形をした…けれど。

 

「…あんた、確か前は男だったわよね!?

 なんで女の身体になってるのよッ!?」

 すごくどうでもいい事だとわかってはいたが、ツッコミを入れずにはいられなかった。

 そう、黒ヤギ部分は以前と変わらないのに、人間の身体の部分だけ、それは女になっていたのだ。

 しかも絶対に私より……………大きい。

 い、いや、そんな事は本当に今はどうでもいい。

 そいつは、細いが筋肉質な腕を伸ばすと、指先を空条に向けた。

 一瞬、空条に攻撃するつもりかと思い、制止の声を上げようとしたが、それが狙っていたのは別のものだった。

 その指先に、何か透明の粒子が集まり、それが鋭い、細身の剣のような形をとる。

 それが閃くと同時に、空条に巻きついた炎のムチと、一緒に鉄格子が寸断された。

 瞬間、その場に何故か濃い霧のような水蒸気が発生し、次には固まったそれが水滴となって、一気に雨のように降り注ぐ。

 ありえないほどの水量の雨を屋内で全身に浴びせられた男たちは、呆然とその場に立ち尽くしていた。

 その光景にフッと気が抜けたと同時に、私の身体から出てきたそれが、元の位置に戻っていくのを感じる。

 その慣れない圧迫感に息が詰まり、私はその場に、前のめりに倒れこんだ。

 

「樹里ッ!?」

 全力疾走した後のような呼吸の苦しさに息を荒くする私のそばに、駆け寄ってきた男の腕が、私の身体を抱きおこす。

 見上げたその瞳は、緑色だった。

 

「空条…無事?」

 やっとの事でそれだけ言うと、空条は何も言わずに頷いた。

 

「ジョースターさん。

 見ての通り、彼を牢屋から出しました…が。

 どうやら、これはわたしの仕事ではありませんでしたね」

 そして、やはり全身ずぶ濡れのアヴドゥルが、私達の方を見て、苦笑していた。

 

「樹里ちゃん…?」

 ようやく呼吸が整い、空条の腕を借りながら立ち上がると、か細い声が後ろから聞こえた。

 恐る恐る振り返ったそこには空条ママが、身体を震わせて立ち尽くしている。

 

「今のは…樹里ちゃん、なの……!?」

 そうだ、この人には、()()()いた。

 どうやら完全に怖がらせてしまったようだ。

 彼女はもう以前のように、私に笑いかけてはくれないだろう。

 けど、否定したところで意味はない。

 この人に嘘をつくことなんか、私にはできやしない。

 

「……はい。私も、『悪霊憑き』です。

 今まで黙っていて、申し訳ありませんでした」

 何故か涙が出そうになりながら、空条ママに一礼する。

 そのまま背中を向け…た途端に、その背中に柔らかいものがぶつかってきた。

 私は背中から、空条ママに抱きしめられており、胸元に回されたその手がむにむにと揉……ええっ!?

 

「ダメじゃないのぉ──ッ!

 若い女の子が、こんな大勢の男性の前で肌を晒すだなんてッッ!!」

 えええっ!?

 よりにもよって、一番気にするのそこなの!!?

 しかも私じゃないから!

 私はちゃんと服着てるからっ!!

 だから揉むな──ァア!!!!

 

「やめろこのアマ!

 おれがまだ触ってねーのにテメーが触んじゃあねえ!!」

 よく言った空条!

 …っておまえもつっこむポイントがおかしいわ!!

 だが空条の言葉がかかると同時に、空条ママは嬉しそうな笑顔で、今度は空条の腕にしがみつく。

 

「はぁ──い!ルンルン♪」

 その2人に向かって、今度はジョースター氏が声を荒げる。

 

「母親に向かってアマとはなんだ!

 ホリィもニコニコしてるんじゃあないッ!!」

 …何故だろう。状況がひたすらカオスだ。

 なんとなく打ちひしがれてそこから目をそらすと、びしょ濡れのローブの裾を絞っているアヴドゥルと目が合った。

 彼は軽く肩をすくめると、ひとつ息をついてから、私に向かって笑いかけた。

 

 ☆☆☆

 

「君のスタンドはこれまでは、君を守る為に自分で判断して行動していた。

 だが、君の心がスタンドを、自らの一部として受け入れた今、その自我は君と合一して、これから先は君の意志に従って動くことになる。

 姿が変わったのも、合一化の影響だろう」

 留置場から空条を連れ出し、何やら込み入った話を聞かされて空条邸に戻った後で、私はアヴドゥルさんから『スタンド』の説明を受けていた。

 私の『スタンド』はあの時、私の恐怖に反応したのではなかった。

 アヴドゥルさんによれば、死にそうになっていた空条を私が助けたいと願い、その意志に『スタンド』が応えたのだという。

 …私的にはあの時は無性に腹が立っており、助けたいというよりも、なんか言ってやらなきゃ気が済まないくらいの気持ちだったんだけど。でも。

 

「私の意志…?

 では『悪霊』…いえ、私の『スタンド』は、私がそれと望まない限り、もう誰かを傷つける事はないの?」

 一番の懸念事項を確認する。

 そうでなければ、私はその存在を受け入れるわけにはいかない。

 その私の問いに、アヴドゥルさんは、なんの躊躇いもなく頷いてくれた。

 

「ない。

 君だけではなく、JOJOのスタンドも同様だ。

 そして本体と完全に結びついたスタンドは、本体の成長と共に、より強い能力(ちから)を、振るう事ができるようになる。

 その分、これまでできていたことができなくなるという事もあるがな。

 例えば、JOJOのスタンドは離れたところから、彼のところに物を運んできていたが、彼自身の意志で動かし始めたら、恐らくはそれはできなくなる。

 今まで以上の強い力を得る代わりに、行動可能な範囲が狭くなるからだ。

 一長一短、それが『スタンド』の基本ルールといったところだ。

 おわかりいただけたかな、樹里?」

 一通り説明し終えて、アヴドゥルさんがウインクする。

 空条は彼と最初に会った時、苛立ちまぎれに『ブ男』と暴言を吐いたが、髪型や服装などが日本人の目に奇矯に映るだけで、こうして見ると彫りの深いはっきりとした顔立ちは充分にチャーミングだ。

 加えて大人の男性らしい落ち着いた雰囲気は、今の空条には決して出せそうにない。

 私が頷くとアヴドゥルさんは、腰に付けていた小さなポーチから、カードの束を取り出した。

 

「…さて。それでは占い師のわたしが、君のスタンドに名前をつけてあげよう」

 なるほど、アヴドゥルさんは占い師なのか。

 

「名前?」

「そうだ。名をつけて呼ぶことにより、スタンドは存在がより固定化され、安定する」

 言いながら、一枚のカードを引き出して、絵柄の面を表に出す。

 そのカードを見て、あっと思った。

 示されたそれは上下が逆さまだったが、まさに黒ヤギの頭部を持った、悪魔の絵柄だった。

 

「悪魔の逆位置!

 それは覚醒!呪縛からの解放!

 悪縁を断ち切り、新たな世界へ飛び立つ事を意味する!

 君のスタンドは『リヴァース・デビル』!!」

 …はい、そのまんまですね。了解しました。

 

 ☆☆☆

 

「樹里…おれは、もう諦めねえ」

 アヴドゥルさんの説明を聞いた後、家に帰ろうとしたら、空条に呼び止められた。

 

「……なにを?」

「おれは絶対に、おまえを手に入れる。

 おれの事しか考えられねーくらい、夢中にさせてみせる」

 低い声が熱く紡ぐ言葉に、心臓がどきりと跳ねた。

 

…to be continued

 


 

逆位置の悪魔(リヴァース・デビル)

 

 近距離パワー型スタンド。

 頭部と下半身が黒ヤギ、上半身が人間という、タロットカードの悪魔そのものの姿。

 攻撃能力は風と思われがちだが、フタあけてみたら実は水だった。

 手近にある水分か空気中の水分を固めて作る針状の剣で斬る、または刺し貫く。

(初めて使用した時に炎が出たのは、使用した水分が、火のついたライターのオイルだったから)

 登場時は男性型だったが、樹里の心が完全にその存在を受け入れた事により融合し、女性型になる。

 つまりおっpp(以下判読不能)




そして気づいたらちょっとアヴドゥルさんともフラグ立ててた。
後悔はしているが反省はしていない(爆

樹里がこの後エジプトへの旅に同行するかどうかは、ここでは明記しません。
皆様の心の中に、それぞれの正解があればそれでいいと思ってます。
一応、アタシの妄想の為のアバターだった時の彼女は最終決戦でDIOに殺され、承太郎の怒りによってスタープラチナが覚醒するという、メッチャ悲恋の流れでしたが。
ここより未来の承太郎が子供まで成した奥さんと別れてしまっているのは、妻子を危険に晒したくない考えは勿論あったけど、実は樹里のことを忘れきれておらず、奥さんがそれに気づいていたという理由もあった…という話にまでなりましたが、勿論アタシはそんなもん書きたくありません。
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