学園生活だが、正直つまらない。
学園で学ぶことは、ほとんどすでに学び終えた所だ。
学園に通う前はよく城から抜け出して鍛錬ばかりしていたが、並列意思、思考加速、記録などのスキルを使った超高速学習によって一通り知識は修めている。
なので、授業中は教師の話を聞くのに並列意思を1人だけ回して、残りはスキルのレベル上げを行なっている。
学園の人間たちは、媚びてすり寄ってくる人間と、恐れて近づいてこない人間におおよそ分類できる。
教師でさえもそんな感じで、完全にボッチだ。
俺は大国の王太子で大きな権力を持っているし、実力に関しても、俺を上回る力を持つ人間は学園に存在しないからだ。
俺に取り入ろうとしてくる人間は基本的に無視し、近づいてこない人間に関しては、俺にはどうしようもないので放置している。
一度だけ、俺に決闘を挑もうとしてきた他国のバカ王族がいたが、少し威圧をかけたら即座に土下座し、それから俺に決闘を挑もうとするアホはいなくなったが、さらにボッチが加速した。
悲しいが、鍛錬する分にはその方が都合が良い。
そして今日の授業は、魔法の実践だ。
魔法の授業なんて、最初はファンタジーな出来事に心を躍らせていたのだが、内容を知って冷めた。
座学は学園で習う以上のことをロナント爺さんに教わっている。
前回の授業では、他の生徒が魔力感知と魔力操作を教わっている中、スキルを使わずマニュアルで術式を作ったりして、魔力精密操作のスキルを鍛えていた。
そして今回の授業の内容だが、水魔法LV1「水球」が込められた杖に魔力を流し込む。
そんだけ。
俺の目の前で、生徒たちが杖を構えて魔法を発動しているのだが、うまく発動しない生徒が多く、結構ひどい。
俺は水魔法の適性がとても低いが、それでもあれよりもずっと高度なことができる。
付け加えるなら、この授業は水魔法スキルの獲得する目的もあるわけだが、俺は既に水魔法スキルを持っているので意味がほとんどない。
そんなわけで完全にやる気が失せた俺は、魔力精密操作や次元魔法のスキルを鍛えていたのだが、それを見かねたオリザという中年の教師が俺に話しかけてきた。
「ユーゴー君、授業に参加してください」
「えー……」
正直面倒だが、参加しないともっと面倒な事になりそうだったし、学生なのに授業に参加しないのはちょっとどうかと思うので、しぶしぶ参加する事にした。
生徒たちがこちらを見ている中、水球の魔法が込められた杖……を投げ捨て、既に持っているスキル、水魔法LV1「水球」を発動。
俺の一万近い魔力系ステータスは、周りの人間よりも遥かに高い威力を叩き出し、凄まじい速度で飛んで行った巨大な水球は、的を完全に粉砕した。
『……は?』
的の一つがあった場所にはクレーターができていて、そのあんまりな惨状に生徒も教師もドン引きしていた。
その日から俺は魔法の授業ではハブられるようになった。
また別のある日。
その日は剣術の授業があった。
生徒はそれぞれ訓練用の模擬剣を構えて教師たちに斬りかかるが、なんかどいつもこいつも遅いし拙い。
シュンは結構いい動きをしているのだが、ステータスが低いので、俺よりもずっと遅い。
今の時代の人族のステータスは低く、学生ならさらに低い。シュンでさえ500といったところだろうか。
「さあ来い!」
そんなこんなで俺の番が来たのだが、やっちゃっていいのだろうか。
「どうした? 来ないのか?」
「いや……その……」
俺の目の前で剣を構えている暑苦しい見た目の教師だが、明らかに俺よりも弱い。
やっちゃっていいのだろうか。
「……? いつでも来て構わんぞ」
もうこの時点で結果が見えていたが、手を抜くのも俺のなけなしのプライドが認めないので、やっちゃう事にする。
教師に向かって斬りかかる。
俺の五千を超える速度のステータスは、アホみたいな速度を叩き出し、教師の動体視力を完全に超えた。
俺の速度に教師は全く反応できていない。
俺は力を抜き、手加減して教師の持つ模擬剣を叩きつけた。
結果、教師の模擬剣は吹き飛び、俺の剣が教師に突きつけられた。
『……』
全員俺の動きは見えていなかったようで、壊れた模擬剣を見て絶句していた。
その日から俺は剣術の授業もハブられるようになった。
そんなこんなで大抵の生徒は俺に近づかなくなった。
だが一人、俺に凄まじい敵意を向けてくる人間がいる。
シュンの妹のスーレシアだ。
「あの男のせいでお兄様が低く見られてる……許せない……けどあの男は殺せない……どうすれば……」
なんて物騒な事を呟いているのをよく聞く。
スーは兄様至上主義の超ブラコンで、ヤンデレ属性も持っているハイブリッドだ。
スーはシュンの偉大さ(笑)を学園に知らしめたかったんだろうが、俺が図らずもその邪魔をした。
シュンはすごく優秀な成績を出してはいるのだが、俺が授業でバケモノっぷりを見せた結果存在感が霞んでいるため、俺の方がシュンより目立っている。
こんな目立ち方をしても悲しいが、スーはそれが気に入らないらしい。
ただ、俺はシュンやスーよりも遥かに強いため、 実力行使に移るなんてとても出来ず、それがさらにストレスを溜める要因になっているのだろう。
後日、それを見かねたシュンが話しかけてきた。
「その、なんだ、スーが迷惑かけて悪いな」
「いや、いいさ。あれくらい可愛いもんだ」
俺がそう答えると、シュンは少し驚いた後、何かを決意したような顔をした。
「夏目。俺は正直、前のお前が苦手だった」
「……そうか」
「でも、その、今のお前はそんなに嫌いじゃない」
シュンの真っ直ぐな言葉は、ひねくれた俺には少し眩しかった。
俺には、そんなことを言われる資格は無いのに。
けれど、俺の口は、気がつくと言葉を紡いでいた。
「……俺も、お前のことはそんなに嫌いじゃない」
俺はそう言うと、シュンは俺に笑顔を向けて、「ありがとう」と言った。
あぁ、心が痛い。