ざっぱーん
「海だー!」
「う、うみだー!」
縦穴を空間機動で登り、エルロー大迷宮から脱出した俺たちは今、海が一望できる浜辺に来ていた。
ゴイエフさんとはすでに別れている。
面と向かって言っては来なかったが、「もう二度と案内したくない」と顔に書いてあった気がする。
それから俺とユーナ、それとユークは、近くの街で消費した物資を購入し、空間魔法で亜空間に収納した後、山を一つ越えた場所にある海辺に訪れた。
波が引いては押し寄せて、波の音が静かに響いている。
潮風が少しべたつくが、そんな不快感も海らしくていいと思う。
海に来たのは、転生してから何気に始めてなので、少し懐かしい感じがする。
「これがうみ、ですか……」
ユーナも初めて見る海に何か思うことがあるのか、水平線を眺めている。
ちなみに、海ということで、俺もユーナも水着を着用している。
俺はいたって普通の黒のショートパンツ。
そしてユーナは、黒のワンピースタイプの水着で、フリルがついた可愛らしいものだ。
街で水着を買いに行った時に、ユーナを見て、妙にテンションが高くなった店員に勧められたもので、店員が勧めたものだけあって人化したユーナによく似合っている。
濡れた水着が張り付いているユーナの白い肌からは、そこはかとない色気が滲み出していて、元々ユーナが持ち合わせていた可愛らしさと、ユーナの持つ黒い翼から感じる神秘的な雰囲気も合わさって、アンバランスな魅力を醸し出している。
俺はそんなユーナに少しだけ見とれていて、正気に戻るまでに暫しの時間を要することになった。
俺とユーナはしばらく浜辺で遊んでいたが、いつまでも遊んでいるわけにはいかないので、そろそろ本来の目的を果たすことにする。
「ユーナ、ちょっと沖まで行くぞ」
「?……わかりました」
俺は空間機動、ユーナは人化を解除し、飛翔のスキルを使って浜辺から離れ、空を飛んで沖まで向かう。
景色が高速で後ろに流れて行く様子は、前世で乗った飛行機を思い出す。
だが俺は生身であり、潮風が体に叩きつけられ、太陽の光が肌に直接照りつける。
視界は開けていて、どこまでも広がる大海原の景色は、かつて窓から見たのとは迫力が段違いだ。
とてもこの星が滅びかけとは思えない。
そして陸地がかなり小さくなるまで陸から離れた時、突如海面からビームが飛んで来た。
「うぉっ!」
「!!」
俺もユーナもそれを避ける事ができたが、追い討ちをかけるように少し弱めのビームが何十発も飛んで来た。
この世界では航海技術は発達していない。
その理由がこれで、海を渡ろうとしたものはビーム……水龍や水竜のブレスで撃墜されてしまう。
だからダズドルディア大陸とカサナガラ大陸を渡る手段は、事実上、空間転移と、エルロー大迷宮を通ることしか存在しないのだ。
そんなこの世界の海は危険地帯なわけだが、だからこそレベル上げには都合がいい。
海を突破するのは普通の人間には不可能だが、俺や一部の強者なら突破できないこともない。
ユーナはかなりギリギリだが、俺はブレス攻撃をそれなりに余裕を持って避けることができている。
水龍や水竜は膨大な数の個体が生息しているため、絶滅の心配をする必要はしなくていいだろう。
暗黒魔法を発動、並列意思を総動員して構築された何十発もの暗黒の槍が、空中から水面に向かって飛翔し、海中にいる水龍と水竜たちの体に突き刺さった。
光属性の魔法や闇属性の魔法は、水中でも威力が減衰しない。
水中では剣も思うように振れないため、これらの魔法が水中戦では重宝される。
ついに一万を超えた魔力系ステータスを持つ俺の放った魔法によって、ほとんどの水竜が今の攻撃で死んだが、致命傷にならなかったのか、水龍はしぶとく生き残った。
だが、生き残りを確認した俺は再び暗黒の槍を展開、弱った水龍に向けて発射する。
水龍はそれを避けられず、俺の魔法はその命を散らせたのだった。
《経験値が一定に達しました。個体、ユーゴー・バン・レングザントがLVーーからLVーーになりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》
……
《条件を満たしました。称号『龍殺し』を獲得しました》
《称号『龍殺し』の効果により、スキル『天命LV1』『龍力LV1』を獲得しました》
《『天命LV1』が『天命LV10』に統合されました》
今回の戦闘でたくさんの経験値を手に入れ、レベルが上昇したのに加えて、新たに龍殺しの称号を獲得した。
龍殺しの称号の効果で手に入る龍力のスキルは、ステータスの上昇、魔法の阻害、ブレスを撃てるようになるなど、かなり強力なスキルであり、この称号とスキルを獲得するのが今回海に来た一番大きな理由だ。
このスキルは普段から使って鍛えるようにするつもりだ。
こうして目的を果たした俺は、水龍の死骸を回収し、次の場所を目指して転移したのだった。