かませですが、なにか?   作:酒井悠人

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17 かませ犬は挫けない

「ユーゴー!?」

「ユーゴー!」

 

 学園に戻り、久しぶりにシュン、カティアと顔を合わせたら、とても驚いていた。

 

「ああ。つい昨日帰ってきた」

「一体どこに行ってたんだよ!」

「いや、ちょっと修行にな」

「修行って……」

「おいおい……」

 

 今まで何をしていたのかを聞かれたので、素直に修行していたと答えたら、なんか微妙な顔をしていた。

 

 なんか釈然としないので、いったい何がおかしいんだと言ったら、「あれ以上強くなって一体何と戦うつもりなんだ」みたいなニュアンスの言葉が返ってきた。

 

 ……いやまあ、旅に出る前でも十分人族最強だったので、シュン達の視点から考えればちょっと意味がわからないだろう。

 

 でも、主人公(蜘蛛子)や魔王、ラース、ソフィアなどのインフレ勢に、SFな兵器を持つポティマスのことを考えると、修行前の強さじゃ足りなかっただろうし、今の強さでもまだ不安なくらいだ。

 

「……」

「ん? どうしたんだ?」

 

 そんなことを考えていたら、カティアが難しい顔をして黙り込んでいた。

 

 シュンはそれに不思議そうな顔をしていたが、俺はその理由に見当がついた。

 

「……シュン、最近魔族の動きが活発化しているのは知っているな?」

「ん? ああ。ユリウス兄様や先生とも、ここ最近会ってないな」

「もしかしたら、魔族と戦争になるかもしれない」

「戦争って……」

「杞憂かもしれないが、もしもの時のためにも、強さはあるに越したことはない」

「いや」

 

 俺は二人の会話に口を挟んだ。

 

「俺も旅をしながら情報を集めていたが……ほぼ間違いなく戦争になる」

「なっ!?」

 

 これは本当だ。

 原作知識で戦争になることは知っていたが、それが正しいか確かめるのも兼ねて情報を集めてもいた。

 

「今代の魔王は好戦的で、しかもとんでもなく強いらしい。準備を終え次第、こちらに攻め込んでくるだろうな」

「そんな……」

「ってことは……」

「ああ……人魔大戦が、始まる」

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 シュン達との会話を終えた後、俺は自室でため息をついていた。

 

 考えるのは人魔大戦のこと。

 俺はとても悩んでいた。

 

 これから始まる人魔大戦は、とても大きな()()()()()のチャンスだ。

 

 なぜなら、()()()()()()()()()()()

 同じくらいの強さの魔物を狩るよりもはるかに多い経験値が手に入る。

 

 けれど、戦争に参加しただけの人間を殺すのは、盗賊や、襲ってきた魔族、絶滅させる予定のエルフを殺すのとは訳が違う。

 

 この殺しに大義は一切ない。

 星を再生させるためのエネルギーが云々と理由をつけることはできなくもないが、殺すのは経験値が欲しいという俺の勝手な都合だ。

 

 さらに、盗賊のような小さな集団を殺すのとは規模が違う。

 万単位の数の人間を虐殺、それも直接殺害した人間は、地球の歴史を探してもいないだろう。

 そのことを考えたら、俺の心はブレーキをかけてしまう。

 

 けれど、これを逃せばおそらく俺は()()()()

 そして無様に死ぬだろう。

 

 ギチギチと心が擦れる音が聞こえる。

 

 殺せという俺と、殺したくないという俺が、心をぐちゃぐちゃにかき回す。

 

「俺は結局、どうしたいんだろうかね……」

 

 口から漏れただけのその独り言は、答えを期待している訳ではなかったが、答えが帰ってきた気がした。

 

『汝のしたいように為すがいい』

 

 原作で主人公(蜘蛛子)が管理者ギュリエディストディエスに伝えた言葉だ。

 

 ふと思い浮かんだその言葉は、俺の胸にすとんと落ちた。

 

「……そうか」

 

 一度死んで、なにもかも失った。

 

 二人が一つになって、心すらも前とは変わってしまった。

 

 自分がかませ犬だと知って絶望した。

 

 プライドは砕け散り、みっともなく死ぬのが怖かった。

 

 だからこそ、自由で、奔放で、誇り高く生きようとする主人公(蜘蛛子)に憧れた。

 

 俺が強さを求めたのは死にたくないからだ……()()()()()()()()

 

 いやまあ、それも全くないわけではないけれど、ただ死にたくないだけなら、原作にも極力関わらず、ひっそりと静かに暮らすという選択肢もあった。

 戦うのは死のリスクが付き纏うし、システムが崩壊した場合、多くスキルを持っている人間はスキルを剥がされたショックで死ぬことを考えると、スキルを鍛えるのはむしろ逆効果だ。

 

 それでも俺が強さを求めたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV1』を獲得しました》

 

 誇りを失ったからこそ、誇りを求めた。

 

 誇り高く生きる在り方に憧れた。

 

 そして新たに芽生えた誇りが、俺を突き動かした。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV1』が『矜持LV2』になりました》

 

 人殺しは悪? ()()()

 

 多くの命を奪ってでも、俺は目的を全うする。

 

 俺は殺す。俺自身の願いのために!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV2』が『矜持LV3』になりました》

 

 ああ、その通りだ主人公(蜘蛛子)

 

 俺は俺のしたいようにする。

 

 蜘蛛子(おまえ)のように、自由に、傲慢に、誇り高く!

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV3』が『矜持LV4』になりました》

 

「俺は止まらない!」

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV4』が『矜持LV5』になりました》

 

「もう二度と、かませ犬と呼ばせはしない!」

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV5』が『矜持LV10』になりました。残りスキルポイント324です》

《熟練度が一定に達しました。スキル『矜持LV10』がスキル『傲慢』に進化しました》

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV8』が『禁忌LV10』になりました》

 

《条件を満たしました。称号『傲慢の支配者』を獲得しました》

《称号『傲慢の支配者』の効果により、スキル『深淵魔法LV10』『奈落』を獲得しました》

《『深淵魔法LV1』が『深淵魔法LV10』に統合されました》

 

《条件を満たしました。禁忌の効果を発動します。インストール中です》

《インストールが完了しました》

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