かませですが、なにか?   作:酒井悠人

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18 焼き払えよりも薙ぎ払えの方が有名だという謎

ーー贖え。

 

ーー贖え。

 

ーー贖え。

 

()()()()()()

 

 襲いかかってくる吐き気や、湧き上がってくる悪寒を精神力でねじ伏せる。

 

 それでも、不快感が消えることはない。

 邪神が禁忌に仕込んだ悪意は、俺の精神を蝕んでいる。

 

「禁忌のこと忘れてた……」

 

 傲慢のスキルを取れば、禁忌のスキルがカンストするのは予想できたはずだが、ぶっちゃけ禁忌の存在そのものを忘れていた。

 

 おかげでインストールされたショックで気絶してしまい、起きたら次の日になっていた。

 

 朝っぱらからこんな不快な思いをすることになって、ちょっと今の俺は機嫌が悪い。

 

「チッ……」

 

 舌打ちをした後、視界の隅に浮かぶ、禁忌と書かれた文字を意識すると、不快感が膨れ上がると同時に、禁忌の項目が表示された。

 

『禁忌メニュー

 システム概要

 システム各項目詳細説明

 アップデート履歴

 ポイント一覧

 転生履歴

 特殊項目n%I=W』

 

「うえっ!」

 

 あまりの気持ち悪さにリバースしそうになるが、なんとかこらえることに成功した。

 

 こんなSAN値が削られるような精神攻撃を四六時中味わっていたら、そりゃ主人公(蜘蛛子)もキレるだろう。

 というか俺もキレそうだ。

 

 禁忌。

 それは情報の開示。

 

 かつて、この星では地球よりも少し進んだくらいの文明が栄えていて、龍という生物が住んでいた。

 

 そして人類は、新たに発見した、MAエネルギーという未知のエネルギーを使い始めたが、MAエネルギーの正体は星の生命力であり、使えば星の寿命を縮めるものだった。

 

 龍は、星の寿命を縮める人類を淘汰しようとしたが、その人類を守ったのが女神サリエルだった。

 

 だが龍はこの星から去り、エネルギーを搾り取られたこの星は、崩壊の危機に瀕することになった。

 

 そして人類は、人類を守った女神サリエルを生贄にすることでこの星を再生させようとした。

 

 それに激怒した管理者ギュリエディストディエスは、サリエルとこの星を救うために、戦うことで魂のエネルギーを増やし、死んだらそのエネルギーを回収し、そして同じこの星に転生させるというシステムを稼働させた。

 

 それが禁忌に説明される歴史だ。

 

 だいたいポティマスのせいだとか、龍がMAエネルギーを持ち逃げしただとか、システムを作ったのはDだとか、ところどころ意図的に削除された情報があるし、文字には見た人間の罪悪感を煽る精神攻撃の効果もあるが、禁忌の大まかな内容は、ある男が抹消した過去の歴史と、システムについての説明に加え、今までどのように生きてきたのかを強制的に見せられる。

 

 けど正直、地球生まれの俺には他人事だ。

 

 この星に崩壊してほしいとか、この星の人類に滅んでほしいとか、女神サリエルに死んでほしいとまでは思っていないが、罪悪感なんて当然無いし、システムは俺自身のために利用するだけだ。

 

 だが、まるでそれを非難するかのような思念(こえ)が聞こえてくる。

 

ーー贖え。

 

「ん?」

 

 贖罪を求める管理者ギュリエディストディエスの思念(こえ)を聞かされていると、ふと思った。

 

「……そういえばこのギュリエディストディエスの声って、カンペ読みながら言ってたんだよな」

 

 あのヘタレ龍はこんなに禍々しくはない。

 この悪意の元凶は、システムを作り、提供したDだ。

 

 そう思うと、どこかこの声が滑稽に思えてきた。

 溢れる不快感も、どこか楽になった気がする。

 

「うん、そうだ」

 

 禁忌がカンストしようと、俺のやることは変わらない。

 知っていたことを確認できただけだ。

 

 人類を救うためでも、世界を救うためでも、女神を救うためでもなく、俺は俺のために行動する。

 

「じゃあ、戦争に乱入しようか」

 

 

 

 

 

 人魔大戦の主戦場の一つであるクソリオン砦。

 人族領と魔族領を分ける重要拠点であるこの砦の陥落は人族が魔族の攻勢を止められなかったことを意味するため、この砦に配備された兵士は人族のなかでも特に精鋭だ。

 

 それに対する、古参のアーグナー大佐将軍率いる魔族軍第一軍も精鋭であり、この砦に集結している軍勢は、一部を除いた両軍の最高戦力だと言っても過言では無い。

 

 戦況は今はまだ拮抗しているが、砦を攻める戦いでは、攻めるよりも守る方が有利なもの。

 このままでは戦況は人族側に傾くだろう。

 

 俺がユーナとユークを連れてやってきたのは、そんな戦場から少し離れた場所だ。

 

 人族軍と魔族軍のどちらの人間にも俺たちの存在に気づいた様子はない。

 

「それじゃあ、始めようか」

 

 戦場の様子を確認したら、並列意思の一つを割いて、万里眼で()()()()の監視を行いながら、術式の構築を開始した。

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 死滅の邪眼で勇者を殺害した私は、エルロー大迷宮最下層のその先にある、システムの核である女神の封印地に転移した。

 

 今回の戦争の目的は、エネルギーを確保し、システム崩壊時に生まれる犠牲者を減らすために人族と魔族を間引きし、勇者ユリウスを殺害、勇者システムを解体するのが大まかな理由だった。

 

 だが女神の妨害によって、集まったエネルギーが想定よりも少なくなり、勇者システムの解体に失敗した。

 

「ふざけるな」

 

 怒りに満ちた声が出た。

 

「そんなに人が死ぬのは嫌か? 今みんなが殺し合ってるのは誰のためなのかわかってるくせに?」

 

 こいつは魔王の覚悟を踏みにじった。

 ふざけんなって話だよ。

 

「よく見ておけ」

 

 女神の目の前に魔術で映像を映し出す。

 映し出されたのは、魔族軍第一軍が戦う戦場だ。

 

 私はその戦場に、クイーンタラテクトを一体召喚する。

 

 ……直前に、戦場は核の炎に包まれた。

 

 イヤイヤイヤ!?

 おかしいでしょ!?

 私まだ何もしてないよ!?

 

 なんかいきなり戦場が火の海になって、戦場にいたほとんどの人族と魔族が死んだ。

 

 心なしか女神の目が死んだ魚のようになった気がするが、今のはマジで私は関係ない。

 

 混乱していたら、しぶとく生き残っていた一部の人族と魔族がいた場所が、それぞれ炎と闇のビームで消し飛んだ。

 

 あー、全滅したかー。

 にしても今のビーム、どっかで見たことがあるなーと思ったが、あれ、龍のブレスだ。

 ということは黒の仕業か?

 けどあのヘタレがこんなことを命じるようには思えない。

 

 分体に要請し、この攻撃を放ったと思われる存在を捜索したら、分体の一体が、戦場から少し離れた場所にいた三人の人間を発見した。

 

 その内の二人は案の定人化した龍だったが、残りの一人はどうやら人族のようだった。

 

 だがこいつ、なんかやけにエネルギー量が多い。

 エネルギー量から推定した強さだが、魔王には届かないが、吸血っ子や鬼くんよりも強い。

 おそらくさっき戦場を火の海に変えた魔法を放ったのはこいつだ。

 

 ん? ってあれ夏目くんじゃね?

 え、最近動向がわからなかったけど、マジで何やってんの!?

 

 あ、転移で逃げられた。

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